「ちょっと待って、響」
「ん? どしたの、ショーゴ」
きょとんとした顔で、響はオレの顔を覗き込んできた。響って、近くで見ると本当に綺麗だよな……と一瞬思ったが、すぐに気を取り直して目前の物体を指差す。
「これ、どう考えてもドクターペッパーだと思うんだけど」
炭酸が泡立っているのはコーラと同じだが、明らかに色合いが違う。はっきり言って遠慮したいドリンクのベスト3には確実に入るだろう。
「ちっがーうよン! チェリーコークだって。アメリカから、ちょ、チョクユニューだかなんだか知らないけど、きちっとしたスペシャルなジュースだよ」
「どっちにしろ飲みたくないって、こんな怪しいモン」
「じゃあさ、そのドクターペッパーも買ってミックスするから。絶対おいしいって!」
そう言うと、響は止める間もなく外に出て行ってしまった。
「なぜミックスする必要があるんだ……」
「オレの店は、飲み物の持ち込みは禁止なんだけどね」
テンチョーがぼやく。響には言いにくかったのか、恨めしげな視線を向けられた。それとともに今いる場所がカフェであったことを思い出す。そもそも響がバイト先で薦められてハマったジュースらしいが、いい迷惑だ。ため息をつきたくなる。
「……しょうごさん」
その声に振り返ると、たまちゃんがもの言いたげな顔をしていた。いつの間にか音緒ちゃんと深歩ちゃんも一緒にいる。
「わあ、なんかデンジャラスな感じだね。さらにおでん缶を混ぜてみたりなんかして」
「あたしもっ。この『まぜるな危険』なんてどうかな」
「……しんさんが言ってた『カキコオロギ』も、面白そう」
オレは静かに、一人を指差して言った。
「深歩ちゃん、シンより極悪非道」
「てへ♪」