「薄力粉と上新粉はふるった、と……」
『次はバターを混ぜるようです』
「バターは……もうちょっとかな」
夕弦はアンカーに持っていく差し入れのお菓子作っている途中だった。
いつも使うレシピはパソコン内に保存されており、特に複雑なものでもないのでその場で暗記してこれまで作っていた。そこで今回サードが自分も手伝いを、とデータを読み込み、彼女の横で手順・分量などを言っていく、ということになったのだ。「横」とは言っても水や粉の飛んでこない離れたところで、かつふわふわのタオルの上と言う安全地帯にいるのだが。
『それにしても夕弦様は手先が器用で感心いたします』
すでに出来上がった甘さ控えめのシフォンケーキの横に立って言うサードに夕弦は「ありがとう」とはにかむ。
「あ、そうだ。サード、桐原さんの好きな食べ物って何か分かる?」
『バディのですか。そうですねえ……』
しばし記憶をたどったサードはぽんと手をたたいて言った。
『たこ焼きです』
夕弦は作るのを断念した。
*
サードと一緒に暮らすシリーズ(まだ完成しておらず)の没案。作ったとしても駄目だしされそうですね。桐原さんが「たこ焼きとは地球だ」なんて真面目に言ってたら面白いのですが。