投稿日:2011年07月06日 (水) 22時37分
|
赤狩りに映画界が揺れた50年代、アメリカ合衆国下院非米活動調査委員会の公聴会に呼ばれたカザンが、自らの共産党員歴を不問に付し映画制作を保証してやるとの誘いに乗り、11名の同業者を共産主義者として「密告」したと言う話を聞いたことがある。裏切り者の影はずっと彼につきまとう。後のカザンの経歴およびその作風に暗い影を落とすこととなった。証言の直後に制作されたこの「波止場」はカザンの密告の言い訳であるとも受け取られているらしい。それはさて置き、ギャングもどきの一団の「組合」に立ち向かう一人になってゆくテリー(マーロン・ブランド)を中心に進むが、彼は密告(実際は証言)者、裏切り者と言われてしまう(このくだりでカザンの微妙なすり替えの意図を感じる。自分が密告した共産主義者たちと卑劣なギャングとでは根本的に違うのに)。無駄のない巧みなストーリーの運び、名言頻発の台詞、比類ないほど力強い映像。アカデミー賞作品。3★ マーロン・ブランド、エヴァ・マリー・セイント、リー・J.コッブ、ロッド・スタイガー、カール・マルデン、パット・ヘニング、マーティン・バルサム |
|