[38652] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-51『ダモクレス…中編1』 |
- 健 - 2019年10月06日 (日) 23時22分
アヴァロンがダモクレスへ向かった報を受けた『黒の騎士団』はアヴァロンと周囲の部隊に残された戦力を集中している。
その中で、ライルは『セントガーデンズ』の二人と対峙していたが………
パラディンが二機、割って入った。
〈殿下の邪魔はさせないわよ……〉
ノエルが静かに怒り…
〈殿下がヴァリエール郷の仇?お前達が殿下をはめた結末だろうが!〉
幸也は怒りで言葉を荒げていた。
「幸也、ノエル…」
〈殿下……デートの邪魔はさせませんから。〉
ノエルが軽く返し……
「……死ぬなよ。」
〈イエス・ユア・ハイネス。〉
二人が返礼し、ライルはクラリスの元へ向かう。
〈君の経歴は知っている。確か、兄が濡れ衣で投獄された後に父がその犯人を殺したと聞いている。〉
「だから?貴族制に荷担したあんた達に言われると腹立つわ。庶民だから諦めろとでも?貴族だから全てが真実なの?」
〈そうは言わない……私もハーフだからね。君の気持ちは分かる。〉
ハーフ……なるほど、レイのような経験をしてきたということか。
ノエルは平凡な家庭だったが……兄が勤めている会社の貴族に汚職の罪をなすりつけられたのがきっかけで全て崩壊した。
兄は獄中で命を絶ち、父はその貴族を報復で殺した。が、その父も出所後に報復を返されて命を落とし、犯人は逮捕されないどころか正当防衛扱いだ。
母はショックと心労で病死して、ノエルはあっという間にひとりぼっち。親戚は良心の財産の殆どをノエルから奪った。
『犯罪者のものをどうしようが自由。』
肉親に対してさえだ……周りはノエルを罵倒し、何をしてもノエルが犯人。
ノエルの中では怒りと憎しみが渦巻いた。だが、それ以上に改革の意識を芽生えさせた。
上に立つものが何をしても良いというあり方を変えねば、同じことが繰り返されると。
そのためには、軍で実績を上げるのが一番だった。幸い、ノエルの保護者をしていた親族はいて彼らは了承した。もっとも、ノエルは彼らを信じておらず、『犯罪者の娘が死のうとどうでも良い』などと思っていると疑っていた。
それなりの成績は残したという自負もあり、KMFに乗るのを許されたのがその証拠だと思う。が、出撃は殆ど出来なかった。搭乗機さえなしだ。上の陰謀なのは一目瞭然だ。
『ブラック・リベリオン』で強引にサザーランドに乗り込んで、実績を上げた。その後、ライルの親衛隊に編入されたが厄介払いなのはわかりきっていた。どうせこの男も『犯罪者の娘ならばさっさと捨て石にする』、または『身体を持って忠実なのを証明しろ』などと言うと思っていた。
しかし、ライルはそういう要求を一切せずに一介の騎士として接してくれた。捨て石も身体も要求することをしなかった。
「貴族なんてみんな同じ、って決めつけた私にとってあの人は信じても良いって思った相手なの。」
〈私もだ…ヴァリエール郷は私を色眼鏡で見ることなく評価してくれた。家柄しか能のない貴族共とは大違いだった。〉
彼の部下達の一部は色眼鏡で見てきたが、ゲイリーやホーネット兄弟はそうしたこともなく、ナンバーズや同じ庶民の同僚達ともそこそこの関係を築くことが出来た。
誘拐された時も………ライルはあまりにも無茶な方法で助けに来た。有紗や優衣がいたのだから無理もないだろうが。
その後、ギャラハッドの量産試作機であるパラディンの搭乗を任された時は嬉しかった。『犯罪者の娘』である自分をそれだけ信頼してくれたのだから。
「イレヴンや犯罪者の娘がヴァルトシュタイン郷の機体に乗ろうなどと身の程知らずな!」
と文句を言ってきた貴族がいたが、ライルは模擬戦で幸也とノエルの実力を証明した。
「不正を使った」など、敗北を認めない者がいたがライルは堂々と言った。
「人種や爵位なんて戦場では何の役にも立たない!!そんなものでKMFに乗れるのか!?自分が出来ないことをそんなことで正当化するな!!それを振りかざすものなど、私の部下にいらぬ!!」
少しずつ……思い始めた。この人ならブリタニアを、世界を変えられると。
「そんな風に、信頼し始めた先にあれよ。腸が煮えくりかえっているの。」
〈そうか……私も貴族制などどうでも良いのだが。君はそうはいかないのだな?〉
「ええ……関係ないわ。貴族制側に着いた時点であんたは私にとって敵だし、殿下をはめた張本人達。殺すのにこれ以上の動機はいらないわ。」
〈道理だな。〉
二機は互いに剣を交えた。
幸也とイロナはにらみ合っていた。
〈お父さんの仇……お前も同じだ。〉
「父親の仇…?」
〈ヴァリエール郷よ……皇帝のギアスであの人の娘だと忘れさせられていたのよ。〉
皇帝……おそらくシャルル・ジ・ブリタニアの方だろう。
「なるほど、正に殿下は親の仇か。だが、俺にとってもブリタニアは父親の仇だ。」
〈じゃあ、なんでブリタニアに着いたのよ?〉
何故?決まっている。
「クズを殺すためだ。自分を正義だというクズ共を根絶やしにするには、力のある方に着くのが道理だろう?」
〈そのために、日本を裏切るの?〉
「裏切る?違うな、向こうが裏切ったんだ。戦争が終わってすぐに、母さんと姉さんは日本軍人に殺され、それを正義と言った。父さんの時も同じだ。」
そう……どいつもこいつもその場の欲望を満たすのを正義だと言った。戦後のレジスタンスを名乗る者達も正義を名乗る。
正義を名乗るもの全てを幸也は憎んだ。殺し尽くす力を……そのためならば、喜んで悪になる。
〈じゃあ、あの男は復讐の道具?〉
「ああ…奴らと同類ならばその場で殺すことも考えた。だが、あの方は今まで俺が殺してきた奴らとは違う。」
ライルは、己を悪と律していた。ナンバーズのためになる政策をしているにも関わらず……そして、戦いの快楽に呑まれる自分に葛藤していた。
「同族殺しに負い目を感じるお人好しだ……素直に連中みたいに振る舞えば楽なのに。」
それをしようともせず、エリア24でもマリーベルとルーカスの虐殺を止められなかった。
行く先々でいつも、無理ばかりしている。ゼロのように『正義』を名乗らずに悪と意識している。あの時も……レイシェフについて良かったはずだ。死んだ兄妹達や、フェリクスとセヴィーナに謝れたのに。
「俺達の家族を理由に断った人だ…!それをあそこまで傷つけた、お前達が憎い!」
初めてだ……生きている誰かのために憎んだなど。父を殺したブリタニア兵は別の戦場で死に、母と姉を殺した連中はこの前引導を渡した。
いずれも死んだ人のためにだ………しかし、今はライルと……そして。
セルフィーに好きと言うまでは死ねるか!!
生きる意味を見出した。復讐以外の……ありきたりだが、それでも良いはずだ。
「だから、俺は生きて帰る!そして、殿下の騎士として戦うんだ!!」
〈そう……じゃあ、私がそれを終わらせてあげるわ。〉
藺喂はライルを見つけた。間違いなくベディヴィエールだ。
「会いたかったぞ、ライル!!」
槍を突き出すが、ベディヴィエールも短槍を連結させて双刃の槍として受け止める。
〈藺喂!〉
「デート中に悪いな!ここからは私がテイクアウトさせて貰うぞ!!」
〈ダブルブッキングになるスケジュールを組む趣味はないんだがな!!〉
二機は槍で互いにつばぜり合い、一歩も譲らない。KMFによる槍術戦ならばほぼ互角であった。
〈やるな…〉
「そちらこそ、さすがは『ブリタニアの狂戦士』…と言いたいところだが、こんな器用な狂戦士がいてたまるか。異名を変えたらどうだ?」
〈…『洗脳皇子』?〉
「それは私が嫌だ。」
ハーケンを展開し、神虎と同じように高速回転するが剣に持ち替えてそれを後退しながら受け流していく。いや、剣の方がパワーで勝り、ハーケンが傷ついた。
楽しい……戦いに快楽を…否、純粋な力量を競い合う戦い。本人は気付いていないようだが、何度も手合わせした藺喂だから分かる。ライルは星刻より上だ。
例え星刻があの身体でなかろうと間違いなくライルが勝つ。だが、だからこそ勝ちたい。
剣を抜いて脇を狙うが、腰のハーケンではじかれた。
実戦経験ではやはり、向こうが上か!
小細工で勝てる相手ではない。ならば、一気に決める。再び距離を置いて槍を最高速度で突き出す。
が、ベディヴィエールは槍を持ったままそれを躱し、槍の柄で両腕をたたきつけた。バランスを崩した隙を突かれ、そのまま右腕ごと翼を切り落とされ、ハーケンで追い打ちをかけられた。
「っ、私の負けか。」
不思議だ……女として会いたい衝動に駆られていたのに、いつの間にか戦士としてのあり方に拘っていた。
〈……私の部下なら投降しても殺されることはない。〉
悪くない……負け方だ。が、女であることも戦士であることも取ろうとするあのフランスの女が少し羨ましかった。
ゼラートとクラリスは一歩も譲らなかった。機体性能で負けているのを熟知しているゼラートは一歩引いたスタンスを通し続けており、クラリスの攻撃を受け流し続けていた。
「女を焦らすのが上手なのね。」
〈やたらと待たせる趣味はないが?〉
シールドのクローでローランを狙うが、シールドでクローを躱すローラン。その隙を突いてローランも右腕のルミナスコーンを展開して斬りかかる。
それに対してアルプトラウムは両手の剣で受け止め、更に機体のパワーを利用して逆に後ろへ飛ばす。
「本当に良い腕ね!」
飛ばされたところへ砲撃が来るが、それを難なく躱して逆にハドロン砲を撃ち返し、今度はそれをシールドで止められる。
〈お前こそ!その腕を飼い殺しにした連中は愚かだな!〉
二機が互いに一歩も譲らない。あの時見た、ランスロットとギャラハッドみたいだ。
が、ウェンディはそれを見ているしか出来ない自分が歯がゆかった。ゼラートから乗り継いだシュテルンも高性能だが、紅蓮やローラン……ベディヴィエールには太刀打ちできない。パイロットの技量もクラリスやカレンには到底適わない。
だから、出来るのは彼の戦いの邪魔をしない露払い程度だ。今、『黒の騎士団』のKMF隊がアルプトラウムを狙うが、シュテルンの剣で三機を真っ二つにする。
イロナも迎撃しているが、今は彼女の心配をするようにとも言われている。
〈どんどんこい……殺してやる。〉
アサドとアレクシアを失ったのが更に追い打ちをかけているのか、既にイロナは妄執で動いている。
「イロナ……お姉さんの復讐は止めないけど、まず自分の命を大事にね。私も中佐もこれ以上死なれるのは嫌なの。」
そう言われたのが効いたのか、イロナは少し落ち着きを取り戻した。
ホッと胸をなで下ろして、すぐさま暁を剣で両断した。熟練のパイロットは一目で無駄がない動きだと賞賛するほど鮮やかに……
ラルフはフレイヤが発射され続ける様子を見て、手錠が着けられたまま拳を握りしめた。
扇さん………こんなものを使って取り戻した日本に価値があると思うんですか!?
斬利もまた、ラルフと同じことを考えていた。
くそ……やはりシュナイゼルと組むべきではなかった。いや、そもそもゼロがいない時点でシュナイゼルにとって我々は取るに足らない相手なんだ!
そこも想定した上で星刻や神楽耶様不在を狙って!
もし、この考え通りならばゼロことルルーシュが即位したことまでは分からないが、それ以外は奴のシナリオ通りということに!!
これでは、どちらが勝っても世界は終わりだ。
我々は……始めから、奴の敷いたレールの上を走らされていたのか!
ゼラートとクラリスは一歩も譲らなかった。機体性能ではローランが遙かに上だ。が、ゼラートはそれを念頭に置いた戦い方をしている。
「お前は何故、そちらに着いた?ライルに惚れているのならば、部隊ごとでも何でも寝返れば良いであろう!」
ハーケンを躱したローランがハドロン砲で応戦し、後ろにいたウォードを撃墜する。
〈貴方こそ、何故今ブリタニアに戻ったの?貴族制が廃止されたのなら、実家の爵位は無効。とても特例として家名と爵位を存続させてくれるから……という風には思えないけど?〉
鋭い……流石に自分が家柄しか頭にないような親を見てきたから、真逆のライルや自分をよく見ているということなのだろう。
ハドロン砲を躱し、剣を抜いて斬りかかる。
「皇帝ルルーシュへの個人的な興味………からだが、初めて仕えたいと願った相手があの方だった。といえば良いか?」
剣を受け止めたクラリスは少し意外だった。忠誠心というものに縁がないという意味では彼は正規軍の連中以上だと思っていた。だが、今はゼロとして反旗を翻したと思いきや皇帝となったあの男に使えることを望むとは。
「貴方にとって、彼はそれだけ興味深い相手だったということ?」
〈ああ、そうだ。〉
なるほど……ある意味、一人の皇族に関心を抱いたという意味では。
「一人の皇族に惚れ込んだという意味では私達、同じ穴の狢かしら?」
〈そういうことにしておこうか!〉
二機は再び距離を置き、一気に突進した。そして、二機がすれ違った時には………
アルプトラウムだけが左腕とフロートを失った。クラリスは攻撃の手を緩めずにハーケンで頭と足を破壊した。
これで視界も奪われたことになる。
「じゃあね……」
ローランは全速力でライルを追っていった。振り返る間際、シュテルンと最後のデメルングがアルプトラウムに向かっていくのが見えた。デメルングのパイロットは分からないが、シュテルンはおそらく彼女だろう。
羨ましいわ……あそこまで尽くせる男がいて。

|
|