[38429] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-37『向けられた刃…中編』 |
- 健 - 2019年02月03日 (日) 00時40分
ライルは我が目を疑った。何故?フェリクスとセヴィーナが?
「何を考えている?退くんだろう?」
〈ええ、だからですよ。〉
だから?相手は『セントガーデンズ』だ。離反した者達も含めれば圧倒的に不利だ。
〈引き際は心得ている……早く行け。〉
「な、なんで!セヴィーナ!君は私を殺したいんだろう!?ジュリアが■ぬきっかけを作った私を殺すために私の親衛隊に来たんじゃないのか!?」
モニターでライルが涙を流しているのが映った。ああして泣いている姿を見るのは初めてだ………ジュリアの葬儀の時も、あそこまで泣いていなかった。大方、後で号泣したのだろう。
「…それだが、今さっき興が冷めた。」
〈興…ざめ?〉
「ああ、そんな情けなく泣いている男を殺そうと躍起になっていた自分がバカらしくなった。だから…今この場でお前の部下をやめさせてもらう。好きにやらせてもらうよ。」
〈な…何を言って……まさか■ぬ気か?〉
そうだな……確実に■ぬ。だが……
何となく、分かった。ジュリア…何故、貴女があの男の騎士になると決めたのか。
気付いていたのだろう…彼の優しさ故の脆さに………そして、いつの間にか彼を許していた。いや、最初から憎んでいなかったのかもしれない。そう自分に言い聞かせていただけなのか…
「殿下……早くお下がりを。貴方の無実を信じているんですよ、私は?」
フェリクスは軽く笑い、MVSを構える。
〈あ…だ、駄目だ!戻れ!〉
「聞けませんよ。全機、突撃!!」
レイは涙を堪え、命令を下す。
「ライル様を守りつつ後退!スモークでも何でも目くらましを使って!!」
〈イエス・マイ・ロード!!〉
〈放せ!まだ、フェリクス達が!〉
〈大将、堪えろ!〉
ヴェルドのサラマンドラが砲撃を行い、更に雛のローレンスもハドロンバズーカで『セントガーデンズ』の航空艦を一隻沈める。
〈ここであんたが■んだら、あいつらが本物の犬■になのよ!?〉
砲撃を潜ってきたヴィンセントが一機、斬りかかった。デルヴィーニュ卿だ。
長野のヴィンセントが間に入って刀で受け止める。
〈ほう…この局面でもまだ信じると?〉
〈ちゃんと殿下ご自身にお伺いを立てるまでは信じない、それだけだ!〉
〈早く、その泣き虫を収容しろ!〉
アストラットが他のヴィンセントをハルバードで両断して、ヴァリスをハドロンモードで撃つ。
レイシェフはフェリクスのヴィンセントのMVSを押し返し、ハーケンを撃つ。ヴィンセントはニードルブレイザーでそれをはじき返してハーケンで反撃する。が、レイシェフもブレイズルミナスではじく。
「流石に殿下の親衛隊最古参というだけある。」
良い腕だ。無駄もない。
MVSを二刀流で持ち替えてきて、その剣戟を躱す。脇ではしんがりのグロースターがこちらのウォードをランスで串刺しにして、ガレスもサザーランドを撃墜する。
なるほど………血筋や人種より能力を重んじるライル殿下の方針。正しいな。
『セントガーデンズ』も血筋より能力を優先している。でなければハーフのクレスや身元不明のアリアを部下にするわけがない。
ライルは『戦場で人種や家柄など何の役にも立たない』と常々言っていた。その通りだ………貴族だから絶対に勝てる?絶対に■なない?ナンバーズに負けるわけない?
そんな方程式この世のどこにも存在しない。
だが、この国の貴族共は大半がそれを認めない。否、そもそも理解できていないのかもしれない。
目の前に現れたサザーランドを真っ二つにして、もう一機のヴィンセントに斬りかかる。その機体もMVSで受け止めるが、押し切られる。
「放せ!放せえぇ!!」
ベディヴィエールはユーウェインへ向かおうとするが、テレサとマルセルのヴィンセントが二機がかりで抑え、更に後ろから親衛隊と『フォーリン・ナイツ』の機体がハーケンで引っ張るために迎えない。
何故!何故、僕を!?僕のせいだ!僕が■ねば良いだけなのに!!
ヴィオラは親衛隊のグロースターをランスで粉砕し、ライフルでベディヴィエールを狙うが一般軍のサザーランドに阻まれる。
「あれくらいじゃあ、ホイホイと寝返ったりしないか…」
サザーランドの腕と頭を破壊して脱出に追いやり、ヴィオラは追撃を再開するが、今度はハリファクスがハドロンスピアーを撃ってきた。
すんでの所で躱すが、左腕と左足が破壊されてその余波がコクピットにまで及ぶ。レバーを引いて脱出し、本体が爆散した。
経験という意味では確かにライル軍はブリタニア軍全体で見ても『ラウンズ』やコーネリアの軍に引けを取らない。だが、それは『セントガーデンズ』も同じ。今でこそ本国待機が多いものの、彼らはかつては最前線で戦った猛者達。数で徐々に押されていき、遂にフェリクスとセヴィーナだけになった。
「今からでも降伏しないか?」
〈ここでそうするならこんな選択しませんよ。〉
フェリクスのヴィンセントが斬りかかる。しかし、機体も武器も勝るユーウェインに遂にMVSが折れて、ユーウェインのアロンダイトがヴィンセントを貫いた。
「が…!」
機体諸共身体を貫かれたフェリクスは、ライル軍が大分離れたところまで後退しながら、まだベディヴィエールが収容されていないのが分かった。
ああ……きっと、泣くだろうな。
それから間髪入れずにセヴィーナのヴィンセントも真っ二つにされた。
全く……焼きが回ったな。だが、悪くない。ジュリアと一緒に………のんびり待つとするさ。
■の間際、セヴィーナはライルがどんな人間かを考え…
悪くない、主君だったかもしれない。
「あ、あぁ………うわあああああああああああああああああ!!!!!」
ライルの絶叫が響いた。
「あ…ぁあぁ……ぼ、僕の…僕の…せ、いで…」
ライルは意識を手放した。
「スモーク展開!全軍一斉射撃!!」
アストラット、ハリファクス、ローレンス、ガングランを筆頭にハドロン砲を装備したガレスと艦上にいるグロースターがミサイルを、サザーランドがバズーカを撃つ。
圧倒的な火力とスモークで『セントガーデンズ』は視界を遮られる。
「こちらも随分と手傷を負わされた。追撃はしなくて良い。」
〈イエス・マイ・ロード。〉

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