[38677] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-53『明日…前編3』 |
- 健 - 2020年03月16日 (月) 17時55分
貴族制の廃止とルルーシュの死後の混乱から、ノエルの兄が陥れられた事実が発覚した。これにより、ノエルの家族の名誉は回復されることとなった。
だが、ノエルはそれを告げた文官にこういった。
「これは皇帝陛下のおかげね……連中の親戚筋を横取りされた恨みはあるけど、感謝できるわ。」
そう、溜飲が下がった………誰が何と言おうとノエルにとってそれだけは揺るがない。
『全ては悪逆皇帝の仕業』?勝手にそうほざいていればいい。
「でもね……私にとってはルルーシュ皇帝とライル殿下は心から敬意を払える皇族。あんた達にあれこれ言われる筋合いなんかないわ。」
そうだ……結果として彼の悪逆によって兄の身の潔白は証明された。そして、復讐に走った父にも一定の名誉回復が図られ、病死した母の名誉も守られた。
あの後、疎遠になった親戚達は謝ってきているが、ノエルはそれを拒絶した。身勝手だ、どいつもこいつも。本質的にブリタニアは何も変わっていないのかもしれない。
だが、そんな国で生きていかないといけないのだ。
「全く、今更だけど…生きていくっていうのは拷問の積み重ねね。」
そういう意味ではあの人も『保身のために悪逆皇帝に着いた』などというレッテルは着くだろう。ノエルはシャルル皇帝の暗殺計画の容疑もある以上は現皇帝に使えることで全員の身の安全を図るためには他に手がなかったと考える。
結局、ライルのシャルル皇帝嗜虐計画及び計画未遂の容疑自体も証拠が不充分であったこともあって不問とされた。ゲイリーがレイシェフにはめられた事実を伝え、シルヴィオやエルシリアも証人になっているし、その時の音声記録も提出されている。
でも…場合によっては、あの人がシャルル皇帝の治世を終わらせたのに……だが、その先に待つのは間違いなく混乱だ。そういう意味ではルルーシュの方がよかったのかもしれない。
「やっぱり、あの人って根っこはいい人だけど王様向きじゃなかったのね。」
デビーは引き続き、軍人として活動していた。といっても、ルルーシュに着いた事もあって僻地の基地でデスクワークだ。とはいえ、任務は任務だ。今はブリタニア国内の平定に勤めている。ルルーシュが死んだとはいえまだ国内には栄光を取り戻そうとする貴族達が多い。
それが武力放棄をすれば、また混乱が起こる。それで死ぬのは市民だ………
実家の親族達も協力しようとしているが、デビーは真っ先にそちらを牽制した。上層部にも連絡はしてある……
「やれやれ……あの女がいたら余計ややこしいことになっていたな。」
あの婚約者は貴族制の廃止に反対して処刑されている。なんの感傷も湧かない……元々、他の庶民出身の親衛隊の隊員達を馬鹿にして、地位を鼻にかけていたような女だ。それが今も生きていたらどういう行動に出るのかは想像か着く。
自分の知る限り、あの女はルーカスやライルの母シェールと並び『ノーブル・オブリゲーション』が最も遠い人種だ。
「あの女みたいな勝手な『ノーブル・オブリゲーション』の復活だけは止めないといけないな、同じ貴族として。」
少なくとも、デビーにとってはライルの『ノーブル・オブリゲーション』の方があの女よりずっと高潔に映っていた。彼と比べればどうかは分からないが自分なりにこの時代で出来る『ノーブル・オブリゲーション』を果たさないと。
サラは大学に進み、各国への支援を行う機構への参加を希望していた。自分でも何か出来ることはある。そう、父の不正を告発したような………それとは違う何かを。
本国に帰ってきたみんな、ルルーシュ君とスザク君を悪く言ってる。でも…
サラは少なからず生徒会にいた二人とも交流があり、多少は二人の人革を知っていた。だから、あの後アッシュフォード学園に戻ったカレンや卒業したミレイの…ルルーシュに好意を寄せるシャーリーが二人に好意的な気持ちが分かる。
もしかして、二人ともすすんで悪役を買って出たのではないか?等と時折思う。もしそうなら……二人の友人として自分がすべきことを探したい。
ブリタニアのエリア政策が終わり、超合集国の元で戦争に使われたエネルギーが各地への支援に用いられるようになった。婚約していた頃に、ライルは各国の侵攻に用いる軍事予算や人的資源を各エリアのゲットーや各国との同盟に用いれば良いのにと漏らしていた。
それが一部ではなく、殆どが向けられる。これから、自分も忙しくなる。財閥が解体されたクラウザー家は再出発を図る。自分はそのトップに立たないといけないのだ。父のような不正を親戚達が行えば正さないと。二人のためにも………
「ライル様、貴方は二人を信じていますか?」
涼子は実績を買われて軍需産業に勤めるようになった。今はOSの調整や整備止まりだが、経験の濃度でいえば現場にいた涼子の方が上なので『黒の騎士団』の一部も評価している。しかし、涼子は一つだけ浮いている要素があった。
彼女はランスロット・アルビオンを絶賛した。
『この僅かな戦闘データだけを参照しても、ランスロット・アルビオンは文句のいいようがない素晴らしいKMFです。現行のKMFにおいては一つの到達点にして、次への中継点とするべきKMFです。』
ある会合で軍需産業の幹部や各国の技術者は難色を示すした。しかし……
『そんなくだらない面子で現場の人間の命を預かる武器が造れますか?私達の造る兵器は人の命を奪います、しかしKMFのような兵器は乗る人間の命を預かる物でもあるのです。私は乗る人間の命を預かる立場として、ランスロットを一つの理想としています。そこまでランスロットを否定し、歴史から抹消しようというのならばヴィンセントもウォードも全てデータごと破棄しなさい。フロートシステムもブレイズルミナスもエナジーウィングも全て破棄してください。』
そう、ランスロットのシリーズはあの戦争でKMFの歴史から抹消する意見もあるが、涼子にとっては失笑以外の何物でもない。臭い物には蓋をしろ?
『もしも、シャルル皇帝の世界制覇がなされた後にこの度と同じことがなされたらあなた方はどうする気だったのです?ギャラハッドもトリスタンもパロミデスもモルドレッドもパーシヴァルもフローレンスも、それどころか『ユーロ・ブリタニア』の総帥達の機体も今回のランスロットのようにするおつもりでしたか?それならば、KMFという兵器そのものを抹消しなさい。』
極端だといわれたが、歴史の流れが違えば『ラウンズ』の機体が今のランスロットと同じ状況になっていたのだ。蓋をするのは簡単だが、それでは何の意味もない。ランスロットというKMFが世界のKMFの歴史を前進させたのは揺るぎようがない事実。それさえなかったことにする気か?
技術者として、涼子はそれが許せない。大体ベディヴィエールもランスロットの系列機だ。改良や微調整が主立ったとはいえ涼子にとっては我が子同然。涼子の技術者としての目標は今ひとつある。自分の手で新しいベディヴィエールを造り上げることだ。
仮想敵ではあるが、ランスロット・アルビオンも紅蓮聖天八極式も神虎もE.U.のアレクサンダとやらも一方的にスクラップに出来るような、その上でライルが生きて帰れるような形で。
ヴェルドとコローレは除隊して実家に戻った。最悪の事態だけは回避できており、父達は新たな形で財閥を起こしており、今のところは問題ないそうだ。
「さぁて……俺らはどうするべきか。……ギャンブルでしこたま稼いだ金をどう使うか。」
「金は所詮金だ。どう使うかはこちら次第だ。」
「だな……なあ、ペンドラゴンで親が死んだガキって結構いるよな?」
ヴェルドの問いにコローレは「けっこうなんてものではない。」と答える。
「やっぱな……大将はそうした子らを引き取るつもりらしいが。」
「経験を活かす意味ではSPだが、果たして我々を受け入れてくれるかどうか。」
そこが問題だ。とはいえ、稼いだ金を湯水のように使うのは嫌だ。となれば………
「サラちゃんと同じ職場?」
「各地への支援……それはアリだな。ついでに難民キャンプに美人がいるかもしれないし。」
「お!さすがは兄者!」

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