[493] 君と歩む物語U 第八話 (リリカルなのは×ユーノ憑依) |
- 三日月 - 2008年03月01日 (土) 15時22分
戦いの火蓋は思ったよりもあっさりと落とされた。
ムニンとの視覚を一時的に共有しながらユーノは戦いの光景を見ていた。
ユーノ自身は現在、管理局の医療施設から本局内のカフェ・テラスにて紅茶を飲みながらまったりとしている。
ムニンには現在、双子の使い魔のそばに隠れながら状況の推移を見守ってもらっている。
いわゆる高みの見物というやつだ。
まあ、本人は否定するであろうが、要は三人が心配なのだ。ぶっちゃけ過保護?
なんらかのイレギュラーが発生した場合はすぐにフギンに動いてもらうつもりだ。
フギンは現在、局員が張った結界外……シグナムの側に隠れながら待機している。
フギンとムニンはは元来そういった用途のために生み出されたのだ、シグナム程の存在が気づけないのも
仕方の無い事だ。
ユーノは共有された視覚の先の状況を見ながらニヤリと笑った。
「さ〜て、三人ともどれくらい強くなったかな?」
そう、ユーノは知っている。
初戦で手痛い敗北をもらった三人がいかに自身を鍛え直してたかを。
なのははより効率の良い魔力の使い方を、フェイトは自身の扱える速度の制御を、アルフは己が技術の
鍛錬を、それぞれが自身の研鑽を怠ってなかった。
おそらくはこの戦いはユーノにとって見逃せないものになる。
時空管理局局員が張った結界外、その上空にその騎士はいた。
流れるような桃色の髪が夜に吹く風にたなびき、その凛々しい顔には厳しさがあった。
その騎士の名はヴォルケンリッターが将、シグナム。
「強装型の捕獲結界?……ヴィータ達は閉じ込められたか」
強装型の捕獲結界とは複数の魔導師が協力して作り上げる強力な結界である。
ヘタしたらヴィータのギガント級でなければ破れない代物だ。
ふとシグナムの手に握られていたデバイス、レヴァンティンが声を発する。
『Please choose your action.(行動の選択を)』
その言葉にシグナムは僅かに小さな笑みを浮かべ答えた。
「レヴァンティン、お前の主はここで引くような騎士だったか?」
『NO(否)』
レヴァンティンの核の部分が主の言葉に反応し光る。
「そうだレヴァンティン、私達は今までもずっとそうしてきた」
その言葉とともにレヴァンティンからカートリッジの薬莢がいきおいよく排出される。
それと同時に刀身に凄まじい魔力を帯びた炎が纏っていく。
そしてシグナムの剣が結界へと容赦なく振りおとされた。
ビルの屋上に降り立つなのはとフェイト。
その上空にはヴィータとザフィーラがいた。
その二人になのはとフェイトが話しかけた。
「私達は貴方達と戦いに来たわけじゃない。まずは話を聞かせて…」
「闇の書の完成を目指している理由を!」
二人の言葉に呆れたように見下ろすヴィータ。
その隣で静かに瞑目するザフィーラ。
「あのさベルカの諺にこういうのがあるんだよ」
その言葉に瞑目してたザフィーラがヴィータを見る。
どうやら何を言うか興味があるらしい。
「和平の使者なら槍を持たない」
その言葉になのはとフェイトは顔を見合わせる。
いまいち理解出来てない様子だ。
その様子にヴィータがグラーフアイゼンを突きつけて言った。
「話し合いをするのに武器を持ってやって来る奴がいるか馬鹿って意味だよバーカ!」
「なっ!?いきなり有無を言わさず襲い掛かってきた子がそれを言う?!」
なのはの抗議に「うっ」とたじろぐヴィータ。
それに止めを刺すようにザフィーラが口を開く。
「それにそれは諺ではなく、小噺のオチだ」
「うっせー!いいんだよ細かい事は」
そうヴィータが喚いたと同時に凄まじい轟音とともに強装結界の一部が強引に破られ、そのままビルの
屋上に着地、そこからもう一人、剣を携えた騎士が現れる。
烈火の将シグナムの参戦である。
その姿を見たフェイトが構えるように呟く。
「シグナム!」
シグナムもまたフェイトを見る。
そして最初に口火を切ったのはなのはだった。
「クロノくん!手を出さないでね!私、あの子と一対一だから!」
その言葉を黙って聞き届けるヴィータ、おそらくは本人もなのはと戦う気だったようだ。
念話越しでクロノが「本気か」と呟いている…まあ、当然の反応である。
すでに本人には説明しているのだ、ベルカの騎士は一対一の戦いにおいては最強を誇ると。
その念話を傍受していたユーノは不敵に笑いながら呟く「本気だよ」と返事の無い返事を返す。
そしてまたフェイトも己がパートナーに念話で伝える。
「アルフ、私も…彼女と」
フェイトの視線は先の戦いで自分を圧倒した騎士に向けられている。その騎士もまたフェイトへと視線を
向けている。
そんな主にアルフもまた上空にいる蒼の守護獣に視線を向ける。その視線はまるで恋焦がれた相手に
ようやく会えたといった程の喜びが満ちていた。
「ああ、アタシも野郎に借りがある」
ぶわっとアルフから闘気が溢れだす。その姿にまた蒼の守護獣も静かであるが闘気を満ちさせている。
戦場に満ちていく闘気にクロノは静かに溜め息を吐き、自身もまた闇の書を所持して隠れているであろうもう
一人を探すために戦線を離脱した。結界の外をエイミィに、自身は結界内のそれぞれの探索を開始した。
かくして戦いの始まりである。
なのは VS ヴィータ
夜空に踊る二対の赤と桃色の光。
前回と違うのは桃色の光の方、高町なのはのデバイスが新たなに強化されているという点である。
もとより経験において圧倒的に差のある二人だが、なのははそれを天才と呼ぶに相応しい才能でその差を
補っている。
無論、ヴィータとて蓄積された経験は半端ではない。前回の戦いにおいて多少の疲労とカートリッジの消耗
もあって今一歩なのはに梃子摺ったが、今回は前回より気力もカートリッジも充実している。
しかし、その差を更に埋めるようになのははデバイスの強化をしている。
その事実にヴィータは手に持ったグラーフアイゼンを強く握った。
自身の有利だった点を相手も強化することで同じ土俵に立ってきたのだ。強化する前から凄まじい強さを誇って
いたのだ。
相手が更に厄介になったことに変わりがないのだ。
先制はヴィータ、宙を飛び回りながらデバイスを持ってない方の手に鉄球を出現させ振り向き様にグラーフアイゼン
で打ち放つ。
それを瞬時に展開した複数のアクセル・シューターで迎撃するなのは。
展開された複数のアクセル・シューター、その内の数弾が迎撃に、他の数弾は左右上下に散開しあらゆる
方向からヴィータを狙い襲う。
「ちっ、うぜえんだよ!!」
それを自身の周りに出現させた鉄球で瞬時に迎撃した。
その際に発生した魔力粉塵によってヴィータの視界が遮られる。
そして、その瞬間ヴィータは自身の背筋に吐き気を覚えるほどの悪寒が走るのを感じた。
気づけば全力で魔力粉塵の中から抜け出るように回避していた。
次の瞬間には自分のいた場所に強力な魔力収束砲が通過していく。
まともに受けていたら拙かった、ヴィータの頬に冷や汗が伝う。
「……ちっ(あいつ前よりも更に強くなってやがる)」
こんな短期間で前と比べ物にならないほどに腕を上げた目の前の少女に戦慄を感じながらヴィータは
自分でも気づかないうちに笑みを浮かべていた。
ヴィータは騎士だ、シグナムほどのバトルジャンキーではないが、それでも強い奴と戦えるのは騎士として
歓喜を覚えるのだ。
故にヴィータもまた手加減するのを止めた。
一度リンカー・コアを蒐集した相手には二度は出来ない。目の前の少女は一度やっている。
加減しなければならなかった前回と違い、今回は加減の必要は無い。
ならば全力で相手をしよう。殺しはしない。だが、全力で叩き潰し粉砕せしめよう。
赤い少女が哂う。己が歓喜とともに…
その顔に気づいたのは聖樹の賢者だけだった。
<ユーノ視点>
カフェ・テラスにて俺は使い魔を通して戦いの状況を見守っていた。
そしてヴィータの哂った顔に俺は頬を引き攣らせた。
「うわ〜、ヴィータってバトルジャンキーなんだ」
どちらかというとその役はフェイトとシグナムあたりだと思うのだが。
しかし、なのはもなのはでまたエラク強くなってるなあ。
あれだけのアクセル・シューターを操り、その上、放っている間に魔力を瞬時に収束など化物にほどがある。
これが才能という奴なのだろうか、この調子で成長したらあと数年しないうちに追い抜かれる気がするな。
そんな思考に俺は静かに笑った。
もとより自分が最強などと思ってなどいない。だがそう簡単に追い抜かせる気もない。
魔法は素質や才能で決まるものではない。これはクロノの拘りであり、また俺もこの考えに賛同する
一人である。
俺はテーブルに紅茶を飲み、一息つく。
戦いはまだ始まったばかりなのだ。
フェイト VS シグナム
それは焔と雷光の円舞だった。
宙を無尽に駆け巡る金色の光、その金色を目で追う焔の騎士。
閃く雷光の一閃をその卓越した剣技にて捌く焔の騎士。
その戦いに派手さなど無く、瞬時にぶつかり合う剣と戦斧の音だけが響き渡る。
「ほう、以前よりも動きが研ぎ澄まされているな」
その顔には僅かだが笑みが浮かんでいる。
動きを止める事無くフェイトは目の前の騎士、シグナムに語りかける。
「貴方は強い、そんな貴方に対抗するには私には速度しかなかった」
「成る程、確かにお前の速度は速い、少しずつだが目に捉えきれなくなっている」
だが、その程度で勝てるほど自分は甘くない。その目が雄弁に語っていた。
そんなこともフェイトはもちろん承知の上である。
しかし現時点でシグナムとの差を埋めるには速度しかなかった。
足りない部分はこの戦いで補っていけばいい、なぜなら今もこの瞬間、自分は成長しているのだから。
ユーノと約束したのだ、前を見て進む事を、自分の物語を始めると。
ならここで立ち止まらずに前に進もう、昨日の自分で前に進めないなら、より強い明日の自分になって
進めばいい。
迷いなどフェイトの中に無い。今は進む事だけを考えるだけ。
「いざ」
シグナムが朗々と語りだす。
「尋常に」
それに答えるようにフェイトもバルディッシュを構えなおし言う。
そして声が重なった。
「「勝負!」」
<ユーノ視点>
「おお熱いねぇ」
フェイトとシグナムの戦いはまさに白熱した戦いだった。
ふと某少女革命とやらが頭に浮かんだが、胸のバラを散らす決闘ではないので忘れておこう。
流石はシグナムだ、ヴォルケンズの将は伊達ではない。
あの卓越した剣捌きはうちの一族の族長に匹敵するかも。あの爺は剣においては化物だからなあ。
フェイトも負けてはいないが、やはり経験の差がいかんともし難いな。
速度だけではシグナムに勝つには難しい。かといってパワーで押し込むにはいささかフェイトには無理がある。
勝利の鍵はいかにフェイトがこの戦いの中で成長するかだ。
フェイトの成長速度はなのは並みではないが、それでも天才に追随するほどに素直に伸びる。
彼女もまた天才なのだ。
無論、天才といえど長き時を越え重ねてきた年月と経験を誇るシグナムに追随するには生半可では難しいが。
さて、次はアルフとザフィーラの戦いだな。
アルフ VS ザフィーラ
それは強力な一撃だった。
盾の守護獣ザフィーラがアルフの放つ拳への評価だった。
(ふむ、前回戦った時より腕を上げている)
その点においてザフィーラを驚嘆を覚えた。
たったの短期間でこれほどまでに腕を上げた彼女に好感が持てた。
やはり彼女は戦士だった。
それも自分が思ったよりも強い戦士。おそらくは主のために鍛えたのだろう。
ならば同じ守護獣として全力で相対しよう。
「……強くなったな」
ザフィーラのその一言に目を丸くし呆気に取られるアルフ。
その顔はすぐに嬉しそうな顔に変わった。
「今度は……アタシが勝たせてもらう!」
戦士の咆哮にザフィーラは僅かに笑みを浮かべながら、始めてアルフに対して構えを取った。
前回は手加減などしなかったが、構えは取らなかった。
しかし今の彼女は全力で相対せねば……負ける。
それは獣世界でも有りうること、どれだけ実力に差があろうともどれだけ強かろうとも咽喉笛を噛み千切られ
ればそこでお終いなのだから。
(むっ?確かこの国では窮鼠猫を噛むと言ったか、いやあれは狼だな)
何気に勤勉なザフィーラ、戦いの先手を取ったのはアルフだった。
正拳突きを放つアルフ、それを無駄の無い動きで横に避けるザフィーラ、だがその動きを予想していたのか
アルフの正拳突きが突き終る寸前で止まり、回し蹴りに瞬時に移行する。
「む!?」
ザフィーラは咄嗟であるが片腕で防御する。しかしその守りを無視するように重い衝撃がザフィーラの腕に
走る。
まるで大きな鉄槌でブン殴られたようなそんな衝撃だ。
きっとアルフ本人も気づいていないだろう、先程放った蹴りに吼破の基礎ともいえる流れが無意識に
織り込まれていたことに。
腕のシビレが消えない、ザフィーラは魔法か何かと考えたが本能が違うと訴えていた。
(……魔力で強化されているが、何か違う。魔法によるダメージとは違う)
ザフィーラが分からないのも仕方ないこと、あれは武術による純粋な『通し』と呼ばれる技術。
守りを抜き衝撃をそのまま透過させる一撃なのだ。
これと同じ技が高町なのはの父と兄、そして姉が使う古流剣術にもあるがここでは関係ないので割愛
させてもらう。
アルフの一撃を体内に通すように受けたのだ、シビレはすぐには取れない。
アルフの猛攻はまだ始まったばかりなのだ。
肘打ちから膝蹴りに蹴りから膝払いに変幻自在に動きを変え、ザフィーラに的確に打ち込んでいる。
前回と違いアルフの動きに無駄が消えている。無論、粗が無くなったわけではない。
師匠である巻島十蔵が見ればまだまだ動きに無駄が多いと指摘するだろうが。
ザフィーラもまた困惑から立ち直りつつある。不思議な一撃に興味を抱きつつあるが、このままでは
負ける。
ゆえに反撃を開始する。真っ直ぐに迫り来る正拳突きを両腕で防御し、そのまま蹴りをアルフに繰り出す。
その蹴りを紙一重で避けるアルフ。だが、その蹴りは後ろ回し蹴りに変わりアルフの右肩を強打する。
ザフィーラには武道を嗜んでいる訳ではない。だが幾多の強者との戦いにおいてその戦い方を学び己の
モノとしてきた。
今もまたアルフの呼吸、流れを読み動きや筋肉の連動を見極めていた。
付け焼刃と言ってしまえばそこまでだが、それを補うようにザフィーラには圧倒的な経験と野性の勘を
持っていた。
ザフィーラの動きにアルフもまた動きをより洗練させていく。
戦いは徐々に熾烈にそして苛烈に高まっていく、お互いがお互いを高めあっている。
今の光景を師である巻島十蔵が見ていればきっと羨む事であろう。
最高の勝負だと称して。
<ユーノ視点>
「なんか一瞬ドラ○ン・ボー○が浮かんだ、いかんいかん忘れよう」
アルフとザフィーラの戦いは他の二人に遜色が無い戦いぶりだ。
前回と比べるならアルフはかなり強くなっている。魔法の構成もかなり効率が良くなっている。
あのおっさんマジでアルフを気に入ったみたいだな。
きっと楽しみながら鍛えたに違いない。
晶さんにも聞いたがアルフは筋がかなり良いと言ってたしな、今の光景を見ていればはっきり分かる。
俺は吼破をどうにか取得したが、それでも数年は自己鍛錬も含めてどうにか取得したのだ。
それを短期間で取得しつつあるアルフは確かに才能がある。
現にザフィーラと拮抗してるのが証拠だ。
だが、勝負の結果はまだ分からない。
そう戦いは始まったばかりなのだから。
あとがき
どうも〜三日月です。
なんかPCの調子が滅茶苦茶悪いorz
急にネットに接続しなくなったり、キーボードから煙が吹いたりと散々でしたww
何やら親が言っていた厄年とやらのせいだろうか?
新しいPC買うにも金が無いし、けっこう騙し騙しに使ってどうにか更新ww
遅くなって申し訳ない。
今回はバトル・前編?です。
うう少しスランプ気味だよ〜〜、でも負けないww
うむ、頑張ってお金稼いで新しいPCをゲットだ!!
おまけ
本日の最強技
紫電一閃<しでんいっせん>
シグナムが使う必殺技だ。
何気に使用回数が多い。
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