[526] 柊蓮司と魔法の石 12 (リリカルなのは×ナイトウィザード×ダブルクロス) |
- タマ - 2008年03月10日 (月) 01時15分
「アリシア・テスタロッサ!? 馬鹿な!!」
そのクロノの声に応えて、というわけではないだろうが。プレシアの持つ杖から視界いっぱいに雷が放たれる。
「下がりたまえ!」
グイードの言葉に従い、下がったフェイトとクロノも範囲にいれユーノとアルフの防御魔法とグイードによるマジックシェルがプレシアの放つ雷を防ぎきる。
「これは……時間稼ぎか?」
魔法を受け止めてみた感想だがそれほどの威力ではない。感じた魔力から考えるにこれが全力だとも思えない、ならばこれは時間稼ぎの弾幕のようなものなのだろう。
だが意図はわからない。時間稼ぎをするメリットが見当たらないのだ。
「アリシア・テスタロッサ、あの落とし子はあの青い宝石を完全に制御していたようだしな」
「アリシア、ね。妹か?」
見た目がフェイトにそっくりなのと年齢からおそらくと当りをつけて柊はフェイトに問いかけた。
その問いになのはたちが慌てたように何か言おうとするがフェイトがそれを制し、俯きながら言う。
「ううん、アリシアは私の元になった人。アリシアを元に創られた魔道生命体。それが、私」
少しの沈黙が落ちた。けれどそれはすぐに打ち破られる。
スパァン!!
やたらと小気味のいい音で持って。
俯いていた頭を思い切りはたかれ―――衝撃の割にはさして痛くは無かった―――顔を上げると、見えたのはハリセンを振りぬいた状態で制止した柊の姿。
「フム、なぜ月衣の中にハリセンなど入っているのかね? ……まままま、まさかついにツッコミ属性が具現化したのか!?」
「んなわけあるか!! 炎砦の時どうやってだか知らんがいろいろ仕込んでいきやがった奴がいてな、最近やっと中身が把握できるようになったんだよ」
チッ、つまらん。などとほざくグイードに一発拳を入れつつ、柊たちの反応が予想外だったのかいまだに呆然と柊たちのほうを見ているフェイトの頭を今度は軽く、ポンポンと撫でるようにたたき、柊は笑う。
「お前はフェイトだろう?」
実際問題、柊の周りには遠い未来世界を滅ぼす魔神になる、といわれた後輩がいるし、最悪の魔王の転生体だと宣告された友人がいる。その二人に対してさえ、世界を滅ぼす存在なのだといわれた人間に対してさえ『それがどうした』と言ってのけた人間なのだ。
柊にしてみれば生まれが特殊、特別な力や運命など知ったことではない。個人として気に入ったなら何の関係も無い。
「ありがとう、蓮司」
笑顔で礼を言ってきたフェイトの頭をさっきと同じように軽く叩き、現状の整理を開始する。
「そういえば、えーと………まあいいや、ドリームマン二号(仮)さっきなんか驚いてたけど、なんでだ?」
「クロノだ。……ありえないんだよ、アリシア・テスタロッサはずいぶん前に亡くなっている。この場に現れるわけが無い」
「フム、しかしあの金色のプラーナ」
「金色の魔王『ルー・サイファー』か」
「まあ、可能だろうな、死んだ人間を生き返らせる程度のことなら」
「そうだな」
と、なのははおろか魔法をよく知る面々さえ、いや魔法をよく知るからこそありえない事象をあっさりと認めてしまった。
「しかしあれは……生き返っているといって良いのか?」
「いや、おそらくはアリシア・テスタロッサの意識などかけらもあるまい。そういう意味では彼女は落とし子というより憑かれし者に近い」
「しかし、何でまた力の回復に専念してるはずのルー・サイファーがこんなところにまで手を伸ばしてんだ?」
「理由は君だろう」
「は?」
合わせ鏡の神子事件において、まさかの敗北を喫したルー・サイファーは現在力の大半を失い本人が裏界から出ることがかなわない。
その裏界最強といわれるも休眠状態にあるはずの魔王がわざわざ遠く離れた世界に手を出す理由が分からない、といった柊に対してグイードが返した理由はあまりにも予想外のものだった。
とっさに反応できず呆けていた柊を正気に戻したのはグイードでもなのはたちでもなく、世界のゆれだった。
「これは!?」
「ジュエルシード!?」
「フム、どうやらあの宝石を意図的に暴走させているようだな。ルー・サイファーは自爆してでも君を殺せと命令したようだぞ」
「待て待て待て、なんで裏界最強がわざわざ一人のウィザードを殺すために行動した上に万歳アタックまで命令するんだ。ありえないだろうが」
柊の反応は至極当然のものだった、一ウィザードとしては。
だが
「君は自身の評価をもっとちゃんと把握すべきだぞ。アンゼロットの下で戦い続けた歴戦のウィザードにして合わせ鏡の神子事件において裏界最強の魔王ルー・サイファーに恐怖を刻み込んだウィザード。君ほどの英雄は世界全て探してもそうはいない」
周囲の認識は既に柊を一ウィザードだなどと見ていない。歴戦の、そして最強格のウィザード。実際、柊ほど魔王級のエミュレイターとの戦闘経験のあるウィザードは存在しないのだ。
「英雄なぁ、(アンゼロットへの)生贄の間違いだろうに」
…………実際のアンゼロットを知るものからは柊の認識は柊の言った通りのものだが、それはもう満面の笑顔でわざとらしく目元をハンカチでぬぐいながらアンゼロットの連行される柊を見送っていたりする。
「さて、あまり時間も無いようだ。魔導師のほうは私がやろう」
「まかせる。落とし子、アリシアのほうは俺がやる」
魔剣使いというクラスは魔法に弱く、高レベルの魔導師と一人で戦うにはあまり向いていない、ジュエルシードのこともある以上時間はかけられない。二対二よりも一対一での短期決戦のほうが勝率が高い。だが……。
「ちょっと待て!!」
それは自分達、ウィザードのみを戦力とした場合だ。柊たちはそれを当然としたが、この場にいるほかの誰もそれに納得など出来ない。
それを一番にあらわにしたのは、事態を理解し切れていない管理局側としては当たり前に、本来なら指揮を執っていて当然のクロノだった。
「なにかね?」
「なにか、じゃない!」
「落ち着きたまえ。確かに君ら管理局の納得できる状況ではないだろう、だがすでに紅い月があがった。いつからかは分らんが、この事件は既にこちらの事情なのだよ」
言外に、手を出すなと、関わるなといっている。それはなのはにもフェイトにも伝わった、しかしそれで納得などできるわけもない、当たり前だがどんなに事情が動こうともフェイトが当事者であることは変わらないのだ。
「蓮司………」
「手を出すなとはいわねぇ。つーか、あの宝石のほうをどうにかしてほしい」
「そそそそそそ、そうだね。あの石の封印は我々では無理だ。ということでたすけてー」
「どりゃ」
即座に手のひらを返したグイードに蹴りをくれ、柊はフェイトのほうを見る。同様になのはもフェイトを見つめている。
「母さんは、アリシアは……どうなるの?」
「何とかするさ、俺はあきらめるのも仕方がないからって犠牲を出すのも大嫌いだ」
言いながらも柊の内心はあまり穏やかなものではない、プレシアのほうはおそらく何とかなる、憑かれし者というのは珍しいものではないしそう長く憑かれていたわけではないようだ。だが、アリシアのほうはどう転ぶか分らない。
世界結界の綻びからまだ極わずかではあるが現れだした新たなウィザード、落とし子。落とし子についてはあまりにもデータが不足している。完全にあちら側に堕ちた落とし子を治療する方法など存在するかどうかも分らない。だが……
「あきらめるつもりはねぇ。可能かどうかなんぞ知ったことか。
……お前は、あきらめたくはないんだろ?」
一瞬の沈黙の後、フェイトは顔を真っ赤に染めカクカクと頷いた。周りで聞いていたなのは達まで頬を染めて柊のほうを見ている。
言った柊は不思議そうにしている、まったく意識せず理解もしていないからだ。
『おまえのためなら、不可能だって可能にしてやる』
そう言ったも同然の台詞を吐いたのだと。
答えが出ない疑問を振り切ったのか、柊は表情を引き締めると魔剣を構え雷の結界を越える準備を始める。
それにため息を漏らしグイードは柊以外に聞こえるように呆れを多分に含んだ呟きをもらす。
「あまり深く考えないほうが良いぞフェイト・テスタロッサ君。あの男は仲間と認識した相手のためなら本当に何でも出来る男だ。ただ一人の仲間と呼んだ少女のために、何の比喩もなく世界全てを敵に回して見せた男だからな」
言いながらグイードもまた剣を抜く、『霊剣グローリア』十字架をかたどった対侵魔用の霊剣である。
「なのはたちはジュエルシードを頼む、僕はプレシアの逮捕だ。
彼女はミッドの魔導師だ……かまいませんね?」
そちらだけでなくこちらの事情でもある。そう言いながらクロノはグイードを見る。
「かまわん、そして全員に一つアドバイスだ。常識を考えるな」
それだけ言って、グイードは柊と同時に飛び出した。
「おおおおおおぉぉぉっぉぉ!!」
気合と共に放たれた柊の斬撃とアリシアの箒がぶつかり合う。
どちらも自身の身長を倍する巨大といっていい武器を振り回しながらその重量に振り回されることはまったくない、それはあまりに現実味のない光景だった。
壁を蹴り、大穴の開いた天井の残りを蹴り、部屋の中を三次元に動き切り結んでいく。
炎がほとばしり、光が走り、風が舞う。
それはあり得ない光景だった。炎や光、風は別にいい、ミッド式でも再現は可能だ。だが二人の動き、特に剣戟は異常だ。
風斬り音がしない。
これが何より異常だ。あれだけの大質量を、あれだけの速度で振り回しながら空気を切り裂いていないということ。
ミッドでも、近接対人に特化したベルカ式でもありえない。不可能ではないが不可能でないだけ、それを同速の相手しかも規格外といえるほどのスピード同士で常に行い続けるなど。どれだけの処理能力があれば可能なのか。
だが、この状態も先のグイードのアドバイスに集約される。
常識を考えるな。
そもそもミッドやベルカとファー・ジ・アースでは魔法の質が違う。
生活にすら密着し魔道科学として常識としての現象を起こすミッド、ベルカ。
それに対しファー・ジ・アースの魔法は違う。常識を覆すことから始まるのだ。月衣を纏うウィザードはその意思と力が強くなればなるほどその傾向を増し、ある一線を越えればそれは物理法則といった概念すら崩す。空気のない真空の宇宙空間で炎が舞い、風が踊り、水は水のまま相手に襲い掛かる。
それを強く信じることが出来れば空気は、常識はウィザードの動きを阻害しない。
部屋の中を縦横無尽に飛び回りながらお互いがお互い全力でぶつかり合う。
先の雷撃の時間稼ぎはなんだったのかと問いたくなるほどだ。
(もしかしたら、そもそもこちらを短期決戦に引きずり込むためのブラフだったのか?)
落とし子は長期戦に向いているとは言い難い、というかはっきりと向いていない。戦闘が長引けば長引くだけ不利になっていくクラスなのだ。
一閃交差するたびに両者傷が増えていく、周りの空気に一切の影響を与えることなく、音としてエネルギーを周囲に逃がすことなく、いっそ恐ろしいほどに静かに、柊とアリシアは魂をぶつけ合う。
その様子を、柊とアリシアの人を超えたぶつかり合いを、一切の無駄のない泥臭くさえあるはずのそれを、なのはは寒気を覚えるほどの感嘆と共に見つめていた。
家の道場で父と兄、姉の稽古を何度も見た。そのせいかなのはは何気に目が肥えている。父達を見ていても思った、それは自身にはどうやってもたどり着けない領域だと。そのことを悔しいと思ったこともある、あんなにも美しいのにと。
そしてその美しさを超えた領域が目の前にある。
同じ領域にはたどり着けない、自分が得た力は方向性の違うものだから。
(でも、同じくらいの高さまで登ることは出来る)
あの力の助けに為れるほどの、あの背中と並び立つことが出来るほどの、彼と共に守るための場に立てるほどの、高みへ。
それは彼女の二つ目の誓いになった。誰かの護りに為るという誓いと共に。
それは一生を掛けて追いかけるに足る、目標だ。
「なのは……」
ユーノに声をかけられてハッと正気に返る。どれほど惚けていたのかは分らないが自分達がすべきことも決して蔑ろにしていいものではない。
見ると同様にフェイトもアルフに声をかけられ正気に返っているところだった。
柊のほうを見る表情にはある種の決意が見える。分る、きっと自分も同じような表情をしている。
その決意の表情のまま顔を見合わせどちらからというわけでもなく頷く。
「私は、きっとたどり着く」
フェイトの決意に応えるのはなのはの誓い。
「私は、絶対にあきらめない」
言って二人とも砲撃の準備に入る、下手に近づくと足手まといになるのがわかりきっているからだ。
目標は、暴走している二個のジュエルシード。
「アリシア……!」
「人の心配をしている暇などあるまい! この私が相手なのだからなぁ! 神の裁きを受けぐわぁぁぁぁーーー!!」
口上の途中、放たれた雷撃があっさりとグイードを飲み込んだ。
あまりの簡単さに雷撃を放ったプレシアのほうが拍子抜けするほどだ。
だがそれも一瞬。
「と見せかけて、はぁぁぁ!!」
何の痛痒もないかのように雷撃の結界を衝き抜けグイードの剣がプレシアに迫る。
その剣はプレシアの手にあるデバイスに因って止められるが、プレシアは高ランクとはいえ魔導師なのだ、腕力で聖職者としては異例の筋力を誇るグイードにはかなわない。
それはプレシアにも分っている、そしてそれゆえに接近戦の対策も十分にとってあるのだ。
押し切られる前に展開する足元の魔方陣、プレシアを中心に視界を埋め尽くさんばかりに展開されるフォトンスフィア。フェイトが展開できる最大量をはるかに凌駕する数を即座に展開する。オーバーSランクの大魔導師たるプレシアの実力は本物なのだ。
そしてそれだけでは終わらない。
とっさに距離をとったグイード、死角からの砲撃を仕掛けたクロノ、二人をフォトンの隙間から襲うのはプレシアの左手の甲に刻まれたファー・ジ・アースの攻撃魔装、ジャッジメントレイ。
「ぐっ!」
放たれた聖なる光は身をかわす暇を与えず二人に命中するが致命傷になるような威力ではない、どうやらプレシアそのものに対してとりついているエミュレイターはさして高位のものではないようだ。
それでもミッド式に加えファー・ジ・アースの魔法まで使うとなると厄介どころの話ではないが。
ジャッジメントレイの威力がそう大きなもので無い事はプレシア自身理解していた。故に追撃に放たれるのは慣れたミッド式、フォトンランサー。
視界を埋め尽くさんばかりに展開されたフォトンスフィアから体勢を崩したクロノとグイードに金色の閃光が放たれる。
それに対しクロノはその場で出来る最高のシールドを展開し、グイードは委細かまわず前進した。
前進するグイードの体を神々しいまでの光が包みこんだ。この光は神の力、神の鎧、使い手の身を害から護る祝福。聖職者のスキルの一つ、神鎧。
神鎧を持ってしてもプレシアのフォトンランサーを完全に防ぐまでには至らない。それでもなおグイードはその足を止めることはない。
全身から爆発させるかのごとくプラーナを放ち、それすら突き貫けて来る魔法に身を削られながら、その剣は攻撃も防御も貫いてプレシアに届いた。
「くうっ!! あなたは、なぜそこまでできるの、縁も所縁も無い世界でしょうに!?」
「エミュレイターと共にいるというのに我らへの認識が甘いな、プレシア・テスタロッサ。
ウィザードとは、世界のために命を掛けられるものだ! 護るべきものの為に魂を燃やすものだ!!」
血に濡れ、雷がその身を焼き、それでもグイードは吼える。
『世界は渡さない』と。
その姿はまさに護る者と呼ぶにふさわしいものだった。
………柊に余裕があれば『おまえそんな熱いキャラだったか?』とかツッコミが飛んできただろうが。
それでも常を知らないものから見れば、それは魂震わせるほどの意思の発現だった。
そして、その思いに魂を揺さぶられた戦士(被害者)が一人。
(あの人は言った、世界のために命をかけると、護るものの為に魂を燃やすのだと)
プレシアの魔法を受け、致命傷にはまだ遠いがかなりのダメージを刻まれ動くことが叶わず地に伏せているクロノは身を焦がすほどの悔しさを内に宿しながらそれでも眼前の戦闘から目をそらさない。
その姿は自身のあり方の終着点だと思えたから。
「ディバインバスター!!」
「サンダースマッシャー!!」
レイジングハートから桜色の閃光が、バルディッシュから金色の閃光が同時に放たれる。
その光はAAA+の魔導師たるクロノをして馬鹿魔力と言わしめたなのは達の魔力を存分に発揮した。一般的な才能しか持たない魔導師から見れば規格外としか言いようのないほどの力を込められたそれは、
ジュエルシードに到達する直前、ジュエルシードをかばうように斜線に割り込んだ黒い何かによって防がれた。
割り込んできたのは下級のエミュレイター、おそらく防御に特化した時間稼ぎの壁役。
なのはとフェイトの魔法は十二分なほどの力を有しているが、それでも常識の外から防御だけに専念するエミュレイターを削りきるには至らない。いや、時間と魔力を掛ければ可能だろうが、今回はその時間も多くはないし、封印のために魔力も無駄には出来ない。
なのは達の後ろにいるアルフにもそれは伝わったが、彼女も遠距離魔法は持っているがさして得意なものではない、現状では焼け石に水なのだ。
ユーノに至っては攻撃魔法は持っていない。………だが攻撃手段はあった。
ユーノは意を決する。これとて犯罪行為ではあるのだ、それでも今はそれにすら抗う場面だ。護るために。
『持っておきたまえ、必要になるかもしれん』
そういってグイードに託されたものをユーノは腰から引き抜く。
『分っている、そちらの法に照らし合わせればこれは犯罪行為だろう。しかし護りたいのだろう?』
意思を込め、魔力を込めそれをいまだなのはとフェイトの魔法に耐えるエミュレイターに向ける。
『ならば抗いたまえ。奪おうとするもの全てに、護ることを遮ろうとするもの全てに。
そのために、魂を燃やし引き金を弾け。君にならば可能なはずだ』
ユーノのうちから溢れてくるもの、それは本人には漠然と力としか認識できなかったが。見る人間が見ればそれが何であるかすぐに分った。
それは魂の力、命の力、プラーナだ。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
気合と共に引き金が弾かれた。
それはファー・ジ・アースにおいて開発された魔法の拳銃。『神罰銃』
魔力とプラーナを込められたそれは暴虐なまでの力を吐き出しエミュレイターに迫るそれは、神罰銃の固有特殊能力『神罰代行』その名そのものはユーノには知る由もなかったが、その能力は魂で理解していた。
その力を持って相手の防御を打ち破るのだ。
たがわずエミュレイターを打ち抜いたそれはその能力を発揮、それによってほころびを見せたエミュレイターの防御ごと、ディバインバスターとサンダースマッシャーは吹き飛ばした。
「ユーノ君すごい!!」
なのはの歓声に笑顔を持って応える。それでもまだ気を緩めるには早い。
「まだ気を抜いちゃダメだよ、封印を!!」
「うん!!」
しかし更にそれを遮る存在が現れる。それは黒衣の落とし子。
「アリシア!?」
柊が相手をしているはずのアリシアが間に割って入り、高らかに叫ぶ。
「時間切れだよ! 準備は整った!!」
その瞬間、世界が割れた。
その世界の割れ目から感じられる気配に、柊は覚えがあった。正直二度と会いたくはないと思っていたし、会うこともないだろうと思っていた相手だったが。
割れ目を更に広げるように突き出てきたのは金色の巨大な腕。
金色の魔王『ルー・サイファー』、その力の一部の顕現。世界結界の影響を受けないこの世界において、ありえないほどの猛威を振るうその力に、ただあるだけで世界が悲鳴をあげている。
もはや用もないのか、アリシアはジュエルシードの支配すら手放し恍惚の表情で荒れ狂う力の顕現を見上げている。
もはや一ウィザードにどうにかできる領域を軽く超えている。
それでも、柊 蓮司は柊 蓮司であるが故にあきらめない。
この力の一部だけでも、世界の一つや二つ軽く滅ぼされる。そして滅ぼした世界のプラーナを喰らい、ルー・サイファーは再びファー・ジ・アースにて復活するだろう。
そんなこと、許せるはずが無い。
ゆえに柊はその力を解放する。
こことは違う異世界において『オルクス』と呼ばれる能力。
自身に都合のよい領域と呼ばれる空間を広げる能力。
だが柊がウィザードであったが故にかこの能力は変質を見せた。領域ではなく、月衣を、もっと正確に言うのならば、『柊 蓮司という世界』を広げる能力へと。
広げられた世界の中にある十個の願いの宝石を強引に支配下に置き、その上でもう一つの切り札を切る。
「魔器開放!!」
柊の声に応え、柊の魔剣が、更には支配下にある願いの宝石の全てが、その真の力を解放する。
本来ならありえない。これも柊 蓮司を規格外の魔剣使いと呼ぶ理由の一つである。本来『魔器開放』は自身の扱う魔器のみ限定で力を解放する能力だ。しかし、この男は先の宝珠争奪戦においてそのウィザードの常識すら覆して見せた。持ち主の意思を持って託されたとはいえ、他者の魔器の真の力を解放して見せたのだ。
故にこの程度ならばたやすいことなのだ。主を定めていない魔道具を支配しその真の力を解放する程度ならば。
そしてジュエルシードはその全ての力を解放する。
砕け散ったジュエルシードの内包する次元干渉エネルギーの全てが指向性を持って柊の魔剣に集っていく。
そしてそれは巨大な一つの刃となった。次元断層という名の。
「おおぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!」
その刃は、暴威を振るう力とぶつかり合い一瞬の拮抗、そして切り裂いた。
空間をたたっ斬り、力をたたっ斬り、世界をたたっ斬ったその一撃は、有史以降初めて、裏界へと届いた。
あとが………
えーと、すんませんしたぁぁぁぁ!!
いやいろいろあったんですよ。年末からこっちに掛けて、星の海一とか超機大戦外伝とかテストとかレポートとか夜闇の魔法使いとか!?
ごめんなさい。
改めて、通りさん、風音さん、焔さん、めそさん、鳥取さん、HALさん、らんさん、トトさん、鴉さん、あるかいざーさん、Keyさん、羽州さん、心さん、応援ありがとうございます。こんなですが読んでくれると嬉しいなぁと心から思います。
さて、作中気になるところがいっぱいあったと思いますが広い心でスルーしていただけるととっても嬉しいです。特にグイード。この人正直いまいちつかめていない、失敗しただろうかと多々思っています。
あと前回の戦闘より柊が強いとか、これは侵食率100越えした上にブレイクしたからですが。
あとは、ユーノ? 神罰銃は以前から考えていたのですがプラーナはその場の勢いだったりします。
それでは、いまだ読んでいてくれる人がいてくださるのならばまた次回!!
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