[136] 君と歩む物語 第六話 (リリカルなのは×ユーノ憑依) |
- 三日月 - 2007年11月13日 (火) 17時30分
「というわけで…本日零時をもって本艦全クルーの任務はロスト・ロギア『ジュエル・シード』の 捜索と回収に変更されます」
以前使った和室ではなく、ちゃんとした会議室だ。
俺の隣にはガチガチに緊張したなのはがいる。いや、9歳の子供だ、緊張するなと言う方が無理か。
「また本件でロスト・ロギアの発見者であり、Sランク魔導師の…」
「ユーノ・スクライアだ、よろしく」
「それから彼の協力者である現地の魔導師さん…」
「あっ、高町なのはです」
「以上二名が臨時職員としての扱いで事態に当たってくれます」
リンディの言葉に他のクルーが歓迎の拍手をしてくれる。
なのはは未だに緊張している。俺は…まあ、慣れてるからな、緊張はしてない。
五歳の頃から大人たちと一緒に遺跡の発掘などを手がけていたのだ。
時には発掘の指揮を任された事もある前世の時も幾つかの仕事を任されていた。
ふと真面目な視線を送っていたクロノになのはが気づいたのかなのはが微笑み返す。
初心なのか顔を赤くするクロノ。
ふっ、若いな。そんな俺の苦笑に気づいたのか俺を睨んでくるクロノボーイ。
そんなわけで俺達のアースラでの生活が始まった。
アースラ日記・@
○月×日 食堂
私、高町なのはは現在、食堂にてユーノくんと一緒に遅めの食事を取っています。
今日の収穫はロスト・ロギアが一つ、あとユーノくんから魔導書を一冊でした。
アースラの探索域に引っかかったロスト・ロギア、その回収に向かったなのはとユーノ。
山奥の小川、その川原にデデンと聳え立つ巨大な蟹。
みたまんま蟹だ、川蟹の一種だろう、少し茶のはいった色、キョロキョロと動く黒い眼球。
その光景を見たユーノは溜め息とともに頭を押さえる、おそらくいつかの巨大な仔猫の件を
思い出しているのだろう。
突然、辺りに暗い空間が形成され身構えるなのはとユーノ。
「ちっ、カニの分際で結界を張りやがった」
ユーノは小さく毒づくと瞬時にシールドを展開、デバイスは使っていない。
結界の質からいって簡単には破れなさそうだ。おそらくジュエル・シードから得た能力だろう。
獲物を強固な結界内に閉じ込め捕食、言うなれば檻か狩場だ。
なのはも既に距離を置いて蟹に目掛けてシューターを放っている。
この戦い方はユーノが教えた方法だ。
なのはは射撃系もしくは砲撃型の魔導師。ゆえに接近戦には極力持ち込まず距離を置いて
戦うように指示した。
無論、なのはのレベルが上がればその方法も相応に変化するだろうが。
そこは三期のなのはを見れば一目瞭然だ。
「にゃ!?防御が硬くて通らない」
なのはの放った魔法は蟹の甲殻にむなしく弾かれる。
どうやら防御特化型らしい、並みの攻撃は意味がなさそうだ。
巨大蟹の鋏がユーノ目掛けて振り落とされる。迫り来る巨槌、受ければ即死間違いなし。
その一撃をユーノはシールドを使って受け流す。まともに受け止めればシールドごと潰されていただろう。
「おい、なのは!俺が蟹の動きを押さえる、お前は収束系の一撃で決めろ」
「うん」
ユーノはシールドを消すと蟹の後方へ即座に移動、そして魔方陣を展開する。
「有限、無限、理の螺旋は巡り巡って断ち切れぬ鎖と成す…『グラビティ・チェーン』!!」
ユーノの前に展開された魔方陣から黒色の鎖が飛びで、巨大蟹を束縛する。
通常、チェーン系の魔法は複数人でやらないと大質量の存在を押さえる事が出来ない。
出来たとしてもかなりの魔力を消費する。
だがユーノの場合、単独でも大丈夫なように用途用途に合わせた魔法を取得している。
無い場合は自分で編んだりもしている。
今回使っている『グラビティ・チェーン』もそのうちの一つ、重力系の魔法を組み合わせ、チェーンで
縛られた者は重圧による加重束縛を受け動きを阻害される。
大質量タイプの巨大蟹を押さえるのにこれ以上適した魔法は無いだろう。
これもまたJ・S事件への対策魔法の副産物の一つであった。
「いくよ!ディバイン…バスター!!!!」
魔力を収束させいつもより威力が上がったなのはの砲撃魔法が巨大蟹に命中。
巨大蟹からジュエル・シードが飛び出てくる。
それを間をおかず封印するなのは。
「ふう、おつかれさん」
空から降りてきたなのはに労いの言葉をかけるユーノ。
「うん、ユーノくんもお疲れ」
元気に返答するなのは。
川原には小さな蟹が急ぎ小川に逃げ込んでいった。
その光景を見てユーノは思った。
まだまだ先は長いなと。
アースラに戻ると待っていてくれたのかリンディが出迎えてくれた。
やっぱり何度見ても二十代で通用するよな、などと戯けた事を考えるユーノ。
「お疲れ様、なのはさん、ユーノくん」
「ただいまですリンディさん」
「ああ、今戻った」
正直言わせてもらえればユーノはリンディみたいなタイプは苦手だ。
クロノと違い、先が読めない上に勘が鋭い。ちょっとした緩みからこちらの考えを看破する。
流石、管理局上層部の海千山千の猛者を相手取ってないか。敵に回せば厄介この上ない相手だ。
また、強いて言うなら女性のタイプもリンディや桃子が好み範囲だ。
まあ、本人は気づいていない事実だ。
勘違いしないように言うなら包容力のある女性に弱いといったところだ。
「うんうん、流石に優秀ですね、管理局に欲しいくらいだわ」
「悪いが他を当たってくれ俺は局に就職するつもりは無い。……なのははどうかは知らんが」
そしてリンディは油断ならない女性だ、事あることにユーノを勧誘する。
リンディがしっこく勧誘するのも無理はない、万年人手不足の管理局にとって優秀でしかもSランクである
魔道師がフリーでいるのだ、咽喉から手が出るほど欲しい人材だろう。
当然なのはも狙っている。ただ、勧誘度のレベルは天と地程の差があるが。
形になっていないダイヤの原石と形の整いつつあるエメラルドの宝石…即戦力として欲しいと思うなら
選ぶまでもない。
一度、食堂で捕まり熱心に二時間にも渡る勧誘を受けるはめになった。
ユーノ自身は時空管理局に所属するつもりはない、良くて嘱託魔道師だ。
最終的に本の司書長に収まるつもりはない。本は嫌いではないが徹夜で何日も突っつきリになりたくない。
そのための生け贄……ゴホンゴホン。
とにかく局に勤めるつもりは無いのだ。
「っと、そういえば頼んだものは届きましたか?」
「ええ部屋のほうに送っときました」
そう、ユーノが頼んだもの、それは……部族の方に置いといたユーノの私物の本。
魔道書の類だ。
ユーノの部屋にてなのははユーノから一冊の本を渡される。
字は……当然読めるはずが無い。
「え〜っと、この本は?」
「魔道書だ、なのはは感覚で魔法を組むからな、それ読んで少しは自分が使ってる力の流れを 理解して来い」
「あの〜、この本の字が読めないんですけど」
「レイジング・ハートに教えてもらえ、そんぐらいの翻訳はできる」
ユーノの身も蓋も無い言葉になのははガックリと項垂れる。
こうして高町なのはの日課の中に読書(魔道書)が追加されたのだあった。
「あ、読み終わったらレポート書いて提出な」
まったくもって鬼コーチっぷりである。
アースラ日記・A
△月□日 マイ・ルーム
ここしばらくアースラの探索域にジュエル・シードが引っかかりません。
その日、暇を持て余したユーノくんはクロノくんと模擬戦をはじめました。
ここはアースラ内に存在する訓練室、訓練室内の横には様子を見ることが出来る場所が設けられていて、
そこにはリンディ、なのは、エイミィの三人が訓練室の様子を見ていた。
訓練室には黒のバリア・ジャケットを纏い、その手にはストレージ・デバイス『S2U』を握っている。
黒髪に意志の強い黒色の瞳、母親には似ず父に似たであろう容姿。
彼の名はクロノ・ハラオウン、AAA+魔道師で時空管理局・執務間である。
それに対するは翠と蒼を基調にしたバリア・ジャケットを纏い、その手にはインテリジェンス・デバイス
『聖樹の賢杖・ユグドラシル』が握られている。
ハニーブロンドの髪と翠の瞳、スクライアの天才と謳われる少年。ユーノ・スクライア、Sランク魔道師だ。
「ったく、何で僕がこんなことを…」
「まあ、そう言うな。たまには身体を動かさんと鈍る」
ぼやきながらS2Uを構えるクロノとユグドラシルを肩にかけるようにするユーノ。
二人の実力ははっきり言ってそれ程差は無い。
魔力量ならユーノが上、戦闘技術はクロノが上、魔法技術ならユーノが上、機動性ならクロノが上、
守りならユーノが上、他にも有利不利があるが差は在って無いに等しい。
強いて言うなら魔法に関する独創性はユーノが圧倒的に上だ。クロノの場合、堅実性が高いため
魔法の幅が狭い。だが堅実であるが故に強い。
「手加減はしない」
「ああ、寧ろ加減なんかしたら負けるぞ?」
戦いの幕が切って落とされる。
初撃はクロノからだ。放たれたのはスティンガー・スナイプ。
精密さと操作性に優れたクロノお得意の攻性魔法だ。
迫り来る青白い光弾を、ユーノは瞬時に展開したチェーン系の魔法で叩き落す。
攻性を付加したチェーン系だ、魔方陣から飛び出た緑光の鎖はクロノの魔力弾を叩き落すと、そのまま
クロノに伸びていく。
自動追尾も織り込んであるチェーンはクロノを縦横無尽に追いかける。
「チッ、しっこい!」
すぐさまに魔法を展開し伸びてきた鎖を打ち砕く。その隙を逃すユーノでは無い。
複数の魔方陣を同時展開し陽動としてチェーン系を発動。
更に時間のかかる詠唱を動き回り、時にクロノに牽制しながら唱える。
無論、クロノも負けていない、陽動の魔法を収束系のブレイズ・キャノンを放つ事で瞬時に破壊。
ユーノの詠唱を邪魔しつつ戦術を立てていく。
その戦闘光景をなのはは唖然と見ていた、自分やあのフェイトと比べるがはっきり言って次元が違った。
今の自分達の戦いが喧嘩だとするなら、目の前の戦いはまさしく実戦だ。
気づけば手を強く握っていた。何と言えばいいのだろう…こう血が滾ると言えばいいのか。
なのは自身この感覚を把握しきれていなかった。これも御神の血だろうか。
まあ、なのはの家の件は今ここでは関係ないので割愛させてもらう。
戦いは熾烈を極める、クロノのブレイズ・キャノンがユーノのシールドに激突。
また、ユーノのリング・バインドがクロノを拘束する。
「もらった!『ライトニング・バインド<スタンブレイク>』」
ユーノ魔法が発動すると同時に後方に放たれていたスティンガー・スナイプがユーノに決まる。
そして、クロノを拘束していたリング・バインドが強力な雷撃を発する。
「「ぐああっ」」
結果は引き分け、両者共倒れだ。
ユーノの敗因、強力系の魔法は魔力と時間がかかる。アルフに使ったSランクの拘束系は
一定の条件がそろわないと使えないためである。(相手に素手での一撃を加えないとダメ、クロノ相手に
接近戦は無謀)
クロノの敗因、ユーノの多種多様の魔法に翻弄され、チェーン系に注意を向け過ぎたため。
以上が今回の模擬戦の結果である。
「やれやれ、引き分けか」
「それはこちらのセリフだ」
医療室にてユーノとクロノは簡単な治療を受けた。
お互いボロボロで二人の戦いがいかに激しかったか、その姿が物語っている。
ユーノはなのはが、クロノはエイミィが手当てしている。
「いや〜しかし、二人の戦いは凄かったすね〜」
「うん、私もビックリしました」
なのはとエイミィの感想にリンディも同意するように頷く。
現役の執務官とガチでやりあえる考古学者。
クロノは若くして執務官になり、ユーノは若くしてSランクの魔道師として認定された。
そんな二人の戦いが高レベルでないはずがない。
「まあ、次は負けんさ」
「こちらこそ、負けるつもりは無い」
お互いを睨みあうユーノとクロノ。
しばしの沈黙後、笑いあいながら互いの拳を打ち合わせる。
それが二人が互いをライバルとして認め合った瞬間だった。
管理局の協力もあって幾つかのジュエル・シードを回収に成功、数日間の間を置いて再び運命の少女に
合間見えた。
今、目の前のスクリーンには魔力の渦で荒くれる海、その中を必死に飛び回るフェイト。
その光景にすぐに飛び出そうとするなのはをクロノとリンディが静止を呼びかける。
二人の言葉に葛藤するなのは、だから俺はこっそりと転移ゲートを展開した。
「なのは、迷う必要は無いさ…行ってこい」
「ユーノくん!?……ありがとう」
ゲートに飛び込んでいくなのはを横目に俺はクロノとリンディに苦笑するように言った。
「一つ言っておくけど、俺たちは利害の一致の上での協力だぜ?意見が一致しない場合はこちらの 道理を押し通すだけだ……まあ協力してもらっといて図々しいと思うんだけどな」
そういって俺は背を向け、ゲートに向かって歩いていく。そしてゲートをくぐる前に締めくくった。
「俺は…俺たちはより良い結果を最高のハッピーエンドを迎えるために、今この瞬間を全力で良かれと 思ったことをやっている、あんた等もそうだろう?」
俺はそう言うとゲートをくぐり、なのはの援護に向かった。
ゲートを抜けた先は魔力の嵐が逆巻いていた。
海は凄まじく荒れ狂い、海上には竜巻が複数発生、あの竜巻の中心にジュエル・シードがあるはずだ。
「さて、これは骨が折れそうな勢いだな」
俺は懐からコインを取り出し、ユグドラシルを起動させる。
自分の役目は十二分に理解している。
「準備はOKかい、ユグドラシル?」
『当然OKだとも、我が友よ』
「そんじゃあまあ、一丁やってみますか」
襲い掛かってきたアルフをいなし説得、そして魔法の詠唱を開始した。
「巡れ大樹の枝」
『巡り巡って今ここに』
「大いなる福音は」
『木々の葉音』
「たえなる響きは」
『大地の賛歌』
「『響き渡る祝音よ、遥か遠くまで鳴り響け』」
俺は一息つき、手に持ったデバイス・ユグドラシルを握りなおす。
「『聖樹の根縛』」
巨大な魔法陣が四つ複数の竜巻を中心に囲むように展開され、魔方陣から一本のデカイ緑光の鎖が
飛び出るように伸び、先端から枝分かれして竜巻を雁字搦めに束縛していく。
「俺式魔法『聖樹の根縛』、666式の捕縛魔法の複合術式だ、ちょっとやそっとじゃあ破れねえよ」
ヘタしたらオーバーSランクに指定されるであろう俺独自の魔法だ。
AMF対策に複数の物理式も織り込んである優れものだ。これは後のJ・S事件用の試作魔法でもある。
対人には使えないのと魔力消費が激しいのが難点だが、相手が人間で無いので良しとしよう。
少し先を考え過ぎな気もするが、問題はあるまい。
(聞こえるか?俺とアルフで竜巻を押さえる、お前等二人は全力展開でジュエル・シードを封印しろ)
(ユーノくん?このバインドってユーノくんの魔法だよね?)
(…凄い、あんな強固なバインド初めて見た)
と戸惑い気味な二人に俺は余裕気味に笑い、竜巻に親指を向けた。
その後、なのはとフェイトの同時魔法が炸裂し、複数の竜巻は見事に消滅。
ついでに俺の束縛も消滅……結構な自信作だったんだけどなあ、やっぱし魔力の高さがモノを言うのかな。
とにかくジュエル・シードの封印を成功したので良しだ。
そして間を置かずにプレシアの魔法がフェイトに直撃した。
そして……俺にも強力な雷撃が空から降って来た。
(ちっ、どうやら俺が一番の厄介者と判断されたらしいな)
左腕に大きな火傷を負い、俺は治癒魔法を展開した。
正直目立ちすぎたみたいだな。まさか自分も狙われる新展開なんて予想外だった。
後の展開は通常の流れ通り、アルフとクロノが半々に分けるようにジュエル・シードを回収。
そして逃亡していった。
その後、俺となのはにはリンディのお叱りタイムが待ち受けていた。
……お茶は勘弁してください!お願いですから!!
追伸
恐るべしリンディ茶、危うく昇天するとこだった(汗)
あとがき
どうも、三日月っす。
今回はエライ長くなってしまった(汗)前編後編で分ければ良かったかな?
とにかく面白いと思って頂ければ嬉しいっす。
現在、番外を書いているますがどうも筆が進まないww
くっ、侮りがたし番外!?
それでは失礼しますww
おまけ
Fate風 ステータス表
真名・高町なのは
属性 秩序・善
筋力 E 敏捷 C
魔力 AAA 宝具 A
耐久 B+ 対魔力 AA+
幸運 A
技能 不屈(A)、魔力放出(A)、直感(B)、御神の血<勇猛(B)>
魔法(AAA+)
宝具 魔道師の杖<レイジング・ハート>(ランク・A)
もともとはユーノの一族が所持していたデバイス、射撃・砲撃に特化しているのかフレームが頑丈。
他にも互換性も高く、補助も十分に扱える優れもの。搭載されたAIもかなり高度なものである。
出所が不明だがおそらく名のある魔道師が製作したものと思われる。
次はフェイトでww
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