投稿日:2007年04月15日 (日) 20時28分
|
俳諧七部集の内 猿蓑 夏の月の巻
市中は物のにほひや夏の月 凡兆 あつしあつしと門々の声 芭蕉 二番草取りも果さず穂に出て 去来 灰うちたたくうるめ一枚 兆 此筋は銀も身しらず不自由さよ 蕉 ただとひやうしに長き脇指 来 草叢に蛙怖がる夕まぐれ 兆 蕗の芽とりに行燈ゆりけす 蕉 道心のおこりは花のつぼむ時 来 能登の七尾の冬は住うき 兆 魚の骨しはぶる迄の老を見て 蕉 待人入れし小御門の鎰 来 立かかり屏風を倒す女子ども 兆 湯殿は竹の簀子侘しき 蕉 茴香の実を吹落す夕嵐 来 僧やや寒く寺にかへるか 兆 さる引きの猿と世を経る秋の月 蕉 年に一斗の地子はかる也 来 五六本生木つけたる潴 兆 足袋ふみよごす黒ぼこの道 蕉 追たてて早き御馬の刀持 来 丁稚が荷なう水こぼしたり 兆 戸障子もむしろ囲いの売り屋敷 蕉 てんじやう守りいつか色づく 来 こそこそと草鞋を作る月夜さし 兆 蚤をふるいに起きし初秋 蕉 そのままにころび落たる枡落 来 ゆがみて蓋のあはぬ半櫃 兆 草庵に暫く居ては打やぶり 蕉 いのち嬉しき撰集の沙汰 来 さまざまに品替りたる恋をして 兆 浮き世の果は皆小町なり 蕉 なに故ぞ粥すするにも涙ぐみ 来 御留主となれば広き板敷 兆 手のひらに虱這はする花のかげ 蕉 霞うごかぬ昼のねむたさ 来
|
|