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最終投稿:2024年11月24日 (日) 10時13分

[749] ファイアーエムブレム スパークの剣 序章【草原の少女……と出会った】(FE 烈火の剣×BWリターンズ)
スパイラル - 2008年07月22日 (火) 11時31分

かつて『人』と『竜』が共存する大陸があった。
彼らは共に英知を保ち、住処を侵す事なく、穏やかな生活を営んでいた。

しかしそれ突然『人』の侵略によって破られる。
両者が大陸の覇権を懸けて争い、大自然の理をも変化させるほどの大戦となった。

それ後に『人竜戦役』と呼ばれる戦いである。
その結果――敗れた『竜』は大陸から姿を消し、『人』は戦いの痛手を乗り越え、大陸全土に勢力を広げていった。

それから千年近い時が流れ――運命の物語は始まろうとしていた。






「ダナぁ……ダナぁ……?」

“あの事件”から、どれ位経ったのだろうか。

サイバトロンを裏切り、デストロンをも裏切り、セイバートロン星の支配者に成り替わろうとした自分。
当初はヴィーコンとしてメガトロンの手先になっていたとは言え、自分がやった事は許される事ではない。

大切な友――コンボイを裏切った事も。

「……気が付いた?」

何処からか声が聞こえ、ライノックスはゆっくりと眼を開けた。
すると彼の薄い視界に、自分の顔を覗き込む1人の少女の姿が映る。
黒と緑の大きな瞳、緑のポニーテール、大人びた顔立ちが印象的だった。

「んん……君は? それに僕は……」

「草原の入り口で倒れていたのよ。私は“リン”、ロルカ族の娘……貴方は? 貴方の名前を教えて」

“リン”と名乗った眼の前の少女にライノックスは少し困惑しつつも、口を開く。

「僕の名前は……ライノックスだよ」

「“ライノックス”って言うの? 変わった名前……でも、悪くないと思う」

「ありがとね。そう言われたのは初めてなんダナ」

変わった喋り方をするライノックスに対し、リンは苦笑した

「それで見たところ、貴方は旅人みたいだけど、このサカ平原には何をしに?」

「……僕が旅人? どうしてそう思うの?」

「ええ、だってこの辺りに住んでいるような格好じゃないし……」

「ダナぁ……僕は――」

この時、ライノックスは初めて自身の両手を見つめた。
そして驚愕する事となる。

(――――ッ!? こ、これは一体……!?)

自身の手がビーストウォーズの時の物でも無く、ヴィーコンの時の物でも無い。
眼の前に居るリンと言う少女と同じ、人間の手をの形をしていた。

更に正面にある鏡を見ると、自分であって自分で無い姿が映っている。
疑いようが無い――自分は人間の姿になっているのだ。

「どうしたの? 何処か具合でも悪い?」

「う、ううん。心配無用、バッチグーなんダナ」

心配そうに訊いてくるリンに、ライノックスは混乱している自身を必死に隠した。
何とか誤魔化す事は出来たが、現在自身に起こっている事態はどうすれば良いのか――
マトリクスでコンボイと再開し、最後の別れを交わして気が付いてみれば人間に。

こんな経験は(当たり前だが)ライノックスは初めてだった。

(これもオラクルの……ベクターシグマの試練なのかなぁ?)

トランスフォーマーだった時に自分が犯した罪を、人間になって償えと言うのだろうか。
メガトロンに殺され、消滅し掛けていた自身のスパークを特殊に転生させたのだろうか。
未来でサイバトロンと友好的な関係を結ぶと言われている人間に――

ライノックスが考えた仮説は、あながち間違いでは無かった。
なんせオラクルやベクターシグマは、かなり適当な気質が――

これ以上言うのは野暮と言う物だろう。

(さっきから考え込んでばかり……心配無用って言ったけど)

それに対し、久々に人と接したリンは目の前の“ライノックス”と言う男に興味が湧いていた。
腕を組み、深く考え込んでいるライノックスに耳を傾けようとしていたが――


【オラオラオラぁぁぁぁぁ!!!】


突如として外から乱暴な声が響いてきた。
その声にリンは驚き、ライノックスは考えを中断させる。

「な、なんだぁ? どっかの格闘家でも来たのか?」

「ちょっと見てくるから、ライノックスさんは此処に居て!」

リンはそう言うと、素早く部屋から出て行った。
呆然とした様子で、ライノックスは彼女の後ろ姿を見送る。

(に、人間って結構慌てん坊なんダナ)

そして数分も経たぬ内に彼女は戻り、見てきた事をライノックスに伝えた。

「大変! ベルンの山賊共が山を降りてきたわ! また近くの村を襲う気なんだろうけど……そうはさせないッ!!」

決意を固めた表情を浮かべ、リンは椅子に掛けておいた剣を手に取る。

「え……まさか戦いに行くの?」

「あれくらいの人数なら、私1人で追い払えるわ!!」

「え、ええ(……って言うか、“ベルンの山賊”って何なの?)」

「ライノックスさんはここに隠れてて。すぐ戻るから」

「いやいや、僕よりも他の人達を避難させた方が……」

ライノックスは窓を見やり、即座にここが1つの村だと悟った。
リン以外に人が住んでいるのなら、戦うよりも避難を優先させた方が良い。

「それは大丈夫。もう私しか……ここには居ないから」

リンの悲しげな呟きと共に、突然男達の叫び声が響く。
ライノックスとリンは咄嗟にその方向を見据えた。

「それじゃあ、行って――」

「ま、待って待って! 女の子1人だけ行かせる訳にはいかないよ」

「えッ!? 一緒に来るつもり? 何か武器を使えるのッ?」

「大きめの棒切れ1本あれば十分ダナ。僕、力だけはあるからね」

「(だ、大丈夫かしら?)腕には自信があるみたいね。なら二人で行きましょう!」

ゲル(住居の事)を勢いよく出ると、ライノックスとリンの視界に5人の山賊が飛び込む。
リーダー格の山賊は壊したゲルの中を物色しており、4人の手下は2人が入っていたゲルに近寄って来ている最中だった。
リンは既に相手を威嚇するように構え、ライノックスも壊れ掛けのゲルから拝借した柱を持ち、戦闘態勢を整えている。

刹那――リンとライノックスが飛び出し、山賊達の前に立ちはだかった。

「おォッ? 良い掘り出しモンじゃねぇか!! 野郎ども! 男は殺せ!! 女は高く売れそうだし、傷物にするんじゃねぇぞ!」

「「「「オオオオオオオ!!!」」」」

欲望を剥き出しにした眼を浮かべ、4人の手下達は2人に突撃する。
彼等の手には大きめの斧が握られていた。

「来たわ! ライノックスさん、無茶しないでッ!」

「了解ダナ!!」

リンは身構えて迎え撃とうとするが、ライノックスは逆に前へ足を踏み出した。
その直後、ライノックスは柱を横に振り、向かって来た手下達を一斉に吹っ飛ばす。
素早いスピードと反則的なパワーによる一掃――手下達は悲鳴を上げる間も無く、気を失った。

(うん……力は衰えてないみたいだし、大丈夫ダナ)

「す、凄い……ライノックスさん」

「これくらいは朝飯前なんダナ」

リンがライノックスの力に唖然としている最中、気が気で無いのは残されたリーダーだった。
リーダーは手下達よりも大きめの斧を構えてはいるが、身体が少し震えている。

「や、野郎! このバッタ様に勝てると思うなよ!!」

「ハッ……あ、貴方は私が相手になるわ!」

「ナメんな!! 女ぁぁぁぁぁ!!」

そう雄叫びを上げ、斧を振り上げてリンに襲い掛かるリーダー。
だがリンはそれを見極め、素早い太刀筋で腹部を一閃した。

「ぐわぁッ!!」

“バッタ”と名乗った山賊のリーダーは悲鳴を上げ、ゆっくりと倒れる。
彼を討ったリンは緊張感からか、冷や汗を流していた。

「終わったね。以外と早く片付いたんダナ」

「そうね。でもライノックスさんって強いのね」

「ん? 少し意外だった?」

「う、うん。正直言って」

「……褒め言葉として受け取っておくんダナ」

この後、ライノックスはリンと共に後片付けを行った。
倒した山賊達の始末、壊されたゲルの修復――後者はライノックスの手先が器用だったお陰か、早く済んだ。

更にこの日の晩、リンの話でライノックスは“ここ”について1つだけ分かった事がある。
自分はどうやらここ“エレブ大陸”の“サカ平原”と言う場所に居ると言う事だ。
微々たる物だが、人間になってしまったライノックスにとっては貴重な情報だった。











「ライノックスさん、おはよう!」

「んん〜〜〜……おはようダナ」

翌日――この日は朝の日差しとリンの元気な声がライノックスの目を覚まさせた。
どうやらわざわざ隣のゲルから起こしに来てくれたらしい。

「おはよう。昨日の戦いで疲れた?」

「大丈夫だよ。僕は体力もある方なんダナ」

「そう。良かった」

そう言うとリンは、手に持った風呂敷をライノックスにゆっくりと差し出す。
何かとライノックスは受け取って中身を見ると、彼女が作った朝食だった。

「口に合うかは判らないけど、食べて貰える?」

「勿論ダナ。ありがたく頂くよ」

リンが作ってくれた朝食を受け取り、笑顔で口に運ぶ。
味付けも程良く、ライノックスは素直に美味しいと思った。

「ねえ、ライノックスさん。大事な話があるんだけど、聞いてもらえないかしら?」

「大事な御話? うん、僕で良ければ聞くんダナ」

「ありがとう。貴方はその、エレブ大陸を旅して回るつもりなのよね?」

昨日の晩、寝る前にライノックスはリンに話していた。
――朝にはここを出発し、エレブ大陸を見て回ると。

オラクルやベクターシグマが与えた試練なら、必ず大陸の何処かに何かの手掛かりがある。
何より“エレブ大陸”と言う未知の大陸にライノックスが興味を惹かれたからでもあるのだが。

「うん。ここに居ても何も変わらないと思うし、何より大陸中を旅して回りたいんダナ」

「あの……その旅に私も一緒に、付いて行っちゃダメかな?」

リンの思いも掛けない申し出に、ライノックスが驚愕する。

「え、ええ? 一緒に行きたいの?」

「う、うん。父も母も半年前に死んで、私の部族……ロルカ族はもう存在しない」

(…………そう言えば、もう私1人しか居ないって言ってたなぁ)

ライノックスがそう思う中、リンがポツリポツリと語り始める。
その表情は重く、暗い。

「山賊団に襲われて、かなりの数が死んでしまって……部族はバラバラになっちゃった。私は父さんが族長だったから、代わりにこの部族を守りたかったけど……こんな子供……しかも女に……誰もついてこなかった」

「そんなことが……」

「うん。貴方みたいに強ければ、きっと皆も付いて来てくれたのに……」

刹那、リンの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
それを皮切りに、彼女の瞳から溢れるように涙が流れ出す。

「えへへ、ごめん。……っ……ずっと1人だったから……っ……うーん、ダメだ……もう、泣かないって決めたのに……」

ライノックスは複雑な表情でリンを見つめる。
明るく元気な少女に、そんな暗い過去があったとは思いもしなかった。

「ライノックスさん! 私、父さん達の仇を討つ為にも強くなりたいの! ……1人で此処に居ても、絶対に強くなれない」

「うん……」

「だから、私を連れて行って! 無理な頼みって事は判ってる。でも……お願いします!!」

リンはそう言いながら立ち上り、勢い良く頭を下げた。
彼女は切実に強さを求め、ライノックスとの同行を望んだのだ。

良く考えれば、リンはライノックスと言う男の事をほとんど知らない。
しかし彼女は彼を悪人だと思う気持ちは一切無かった。

ライノックスがどんな者であろうと、自分を手助けしてくれた事は事実だ。
久し振りに人と出会い、感じる事が出来た触れ合いと温もり――
独りぼっちの生活が続いてきた今、それから抜け出したかった。

よってライノックスに付いて行く事を決めたリンは、彼に頭を下げたまま微動だにしない。
ライノックスは頭を下げる彼女を暫く見つめた後、ゆっくりと口を開いた。

「うん、良いよ。一緒に行こう」

「――――ッ!? ほ、本当ですか!」

「1人旅は心細いしね。1人でも仲間が居れば寂しくないし、心強いよ」

ライノックスの了承を貰うと、リンの表情が一変する。
暗かった雰囲気は消え、瞳はキラキラと輝いていた。
余程ライノックスの言葉が嬉しかったのだろう。

「あ、ありがとう……凄く嬉しい! 私も貴方が居れば、心強いと思ってた!」

「な、何だか照れるんダナ……」

見た目は大人びているが、この辺が幼さを感じさせる。

「こうしちゃいられない! 早速旅の準備をしてこなくっちゃ!!」

慌しくこの場から出てゆくリンの背中を、ライノックスは微笑を浮かべながら見送った。



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