目が覚めたら俺は闇の中にいた。ここは地獄か? ……なら俺ってんだのか。妙にあっけない。
ああでも、月寒さんに最後に投げた言葉があれなんて。
「君は助かる可能性があるから、良いじゃないか別に」
言った後に後悔して、でも謝罪の言葉はすぐに出てこなくて。感情を抑えられないこの自分は、本当嫌いだ。抑えていたらどうなっていたか分かるだろう、なんて正当化して。本当嫌だ。
「来たんだ、君も」
後ろから飛んできた声は聞き覚えのあるものだった。振り返るとそこには西田さんがいた。
「俺達って人を殺してるから、やっぱりこっちなんだよね」
そう言われて今までのことが頭を駆け抜けていく。心臓がじくじくと痛んだ。
「地獄が満員になっちゃうよね」
あはは、と笑う西田さん。そうだ、妹尾や兵藤も来ているのだろうか。月寒さんはんだらどちらにいくのだろう。ここ? それとも上? 上だと良い。人を救ってきたのだから。あれ? でも俺たちも人を護ってきたんじゃないのか? 頭がぐるぐるして気持ち悪い。
「きっと、彼女は天国へいくよ、んだとしても。人を殺すという行為はしてないんだからさ」
そう言われてふと手を見ると、赤黒いもので汚れていた。永遠に自分の罪を目の前にする。それから逃れることはできない。これが地獄なんだろう。
逃げたいと思う前に俺の足は動いていた。やめておきなよ、なんて西田さんの声が聞こえた気がする。
そして、目の前に飛び込んできたのは黒い雲から垂れ下がる、一本の糸。それを無意識につかんでたぐりよせた。いける。
彼女に、少しでも近づくんだ。それで、謝るんだ。それだけで良いから――!
糸につかまってくるやつらはいたけれども、蹴落とした。早く、早く月寒さんに!
その瞬間、糸が無くなった。宙にまう体。咄嗟に天を仰ぐ。
「月寒さん――」
雲の切れ間から見えた月寒さんは笑ってた。良かった。それでいいんだ。笑っていてくれれば。
俺は静まり返る闇に、深く、深く沈んでいった。