[490] 機動戦士ガンダムSSED〜黒き閃光〜 第一話(ガンダムSEED×オリキャラ) |
- アイギス - 2008年02月24日 (日) 18時47分
ここは中立国オーブのコロニこに一人の少年がいた。彼の名はユウイチ・スメラギ、白髪を肩まで伸ばし、緋と蒼の左右違う瞳を持つ。その整った中性的な顔立ちから初対面の人間にはほとんど女性と間違われる彼は、現在、友人であるキラ・ヤマトとともにPCに何か打ち込んでいた。
機動戦士ガンダムSSED〜黒き閃光〜 第一話 崩れ去る日常
「キラ、そっちはどうだ?」
「まだかかりそう」
「そうか、此方はもうすぐ終わる、終わったら手伝おう」
「ありがとう、ユウイチ」
「気にするな、元はといえば……」
「おーい、キラー、ユウイチー」
呼ばれた方を見るとトール・ケーニヒとミリアリア・ハウが此方にやってくるのが見えた。
「こんなところにいたのかよ、カトウ教授がお前たちのこと探してたぜ」
「またぁー」
キラが疲れたように言う。
「見かけたらすぐに引っ張ってこいって。なぁに、また何か手伝わされているの?」
ミリアリアが楽しそうに言うが、手伝わされる私たちはたまったものではない。
「ったく、昨日渡されたのだってまだ終わってないのに」
キラが愚痴る。
『……早く、早く、早く逃げて!』
「おっ、また新しいニュースか?」
トールがキラのPCを覗き込みニュースを見る。
「ああ、カオシムだって」
私がニュースを見ると、リポーターのほかに、逃げ惑う人々の悲鳴、そして後ろにザフトのモビルスーツ映し出されていた。
「先週でこれじゃあ、今頃はもう落ちちゃてんじゃないの、カオシム」
「うん」
キラはディスプレイを閉じる。
「カオシムなんて、結構近いじゃない。大丈夫かな、本土……」
ミリアリアが不安そうに言うが、トールは気楽そうに
「近いったってうちは中立だぜ、オーブが戦場になるなんてことはまずないって」
「そう?ならいいけど」
『トリィ』
キラの肩にとまっていた鳥型のロボット、トリィが飛び立つのをキラは懐かしそうに見ていた。 世界は今、二つに分かれて戦争をしている。 ナチュラルの地球、コーディネーターのプラント、その二つに分かれて。後に『血のバレンタイン』と呼ばれる、地球連合軍がプラントの農業用コロニー「ユニウスセブン」を核攻撃した事件をきっかけにして、地球連合軍とザフト軍との戦争は地球圏全土を巻き込む大戦へと拡大する事になった。 私の両親はナチュラルで、私が連合の統治地域にいれば迫害を受けるため、オーブに移ったらしい。血で血を洗う戦争、鳴り止まない嘆きの声、一体、人類は何を望んでいるんだろう。 私が物思いにふけっていると、
「キラ?」
「うあぁ!」
トールがキラの顔を覗き込んでいた。
「なにやってんだお前、ほら、いくぞ。ユウイチも」
「わかった、行くぞ、キラ」
「ああ、うん」
私たちが、レンタルカーポートに近づくと楽しそうな同年代の声が聞こえてきた。 そのうちの一人、フレイ・アルスターがこちらに気付く。
「あれ?ミリアリア?」
「ねえ、ミリアリアなら知っているんじゃない?」
「なぁに?」
「やめてよったらもう!」
フレイと一緒にいた二人のうちの一人がミリアリアに尋ねる。フレイはそれを止めようとするが、
「このこったら、サイ・アーガイルに手紙もらったの!なのになんでもないって話してくれないのよ。」
その話に、キラは驚いていた。 そういえば、キラはフレイのことが好きだったなと、私は思い出していた。 そうこうしているうちに、突然後ろから咳払いが聞こえ、
「……乗らないのなら、先によろしい?」
後ろにいた女性から声をかけられた。その女性の後ろに二人の男性がいて、私は、その女性のどこか硬く感じられた声と雰囲気に、まるで軍人だなと思っていた。 俺たちは先を譲り、彼らが行ったのを見送るとフレイが声を上げ、
「もう知らないから!行くわよ!」
歩き出す。 それに付いていく形で他の二人も乗り込んでいった。 彼女たちが見えなくなると、トールが、
「手紙だってさ、サイが」
と言ってキラをからかい、
「えっ」
「私としては意外だな、フレイ・アルスターだとは」
私もそれに便乗する。
「けど、強敵だよ、これは。キラ・ヤマト君」
トールそう言い、キラを置いていく形で私たちは歩き出す。
「僕は別に……」
私たちはカトウ教授の研究室に入る。
「お、やっと来たな」
「ユウイチ!」
私たちはサイ・アーガイルとフェイト・ハインツに出迎えられた。 サイはこの研究室でのまとめ役で、私たちの中で最年長でもある。そしてフェイトは私の居候先の娘で、青の長髪に、翠の目をしていて、その顔立ちから周囲の人気は高いのだが、本人が、あまり外交的ではないため、ほとんど、カトウ教授のゼミのメンバーとしかいない。
「ユウイチ、これ、教授から」
「キラはこれ二人とも追加だってさ」
私たちがそうしているうちに、トールがカズイ・バスカークにドアのすぐ横にいた、気の強そうな女の子について尋ねる。
「……誰?」
「教授を訪ねてきたお客さんだよ。ここで待っててって言われたんだって」
そして私とキラは教授に渡されたデータの解析を行っていた。
その時ザフトがヘリオポリスに潜入していてここで作られていた七機のGを奪取しようとしていたことを知らずに。 ましてや、自分たちがそのガンダムに乗り、戦うことになるなんてわかるはずもなかった。
トールがキラにサイに手紙のことを聞かせようとしていると、 突然、部屋が揺れる。
「隕石でも降ってきたのか?」
ともかく、コロニーに振動が起こると言う事に全員危機感を覚え、部屋から出てエレベーターに向かう。しかし、辿り着いたエレベーターは使えず非常階段を行く。その最中にも、一回二回と足元から振動が伝わってくる。本当にこのコロニーが揺れているのか?非常階段を下りている途中で上がってきた職員にサイがこの揺れはなんだと尋ねた。
「ザフトに攻撃されてる! コロニーにMSが入ってきてるんだよ!」
ザフトが?なぜ、中立であるこのコロニーを? そういった疑問が浮かぶがそんなことよりも早くシェルターに避難しなければ。
そのとき、さきほどカトウ教授の部屋で会った名前も知らない少女が勢い良く駆けて行く。キラはその後を追いかけていった。 背中から聞こえた声に、先に行っててと言葉を残して。
「あいつは……、みんなは先に行っててくれ、連れ戻してくる」
「ユウイチまで、まあ、あいつなら平気か、ユウイチにキラを任せて俺たちは先に避難しよう」
突然工場区画へ走り出した少年を追って、キラは走っていた。 一度は追いついて腕を取ったのだが、振りほどいたときの衝撃で帽子が落ちた。そこから現れたのは少年の顔ではなく少女の顔だった。 それに困惑しつつも、キラは少女に戻ろうとさせる。しかし、少女は聞く耳持たず奥へと走り出してしまった。今更戻るにしても、シェルターはここからでは遠すぎる。それに、この場所なら工場のシェルターの方が近い。 キラはそう判断して、少女の後を追って工場中央部へと向かっていた。 やがて、キラはやや開けた空間へと辿り着いた。 目の前にあるキャットウォークから全景を見渡すと、そこには物資を収納するコンテナと、一種場違いなまでに巨大な何かを隠すための二つのシートが目に入った。
「これは……?」
そんな疑問を口にするが、それよりも視線は目の前にいる少女に向けられていた。 先を走っていた少女は手すりに縋りつきながら、慟哭する。
「地球連邦軍の新型機動兵器……やはり……!」
手すりを怒り任せに握り締め、少女は膝を落とす。 それは、信頼していた何かに裏切られたように寂しげだった。
「……お父様の……裏切り者ぉ……!!」
少女の恨みの声は思ったよりも通りがよかった。 その声は場内を反響し、その場にいた人間の注意を引き付けるものとなった。 キラの視界の中できらりと光を反射するものが映る。直感的にキラは少女の上に被さってよけた。 一拍遅れて天井に銃弾が着弾する。それに肝を冷やし、次にこの少女を助けなければと思い、手を強引に引いて走り出す。通路に逃げ込む。そこには運良くシェルターへのダッシュートがあった。半ば叩くようにコンソールのボタンを押す。 一秒経ってスピーカーから反応があった。
『まだ誰かいるのか?』
返ってきた答えに安堵のため息を吐き、口早に用件を伝える。
「はい! 二人います! 僕と僕の友達なんです!」
『二人!?』
キラの言葉に向こう側が驚いている。つまり、二人を入れるほどのスペースも無いと言うことか。数秒の間の後、スピーカーからは苦渋に満ちた声で応答があった。
『……残念だがこちらには二人を収容するほどのスペースは無い。左ブロックに37シェルターがあるが、そこまでいけるか?』
言われて、隣にいる少女を見る。 彼女の顔は憔悴に満ちていた。 とてもではないが、この状態の彼女を連れてあの戦場の中を突っ切れるとは思えない。駄目元でもいいからと一縷の願いを託してキラは叫んだ。
「なら、一人だけでもお願いします! 女の子なんです!!」
『了解した。すまん!』
それはキラに対してか、あるいは少女に対してのものか。とにかく、一人は助かる道が出来た。ロックを示すランプが赤から青へと変わる。エア音を立てながら扉が開いた。そこに少女を押し込める。
「なに……? お前……」
ここに来て漸く現在の状態を認識したのか、少女は虚ろになった瞳でキラを見上げた。少女の疑問を遮断するかのように扉が閉まる。
「いいから! 僕はあっちのシェルターに行くから。大丈夫だから!」
「待て!」
背中で罵声を聞き流しながら、キラは再びあの銃撃戦の中へと戻っていった。
「ちっ、キラたちはどこへ行った?」
私はキラたちを追ってきたが見失ってしまっていた。 その時
『……お父様の……裏切り者ぉ……!』
と言う声が響き渡り、その声の方向を見るとキラたちがいた。 私はキラたちのいる方向へ走り、キラと合流する。
「キラ、彼女はどうした?」
「シェルターに入った、僕たちも急ごう!」
「そうだな」
そうして私たちは走り出そうとするが、
「ユウイチ!」
フェイトが私を追ってきているのを知り、
「キラ!先に行け!私はフェイトと合流する!」
「あっ、ユウイチ!」
そんな声を後ろに聞きながら、私はフェイトのもとへと急ぐ。
「フェイト!」
「ユウイチ!」
「なぜ来た!みんなと一緒に避難しなかったのか!」
「だって、ユウイチが心配で」
私の避難するような口調にフェイトは萎縮しながらも答える。 こんな話は後だ、早く助かる方法を考えなければ! ふと下を見ると起動していない一機のモビルスーツが目に入る。
「フェイト!来い!」
私はフェイトを連れ乗り込む。 ここに来る前までは親父にモビルスーツのシュミレーターをやらされていたんだ、動かせるはずだ。 起動スイッチと思われるものを上げ、モビルスーツ、バレルを起動させた。
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