投稿日：2012年02月15日 (水) 09時15分

『暗い日曜日』と言えば「自殺ソング」として都市伝説になっている歌曲。なんでもこの歌に関連した自殺が相次ぎ世界各国で放送禁止にもなったという。現在ではこの歌を逆再生で聴くと自殺したくなるという噂まである。当時の音楽関係者がこの曲を評して「この曲は悲しいなんていうものじゃない。そこには何か、底なしの絶望を強いるような力がある。この曲はいかなる人に、いかなる喜びも与えることはないだろう」と言ったとか。自殺を生み出していた本当の原因は、この曲ではなく、その時代の重苦しい空気だった（1930年代は、世界的に経済不況と政治的緊張が続いた。第二次世界大戦は1939年勃発）。この音楽は、多くの名曲がしばしそう言われるようにその時代の空気を余りにも生々しく旋律として引き受けたために、人々をある衝動へと駆り立てるきっかけとしての機能を果たしてしまったのだろう。反響は大きく、BBCをはじめとして各国で放送禁止になった。この史実を基に作られた作品で、ひとつのテーマが情愛、主人公イロナが二人の男（レストランオーナーのラズロとピアニストのアンドラーシュ）と一日おきにベッドを共にする。イロナが二人の男を両脇に抱き寄せて草に寝そべるシーンなどは、もう天国の図？。そしてそれにからむのが、イロナに横恋慕するドイツ人将校ハンス。そしてもう一つのテーマが時代背景。史実と虚実を巧みなバランスで描いて情愛とは別の緊張も見せてくれる映画。３★ エリカ・マロジャーン、ステファノ・ディオニジ、ヨアヒム・クロル、ベン・ベッカー