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Dream On!

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ダレモイナイ コウシンスルナラ イマノウチ(ペ∀゚)ヘ
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[115]短編『二つのペンダント(前編)』≫メモオフ2&北へ。: 武蔵小金井 2002年08月30日 (金) 02時53分 Mail

 
 
 北の街、小樽。
 多くの愛すべき街並みを有する北海道の中でも、指折りの歴史と文化を誇る港町。
 流れる運河と並び立つ倉庫。そして、きらめく硝子の輝き。
 そんなロマンティックな街の片隅で……今日もまた、小さな出会いが生まれようとしていました。


「まったく……何をしているのかしら、私は……」
 少女のつぶやきが、運河を流れる午後の風に運ばれていきます。
 スラリとした長身。後頭部で結ばれた、長く美しい二又の黒の髪。通りすがる人々が、思わず振り向くほどの見事さです。
 でも、それだけではありません。均整ある面立ち、しなやかで張りのある四肢の美しさ……比べると地味な洋服にも関わらず、それらが少女の容姿をことさら際立たせていました。
 光り輝く……それとは少し違う、そう、月の光を浴びてきらめく硝子細工のような、鋭利な輝きを放つ美少女。
 寿々奈鷹乃、十九歳。
 自嘲するような笑みが、その口元に浮かびます。
「何をしている、か……」
 ずっと、聞かされ続けた言葉。それから離れたいと思った言葉。
 でも、実際に距離を置いてみても……それがまだ、心を重くしています。
 寿々奈さん、首を振って……鋭い瞳で、辺りを見渡しました。
「わかっているわよ……そんなこと。下らないことだって、理解できる……でも……」
 意識しないまま、胸元の……銀の鎖に触れる手。
 そこからこぼれ落ちた小さなきらめきを、ギュッと握り締めました。
 悠久の歳月を、ゆっくりと流れて来た運河。その雄大な景色に、彼女の瞳がかすかに震えます。
 身を翻して、寿々奈さんは……運河通りから、路地へと歩み去りました。
 後ろ髪をひかれる……そんな形容のままに、少女の横顔……せつなげなそれが、消えて行きます。


 人影の少ない路地を歩んでも、心の思いは消えませんでした。
 いや、むしろ静かであればこそ、重く心にのしかかって来ます。
 どうしてそうしなければならないのか。
 そうまでする価値があるのか。
 自分を曲げてまで、到達する意味があるのか。
 プライド?誇り?信念?
 それを犠牲にして得たものに、意味があるのか。
「そこまでして……私は……進みたいなんて……」
 思わない……?
 本当にそうなのか。それが……まだ、わからない。
 思えば、当初は自分でも冗談めかしていたそれでした。でも今となってみれば、そのことがもっとも重要なものになっています。
 たった一つの決断で、手に入るもの。そう、簡単なこと。
「でも……」
 それをしてしまったら、自分はどうなるのか。もしも、それをして……結果に、後悔してしまったら。
 すべてが終わってしまうかもしれない。自分の今までの、何もかもが。
 それが……
「怖い……」
 身震いし、そして、そんな自分に……寿々奈さんの瞳が険しくなります。
 嫌悪感。自分の中の何か、わからない何かが……許せない。
 寿々奈さんの拳が握られました。自然と、足取りが早まります。
 にぎやかな小樽の通りを彼方に、今また小さな裏路地を曲がって……
 そこで、かすかな悲鳴が寿々奈さんの耳に届きました。
 紛れもない女性の叫び。そして、下卑た男たちの声。
 鋭さを増した寿々奈さんの視線が見据える先に……一人の少女がいました。
 青い目をした、美しい少女が。
 

「だからさぁ、おじちゃんたちといいトコロに行こうって!」
「パツキンの姉ちゃん、おじさん金持ちだよ?お小遣いあげるよー!」
 にぎやかな表通りに比して、バーの並ぶその場所は人通りもありません。
 午後の下り、まだ日も高いと言うのに……泥酔している二人の男が、一人の少女を囲んでいます。
 目立たない単色の衣服に、大きな紙袋。それでもなお、その少女は異彩を放っていました。
 白い肌。ほっそりとした腕と指先。そして、青い瞳と……何よりも見事な輝きを放つ、黄金色の髪。
 クセのある髪を、無造作に縛っただけの髪型も……その少女の美しさを隠すまでにはいたっていません。
「ね、どこの店で働いてるの?おじさん、チップ、メニーマッチだよ?」
「や、やめて……ヤメテクダサイ……!」
 酒臭い息を吐いて、自分に迫って来る二人の男に……少女は、悲痛な表情で首を振ります。
 抗う、たおやかな腕。きめこまかな肌が上気し、必死の姿勢で男たちを払いのけようとします。
 そんな彼女の様子に、むしろ調子に乗ったのでしょうか。男たちが……さらに下卑た声を上げて迫ります。
「は、放して……アッ!」
 身を揺すった少女の手から、紙袋が落ちて……路上に転がりました。
 中からこぼれ落ちる、包装を施されたたくさんの小箱。かすかな、何か涼やかな音が……その場に響きました。
 顔色を変える少女に……気にする様子もなく、さらに迫っていく二人。
 と、その時。
「ちょっと……待ちなさい!」
 鋭い叫びが、男たちを一喝しました。
 振り返るそこには、腕を組む長い黒髪の美少女。
 毅然とした物腰は、言葉以上の迫力をもってその場を威圧します。
「な、なんだぁ?」
「誰だぁ、お前は。おぢさんたちはぁ、このギャルと楽しく……ひっ!」
 有無を言わせぬ、怒りに満ちた眼光が……二人をねめつけます。
「まったく……どこにでもいるのね、最低な男って。人がせっかく観光を楽しんでいるっていうのに、いい気分がだいなしだわ。」
 聞く者を心胆寒からしめる冷ややかな声が、現われた少女……寿々奈さんの唇から発せられました。
「な、なんだと……」
「真っ昼間から酔っぱらっているあんたたちは、さながら夏のカメムシね。ところかまわず卵を生みつけたがる……おまけに臭い。さっさとこの場から消えて。目ざわりだわ。」
 冷徹な瞳が、男たちを真っ向から射抜きます。
 思わず、後ずさる二人。
「な、何を言ってやがるんだぁ、こいつは……」
「そうだぞぉ、おじさんたちはなぁ……」
「フン。その子に絡む様子なんて、さながら餌を見つけたアブラムシかしら。大人だからって、何でも許されると思ってるの?何か文句があるのなら、私が聞くわ。さあ、何なりと言ってみなさい!」
 断固たる口調。混沌としていたその場の空気が、凍りつきます。
 さらに、その雰囲気に感化されたように……数少ない通行人の視線が、その場に集まり出しました。
「おい、何だかマズそうだぜ……い、行こう。」
「なっ、なんだってんだ……おじさんはな……!」
 去り行く、千鳥足の二人組。
 それでもなお、奮然として男たちの背を睨みつけている、寿々奈さんです。
「まったく……あっ……」
 そこで、残された人物……胸に手をあてて、呼吸を整えている少女に駆け寄りました。
「あなた……大丈夫?あの男たちに何かされなかった?あ、それより……言葉はわかるの……かしら……?」
 どう見ても日本人ではない相手に、戸惑う寿々奈さん。
 と、金色の髪の少女が、顔をあげて……怯えていた表情を払うようにして、うなずきました。
「ハイ……わかります。アリガトウ……わたし、気を付けて歩いていたのですけど……あの人たち、酔っていたみたいで……」
「ううん、あなたは悪くないわ。それより……怪我はない?」
「ハイ。ダイジョウブです……あっ!それより、荷物が……」
 落ちた紙袋と、中から転がった小箱たち。
 散らばってしまったそれを、急いで集める二人です。
「汚れてしまっているわね……まったく、あの男たちときたら……」
「いえ。わたしの不注意もありました……重くて、暑かったので……チカミチをしようと思ったのが、いけなかったんです。」
 自責の思いにかられているような少女に、苦笑いのような表情で最後の箱を差し出す寿々奈さん。
「はい。でも、これなんかは包装が破れてしまっているけど……中で音もするわ。」
「えっ……」
 途端に、心配そうになる色白の美少女。
「貸してみて……くれますか?」
 うなずく寿々奈さんから受け取った箱を、じっと見て……少し振ってみます。
 カラカラと、軽い音が。それを聞いて、さらに心配そうな顔になり……少女は包装を解きはじめました。
 丁寧にそれを解いて……中に入っていた小さな化粧箱を、白い指が開きます。
 銀のチェーンが鳴って、持ち上がる光。
 夏の日差しの中で……それが、まばゆい光を放ちます。
「あっ……」
 それは、細工物のペンダントでした。曲線を描く、半透明の硝子細工。
 少女は、それをじっと見て……次に日にかざすと、四方から見定めていきます。
 青い瞳には、今までの彼女には見られなかった……何か、別の様相が宿っていました。
 その真剣な様子に、声をあげかけた寿々奈さんも黙して待ちます。
「よかった……」
 安堵の声と共に、少女が胸を撫で下ろしました。
「壊れていなかった?」
「ハイ。固定するピンが外れていただけで……ダイジョウブみたいです……」
「そう。よかったわね。それは……ペンダントかしら?」
「えっ……はい。そうです。あの、よかったら……見てくれますか……?」
 はにかむように、差し出されるペンダント。寿々奈さん、うなずいて受け取りました。
 鎖を掲げ、先程の少女のように、光にかざすようにして見つめます。
 その一瞬、寿々奈さんの大人びた横顔が……無垢な少女のようにほころびました。
「この形は……スズランなのかしら……?」
 つぶやきに、少女がうなずきます。
「でも、スズランは赤くないわ……」
「えっ……」
 思わず、声を失う少女。ですが、その前で……寿々奈さんの口元が、かすかに緩みます。
 ペンダントを見つめる瞳が、紅の硝子の輝きを受けてきらめきました。
「……でも、とても奇麗。薄緑色の茎と葉、真っ赤な花……たおやかだけれど、決して折れないような強さ……ひたむきさを感じるわ。心の……ううん、情熱の赤い色、かしら……白いスズランに秘められた、本当の色……魂みたいなものをあらわしているよう……」
 そこで、ハッと気付いたように顔を上げる寿々奈さん。
 目の前に、驚いた顔でこちらを見つめている金髪の少女。
 寿々奈さん、思わず頬を染めます。
「ご、ごめんなさい、見せてもらっただけなのに……どうもありがとう。」
 硝子細工を受け取って……少女がほほえみました。
「いいえ。お礼を言うのはこちらの方です……このペンダント、キレイだって誉めてくれて……アリガトウ……」
「そ、そんなこと……でも、ありがとうって……」
「わたし、硝子職人なんです……このペンダントは、わたしが作ったものです。だから……あなたのカンソウが聞けて、わたし……嬉しいんです。アリガトウ……」
 自分とそれほど歳の変わらないような……いえ、むしろ歳下にすら見える相手の言葉に、驚く寿々奈さん。
「そ、そうなんだ……」
「あなたは……こういったアクセサリー、お好きなのですか?」
 まだ驚きを隠せないでいる寿々奈さん、曖昧にうなずきました。
「え、ええ、わりと……後輩、いえ……友達と、ファンシーショップに行った時なんかは、よく見ているわ。でも、私が欲しくなるようなものは、大抵値段が高いから……あまり買わないけど。」
「まぁ……でも、そうですね。こういったものは、ネダン、高くなってしまうんです……ごめんなさい。」
「そ、そんな。謝らないで……それこそ、あなたのせいじゃないわ。」
 面食らったような寿々奈さんに、笑顔に戻る少女です。
「ごめんなさい。あ……また、謝ってしまいましたね。フフ……」
 そこで、ふっと思いついたように表情を変えました。
「そういえば、まだ名前、言っていませんでした……ごめんなさい。わたしは、ターニャ・リピンスキーといいます……ターニャと呼んで下さい。」
「私は……寿々奈鷹乃。」
「スズナ……?」
「鷹乃でいいわ。その……ターニャさん?」
 寿々奈さんの発音に、ターニャさん……微笑して首を振ります。
「ターニャでいいです。でも、スズナというのは……ニッポンの、植物の名前ですね。」
「え……?そ、そうだけど……」
「スズナ……キレイな名前です。確か……春のナナクサですか?」
「そうね……すずなはカブのこと。でも、それは野菜よ。」
「野菜でも、美しいものは美しいです……ニッポンには、美しい名前がたくさんありますね。」
 その単語に、何か大きな意味があるように、大きくうなずくターニャさん。
「あ、ありがとう……自分の名前を、そういう風に考えたことはなかったわ。」
「モノにかぎらず、言葉や、歌や、音楽や……ニッポンの漢字も、わたしは好きです。ベンキョウが足りなくて、まだタクサンは書けませんけど……そういった、この国の美しいものたちにふれることは、とてもいい経験になるんです。」
 相手と……そして自分に言い聞かせるような、ゆっくりとしたターニャさんの言葉。
 それを聞いた寿々奈さん、照れたように……小さく、肩を持ちあげてみせました。
「なんだか、くすぐったいぐらいだけど……日本人として、嬉しいわ。でも、あなた……急いでいたのではないの?」
「あっ……そうでした。これを、持っていかないと……」
「でも、重そうね。よかったら私、手伝いましょうか?」
「えっ……いいのですか?スズナは……ヨウジ、ないのですか?」
 それを聞いて、笑って首を振る寿々奈さんです。
「ううん。私、今日は一日オフだから。あらかた観光も終わってしまったし……あなたさえよかったら、手伝わせて。」
「あ……はい。アリガトウ……」
 ターニャさんの手から、紙袋を受け取る寿々奈さんです。
「どこに行けばいいの?さすがに、地元じゃないから……」
「はい、アンナイします……すぐ、向こうです。」
 うなずきあい、歩き出す二人。
 小樽の街に、ゆっくりと消えて行きました。



 夕暮れ。
 小樽の街並みと、遥かなる異国へとつながる港。
 それを見下ろせる、展望台と一体になった公園。
 紅に染まったそこに、二人がいました。
 交わされる、軽やかな会話。
「……スズナは、キセキが好きなのですね。イシのクラ、行きましたか?」
「もちろん。とても楽しかった……前から小樽に憧れていたけど、一番行きたいのがそのお店だったの。時間を忘れて、見入ってしまって……まわりのお客さんに、おかしな顔をされたわ。」
「まあ、うふふ……」
「でも、硝子工房も素敵だった……北一硝子、大正硝子館、それに……さっき見せてもらった、あなたの運河工藝館……どれも、とても美しい輝きに満ちていて……職人さんの熱意が、伝わってくるようだったわ。ああいった場所で仕事ができることって、とてもうらやましい。」
「アリガトウ……嬉しいです。」
「もっとも、おかげでけっこうお金も使ってしまったような気がするわ。特別に気に入ったものだけ買ったのだけど……来月は倹約しなきゃ。」
 言いながら、ポケットの中から小さな袋をいくつか取り出してみせる寿々奈さん。
 青、緑、橙……中に収められた貴石や硝子細工を、確かめるように。
「あ……スズナ、それは……?」
 ふと取り出した、それらの戦利品の中に……銀の鎖のついたペンダントを見つけるターニャさん。
「あ、これは……買ったものじゃないの。前から持っているものだから……」
「キレイですね……見せて、もらえますか?」
「えっ……ええ……」
 どこか、ためらうようにして……それでもうなずき、ターニャさんの手にそれを渡します。
 銀の鎖のついた、紫に輝くペンダント。
 夕焼けの光を受けて、それが……とても美しく輝きました。
「アメジスト……」
「ええ、そう……でも、たいしたものじゃないから……」
「いいえ……これは、とても良いものです……カットされた面も、テイネイで……紫の色あいと、クッセツする光の輝きが、とても見事にチョウワしています……」
 一つ一つ、確かめるように語るターニャさん。
「スズナ。これはどこで作られたものか、わかりますか……?」
「あ……ううん。わからないわ。ずっと、小さかった頃に……もらったものだから。」
「そうですか……でもきっと、腕の良い宝石職人の手で、とてもテイネイに仕上げられたものだと思います。一面一面の磨きかたも、素晴らしいものですから……」
 差し出されるペンダントを、受け取る寿々奈さん。
「そ、そうなんだ……」
「はい。それに、ニッポンでは、紫はとても高貴な色です。スズナの美しさに、とても栄える色だと、わたしは思います……」
「そ、そんな……私が……」
「いいえ。スズナは、見ず知らずの土地で、わたしを助けてくれました……とても、心のキレイなひとです。そのアメジストも、きっと……スズナの心を映し出して、それだけキレイに輝いているのではないでしょうか。」
 口にするのもためらってしまうような、賛辞の台詞。
 それを真顔で口にされて、思わず頬を真っ赤に染める寿々奈さんです。
 向き直った先の、海に沈む夕焼けのように……赤い、彼女の横顔。
「あ、ありがとう……でも……」
 ふっと、その横顔に、小さな何かが横切ります。
「でも、これは……私にとって、枷でもあるの……」
「カセ……?」
「そう。私には、父も母もいない……幼い頃に、二人ともいなくなってしまったの。育ててくれた叔父夫婦が、今の私にとって親代わり。だけど、このペンダント……これは、父が……本当の両親が残してくれた、たった一つの品物。でも、それは同時に、ずっと忘れたいと思っている、私を捨てたあの人たちの思い出……」
 遠い記憶。夕焼けに照らされた寿々奈さんの瞳が、朱に輝いていました。
「だから、これは枷なの。お前は捨てられた子なんだ……いつも、私にそう言い聞かせる、ね。フフ、そんな物を肌身離さず持ち続けているのも、変な話だけど。」
 告白。今まで誰にも、決して口にするはずもなかった、心の思い。
「あっ、ごめんなさい。あなたには関係ないことだし……わけのわからないこと、言ってしまったわね。忘れて。」
 苦笑いする寿々奈さんに、ターニャさんが、ゆっくりと首を振りました。
「イイエ……でも、スズナ。そのペンダントは、あなたにとってカセであるのかもしれないですけど……キズナでもあるのではないですか?」
「えっ……」
 驚いて、見返す寿々奈さん。
 夕日の中で、ターニャさんはほほえんでいました。
「あなたのご両親が、どんな方々だったのか、わたしは知りません……でも、きっと……心のどこがで、スズナのことを大切に思っていたはずです。自分のコドモなのですから……だから、そのアメジストの光は、あなたのリョウシンが、あなたを愛してくれていた証……キズナ、そうなのではありませんか?だから、スズナもそれを、タイセツにしている……」
「か、勝手なことを言わないで……私のこと、何も知らないのに。あんな人たちのこと、私は……!」
 思わず、語尾を荒げる寿々奈さん。ターニャさんが、うつむきました。
「ゴメンナサイ。よけいなコト、言いました……」
「あ……そんな、私の方こそ……」
 恥じらうターニャさんに、悔いるように唇を噛む寿々奈さん。
 手にした紫水晶を、じっと見つめて……そして、瞳を閉じました。
 様々な記憶、今までの日々が……彼女の心を過ります。
「でも……ううん、そうね。きっと、あなたが正しいわ。私がこれを捨てられないのは、両親への思いを断ち切れないから……過去がどうあれ、親は親だもの。私にとって、かけがえのない両親……そういうことね。」
「スズナ……」
「ありがとう。不思議だけど……逢ったばかりのあなたに、そう言われて……はじめて、納得できた気がする。叔父夫婦には感謝しているし、愛しているけど……本当の両親のこと、忘れることはできないのね……」
 心からの笑み。そして、二人に流れる夕凪の風。
 北の夏を伝える風は、冷ややかなようでいて……どこか、暖かいそれでした。
「綺麗な夕焼け……」
 寿々奈さんが、長い髪を散らして街を見下ろします。
「ホントウに、そうですね……」
 ターニャさんもまた……金色の髪をかきあげて、美しい夕日を見つめました。
「そうだ……ね、よかったら夕食、いっしょにどう?時間があったらでいいけど……」
「エッ……?」
「せっかくだし……いいお店、ないかしら。話も聞いてもらったし……私が、御馳走するわ。」
「はい……嬉しいです。」
 快く承諾するターニャさんに、寿々奈さんも嬉しそうにうなずきました。
 丘の公園から、長い影のシルエットが消えて行きます。
  
 


[116]短編『二つのペンダント(後編)』≫メモオフ2&北へ。: 武蔵小金井 2002年08月30日 (金) 02時55分 Mail

 
 
 日も落ちた小樽の夜。ガス燈の灯火が照らす、美しい運河。
 通りに面した、小さな料理屋の窓際。アンティーク調のテーブルに、二人は着いていました。
「あの……スズナ?」
「なに?」
「とても、よく……食べるのですね?」
 まだ手のつけられていないティーカップを前にして、ターニャさんが目をパチパチと。
 寿々奈さん、店員が両手に持つトレーに、最後の皿を返しながら……首をかしげました。
「そうかしら……?」
「ハイ。トテモ……びっくりしました。」
「うーん……軽く、お腹に入れた程度だけれど……」
「ケイショク……ですか?」
 イヤミでなく、素直にそう言っている様子のターニャさんに、かえって動じたのでしょうか。
 寿々奈さん、コホンと咳払いをして……ドリンクを傾けます。
「あなたは……あれだけで足りるの?」
「ハイ。あれでも、タクサン食べた方ですけど……」
「人の食生活に口を出すつもりはないけれど……もう少し食べた方がいいと思うわ。」
「はい……そうですね。」
「あ……気を悪くした?」
「いいえ。そんなコト……気遣ってくれて、嬉しいです。」
 あくまで素直なターニャさんに、寿々奈さんは小さくため息をつきます。
「でも……確かに私も食べすぎなのかもね。最近、よく言われるようになったし……」
 思いを巡らせているような寿々奈さんに、ターニャさんがほほえみます。
「でも……スズナは太っていませんよ。スマートで、とてもキレイです。」
「あ、ありがとう……でも、外見からはわからないでしょう。私、運動してるから……本当は、足の筋肉とか、かなり張ってるのよ。」
「ウンドウ……スポーツですか?」
「えぇ……水泳を、ちょっとね……」
 どうしてか、不意に声のトーンが落ちる寿々奈さんです。
 今まで、ずっと忘れていたことを……思い出してしまったように。
「スズナは……泳ぐのですね?うらやましいです……」
「あなたは?プールとか、行かないの?」
「北海道、サムイですから……それにわたし、スコシ体が弱くて……あまり……」
「そう……でも、水に……海や川でもそうだけれど、水に触れるのはいいことよ。」
「ハイ。プールや海、キライではありませんから……コンド、スズナの泳いでいるところを見てみたいです。」
「えっ……!」
 寿々奈さんの顔に、大きな動揺の色が走りました。
 笑顔のターニャさん、そんな相手に小さく首をかしげます。
「アノ……どうかしましたか?わたし、何か……」
 取り繕うように首を振り、寿々奈さん……どこか力なく、笑いました。
「う、ううん……あのね、最近、そのことでちょっと気が滅入っていて……ごめんなさい。」
 心配そうな顔になるターニャさんに、さらに首を振ります。
「たいした悩みじゃないの。本当に、下らないことよ……笑ってしまうようなことだから。」
「でも……スズナにとっては、とてもタイセツなナヤミゴトなのではないですか?」
 その言葉に、驚いたように顔をあげる寿々奈さん。
 自分に注がれるブルーの瞳を見つめて……そして、うなずきました。
「えぇ、そうね……たぶん、そう……」
「わたしでよければ……頼りないかもしれませんけど、ソウダン……」
「ううん……つまらないことだから。人に話すようなことじゃないの。本当に……」
 ためらいつつ、胸元を……そこから下がっている鎖を押さえるようにして、寿々奈さんがつぶやきます。
 また、少しだけ時間がたって……
 口を開いたのは、ターニャさんでした。
「スズナ、わたしもムカシ、あるコトで……ずっとずっと、悩んでいました。だれにも言えずに、ひとりで悩んで……そのせいで、まわりのコトも、ジブンのコトも、見えなくなって……」
 ターニャさんの白い指が、静かに持ち上がります。
 細い首筋に触れた指先が、ゆっくりと滑り落ちて……
 胸元から、銀色の鎖と共に……小さな輝きが現れます。
 小さいけれど……なにものにも陰ることのない、紅の光。
「それは……?」
「これは、私の父の残してくれた、たった一つのカタミ……夕焼けの赤という色でできた、赤硝子のペンダントです。けれど、父はこの赤色の硝子のセイホウをのこすことなく、死んでしまいました……」
 息を呑む、寿々奈さん。
「わたしはこの、父が作り出した夕日の色を出すことを夢見て……それだけをひたすら願って、この国で硝子を吹き続けました。でも、どうしてもこの色は……父の残した夕焼けの赤は、作り出せなかった……」
 差し出される白い手。寿々奈さん、緊張しながら……それを受け取ります。
 紅の赤。小さな金色のハートを封入した、美しいペンダント。
 それを一目しただけで、これを作ったものがどれだけの技量を持っていたか理解できるような、精巧な装飾。
 何よりも、沈む太陽を封じ込めたような真紅の輝きが……見るものを魅了します。
「奇麗……本当に、さっき公園から見た夕焼けのよう……」
 そこで、思い出される色。
「さっきの、スズランの赤い色と……同じ……違う?」
 似ているような、でも、どこか違うようにも思える、赤い輝きの記憶。
 それを聞いて、ターニャさんが瞳を細めました。
「スズナ……もしも、今のあなたのナヤミを解決するホウホウがあるとしたら……そのホウホウを、知りたくはないですか?」
 突然のターニャさんの問いに、寿々奈さんが目をまたたかせます。
「それは……知りたいけど。でも……」
「では、私がそれを教えますから……そのかわりに、スズナの持っている、あのアメジストのペンダントを、私にくれますか?」
 ターニャさんの言葉に、寿々奈さんが色を失います。
「そ、そんな……そんなこと、できないわ……」
「でも、ナヤミゴトはカイケツするのですよ?」
「たとえそうだとしても……ううん、これだけは譲れない。私の……かけがえのない、宝物だから……」
 ターニャさんがほほえみました。優しく。
「そうですよね、ごめんなさい。今のは、ウソです……でも、わたしにとっては、ホントウのことだった……」
「本当……?」
「はい。わたしが、この赤い硝子の製法を探していたとき……ある大きなコウボウで、言われました。そのヒトが言うには、このペンダントを大学でコマカク調べれば、かならず、夕焼けの赤のセイホウがわかるというのです。」
 ターニャさんの笑みが、かすかに揺れました。
 寂しそうに、そして……悲しそうに。
「でも……そのためには、このペンダントをこわさなければならない、そう、聞かされました。」
「えっ……!」
 驚く寿々奈さんに、ターニャさんが悲愴な面持ちでうなずきました。
「わたしは、とても悩みました。ずっとずっと、この国に渡ってから、探し求めた父の赤い色……それが、やっとわかるかもしれない。でも、そのためには、父の残してくれた……最後の赤い色を、こわさなくてはならないのです。父が残してくれた、ただ一つのカタミを……」
「そんな……」
 寿々奈さんもまた、その話に動揺を隠せないようでした。
「ガラスは、カタチあるものは、こわれるから美しい……そう言う人もいますし、わたしもそう思います。でも……やっぱり、わたしにはできなかった。自分から、父の思い出を失うことは……勇気が足りないだけ、セイホウがわかったら、また新しく作ればいい。そうも思いましたし、みんなからも言われました。でも……できなかった。だって、それが……わたしにとって、何物にもかえがたい、父とのキズナだったからです。」
 寿々奈さんが、鎖を握った手を差し伸べていました。
 それを大事そうに取り戻す、純白の手。
 手のひらを透かすように、ランプに照らされたペンダントが赤くきらめきます。
「父が、わたしの誕生日に贈ってくれた、大切なペンダント……その父のヤサシサを、捨てられるわけはなかったんです。スズナのペンダントと同じ……父がわたしを愛してくれた証、かけがえのないキズナだから……そんな、父の優しいココロを捨てて、夕焼けの赤のセイホウを手にしたところで、私にこれと同じ……ココロのこもった、暖かい赤色……夕焼けの赤を作り出せるはずはなかったんです。」
 寿々奈さんの手にも、いつのまにか……紫の輝きが乗せられていました。
 それを見つめ、そしてまた、自分の手のひらの紅の輝きを見つめて、ターニャさんが続けました。
「そう理解したとき、わたしは気が付きました。わたしは今まで、父の作り出した夕焼けの赤、そのセイホウばかり求めて、ジッサイにそれを吹き、形にするというコト……タイセツなことを、何も学んでいなかったことに。わたしは父の色を作り出すホウホウだけ考えて、自分自身の道を……硝子職人としての自分の色を、まったく考えていなかったんです。」
 恥じらうように、そして……確かめるように。
 ターニャさんの青い瞳が、潤んでいました。 
「自分の……色……?」
「そうです。昔、父に言われたことがあります。ヒトには色がある。ターニャの色は、どんな色だろうね……って。」
 琥珀色のティーカップを見つめて、彼女の唇が揺れます。
「わたしは、赤い色が好きです。父の作り出した夕焼けの赤が、世界で一番好きです。だから、わたしは……わたしにできるせいいっぱいの美しい赤で、あのスズランを染めました。スズランは確かに赤くない。でも、わたしは、どうしても赤く輝くスズランが作りたかった……わたしがはじめて、一人の硝子職人として、作り出した作品なのです。」
 たおやかな少女の瞳に、はっきりとした誇りの光が宿っていました。
 それを見つめたまま……寿々奈さんは、先刻の夕日と……硝子のスズランを思い出していました。
 小さな、それでも確かにそこに咲いていた、紅の花弁。
「そんなとき……あのスズランを見た、あるヒトが言ってくれました。とてもキレイ、夕焼けの赤い色みたいだ……って。夕焼けに揺れるスズランの花が、真っ赤に照り返されているみたいだ……って。」
 小さな雫。テーブルの上のティーカップに、波紋が散ります。
「わたし、その時に……やっと、わかったんです。夕焼けの赤が、父の色が、ホントウにある場所……わたしが作り出す硝子、自分自身の作品の中に……そこに、父の色が……この赤い色が、生きているんだって……」
 震える声。優しく、差し出されるハンカチ。会釈して、それを受け取るターニャさん。
 強く……ギュッと握りしめられた、それぞれの手のペンダント。
「父の色は、わたしの色……わたしの色は、父の色なんです。」
「あなたの色が……お父さんの……」
「はい。わたし、おぼえています……はじめてコウボウで、父が硝子吹きのホウホウを教えてくれたときのこと。わたしが作った硝子ダマを、父が誉めてくれたこと……あのときの父の優しさを、ぬくもりを、わたしは忘れません。そのわたしが吹いた硝子……作り出した作品は、わたしだけじゃない……父のものでもあるんです。父の父、私の祖父から曽祖父、ずっとずっと、何代も前まで……何百、何千という硝子職人が、そうして……硝子細工を作ってきたんだって。」
 再び潤んだ瞳を閉じる、金色の髪の少女。
「だから……わたしも、作り続けます。そして、いつか……わたしがヒトにものを教えられる立場になったら、そのヒトたちに、このコトを教えようって……わたしたちは、一人で硝子を作っているんじゃないって。ずっとずっと、こうして……作り続けてきたんだって。」
 ずっと喋り続けていたターニャさんが、そこで……言葉を切りました。
 どこか、疲れたように……胸元に手をあてて、呼吸を整えます。
「あっ……ゴメンナサイ。かってに話してしまって……ツマラナイ、話でしたね……」
 目尻をまた拭いて、ターニャさんが頬を染めました。
「ううん、そんなことない。そんなことないわ。でも……」
「スズナ……?」
 寿々奈さん、何か……じっと考え込むように、視線が窓の外へと。
 夜のとばりを迎えた、遥かな運河のきらめき。
「自分だけじゃない、か……ずっと、そうして……それが……そうなのね。」
 何かに気が付き……納得したように、寿々奈さんが大きくうなずきます。
「ありがとう……」
「えっ……?」
「私、つまらないことでずっと悩んでいたの。周囲と対立して……つきまとう連中が嫌で嫌で。そうまでして、早く泳ぐことにこだわって、何の意味があるのかって。私は私、自分の好きにして何が悪いのかって……結果がどうなろうと、人の知ったことじゃない、私一人の責任じゃないかって……そう、思っていたの。だから、合宿所を飛び出して……もう、好きにしてやろうって……」
 寿々奈さんの口元が、かすかに持ち上がりました。
「でも、あなたの話を聞いて……自分のことばかり考えていたって、わかった気がする。そんな、つまらないことで……フフッ、水泳までやめようかって思っていたなんてね。」
 心配そうなターニャさんに、力強くうなずきます。 
「私は一人じゃない。先輩も、後輩も、コーチも……応援してくれる人たちもいる。確かに窮屈だけれど、でもそれは、私が望んでこの道を歩いているから……私自身が選んだ道だから。今のあなたの話で、それに気付いたの。だから……もう、大丈夫。」
「スズナ……」
「悩みなんてたいしたことじゃない。それ自体が嫌だったんじゃない。でも、それを理由にして、私はずっと逃げていたのね。他のことから目をそらして、自分への言い訳にして。大好きな水泳なのに。自分自身で選んだ、道なのに……」
 ガタンと、立ち上がる寿々奈さん。
「ごめんなさい、私……もう行かなきゃ。札幌で、みんなが待っているから……」
 驚きつつ、ターニャさんもまた、ナプキンをたたんで立ち上がりました。
 会計を済ませて、夜の小樽へ。
 通り過ぎる車と、減ることのない観光客。
 その中で、二人は対峙し……互いに見つめあいました。
「ありがとう……ターニャ。あなたに逢えてよかった……」
 差し出される手。
 それが、短い間だけ……触れ合います。
 あくまでも静かに、ターニャさんもまたうなずきました。
「わたしもです……スズナ。また逢える日、来ると……いいですね。」
 寿々奈さんが笑いました。何かをふっきったような、とびきりの笑顔。
「あのね……来週の木曜日、午後八時の……確か、第xチャンネル。時間があったら、見て。」
「エッ……」
「それじゃ……さよなら!」
 身を翻し、夜の街中へ駆け出します。
 振られる手。揺れて散る、二つのポニー・テール。

 夏の終わりの北の夜風に、金色の髪をたなびかせて……
 微笑と共に、それを見送るターニャさんがいました。
 
 
 


[117]短編『二つのペンダント(Epilogue)』≫メモオフ2&北へ。: 武蔵小金井 2002年08月30日 (金) 02時58分 Mail

 
 
 ガタンと、勢いよく開く扉の音。
「あっ……オカエリナサイ。」
「ただいま……ったく、今日も教授にしぼられちまったよ。あたし一人、居残りさせてさ……イヤミなじじいだよな。」
「キタイされているんですよ。アッ……麦茶でいいですか?」
「あ、そんなのあたしが出すよ。でも……チッ、おまけにさ、それだけじゃないんだぜ。久しぶりに店に顔出してやれば、バカ兄貴に捕まって……今度は小樽に支店出すから、お前、店長やらないか?だってさ……ったく、あのバカ!その前に自分の台所事情を理解しろっての!調子に乗ってドカドカ手を拡げやがって!」
「うふふ……ハヤカ、モテモテですね。」
「あーあ、じいさんとかバカ兄貴とかじゃなくて、もっとまともな野郎はいないかね……それより、めずらしいね。テレビ見てるの?」
「ハイ。今日はちょっと……」
「ふぅん……水泳?そういえば今、何か大会やってるんだっけ?」
「エエ。それで……アッ……!」

 画面に映る、巨大な競泳用プール。
 照明がまばゆいばかりに輝くそこに、今また……入場してくる選手が八人。
 世界各国のスイマーが集まるその中で、やはり地元である日本の選手が……大きく取り上げられ、映し出されています。
 興奮したアナウンサーと、落ち着いた解説者の声が。
「さあ……いよいよ運命の時が来ました!我々の期待を一心に背負って登場したのは、第七コースの……寿々奈鷹乃!全日本女子期待の新星……おーっと、しかも今日の寿々奈は!」
「はい。先日、思いきって髪を切ったそうです。寿々奈、相当に気合が入っていますよ。」
「そうであります!寿々奈と言えば、あの豊かな髪!トレードマークとも謡われたあの長髪ですが、今日は遂に、それに決別しての決意みなぎる大舞台です!それでなくても、寿々奈の髪は前から色々と言われて来ましたからね?」
「いやあ、よく決断したと思いますよ。通常のスイマーでも、髪の長短で二、三秒は違うと言われていますからね。このレベルになると……」
「そうであります!寿々奈と言えば、水泳に対するひたむきさと共に、自他共に認めるクールさ……いわば不愛想、マスコミ嫌いとでもいうべきものがありましたが……あ、今、寿々奈が後輩と最後の挨拶を交わして……各選手が指定の位置につきました!」

 静まりかえる一瞬。そして、号砲一発。
 一斉に飛び込む、八つのシルエット。

 白い水しぶきと共に、ぐんぐんと加速していく姿。
 魚のように、どこまでも速く、遥かな場所を目指して。
 好きだから。それが、自分の選んだ道だから。
 ひたむきな情熱が、きらめきを放ちます。
 見つめる少女も、泳ぐ少女も。

 すべてが、その瞬間……美しく、輝いていました。
 それぞれの、未来に向かって。
 
 
 


[118]去り往く夏のあとがき: 武蔵小金井 2002年08月30日 (金) 03時03分 Mail

 
 
 えーっと、来月三日は鷹乃さんの誕生日ということで。  
 とりあえず。

 いえ、別にパンパシフィックを見てかぶれたとか、ソープくんかっこいいー!とか思ったからじゃないです。元ネタは、そこそこ前からあって。なつかしのIFシリーズの一環というか(笑)。
 あ、ボクの鷹乃さんが髪なんて切るか!とか思われたらごめんなさい。自分でも正直、この決着には迷いました。あのボリュームのあるツインテール、帽子の中に隠れそうもなくって……どうなっているんだろうと悩んで夜も眠れなかったり(論議がズレてます、自分(笑

 でも……ショートの鷹乃さんって、想像するとドキドキしてきませんか?(しないか……(汗

 そういえば、調子に乗ろうとしたら急に暑くなってこまりました。いやあ、先月からホトホト思っているのですが、暑くなるとどうもヘンな文ばかりになって。

 あと、お気付きになられた方が多いと思うのですが、今回は色々と史実その他を曲げてしまいました。あえてしてしまったというか、思わずというか、細かい部分の解釈もそこそこ考えてはいるのですが、無理に表記するのも何だと思って、そのままにしてあります。何か思った方がいらっしゃれば、どうか心のままに微笑してやって下さい。

 そういえば、大脱線して慌ててボツ箱行きにしたバカ文、

『対決、鷹乃VS葉野香……死闘!札幌SPAランド!』

 というの……「や、やめなさいっ!」「やめろっ!」(二人ドギャアア)

 い、いえっ(汗)。
 とりあえず少し早まきながら、誕生日おめでとうございます、鷹乃さんっ。
 (しかし……同じ声優さんだからキャラの誕生日が同じという罠は……ないですよね(笑

 それでは。
 お読みになって下さった方々には、深くお礼申し上げます。
 
 



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