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タイトル:HOLY WIND -prologue- コメディ

前、ゆっきゅんほしsに成りすましていたものです、
迷惑かけました。

この小説面白くないかもですけど宜しくお願いします

七瀬 2008年11月04日 (火) 18時05分(357)
 
題名:HOLY WIND -prologue-  1

ふと、夢を見ていた事を思い出す。

描いた幻想はどこまでも陳腐で、幼稚で、儚く、跡形すら残さず消えゆくまでに時間など必要としなかった。
そもそもが幻、最初からそこにありはしなかったという事だ。

だが私は思い出した。

何故だろう?何故に今、この場所で思い出さなければならないのか。
何故…こんなにも痛みが胸を灼くのだろうか。

望んでいるのか、感情を棄てたくせに。
哀しんでいるのか、心を壊したくせに。
待っているのか、全部を失ったくせに。

どうなのだろうな?私には良く解らないよ。

それにしても……今日はなかなかに冷えるな。
春先だというのにまるで雪でも降りそうな勢いだ、あり得ないけどな。
いくらなんでも季節が季節、桜は咲いても白い雪が咲く事は無い。
そんな事を思いながら、私は灰色に染められた空を眺めていた。


「■、三千院ナギ」


あと…どれくらいの時間が私に与えられている事だろう。
銃口を突きつけられてから、男の人差し指が引き金に力を込め始めた辺りから、時が止まっている気がしてならない。
何か口を動かしている様だが全く聞こえない。

瞬間、男の姿が消える。
特に理由がある訳でもないが、私がその両の瞳を閉じたからだ。

もし本当に時間の流れが止まっているのなら、もう少しくらいは考え事していても問題は無いだろう。
そしてその目をつぶり生じる闇の中で私は思う。

私の意味は何だったのだろうか、と。

きっとそんなものは無いのだ…が、無理矢理にでも作る事にした。
基本、後ろ向きな私にしては珍しい。

あいつと出逢う為。

ありきたりで、いかにも安っぽい恋愛小説で使い古されたような謳い文句。
くだらない、だがそういう事にしておけば不思議と落ち着く自分がいる。
そうであって欲しいと、思っている証拠になってしまうが…まぁいいだろう。
意味は出逢う為、か。
出逢ってもう…七年も経ってしまったのだな。
まさに駆け足で通り過ぎていったという比喩表現が当てはまる。
初めてお前と喋ったのは確かクリスマスイブ……だったっけな?
とぼけるような疑問形なのは嘘だ、すまない。

そうか、始まりは雪で…終わりは雨だったか。

思いついたように私は何かを納得する。
くだらない夢の話だから気にしなくていい。

そうだ、なんやかんやで忘れてしまっていた事が一つあった。
まずいな…未練や後悔の類いが出来てしまう。
と、ここでついつい吹き出してしまいそうな自分が。
何を言っている?後悔で潰れそうなのが今の私ではないのか。
そうだな、そうだった、本当に何を言っているのやら。
なら後悔が一つ増えた、という事にしておいてくれ。

私の名前を…お前は覚えていてくれてるのか。

最後にそう聞くつもりだったのだが、忘れてた。
いやなに、出逢ってからお前は私を名前で呼ぶ事なんてほとんど無かったからさ。
少し気になってたんだ、ただそれだけ。




…………時間が動き出したようだ。
もとより止まってなどいないだろうが、時間はもう残って無さそうだな。
聞こえるんだ、風の音が。
さっきまで何も聞こえなかった緩やかな風の音が皮肉にも、終わりを告げる鐘のように耳から頭へと響く。
聞き心地が良く、どことなく安らぐのがせめてもの救いか。

うん…やっぱり何か気になってきてしまった。
私の名前、しっかりと覚えているかな?
答えを得る事はもう叶わないけど……

七瀬 2008年11月04日 (火) 18時06分(358)
題名:HOLY WIND -prologue-  2

覚えてさえいてくれたら……その名を、私という存在がいた事をずっと忘れずにいてくれたら、私はそれだけで幸せなのだがな。









―――HOLY WIND―――









終わったのはたった一つの夢。
望んだのは果て無い理想、子供じみた未来、馬鹿げた世界。

多分お前に言えば笑われてしまうかもな。

ただひたすら……一緒にいたいと、ずっと隣にいたいと、そんな夢をひたすらに願った私を知ったらきっと笑う。
それもいい、お前が笑ったら横で私は怒るんだ、笑うなっ!とか言って。

私はまた夢を見る。

だけど夢想家の旅路はここで終わり。
夢の続きは無い、描く為のペンはもうゴミ箱にでも捨てるとしよう。




最後に描いた夢物語を彩るは満開の桜、血の匂い香る銃声。
そして……吹き抜ける、いつか感じた一陣の風。




To be continued¸

七瀬 2008年11月04日 (火) 18時07分(359)
題名:HOLY WIND -I-

時計の針を左回りに戻すとしたら、砂時計の向きを逆転させるとしたら。
回す指はどの辺りで、砂の流れはどの辺りで止めたらいいのだろう?

多分それはほんの少しでいい。

未来を見通す鏡のようなものを、あの時の私が手にしていたらどうなっていただろう。
何かを変えれたのだろうか。
違う明日を導く事が出来たのだろうか。

過去に、仮に時を駆ける事が出来たとして、あの時に戻れていたらどうなるだろう。
運命を変えれるだろうか。
夢を叶えた自分に出逢えるのだろうか。

それら全ての共通の答えはそんな訳無い、だ。

未来を知ろうが、過去に飛ぼうが結末は同じだと私は思う。
私は不器用で、いつもいつも想いが裏目に出てしまう。
感情を抑えきれなくて、気づけば大切なものを失って、それで終わり。

そんな道を、何度生まれ変わっても選択してしまいそうな気がするから。




雨が降っていた。




その日、全ての終わりを刻むような激しい雨が降りつけていた。
私は傘もささずに、ただそのくすんだ天を仰ぐ。
感じるやまない雨は本当に冷たくて、痛かった。
思った。いつ晴れるのか。
晴れたら虹はかかるのか、と。
こうも思った。晴れもしなければ虹もかかりはしない。
ただ曇天に沈むだけ。




桜が咲いていた。




いつの間に咲いていたとも知れないそれは、私の視界を包みこむ。
少し、思い出す。小さな、本当にどうでもいいような約束を交わした事を。
言い出したのは私じゃないけど破ったのは私だったな、と。
謝りたいと思った。どう言葉を紡いだらいいのか、解らないのだけれど。




雪が舞っていた。




気のせいだったのかもしれない。
感じては消える、消えては感じる白い結晶。
冷たくはなかった。それ故に気のせいなのだと感じるのか。
暖かかった。今までの何もかもを忘れさせるくらいに。

その暖かさの正体が雪ではないと、そう気づいたのは少し遅れた後だった。
だが他に何がある?考える必要も無かった。
頬を伝う連続する暖かみ。

泣いていた。

私が、ではない。誰かが泣いていたんだ。
私は言う。泣くな、と。
それでも止まらなくて、頬に伝う暖かさが増す。

泣いていた。

私が、だ。それは仕方がない、その誰かが泣き止まないのだから。
何より嬉しかったから。




雨が降る、桜が咲く、雪が舞い散る以前まで時を巻き戻す。
絆は永遠だと、信じて疑わなかったあの瞬間まで。

その時、私は扉の前に立ち尽くしていた―――

七瀬 2008年11月04日 (火) 18時09分(360)
題名:HOLY WIND -I-  2

春、うららかな季節がやってきた。
春夏秋冬、四色カラフル温帯気候は第一段階へとその季節を移行させた。

…はずなのだが何なのだろうか、この全身を刺すような寒気は。
およそ春などとは思えない気温が私の周囲を包んでいた。
ふざけるなよ、私の記憶が正しければ昨日のお天気コーナーでは今日、大変過ごしやすい陽気になるでしょう…と言っていたぞ?

過ごしやすくない。
一体全体、どこの誰が過ごしやすいみたいな感想を零すというのか。
いたとしてもそれはアレ…エスキモーとかイヌイットとかそこら辺の奴等に違いない。

しかし気に入らない。
天気予報というやつはどうしてこうも見事に外れてくれるのか。
あくまで予報ですから、などという言い訳は聞きたくない。
公共の電波を使用した盛大なウソだったのだから、言い訳ではなく謝罪を要求する。
いやー、外れましたねー的な野球勝敗予想みたいなのでもいいから外れた事に触れて反省しろ。

いや、反省は必要ないか。
私が欲しいのは確実に当てるという結果だ。
そんなのは不可能だと、さじを投げるのは許さん。
人間、やろうと思えば何でも出来ちゃったりするものだ。
それでも不可能ならアナウンサーの横に明日の天気を見通せる超能力者でも配置しておくといい。
気象予報士と予想が食い違った時に発生しそうな言い争いが楽しみだ。


「うぅ…寒い……」


などと、寒さに対する怒りの行き場を模索していた私がいるのはベッドの中。
毛布を頭まで覆い隠し、体温を可能な限り外へと逃がさないようにしていた。

毛布はこれでもかというくらい何重にも積み重なっている訳だが、基本寒がりな私にはあまり効果が発揮されてないようにも思う。

そして目覚まし時計が部屋に鳴り響く。


「ふおっ!?」


何という事だろう。
そのやかましい音を発している機械は、毛布を取り払い、ベッドから立ち上がらないと取れない位置にあった。

嫌だ、果てしなく嫌だ。
でもうるさい。

仕方なしに私は泣く泣くしぶしぶベッドに別れを告げる決意をし、立ち上がる事となった。

おそらく昨夜、ベッドインする前ならばなんなく耐えれたであろうその冷気が容赦無く、私を焼き鳥やお団子のごとく串刺しにする。
身震いが三回、くしゃみが一回。
あ…今くしゃみが二回に増えた。

それにしても本当に異常な寒さではなかろうか。
地球温暖化といわれている昨今でこの温度とは、地球は病んでいるなぁ…とかなんとか思ったりしてみたところで、私はようやく目覚まし時計の騒音被害をくい止めた。

現在時刻を見てみる。
午前7時30分、そんな24時間働けますかがモットーのサラリーマンが見たら泡吹き失神即倒してしまいそうな時刻に私は起きたのだった。

ヤバい……それが浮かんだ感情、そしてつい漏らした言葉である。
というのも私にはやらなければならない事があるからだ。
それが何かは少し脇に置いておくとして、私は服を脱ごうとする動作に入る。
…別にただの着替えだ。
変な妄想をした奴は地獄、またはそれに属するどこかにでも落ちればいい。

服をずらし、ほんのわずかに肌が空気と接触したところで私は悲鳴をあげつつ、これまた神速とばかりに着替えを終了させた。
そこはさすがプロだと、内心自分を讃えた私。
何のプロかは良く解らないけどな、とにかく私はプロフェッショナルなのだ。

…そんな事はどうでもいい、早くしないと……

と、思った訳だが残念な事に部屋にコンコンというノックの音色が。
何が残念かもどうせだから置いておこうか。


「…入ってもいいぞ」


私がそう言うと小さな声で失礼します、と。
部屋の扉がゆっくりと開かれてゆくさなか私は思った。

さて、どう言い訳をしたらいいものか。

しかし渡る世間は何とやら、時は無情にも考えるヒマなど与えてはくれず扉は開かれ、そこに佇んでいた男の表情が姿を現す。


「タイムオーバーです、お嬢さま」


第一声がこれである。


「ち、違うのだっ!これはその…目覚まし時計の時間設定を間違えてだな……」
「まぁそれはそれとして、朝ご飯の準備出来ましたよ?」


私の華麗なる言い訳もなんのその、目の前にいるこいつは軽く流してそう言い放った。
本来ならば、今より二時間くらい前に目覚まし時計が鳴っているのが通常なのだが…何を血迷ったのか遅く設定してしまったらしい。

いや本当だぞ?決してわざとじゃないから、そこは信じて欲しい。

七瀬 2008年11月04日 (火) 18時10分(361)
題名:HOLY WIND -I-  3

「む…分かった……」


では行きましょうか、と私を扉の向こうの世界に進むよう促している男の正体でも明かそう。

執事、まずはその説明からだな。

執事とは。古くからイギリスで、数ある家事使用人のなかでも最上級な職種に分類されている。
英語で言えばバトラーだ。
上流階級で良く見られた大変貴重な食器、酒類を管理。
さらには他の男性使用人を全て統括し、かつその雇用と解雇の権限まで持っている。
そして主人の給仕、身の回りの世話をする。

それが執事、理解出来たか?

そして今、目の前にいる女の子みたいな顔つきをしている奴が私の執事。

名を綾崎ハヤテと称する。









とてつもなく長い廊下。

左側はどこまでも壁が続いており、右側…こちらはガラス窓が張り巡っており途方もなく続いている。
窓から差しこむ痛いくらいの朝日が私の顔面を横殴りにし、壁に影を灯す。

動く影は二つ、ここからでは豆粒に見える一番奥の部屋をひたすらに目指していた。


「だから本当に寝坊とかそんなのではなくて…」
「今日は寒いですからね〜」


私はまだ言い訳をしていた。
そして信じないハヤテ。

今日は寒いから…布団からなかなか出れず、早く起きる事叶わなかったと、そう思っているんだろうこいつは。
事実、そんなのは根も葉もないウソであり、今の私はタチの悪い女子高生に痴漢の冤罪をかけられてしまった、哀れな窓際族のオッサンみたいな心境なのである。

知ってる人は知ってるであろう、私が絶対零度的な寒さにも負けず、頑張って起きたという真実を。
先ほどから延々と、隣にいるハヤテに廊下を歩きながら真実を訴えている訳だがまるで届かない。
馬の耳に念仏、馬耳東風、「ねぇ私さっき宇宙人見たの」と、娘が必死に伝えようと努力するも全く相手にしてくれないお母さんのように。

信じてやれ、グレるぞ。


「いや、お母さんじゃ無いですから僕」


グレた。今まさに私は誰もかも信じる事が出来なくなりグレたのだった。
駅のホームに座りこみ、タバコを吸い、マジメそうなサラリーマンが近くにいたら「きゃはは、何こいつマジキモいんですけど」とか言っちゃう女子高生がごとく。
それとも適当に電話番号を押してかけてみて、出た相手が熟女っぽかったら「アナタの旦那さん、浮気してるヨ」とか言ってやろうか。

あぁこれは最低だ、まさにグレの境地を通り越して犯罪の域まで到達しているな。
しかし私がこうなってしまったのは周りがいけないからだ。
周り、というかハヤテだな。
ハヤテが私を信じてくれなかったらこうなってしまったのだ。
いまさら信じてももう遅い。
私は屋敷を飛び出して、特攻服を身にまとい、金属バットを引きずりながらバイクで夜の帳へと消えてゆくのだ。

さらば、ハヤテよ。

まぁ長々しい冗談はどうでもいいとして、だ。


「あーくそ、三千院ナギ一生の不覚なのだ」


ここいらで自己紹介でもするとしようか。

名は今言った通りだから説明の必要性は皆無だろう。
では次に、今私がいるこの場所がどこなのか。
ここは東京、某所にある三千院の屋敷なのだ。
もう少し詳細な地図情報をお求めの方にはすまないが、お引き取り願おう。
個人情報の流出は極力防がねばならんからな。

さて次だが……


「はは、でも“昔”と比べれば95からXPくらいの飛翔ですよね」
「例えがいまいちピンとこないが…まあいい、時の流れとは人を変えるに余りある力なのだ」


そうですね、と私を一瞥した後に微笑みを浮かべるハヤテ。

おっと、自己紹介の続きだったな。
次は…そうだな私の年齢とかいってみよう。
ちょうど人生の4分の1を終えた、と言えば解るだろうか?
それかタバコを吸っても、アル中になるまで酒を飲んでも法律で裁かれない年齢、と言った方がいいか?

20歳、ハタチ。

そう、私はそんな年寄りに成り果ててしまったのだよ。
小学生くらいの奴等にオバサンとか言われてしまいそうな危険な年齢だ。
そんな事言おうものなら、真空なんとかチョップでその脳天を悲惨な形状に変えてやるが。

まぁ何やかんやで時は流れた…という事だ。

母が亡くなってから数えれば15年、ハヤテがこの屋敷に来てから数えれば7年。
そしてこの屋敷に存在する声の数が私とハヤテだけになってしまってから数えれば3年…か。

七瀬 2008年11月04日 (火) 18時11分(362)
題名:HOLY WIND -I-  4

「そういえばマリアさんから電話がありましたよ?」
「またかよ…新手のストーカーか何かなのか?あいつは……」
「またそんな事言って〜、お嬢さまの事が心配なんですよ。マリアさんは」
「ふん…だったら結婚なんかしなければ良かったのだ」


今の私の表情はどんなだったのだろう。
ハヤテの少し苦笑気味な表情を鏡として、あぁ…私は今沈んだ表情をしているんだな、と判断した。

マリア。どっかの聖母みたいな名を冠したメイドさんがかつて、この屋敷にいた。
執事、綾崎ハヤテよりも長く、私と最も長く時を共に過ごした存在。
そんな存在が私のもとから去っていくのは突然の出来事だった。
突然、などというのは嘘か。
覚悟など、とうの昔にしていたはず。
だから私は言ったのだろう?「分かった」と。

それにやっと見つけたんだ私は。
ずっと考えてた。長い時を私と歩んでくれたお礼は何がいいのか、と。
物か、違う。言葉か、違う。
考えた末にたどり着いた答えは笑顔でいる事。

叫びたかった。この世界の果てまで届くような大きな声で。「行くな」と。
それを抑えこみ、自分に嘘をつく。
これが私が思いついた精一杯のお礼だと、これしか私には出来ないのだと至った訳だ。

だけど笑顔を創るのは案外難しいものだなぁ…と、この屋敷から名残惜しそうに去るマリアの背中を見ながら。
やけに頬が熱くて、多分声を出せば言葉にならないくらい震えてしまったであろうあの瞬間、私はそう思った。

笑顔は別の笑顔を創る事が出来る。
たとえ偽りの笑顔だったとしても、だ。

とある日のとある教会で、とあるウェディング姿のメイドさんが見せた、とある…辺り一面百合の花で埋め尽くされたような笑顔を見て私はそう知った。

偽物の笑顔を贈ったあの日の自分は、間違いではなかったのだと。


「…で?今度は何て?」
「えっとですね、『ご飯はきちんとバランス良くとってますか』と『夜更かしはしてませんか』とか、あと……」
「もういい…お母さんかあいつは」
「お母さんでしょうね、少なくとも僕はずっとそう思ってましたけど」


とかいう風に、頻繁な数のお母さんコールがこの屋敷にかけられてくるものだから、ついさっきまでのシリアス度が低下してしまうのが少し残念に思ったり。
…っとと、そういえば私の自己紹介の途中ではなかったか?
何故こうも脱線気味なのだろうか。
まあいい、私の容姿についてとかそんな話を……


「あ、『ナギは相変わらずちっちゃいままですか』とも言ってましたね」


黙れ、踏むぞ。


「のああっ!!?あ、足を踏まないでくださいっ…!!」


ハヤテの右足に神の裁きを下す私。
ちっちゃい…だと?ああそうさ、だから何だ?
お前に何か迷惑かけたのか?
何か問題でもあるのか?
あるのなら50文字以内で簡潔にまとめてみろ。


「ああっ!?ちょ…待っ……」


どんな光景が繰り広げられているかはさておき、自己紹介…はもう何だか面倒になってきたので早々と済ませよう。

私の容姿についてだが…非常に悲しいお知らせになる事だろう。
まさかな、とは思っていたが本当にまさかが私の身体に訪れようとは。

成長期、まさかの無到来。

人間の身体の設計図みたいなものを誰かが書いているとしたら、私はそいつにスープレックスをお見舞いしなければならない。
だってそうだろう?成人にもなってこんな……


「あいたた…?お嬢さま?」


空を見上げるような私の視線を感じとったか、ハヤテは痛みをこらえながら疑問符を浮かべた。

見上げるような、だ。
首が痛くてしようがない。
時の流れはハヤテの身体に成長をもたらしたが、私にはもたらしてはくれず、そこに生まれたのはさらなる身長差。
いかん…涙が。だがくじけるな私。
前向きに考えていこう。
身体が小さい、結構な話ではないか。
小さければ自動販売機とかの隙間とかに入れるし、映画とか電車とか子供料金でいけるぞ。

気づけば涙があふれていた。


「お、お嬢さま!?」
「小さくて何が悪いのだっ!!私はなぁ…これでも一生懸命生きているんだぞ!?」
「あ…す、すみません!でもちっちゃいって言ったのは僕ではなくて……」
「うるさい!!その言葉を私に直接叩きこんだのはお前だろ!!」
「え?あ…まあ…すみません……」


頭をなでなでするハヤテ、泣き止む私。
茶番も潮時かと思うのでこれくらいに。

七瀬 2008年11月04日 (火) 18時11分(363)
題名:HOLY WIND -I-  5

身長以外もそうだな、あまり変わらないか。
髪はツインテール、一体もう何年この頑固一徹を貫いているのか。
他はまぁ……きゅーとでわんだほーでみらくるな美女だよ、私は。
自分で言うなって?馬鹿者め、女は誰でも自分が一番だと思ってる生き物なのだ。

そうこうしている内に私達はようやく長い廊下の終着点へたどり着いた。


「ったく…いつもいつも無駄に長い廊下だ」
「そうですね、でも食前の運動としてはいいんじゃないですか?」


食べる前に運動してどうする…という疑問は胸にしまっておき、私はハヤテの身長の倍以上はある大きな扉の前に立つ。








補足程度にもう一つ、この屋敷に存在する声は私とハヤテのものだけと言った。
それはマリアがいなくなったから、という意味合いだけではない。

忘れがちな老執事長も、イタズラ好きなネコ2匹もここにはいない。
理由は…正直良く解らん。
ハヤテが何か知っている風だったが、上手く要領を得れなかった。
何でも旅に出るとかなんとか…そこで何故ネコ共を連れていく必要があるのかが未だに謎である。

旅といえば、母が逝った天国とは真逆の方向へと旅立った奴がいたっけ。唯一、肉親と呼べたあのクソジジイ。

これで正真正銘、私には家族がいなくなってしまった訳だ。

さっきも言ったが、失う覚悟などとうに出来ていた。


「?どうかしましたか、お嬢さま?」


目と目を繋いで、ほんのわずかな微笑みを浮かべながら、私は言う。


「ん…なんでもない」


覚悟など…簡単に出来る。
一人ぼっちになってしまったと、私がそう言えば「僕がずっとそばにいますから」と否定してくれそうな奴が隣にいるから。

扉の前に立った私はちらりと、一瞬だけ後ろを見た。

進んできた長い廊下の映し出す光と影が、今まで自分が歩んできた道に少しだけ似ている気がしたが、


「ってか、お腹減ったな……」
「今日はお嬢さまの大好物ですよ?」
「何?本当か。それは良かった」


気のせいだろう。

何故にそんな風に見えたのかは解らない。
朝の寝ぼけ眼がそう錯覚させたのか、はたまた……などと深く考えようとする自分は虚空の彼方へ。

いかんせん、腹が減っていた。




To be continued¸

七瀬 2008年11月04日 (火) 18時12分(364)


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