[38608] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-47『復讐と贖罪…後編1』 |
- 健 - 2019年07月22日 (月) 22時50分
ライルは今度はゼラート達がルルーシュに着くと公言し、いったんルルーシュにつないだ。
〈なぜ、お前の捕虜達が俺に加わると?〉
「………ルーカスが囲っていた女性の中に、捕虜となったE.U.軍兵士の親族がいたんだ。その兵士が私や君と同じくらいの少女で…姉の精神的な治療をしてほしく、治療費代わりに君の下で働きたいと言っている。他はおそらく、その子への引率……というよりも、彼らなりに思うところがあるのだろう。」
〈随分と正直に話すな……〉
「無い頭を作って下手に取り繕っても意味が無いと思っただけだよ……それでどう思う?正直、指揮官の男も内側から切り崩すという策を使うタイプには見えない。」
〈確かに……E.U.ならまだ分からないがブリタニア軍では………な。〉
実際、ルルーシュ皇帝即位の混乱があるとはいえE.U.は敵対国であることに変わりは無い。それがたかだか一部隊が潜り込んで内側から切り崩せる相手ではない。
「それと………あまり意味が無い情報だと思うが指揮官は父の即位からまもなく起きた…そう、『ラウンズ』だったマリアンヌ様が父に見初められた『血の紋章事件』で粛正されたゴルドシュミット家の息子だ。貴族制が解体された今、復帰を求めるのは実利的でないし論理的でもないはず…………ルルーシュ、どうする?」
ルルーシュが数秒うなる……そして…
「良いだろう……我が覇道に与する者は人種や身分を問わず、受け入れる。それが私の皇帝としてのあり方だ。ルーカスの女達で重傷と判断した者はペンドラゴンへ移送しろ。」
つまり、従えば恩恵を…刃向かえば死………これまでのブリタニアとそこは同じだ。
ルルーシュ……いったい、なぜ今君が皇帝になったんだ?ゼロになって、ブリタニアと戦争をしたのに。それだけで、ルルーシュの中であの男………そしてブリタニアへの憎しみが大きいはずなのに。
ナナリーが死んだから、全てを支配してその喪失感を埋めたいとでもいうのか?それとも他に狙いが?
歴代皇帝陵の破壊を敢行したルルーシュ……これに対しても皇族達は支持をしており、ライルより一泊遅れてマリーベルまでもがスペインの名を取り戻したエリア24もろともその傘下に入った。それに合わせて『大グリンダ騎士団』はE.U.残存国を初めとするヨーロッパ方面への侵攻を担当することになった。
「国の縮小寄りの動きを見せているルルーシュに軍拡志向のマリーベルが同調?」
エルシリアは二人の動向に困惑し、読むことができなかった。ルルーシュが父を殺した件については動機は察しがつく。だが、即位については理由がないから反発を買うはず……にもかかわらずオデュッセウスらはルルーシュの政策を全て盲目的に支持している。
「少なくとも……ギアスという能力でオデュッセウス兄さん達が操られているのは間違いないけど…………超合集国だって時間がたてばルルーシュを疑うはずですよね?」
「ああ……しかし、シュナイゼル兄上もこの期に及んで動きがないとは………」
そこで、突然別の画像がモニターに入った。映像では二機のKMFが対峙していた。
「ランスロット?エナジーウィング搭載型……」
「相手は……ギャラハッド…………ビスマルクだと?」
ランスロットはエナジーウィングを搭載しているだけあって圧倒的な機動力だ。しかし、ギャラハッドは流石にビスマルクが操縦するだけあって、見事な操縦で翻弄している。
まるで、動きを呼んでいるようだ。
クラリスもそれを見て、圧倒される。流石『ナイトオブワン』だ。多少の性能差などものともしていない。
「ローラン・ファタリテでも勝つのは難しいわね……ん?」
突然、ランスロットの挙動が変わった。コレまで、どちらかと言えば直線的だった動きがめまぐるしく動くようになった。
「何……機体性能?それとも…別の何か?」
攻守が逆転し、ギャラハッドが翻弄される側になった。ランスロットが正面から切り込み、ギャラハッドが迎え撃つ。
二機は交差し………ギャラハッドがエクスカリバーごと真っ二つにされた。
「ビスマルクが…負けた?」
同時に、クラリスはアレに勝てるか?と問われれば即答できなかった。
ローランはエナジーウィングの他機種転用を目的にローラン・ファタリテに改修された。一度試運転を行ったが、浅海のソレイユとデルクのメリサンドを全く寄せ付けなかった。
しかし…それでも、あのランスロットと敗れたとはいえ先ほどのギャラハッドと戦えば勝てるか?
流石に、アレに勝つ自信は無いわね……相討ちに持って行ければ上出来かも。
ビスマルクが討たれた直後、ルルーシュは超合衆国への加盟を表明した。その交渉にスザクを初めとした軍人達を立ち会わせないと表明している。ただし、交渉の場は中立地帯となっているアッシュフォード学園を指定してきた。
「ルルーシュ君……どうして、わざわざアッシュフォード学園を?」
サラは元学友の即位にも困惑していたが、その暴虐やアッシュフォード学園を交渉の場に指定した意図も分からなかった。
貴族制の廃止によってクラウザー家も特権の数々を失った。只でさえ、父が行った不正が原因で力が衰えたクラウザー家全体にとっては受け入れがたかった。だが……当主であるサラが緩やかな解体と今後の身の振り方を皇帝と交渉する、と説得して一時的にではあるが反乱は抑えられた。
ルルーシュ君……何が貴方をそんな暴君にしたの?
シルヴィオはゼラートを睨み付けていた。
「何だ?」
「………ルルーシュに着く前に、お前と勝負をつけたい。もし私に勝てなければ、お前をルルーシュの部下…否、ブリタニアの兵として認めない。」
この男の実力はシルヴィオ自身が一番よく分かっている。人格はまだ分からないが、すぐに信用できる訳ではない。だが……勝負を白黒つけないまま、もし死なれたらシルヴィオにとっては勝ち逃げ同然だ。
信用という意味でも、自分に勝てるならばルルーシュの元へ行かせる。それがシルヴィオなりの譲歩だった。
「勝ち逃げを許さない、か?更にお前に勝てば信用してやるとは……『侍皇子』の異名通り勝負に熱いようだな。」
「お前が熱くさせたんだ……で、返事は?」
ゼラートもふっと笑った。
「良いさ………皇帝に刃向かう恐れのある芽を摘むためにお前を捕らえる。」
「なるほど……それで大義名分は立った訳だ。」
木宮は呆れていた。だが、同時にほほえましかった。
「あの子があんなに熱くなるなんて……珍しいわね。」
シルヴィオは武術に関しては熱心で、己を磨くことを欠かさなかった。だが…なまじ強すぎるからか『ラウンズ』ぐらいしか彼が本気で手合わせしたい相手がいなかった。コーネリアやライルは姉弟故に抵抗を感じていたのかもしれない……無意識で。
海棠はエルシリア軍の兵士から情勢を聞いた。
「本当に馬鹿正直に加盟するのかな?あんたはどう思う?」
見張りに聞くと……
「いや……貴族制や財閥の解体が超合集国に対して敵意が無いという証明、のつもりなのかもしれないと思うが。」
「ううん……貴族制やエリア制度の廃止が良い皇帝に見えるってのは分かるんだが………くそ、実際の報道やら見てないから判断できない。」
子供達も同じ意見なのか、ため息をついた。
捕虜として収監されているラルフは複雑だった。『黒の騎士団』とゼロならば貴族が権力を振るって、庶民を食いつぶす世界を変えられると考えた。だが……『黒の騎士団』は弱体化してしまった。他でもない、ゼロ自身が放置した爆弾の導火線にシュナイゼルが火をつける形で。
ゼロの非は大きすぎる……だが、扇達も急ぎすぎたという見解だけはラルフは変えられなかった。が……今はそれどころではない。
ゼロ自身が皇帝に……いったい、どうなるんだ?
もはや、事態はラルフの想像を超えてしまっている。超合集国への加盟……捨てられ、ゼロとなった皇子が皇帝に即位して自分を追放した超合集国と『黒の騎士団』への仲間入り?まさか……内側から合法的に組織を取り返す?
でも……それだけのためにこれだけのことをする意味は………
「無いよな……」
考えるだけでも考える海棠は、今考えた可能性を自分で却下した。手間がかかりすぎるしブリタニアが超合集国に加盟すると聞いて、代表や扇達が馬鹿正直にそれを受け入れるはずがない。
ってことは……やっぱ裏があるのか?
シルヴィオとゼラートの果たし合いはルルーシュが日本へ向かう頃に行われることとなった。シルヴィオが勝てば不合格として、捕虜のまま拘留。ゼラートが勝てばシルヴィオ軍はライルの監視下に置かれることとなった。
ゼラートにとっては、勝てばもう一度ゼロと直接話す機会が得られるし、イロナの姉の治療の機会を得られる。シルヴィオにとっても勝つという形でルルーシュに一定の忠義立てをすれば、しばらくは安全だ。特に……ミルカと木宮は。
だが、同時に枢木スザクや紅月カレンと刃を交える機会がある。そんな欲求さえあった。

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