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このタイトルで「四畳半襖の下張」(伝:永井荷風著)という小説または最高裁判例を想像した人、残念ながら違います。今日は珍しく表具師っぽい日記です。(笑)
今日は、ちょっと高級な和襖の蓑張(みのばり)に使う反故(ほうぐ)を作りました。
和襖の新調の工程は、大きく分けると、骨下地作り→下張り→建て合わせ→泛張り(うけばり)→上張り→仕上 となります。骨下地は採寸して専門の下地屋さんに注文して作ってもらうのが一般的です。最高級の本襖は、木製の組子骨地に 骨縛(ほねしばり)→胴張(どうばり)→蓑張(みのばり)→蓑押え(みのおさえ) の順に下張りを行い下地を作ります。(蓑張を重ねる枚数も値段によって異なります) 一方、普及品の襖は「チップボール襖」と言って、木製の組子骨地の両面に、耐水性のチップボール紙を接着して骨縛と胴張を兼ねた下地を使い、値段によっては下張り(蓑張・蓑押え)を省略するものもあります。(下張りを行えば、それだけ襖が丈夫になり、また仕上がりの風合いも柔らかい感じになります) ちなみに京都御所で使われている襖の蓑張は8枚重ねらしいです。
蓑張に使う紙はそれほど上等なものは必要ないので、昔から反故(ほうぐ)という古い和紙(古文書や手紙、大福帳など)を使っています。この反故、昔は紙が貴重だったから、要らなくなった紙を捨ててしまわずに裏返しにして襖の下張りに再利用したのでしょうが、今は古文書としての価値の方が高くなって、本物の反故を確保するのが難しくなってきました。そこで、現在では代用反故として新しく漉かれた和紙を使う事が多いです。ちなみに「ほうぐ」というのは関西地方で、一般には「ほご」と呼ばれています。そう、「約束を反故にする」の「ほご」です。
今日やった作業は、代用反故ではなく、本物の反故を張代1分(約3mm)で継いでロール状にするというもので、単調ですが大切な仕事です。僕が子供の頃は、物差しを使わなくても1分の長さがわかるように、弟子入りしたばかりの若い職人さんにさせていた仕事だったのですが、今は従業員さんもいませんので、僕の仕事です。(入門したての頃にこの作業が毎日続くと、辛くて辞めちゃう人も結構いました)
まず、古書をばらすところから始めたのですが、今日使った本は国語辞典のようなもので、思わず読み耽ってしまい、ばらすのに半日かかってしまいました。(笑) 夕方から継ぎ始めて、終わったのは夜の10時前。肩こりに悩まされそうです。
ついでなので、襖の種類を下地を基準にざっと分類しておきますね。
一般的に、戸建の家には和襖(または単板襖)が、集合住宅には発泡系襖、ダンボール芯襖、ペーパーコア襖が新築時に使われる事が多いようです。