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最終投稿:2024年04月19日 (金) 10時50分

[388] 世界が謡う黄昏の詩 第一楽章 英雄交響曲 第四節
架離 - 2007年12月24日 (月) 12時59分






私はただ黙って、おにーちゃんとおにいさんの試合を見ていた。

うんん、見ることしか出来なかった。

試合前におにいさんを止めることが出来ず、始まってしまった試合。

一観客としてどちらの応援をすることも出来ずに、ただ見ていた。

そう、見ることこそが唯一許されることだった。

実を言う所、私は初めておにーちゃんが戦う所を見ている。

おねーちゃんと鍛練をしている所は見たことがあるけど、真剣勝負はこれが初めて。

でも判った。

おにーちゃん振るう木刀がどれほどの綺麗な弧を描いているかを。

どれほどの才に恵まれ、その裏づけを元にどれ程刀を振るってきたかを。

それに比べて、おにいさんの太刀筋はどれ程荒々しかっただろうか。

でも、私は見入った。

凡骨であったがゆえに辿り着けた極地。

五年と言う歳月の全てを注ぎ込んで手に入れたと言っていた。

だからだろう、淡い恋心のような憧れを抱き、全てを貫き通すかのような明確な気持ちに身が染まる。


ただ、欲しいと。


あの愚ッ直なまでの、姿を。

ひたむきな力を。

おにーちゃんやおとーさんでは決して辿り着けない場所。

私はその頂を見てみたいくなった。

その場所に私も行ってみたくなった。

気付けば私は、極限まで研ぎ澄まされた宝刀よりも、ただ愚ッ直なまでに直向な野太刀を目で追っていた。



その粗悪な太刀筋に心奪われたのだ。




































世界が謡う黄昏の詩

第一楽章 英雄交響曲






































これは夢だ

過去に、自分が体験した事の夢

見覚えがある以上これは夢なのだ

何より、自分で選択していると思っても実際勝手に体が動かされている感覚。

予定調和の物語

何一つ今の自分では選ぶことの出来ない

あそこをこうすればもっとよくなるのに

何故、そこでそう動く

なんとも歯痒く、悔しい

今の俺ならばと思いもする

白銀の閃光が闇を切り裂き空を斬る

足運びが出鱈目なリズムを刻む

戦う相手は化け物共

夜の舞踏に相応しい相手

俺はそれの主人公なのだ

そしてヒロインは―――



「くっ!」


見ることの出来ない相手を前に単純な動きではあるものの苦戦していた

だが俺は勝つ必要は無い

俺はただの時間稼ぎ

そう、あいつが来るまでこいつの攻撃を凌ぎきればいいのだから

空気が揺れる

俺は咄嗟に刀を斜めに構え、魔物の打撃を受け流す

完全に受け流せず後ろに吹き飛ばされる

正直接近戦はキツイ

力が違いすぎる

先程から吹き飛ばされ近づきの繰り返し

しかし距離を取る事は出来ない

もし取ったりしたら見えない衝撃波で避けることも出来ず一発で俺は行動不能になるだろうから

くそっ、早く、早く来い

息が切れて、腕が重くなってきた

刀を握る手が下がってきた

もうそろそろ限界だぞッ!


――舞――




























第四節
『Ill for the fider, good for the abider』


























 ぼんやりとした意識の中、ただ昔の夢を見ていたなと思った。

 思って、鋭い痛みと鈍い痛みのダブルパンチで、意識が鮮明になる。


「っぅ!?」


 起き上がろうと身体を動かして激痛。

 顔をしかめて、半端に浮かした身体をゆっくりと寝かす。

 左手には板で固定され布でグルグル巻きになっていた。

 左手が鈍い痛みを訴え、何故か顎がズキズキと痛みを主張する。

 眩しい照明に目を細めてその痛みに耐えていると、ふと、光が遮られる。

 なのはだ。

 なのはが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。


「・・・よう」


 声を出して後悔した。

 顎をほんの少し動かしただけでギチギチと悲鳴を上げる。

 そんな俺をますます心配そうな顔で見る。


「あの、大丈夫ですか?」


 泣きそうな顔でそんなことを言われて、少ししかない良心が痛む。

 『大丈夫ですか?』何て聞かれたら、空元気でも『大丈夫』と言わなければいけないだろうが。

 なのはを安心させようと口を開こうとする所で、声が掛かった。


「なのはよ、怪我人に『大丈夫ですか』などと言ってはいけない。 
大丈夫でなくても大丈夫と言う奴もいるし、もしその怪我人が重傷なら無理やり喋らせることになる。

こういう場合は微笑んで怪我人を安心させるのが定石だ」


 淡々と怪我人に対する対処法をなのはに話し、恭也は俺を見る。

 重い体を起こす。

 痛む顎に無理を押して、俺は気になっていることを聞く。


「最後、どうなったんだ? ゴッソリ記憶が抜けてるんだが」

「何処まで覚えている?」

「俺が腕を犠牲にしたとこまで」

「なら話は早い。 あの一撃の瞬間、"神速"を使った」

「ああ、あの出鱈目なやつか」

「出鱈目とは心外な」


 あれを出鱈目と言わずして何と言う。

 あれ程の速度、ただ体が速く動かせるようになるだけではなく反応速度さえ上がっていた。

 でなければ、俺の最後の一撃は当っていただろうから。


「あれは、人の出して良い速度じゃないだろ」

「しかし、神速についてきた奴もいたが?」

「それ、どこの宇宙人だよ。 絶対人間辞めてる」

「なんでも、これくらい出来なきゃ、仕事にならんらしい、続けるぞ。
神速を使い木刀でどうにか突きの方向を逸らし、お前の顎を蹴り上げた」


 一体どんな仕事につけばそんな芸当が出来るのか知りたい。

 そこに就職するのは無理だろうな、俺。

 軋む顎を無視して口を開こうとしたら影が差し込む。

 士郎さんのお出ましだった。

 色々と起こられそうなことに心当たりのある俺は嫌な汗を背中に掻く。


「随分と無茶をしたね。あぁ、無理に話さなくてもいいから」


 口を開きそうになった俺に士郎さんは制止をかける。


「若いうちは僕もそうだったけど、怪我をすれば悲しむ人がいることを忘れてはいけない。 
いや、僕もつい最近それを学んだんだけどね」


 何かを思い出して苦笑いをしながら士郎さんは続ける。

 俺はただ黙って聞いていた。


「一応、軽い応急処置はしておいたよ。 腕は完全に折れている」

「・・・顎は?」

 先程からジンジンズキズキと傷む顎。

 気を失うくらい熱烈に蹴られた顎が物凄く心配。

 これだけ喋るのに軋んで、顔を顰めてしまう。


「おにいさん、大丈夫?」


 なのはに心配され、隣から微かな殺気。

 俺がなのはにおにいさんと呼ばれたことが気に入らないのか恭也の顔がしかめっ面をしながら答える。


「・・・顎は別になんとも無い・・はず」

「後で、医者に見てもらうわ。・・・それとそんなに怖い顔するな」


 顎に手を当てながら軽く左右に揺らす。

 砕けては---いない。

 激痛はするが。


「むっ、そんなことはない。
ただ、妹ががお前のことをそう呼んで迷惑でないかと思っただけだ」

「ごめいわくですか? おにいさんって呼んだら・・・」


 なに、この前門に龍、後門の虎。

 殺気を滾らせる恭也に、涙目のなのは。

 どちらを選んでもあまり良い事になりそうに無い気がする。

 助けを求めるために、外野に目配せするが、

 外野の三人は微笑ましそうに微笑んでるし。

 外から見れば面白いかもしれんが、お前等も内側で体験してみろこの状況を。

 少しも笑えんわっ!

 だから俺は・・・


「あー、取り合えず体がダルイから今日はもう寝てもいいか、病院は明日にして」


 ・・・逃げの一手を打った。

 そう言われれば高町一家は頷くしか出来ず、少し時間を置いて二階の一室に案内してくれた。

 俺はベッドにダイブして、後悔。

 ダイブの衝撃で腕に激痛。

 自分が骨折していることを忘れていた。

 案内してくれた桃子さんに苦笑いされながら俺は仰向けになる。

 これから恭也と美由紀は中途半端な時間なので今日の鍛練を中止し、俺との決闘の反省会をするらしい。

 士郎さんはそれのスペシャルゲスト。

 色々と駄目だしをされるのだろう。

 そして、意気消沈だったなのははと言うと―――




















◆◇◆◇◆◇




















 俺が目を覚まして逃げの一手を打った後。

 桃子さんが俺の部屋を用意してくれている間、残りの俺達はリビングでくつろいでいた。

 テレビはドラマ・太陽に萌えろが映し出されており、無意味に真っ赤な夕日に向かって刑事が走っていた。

 先程の決闘が嘘のような一般家庭の雰囲気。

 炬燵に入り、恭也が淹れた緑茶を飲みながら痛い顎を無理やり開いて蜜柑を食べる。

 はっきり言って幸せ。

 この五年間、炬燵も蜜柑もまったく無縁の生活をしていたからな。

 目じりに涙が溜まる。

 甘酸っぱい味が口の中に広がる。

 飲み込んだ後にお茶を一口啜る。

 机の真ん中にある煎餅を食べたいのだが、顎の関係でのた打ち回りそうだ。

 のんびりとした雰囲気がリビングに広がる。

 だらけきっていた。

 茶を啜りながら炬燵に入っていれば皆そうなるだろ?

 俺の場合は五年ぶりの炬燵だ。

 体の芯からダラリとしていた。

 真正面に座っている恭也とその隣にいる美由紀は苦笑い。

 先程の大立ち回りをした人物とは思えないとまで言ってきた。
 
 しかし仕方ないだろ、炬燵にはそれほどまでの神秘が内蔵されているのだから。

 垂れパンダのように垂れた心身。

 もはやそこには癒し空間が出来上がっていた。

 そんな雰囲気をぶち壊すかのように、俺の隣に寄ってきたなのはがその場にいた誰もが考えもしなかったことを、爆弾発言を口にした。





















あとがき

ども、こんにちは、架離です。
やりたいゲームが発売されたのでそちらをやってから、課題をして、その後に小説と、冬休みなのになぜか平日より忙しいです。
というか寒いです。カナダに住んでいるので気温が常にマイナス。
−10度とか当たり前。服をどんだけ着込んでも寒いです。

さて、今回は試合のあとと言うことですが全然話が進みませんでした。
もう少し書き足してもよかったんですが、そうするとアップが来年になっちゃってたりしそうなのでこんな中途半端なものに。
あと、これはこのSSを呼んでくれている人に質問なんですが、実際どれくらいの人がこのSSを読んでいてくれているのでしょうか?
作者として結構気になっているのですが・・・
感想から推測するに2〜3人程度。
流石にもっといますよね? いてください、切実にお願いします。
感想は作者の活動力です。
堅苦しいことなど書かずにただ面白かったとだけ書いてくれれば凄く嬉しいです。
どれほどの人が私のSSを読んでくれているのか知りたいので、いっちょ、一言を書いてみてくれませんか?
長文失礼しました。
また来年お会いしましょう。

[389]
焔 - 2007年12月24日 (月) 13時12分

祐一はなのはにおにいさんと呼ばれるようになりましたか。

次回も楽しみにしています。

[390] おにいちゃんは未来へ続くパトス
三日月 - 2007年12月24日 (月) 15時13分

私はそれほどツボって訳ではないですが。

やはりそういう系の好きなヒトは多いと思うww

無論、私も嫌いというわけではない。

クリティカルでないだけでww

それでも年下の美少女に「おにいちゃん」と呼ばれたいと

思うのは男の浪漫だと私は思うわけですよ。

ああ、ビバおにいちゃんww

次回も期待して待っています。



[391]
ぐぅ - 2007年12月24日 (月) 15時29分

なに!? なに最後の爆弾発言って!?

次回も期待して、待ってます〜☆

[393] 感想
月咲シン - 2007年12月24日 (月) 17時15分

読ませていただきました、今回も面白かったです。

祐一君負けてしまいましたが、恭也を相手にあれだけ善戦できれば凄いものです。

なのはが何やら感銘したそうですが、そんな爆弾発言を行うのかも楽しみです。

しかし作者さんは今カナダですか……時差もあるでしょうが、寒くて大変そうですね。体には十分気をつけてください。

それでは、また次回を楽しみに待ってます。

[394] 読んでますよ〜
めるふ - 2007年12月24日 (月) 18時51分

初めてのコメントです

珍しいタイプの祐一が主人公なので興味深く読ませてもらっています

これからも頑張って下さい

[395]
謎の人 - 2007年12月24日 (月) 19時54分

いつも楽しみにさせてもらってます
これからも頑張ってください

[396]
一樹 - 2007年12月24日 (月) 22時13分

最後の爆弾発言がかなり気になります!!

[412]
truder - 2007年12月27日 (木) 00時29分

なのはとクロスさせている作品では初期の段階から魔法・デバイスとの契約というのが王道のようですが、これは全く先が読めない、それ故今後がどうなるのかと続きが待ち遠しいですね。それに読みやすいですし、これからも応援しています。

[413]
月読飛燕 - 2007年12月28日 (金) 02時18分

 初めてのコメントです。
 この作品はおもしろいので、毎回楽しみにして待ってます。
 舞への想いが真摯で清々しいと感じました。恭也との掛け合いも気持ち良かったです。
 次回を期待して待ってますね。



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