ほんとに売れてしまった。しかも物凄い勢いで。「風が来ている」というのは良くあることだが、Ｋ点をはるかに越えて着地が困難なほどの追い風がいま彼女たちに吹いている。
　　前にちょっろっとだけほのめかしたが、自分は以前にPerfumeを生で見ている。
　　それは４年前（５年前？）。テレ東のＣ級ドラマのＡＤだった頃、出演者のＣ級アイドルが出るライブに番宣で行った。渋谷の「O-Crest」。真っ黒な建物で、近くがラブホ街だった印象しかない。
　　普段の衣装を集めたり、小道具の買出しをしたり、撮影場所を仕込んだり、睡眠５分で朝から晩までロケしてた激務に比べたら、すごく楽な仕事だった。ただ会場に行って、出演者がちゃんと番宣をしてくれているか見届ければいいだけ。
　　会場には２０人くらいの男性客。それはとても渋谷とは思えない光景だった。「客すくなっ！」我々がやっていたインディーズのお笑いライブよりも客が少ない。本当は２０人以上いたかもしれないが、「体感人数」は間違いなく２０人以下だった。いつ、ライブ本番が始まったのか、これはリハなのか、分からないくらいの感じだった。
　　出演者は５組ほど。ミスチルとかいわゆる「トップクラス」の音楽にしか興味がなかった自分にとっては、ただいればいいだけとはいえ、それは結構な苦痛な時間だった。「はよ終われ」そう思っていた。
　　何組目かに、女の子３人組が出てきた。ずいぶんと幼い。会場がこれまでで一番盛り上がってる（といっても、２０人くらいね）ことからして、どうやら今回の出演者の中では１番人気らしい。
　　「ふーん」。
　　曲が始まった。

　　後になってわかったことだが、披露された３曲ほどのうちの１曲は、「おいしいレシピ」といった。

　　なんか、曲が無性に耳に残った。

　　それと同時に、こんな会場にはふさわしくないくらいの必死さというか、プロ根性みたいなものがその女の子たちからは伝わってきた。

　　このときになんとなく耳に残った「おいしいレシピ」の印象と、「パフューム」というglobeの曲名に入っていたような単語が記憶の片隅にプリントされた。
　　「なんかこの娘たち、もったいないなぁ･･･」そう思った。なかなか楽しい楽曲をやっているのに、テレビでは一切その名は聞かれず、２０人ほどの客前で必死にパフォーマンスしている。ドラマ出演者のＣ級アイドルが期待を裏切らないダメ音楽っぷりなのに対して、この娘たちに、「陽の目を見る可能性」のようなものを感じた。こんなことをドラマの駆け出しＡＤながら、考えていた。、、、ということは、このとき会場にいた２０人は、ものすごい先見の目を持っていたということか。・・・いや、彼らはそこまで考えてはなかっただろう（笑）。

　　時は過ぎ、2007年。公共広告機構（ＡＣ）のＣＭ。軽快なサウンドが流れてきた。後の（？）「ポリリズム」だ。直感だった。

　　「これ、パフュームじゃん？」

　　右下のテロップを見た。『♪Perfume』
　　「やっぱり！！！」

　　2003年だったかの記憶は、「確か」だった。
　　もう何人組だったかも忘れてたし、顔なんか全然覚えていないどころか見てもいなかったが、「曲の印象」だけが「おいしいレシピ」と「ポリリズム」で一致したのである。
　　「はあ〜やっと売れたんだなぁ。良かったなぁ」。素直にそう思った。同時に、素人ながらあのときに感じた「予感」が間違いでなかったことも少しだけ嬉しかった。
　　これが感動的な（？）Perfumeとの再会。
　　それ以降、勝手な親心なのか、暗黒時代が同じ時期だった共通点からか、なんなのか、すっかりと彼女たちの魅力にハマってしまった。彼女たちが、曲が平凡な通り一辺倒のアイドルだったとしたら、間違いなく思い出すこともなかっただろう。過去の楽曲を掘り起こしてみると、どれも強烈な中毒性を持っているし、売れる要素をたぶんに持っていた。そもそもＴＭネットワークが好きだった自分にはハマる素質は十分にある。
　　曲がいいこともさることながら予想外、もうけもんだったのは、「あ〜ちゃんのキャラ」だ。下手な芸人よりよっぽど面白い。ダウンタウンとのトークも秀逸だった。「笑いを取れる間」を持っている女の子というのは物凄く貴重な、国宝級に大事なことである。それに加えてあの娘の「人間臭さ」が、アイドルとかミュージシャンとかいうこととは別に、無性に気になるという別の側面も持っている。　　
　　すっかりPerfumeを評価することがマイノリティではなくなった今だが、やはり良いものはいつか陽の目を見ないといけないし、そのための努力は報われないといけない。「平成のシンデレラストーリー」として夢の続きをがんばって欲しい。畑違いで何もテレビ的な影響力は直接持たないし、これからも会うことはないと思うけど、影ながらPerfumeを、とくにあ〜ちゃんを応援している。
　　そしてもし、何かの間違いでウチの番組に生出演するようなことがあれば、本来の仕事では全くないが、諸手を挙げてフロアを志願するし、普段出さないカンペも出したいと思う。そう、「あ〜ちゃん、暴走してもいいけんね」というカンペ（笑）。
　　来るかなぁ、Perfume･･･。報道番組に。

　　業界内でも「Perfumeいつか売れると思ってた」という声、続発！周りで話をしていても、少なからず同じような声が聞かれる。いまだかつて、ここまで業界内で期待されたアイドルがいただろうか。
　　ぶっちゃけハロープロジェクトとかアキバ数字とか本当、どうでもいいのだが、Perfumeだけは一時期の（それこそ）SPEED並に高い位置に到達しなければならない。
　　ひとえに中田ヤスタカ氏の楽曲の面白さと、あ〜ちゃんの天性の人柄があるのだと思うが、それが評価されるまでには相当の時間がかかってしまったのは、我々「業界人」の責任もあるのだろう。もっと早く注目しても良かったはず。
　　やはり良いものは良い、いつかは報われないといけない。
　　しつこいようだが、あ〜ちゃんほど笑いの才能を持って生まれた女子というのは、お笑い界や巷を見渡してもそうはいないだろう。