投稿日:2013年03月17日 (日) 18時17分
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私は西部劇は見ますが、西部劇の本は、あまり、というよりほとんど読んだことがありません。今回、ママデュークさんが提起された「膝射ちサム」問題に興味を持って、図書館で増渕健氏の本を3冊借り、まだ返却前で手元にあります。パラパラ見ていると、「西部劇100選」の「あとがき」に、ただならぬ文章があります。ちょっと長くなりますが、引用します。
「・・・執筆中におきた事件・・・ ある人名辞典で、私が担当したランドルフ・スコットの項目について、大先輩のN氏からお叱りを頂いたのである。 N氏によるとスコットに『ザ・ローン・カウボーイ』という作品はなく、ジャッキー・クーパーの『僕はカウボーイ』('34)と混同している・・・。 私はあきれてしまった。スコットの『ザ・ローン・カウボーイ』は、欧米の人名辞典に必ず載っている他、西部劇の研究書に、彼の出世作としてあげられている。『僕はカウボーイ』は、原題『ローン・カウボーイ』で、まぎらわしいのは事実だが、全く別の作品・・・混同しているのはN氏の方だ。 私は、あきれながら、途方に暮れた。『ザ・ローン・カウボーイ』は、日本未公開だから反論しようがない。私も、研究書という伝聞証拠によって、書いたのだし、『そんな作品はない』と決めつけられると、『これこれの本に出ています』と答えるしかない。しかも、厄介なことに、外国の文献をウ呑みしてはいけないというのが、N氏の論旨である。私はN氏の頑迷さをあわれみながら、日本で外国映画を語る空しさをひしひしと感じた・・・」
私はランディ・スコットのファンですが、寡聞にして「ローン・カウボーイ」という作品は知りません。IMDbその他の映画データベースでも、スコットのフィルモグラフィに「ローン・カウボーイ」というのは見当たりませんね。「西部劇100選」の出版は昭和51年で、現代のわれわれと違って、増渕氏もN氏もネットで即座に情報が得られる境遇でなかったのはお気の毒ですが、私としてはN氏に同調せざるを得ません。「スコットの『ザ・ローン・カウボーイ』は、欧米の人名辞典に必ず載っている他、西部劇の研究書に、彼の出世作としてあげられている」とあるのは、具体的にはどういうことでしょうね。
著書の「あとがき」としては少々異色の内容だと思います。当時、「N氏」としか書かなくとも、関係者には誰のことかすぐ分かるだろうし、頑迷といわれてはN氏も黙っていられないだろう、出版後にひと騒動あったかも知れない、どう結着がついたのだろう、などと勘ぐってしまいます。増渕氏もすでに故人であり、もう時効でしょうから、これについて何かご存知の方、お話しをお聞かせ頂ければ幸甚です。
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