[38645] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-50『フレイヤ…後編1』 |
- 健 - 2019年09月06日 (金) 00時11分
紅蓮聖天八極式のカレンはアヴァロンを目指していた。ルルーシュを倒せば、この戦いの全てが終わる!!
それが、自分の役目!けじめの付け方!!
目の前に出現した機体……実物を見るのは初めてで、画像と違うが分かる。第八皇子ライルのベディヴィエール。
「邪魔するんじゃないわよ!!」
輻射波動砲を撃つが、ベディヴィエールはシールドを展開して砲撃を反らしながら右腕の槍を突き出す。
〈邪魔をするなはこちらの台詞だ!〉
MVSで槍を受け止め、そのまま引き寄せる前にベディヴィエールは引っ張ろうとせずに逆に突っ込んだ。
機体のパワーではこちらが上だ。それを逆手に!?
右腕の輻射波動で直接相手を焼こうとするが、今度は左腕のクローがルミナスコーンを展開して阻んだ。『ナイトオブテン』のパーシヴァルのルミナスコーンさえ紅蓮のMVSに適わなかった。だが……この機体のルミナスコーンは耐えている。そればかりか、逆に輻射波動放出の外である手首をクローで止められた。
「紅蓮と同等のスペック!?」
〈能力が分からない相手にも挑まねばならない時はある。だが……そんな相手にごり押しでかかるモノではない!!〉
両腕を事実上封じられた紅蓮、ベディヴィエールが胸のハドロン砲を撃とうとする。
このままではやられる!!すぐさま、カレンは相手を蹴り飛ばした。
「あんたより先にルルーシュよ!!」
恭順派から根強い支持を得て……あの川村雛と、自分と全く同じで逆の道を選んだレイ・コウガ・スレイダーの主君。
彼の部下達のことを少し聞いた………ライルと初めて遭遇したヨコスカのオークション商品だった子がライルの専属侍女で現役の日本軍人やあの畑方源流の孫、家族をブリタニアと日本の両方に奪われた少年。
彼らはカレンの信じるものを根本から否定する者達だった。その存在自体が……根本から覆し、絶対に通じなかった。
少し前の私なら、あの男が操っているって決めつけていた。
扇や藤堂は違うが、玉城あたりはまだライルもルルーシュと同じ能力、ギアスで操っていると疑っている。ギアスなら、確かに嘘の記憶を吹き込むことだって出来るかもしれないが………
川村雛の自分の存在を真っ向から否定する憎悪と火傷……ハーフであるトラウマで両方を憎んで、それを受け入れてくれたライルを愛しているレイ。少なくとも、あの二人がカレンにとってはライルがギアス能力者ではないという証拠だ。
お兄ちゃんもお母さんも戦争で死んでいたら、私もああなっていたかもしれない。もっと酷ければ、私もレイみたいになった。
だから、ギアスだと決めつけたりはしない。それでも………ルルーシュに着くのなら倒す!!
「藤堂中佐!」
長野のガンリュウが藤堂の機体、斬月を見つけた。
〈長野!〉
「中佐、何故貴方があのような大量破壊兵器による平和を支持するのですか!?」
長野が知る限り、藤堂ほど偉大で誇り高い日本軍人はいない。『厳島の奇跡』がどのようなものかを誰よりも自覚している。それだけでも偉大だった。
〈お前こそ、君子さんや絵里君を捨てたか!?〉
「二人には全て話しました!!それとも、主君も家族も捨てて私一人だけあなた達に着けとおっしゃるか!!」
あの状況でルルーシュを裏切れば、どうなるかなど長野はすぐに想像できた。それが分からない藤堂ではあるまい。
「例え、ブリタニアに支配された世界でも……私は家族と共に生きる!そして、我が君の未来も守る!」
長野にとってライルは『日本解放戦線』の片瀬など取るに足らない雑兵……そう思わせるほどに偉大な主君だった。最初は敵国の皇子、というわだかまりはあった。だが………敵国の軍人である自分を高い地位で取り立て、信頼してくれた。『ブラック・リベリオン』後の家族の監視はライル自ら、後から謝罪するほどに不本意であることが分かった。
家族に会う機会や、電話をする機会も計らってくれたし……実績次第でブリタニア国籍の日本人として暮らせる便宜も図っていた。そこまで信頼してくれたのだ………敵国軍人である自分を。
「これだけ家族のために計らってくれるお方を裏切れるか!!私の動機を、独立の前には道を歩けば踏んでいる蟻程度にしか見ないお前達とは違う!まして、妻と娘にも戦いを押しつける貴様らなどと、雲泥の差だ!!」
刀で藤堂の機体を蹴り飛ばし、ハーケンで潰そうとするが斬月は輻射障壁で躱し、離脱していった。
「ちっ!」
藤堂は今度は一機のヴィンセントを見つけた。青と金のツートンだが、背中から日本の小太刀を抜いた。
〈藤堂さん!〉
「その声……良二君!?」
〈ええ、そうです!見損ないました……貴方がフレイヤを認めるなんて!〉
良二の声には憤りがあった。尊敬する師への失望………
「私は、我々はシュナイゼルのやり方を認めたわけではない!」
制動刀でヴィンセントの小太刀を押し返すが、良二の機体は通常のスペック以上の機動力でその反動を最小限に抑えた。
〈言い訳だ!シュナイゼル殿下と組んだ時点で、あんたはフレイヤの恐怖政治を認めたんだ!!〉
「ならば、貴様はどうだ!枢木と同じく位にのみ固執するのか!?」
〈スザクが何を求めているのかは俺にも分からない!だが、だからといって友達というスタンスだけは崩さない!!そこはあんたでも譲らない!!殿下への忠誠も!!〉
友達……スザクと仲が良いのは分かっていたが、この期に及んでまだそのスタンスを崩さない?
「現状に甘んじるだけの腑抜けが!貴様のそれは自分への言い訳だ、小僧!!」
〈現状に甘んじているのはお前もだろうが!もう、お前も俺やスザクと同じだ!!自分のしたいことのために侵略者に従っている、『同じ穴の狢』だ!!〉
浅海は猪武者のように突っ込んでくるグロースターをアラドヴァルで串刺しにして、ベディヴィエールを探すが見当たらない。今度はガレスがミサイルを撃つが、シールドでそれを受け止めてハーケンでコクピットを潰した。
「ゼロがギアスで操っているの?でも……今の私達も同じね。」
シュナイゼルの人形に成りはてた自分達。どこが違うのだろうか?ルルーシュはギアスで、シュナイゼルは各国代表を人質にして操っている。
そこへ、モーナットが現れた。
「か、海棠大佐?」
〈その通り!〉
二本の剣でモーナットはソレイユに斬りかかり、槍でそれを受け止める。
「な、なんで貴方が!?」
〈ウチの子達と部下の生活と命の保証!次に、バルディーニ将軍や藤堂に聞きたいことがある!機械の恐怖政治より人の独裁政治!以上三点が理由!分かっていただけた?〉
三点、その三つだけで浅海は納得してしまった。この人らしいと……
振る舞いは只の風来坊や軽薄な中年だ。しかし、見ているものは鋭い……軍人として、民の生活や命が保証されるのならば侵略者に従うことも厭わない。軍人だからこそ、国土や国の尊厳よりも国民の命や生活を守るべきと考える。藤堂とは真逆の価値観……
そして、何より戦争で保護した子供達。大半が浅海より年上だが、彼らと海棠の繋がりは強い。実の親子以上に親子で、羨ましいと思ったことさえある。
そして、機械より人による独裁。個人のあり方を尊ぶ海棠なら選んでもおかしくない。そんな気もした。
〈だからまあ、君に用はないからどいてちょうだいよ!!〉
モーナットはソレイユを押し切り、更にスカイブルーに塗られた暁直参仕様が撃ってきた。
「橋本さん、セーラさん?」
〈ああ…〉
〈そういうことだから、悪く思わないでね。〉
シールドで防いだが、それっきり。三機は離れていった。
「どこよ……どこにいるのよ、クソ女!!」
雛はオールレンジボマーで暁をなぎ払い、剣を航空艦のブリッジに刺した。爆発し、中の人間が落下していく。
が、今の雛はそんな物を見て笑う気などない。笑うのは、あのクソ女とガキとペテン師共を血祭りに上げてからだ。クソ女はさっきまでライルとやり合っていたのに、見失ってしまった。
「邪魔よ!」
ハンドガンで暁の腕を破壊し、コクピットハッチをこじ開けた。パイロットはおびえている。
「死ぬのが大好きなんだろうが……喜べってんだよ!!」
今度は手の平でパイロットを潰し、無人の暁はその場で落とした。
〈おのれ、売国奴が!!〉
『四聖剣』の最後の一人、千葉の暁直参仕様が刀で斬りかかる。が、雛はそれをシールドで受け止めた。
「あんたなんか、お呼びじゃないのよ!!」
パワーで機体を押し返し、頭をつかんで投げて、ハドロンバズーカを撃った。エネルギーの奔流は暁からそれた。躱されたのだ……しかし、一隻の航空艦と三機ほどKMFを葬った。
「魔物共……将軍様の御孫様が来てやったぞ。俺に殺されて喜べ!栄誉なんだからな!!!」
日本のために戦うのが使命だ、栄誉だ等とほざいておいて自分達は矢面に立たない。そんなイレヴン共もいた。そればかり見れば、育つのは憎悪だけだ。
「さあ、出てこいよ藤堂!『奇跡の軍人』様よぉ!!」
ハルバードで暁を両断し、ヴァリスをハドロンモードにして四機の暁を撃墜する。
〈畑方将軍の名を汚す、恥さらしめ!!〉
「はあ?寝言抜かすんじゃねえ……」
斬りかかってきた鳴月をルミナスソードで串刺しにして、その機体をそのまま放り投げた。
エルシリアとセラフィナも見事な連携で『黒の騎士団』のKMF隊を寄せ付けない。だが、アヴァロンは徐々に追い込まれていく。
ここで斑鳩がハドロン重砲を展開した。
「ライル!斑鳩が砲撃する!!」
〈狙いはアヴァロンの両翼です!!〉
セラフィナが伝えてすぐにライルのKMF隊は距離を置いた。
「『黒の騎士団』………!素人集団とはいえ、ここまで育て上げられたか。」
指揮官がゼロに引けをとらないシュナイゼルであるのを差し引いても、只の素人上がり共がここまで成長するとは。
ウィンスレットもこれを見て、ルルーシュがいかに優れた指導者であるのかを理解した。もしかしたら、組織を育て上げたルルーシュ自身もここまで手強い相手になるとは思っていなかったかもしれない。
クラリスはローラン・ファタリテの機動力でブリタニア軍をくぐり抜けながらベディヴィエールを狙った。が………
「下からエネルギー反応!?」
まずい!!
「富士山の火口から離れて!!」
ゼラートは航空艦を撃ち落として、気づいた。
「ここでやるか、やはり!!」
池田は気づいた……やはり、ゼロは用意していたか。この戦力差を覆す手段を。
「ゲイリー!全方位でシールド展開!!エナジーなどお構いなしだ!!」
両翼の戦力を崩されれば、アヴァロンは孤立する。そうなれば、負けるのは明白。
それを回避するには、確かにこれしかない。

|
|