「いらっしゃいませー」
「こんにちわ、ヒカルさん――今日はどれにしましょうか……」
自動ドアの開く音に反射的に声を出す。客は自然に挨拶すると飲み物の棚へ歩いていく。かしゃりかしゃりと言う音がする。メダロットをつれているのだろう。
「ユヅリ、これ期間限定」
「あ、本当ですね。これにしましょう」
聞いたことのある声だ、と思っていたヒカルはその名前にぎょっとして客とそのメダロットを見た。そしてぱかりと口を開いた。
「ええぇえぇえ?! 何で君が?!」
「何がですか?」
はて、と首をひねるユヅリに彼は「君がコンビニ?!」とその驚きをぶつけた。
ユヅリはその「です・ます」口調や物腰の柔らかさのおかげで言動が上品なイメージがある。いわゆる「世間知らずのお嬢様」に見えるのだろう。……が、実際は一般的な女子学生。ジャンクフードも食べるしコンビニにも行く。
「結構頻繁に来ますけど……ね、ブラックスタッグ」
「ユヅリは紙パックの紅茶が好きだから」
まあ確かに世間知らずに見えるけど、とぽつりと付け加えるブラックスタッグ。
「ここはよく使っているのですが……」
「『よく』どころか毎回そうね」
「え? どこ住んでるんだっけ」
「おみくじ町の、メダロポリスよりのところです」
近辺の地形を思い浮かべてみたヒカルは「あれ?」と首をかしげた。
「意外とここから近い?」
「だからこのコンビニを使っているんですよ」
なるほど、と彼は納得してぽんと手を叩く。
「あ、そうそう、これお願いします」
すっかりぬるくなっちゃいました、とユヅリはグレープティーをカウンターに置いた。
*
なんだか気に入らなくて没。でももったいないのでこっちに。