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ダレモイナイ コウシンスルナラ イマノウチ(ペ∀゚)ヘ
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[197]突発SS『ハヤカの世界・眼帯・終章』≫灰羽&北へ。: 武蔵小金井 2002年12月19日 (木) 19時04分 Mail

 
 
 葉野香という名の 少女の物語を語ろう
 その者は悲運に見舞われ 悲しみを分けあうはずの相手をも失った
 自らの価値を見失い 自分自身を路傍の小石に例えた



「あたしにとって、この札幌は牢獄だったんだ!」
 悲鳴にも似た叫びが響きます。
 左京葉野香。
「この店も、学校も……何もかも!」
 それをぶつけられた少女の、蒼い瞳が見開かれます。
 ターニャ・リピンスキー。
「この暗い夢から、あたしはとうとう抜け出すことが出来なかった!ありもしない救いを求めて、十七年間も……ずっと……!」
 葉野香さんの脳裏に、過ごして来た日々が甦ります。
 それは、悲しみに満ちた絶望の追憶。

 編みものを教えてくれた母は死んだ。
 育ててくれた父も癌で死んだ。
 兄は人の道を踏み外して消えた。
 残されたのは私一人。
 何もしていないのに、誰からも後ろ指をさされた。
 友達もいない。
 ずっと、ずっと一人だった。

 低い声が、二人の室内に響きます。
「誰かを信じるたびに、必ず裏切られた。だからいつか、あたしは信じるのをやめた。傷つかないですむように、あたしはただの石ころになった。」
 嘲るように、葉野香さんの口元が持ち上がります。
「フッ……皮肉なもんだね。心を閉ざして親切にしてやれば、そいつはあたしをいいひとだと言う。あたしの心の中は、こんなに暗く、汚れてるのに。」
 乾いた笑い。
「ウソです!そんなこと……」
「ターニャ……」
 ぞっとするような声が、ターニャさんの言葉をさえぎります。
「ターニャは気付かなかったんだね……あたしがどれだけ、ターニャのことを妬んでいたか。」
 冷たい視線に、揺れる蒼い瞳。
「同じひとりぼっちなのに、ターニャにはみんなが親切にしてくれる。あたしの持ってるものは何もかも借金のカタに取られちまったのに、あんたは硝子細工を完成させて売れっ子デザイナーになった。」
 客の消えた店。がらんとした空間。葉野香さんの叫びが響きます。
「いや、あんただけじゃない。川原の奴がオーディションに合格した時だって、あたしは心のどこかであいつを妬んだ。そう思うあたし自身すら、あたしは心底軽蔑していた。」
 羨望と悲嘆。葉野香さんは天を仰ぎます。
「みんな、あたしを置いていっちまう……」
「ウソです!だって……ハヤカはワタシを助けてくれた!ハヤカ、あなたはワタシが入院したとき、ずっとそばにいてくれマシタ!」
「そうだよ!どうしてだと思う?」
 その勢いに威圧されるターニャさん。怯えるように、その小さな肩が震えます。
「あたしはただ、救いが欲しかったんだ!誰かの役に立っている時だけ、自分のことを忘れられる!あたしは、あたしのことばかり考えていた!誰かに優しくしてやれば、いつか神様が来て、あたしの今を救ってくれる!ずっと、ずっとそう思っていたんだ!」
 呆然と、首を振るターニャさん。
「ターニャ……」
 再び、ぞっとするような葉野香さんの声。
「あたしにとって、ターニャはターニャでなくてもよかった。あんたを夜の街で見つけた時、あたしは一つの賭けをした。この子があたしを信じてくれたら、あたしは許されるんだ。無理矢理自分に、そう言い聞かせた。だからあたしはあんたを助けて、優しくふるまった。カツアゲされてたのが誰だろうと関係なかった。誰でもよかった。」
 嘲るように、葉野香さんが呟きます。
 誰を嘲るそれだったのか。
「全部、嘘だったんだ。全部……全部ね!ハハハハ!」
 葉野香さん、高笑いして叫ぶと、狂ったように回ります。
 舞い散る黒髪。それを眼前にして、揺れるブルーの眼差し。
「あたしはね、はじめから自分だけが救われればそれでよかった。ターニャがあたしを信じたのが間違いだったんだ!」 
 せせら笑う葉野香さん。見る者を怯えさせずにはおかない眼光。
「わかったかい?わかったら出ていきな……あんたは一人勝手に、パパとママのいるロシアに帰りゃいいんだよ!」
 絶叫。
 悲鳴。
 そして、何かが二人を隔てます。
「はじめから、許されるわけ……なかった……」
 二人の間に、扉が閉まりました。
 眼帯に隠されていない、たった独つの瞳と共に。


 遠くから、何かが聞こえてきます。
 ゆっくりと、近付いてくるように。
「あの音がここまで来たら……あたしは消えるんだね……」
 呟く葉野香さん。だがそこで、何かの気配に振り向きます。
 そこに、少女がいました。
 もう一人の彼女。
 ターニャさんではない、もう一人の少女。
 眼帯をしていない葉野香さん。
 父と母の店で、兄といっしょに暮らしていた自分。
 それは、現在と過去の邂逅。

「ターニャは、あなたを助けに来たのよ。」
 訴える少女。葉野香さん、冷たく首を振ります。 
「あたしには、そんな資格なんてない。」
 少女はうなだれるように首を垂れました。
 と、葉野香さんの瞳が見開かれます。
 目の前の少女の右眼から、黒いしみが広がっていきます。
 そして、崩れ始める……少女の体。
 まるで、かつての自分の心のように。
 どこかに暖かい場所があると、ずっと信じていた自分。
 それが、ゆっくりと崩れていきます。
「私は……助けてって言うこともできないの?」
 少女の哀しげな呟き。
 黒く染まりつつあるその小さな体の中で、片目だけが……右目だけが、青白く光っています。
 冷たく、深く。そこに秘められた、何かを示すように。
「やめろ……やめてくれ……!」
「誰かを信じるのが、そんなに恐いの?」
 崩れていく自分。
 破壊される自分。
 瓦礫になる自分。
 葉野香さん、腕をふるって叫びます。
「裏切られるのは、もうイヤなんだ!世の中にも、この街にも……どれだけ待っても、一度も救いは訪れなかったじゃないか!」
 今はもう輪郭もおぼつかない人影が、さらに哀しげに微笑します。
「だって、葉野香は一度も『助けて』って言わなかったじゃない。ずっと……ただ、待っていただけ。」
 葉野香さんの瞳が見開かれます。おののき、震える白い指先。
「あ、あたしは……恐かったんだ!もし、心から助けを求めて……誰も返事をしてくれなかったら?本当に、あたしがひとりぼっちだとしたら?」
 そうしたら、どうすればいい?
 その時、どうなってしまうの?
 告白。
 彼女に残った、たった一つのそれ。
 小さく、儚い、怖れ。
 その眼前で、消えて行く少女。
 それは、自我の慟哭でした。

 隔てられた扉。
 その向こうで、もう一人の彼女もまた……やるせない気持ちに哭いていました。
「ワタシ、なにも知らなければヨカッタ……知らなければ、ハヤカのことを、ずっとスキでいられた……」
 悲しみに瞳を潤ませ、顔を覆い続けるターニャさん。
 スキでいられれば、それでいいの?
 鈴のように小さく鳴る声。
 ターニャさん、驚きに顔を上げます。
 そこは、葉野香さんの小さな部屋。ターニャさんが、別れを告げに訪れた部屋。二人がふざけあった場所。
 机の上に、残された編みもの。
 本当は父にあげるつもりだった……そう聞かされた、手編みのセーター。
「ワタシ、ハヤカを信じたい……だけど……」
 呟くターニャさんの瞳が、セーターの陰に隠れていた、一冊の本に気付きます。
 はじめて見るそれを、何だろうと手に取るターニャさん。
 それは、日記でした。


 お父さん、お母さん、ごめんなさい
 私は、救われなかった



 殴り書きのようなそのページ。衝動的に、次をめくるターニャさん。
 そこには、一人の少女の思い出が刻まれていました。
 次々に訪れる苦難に翻弄されながら、必死に生きる道を探していた少女の記録。
 ターニャさんの指が、末端に近いあるページで止まります。
 金色の髪を持った、可愛らしい天使の絵が描かれたページ。


 初めて人に「優しい」って言われた。嬉しい。嬉しい。
 これはきっと特別な出会いだ。
 あの子は何だか天使に似てる。
 きっと、神様が私に遣わしてくれたんだ。

 うんと優しくしてあげよう。
 ずっと一緒にいてあげよう。

 今度こそ、お母さんに言われたみたいに、
 私は良い人間になるんだ。



 あふれる涙。
 ターニャさんの瞳から、想いが形となってこぼれます。
 止まることなく、ずっと。
「ワタシは、ずっとハヤカに守られていた……」
 短い、それでも幸せだった二人の時間。
 でも、それは与えられるだけの幸せだったのかもしれません。
 本当に幸せになるために。
 好きでいるだけではなく、その先にある何か。
「ワタシは、ハヤカを救いたい……」
 ターニャさんが、扉を開きます。
 その先の扉を。
 だが、それを止める小さな手。
 振り返れば、そこにいる孤独な少女。
 眼帯で目を覆った、かたくなな幼い心。
「もう遅いの。葉野香には、もう何も聞こえない。葉野香はここで、消えることを選んだの。」
 ターニャさんの潤んだ瞳が緩み、ゆっくりと首を振ります。
「チガウ。ハヤカはずっと、わたしに助けを求めていたんです。サイショにであったときから、ワタシを助けてくれたときから、ずっと……ずっと、そうだった。ワタシは、それに気付かければならなかったのに……」
 弱い自分。それに決別するため。
 ありったけの勇気をふるって、叫びます。

「ハヤカ、ハヤカ……ワタシを呼んで!ワタシがヒツヨウだって……おねがい、言ってクダサイ……!」

 遥かな葉野香さんに迫る、光。
 それが何なのか。
 彼女の瞳が閉じられます。
 眼帯の下のそれも、また。 

「ターニャ……助けて……!」

 閃光。そして破砕。
 硝子のように、輝くように。
 そして、眼帯の紐がほつれ、風に散ります。
 静寂が戻った時、そこには二人だけが立っていました。

「あたしは……許されたのかな……」

 ターニャさんは何も答えず、優しげな笑顔でほほえみました。
 自然と、重なる二人の手。
 今から、未来へ。


 汽笛が鳴ります。ロシアに向かう船が出る、北の港。
「ハヤカ、いつかまた……会えますね。」
「ああ。そう信じてる。」
「ワタシも……信じています。」
 旅行鞄を手にしたターニャさんに、葉野香さんが頷きます。
「ターニャ、あのさ……目を閉じて。」
「えっ……ハイ……」
 
 別れ。
 それは新生への一歩。
 少し悲しいけれど、祝福に満ちた一歩。
 そして今、汽笛が鳴ります。


 その者は険しき道を選び 弱者を労ることで己自身の不幸を濯いだ
 その行いは 救いを求める故の仮初めのものであったが
 今や その者の本質となった



 夕闇の埠頭。消えて行く船を、じっと見つめる後ろ姿。
 北風は強く、長い黒髪が激しくたなびいていました。
 けれど、その姿が揺らぐことはなく。
 とても、強く。
 そして、ずっと……
 
 


[198]鈴とあとがき+: 武蔵小金井 2002年12月19日 (木) 19時28分 Mail

 
 
 えーっと、いつもの私のソレと言いますか……
 その、悪ふざけに近いものです(笑)。

 灰羽連盟の最終回を見て。
 それで、クラッと来て。
 思わずもう一度、ラスト回りだけ流して。
 また、クラクラッと来て。
 気が付いてみたら、いつもの如くといいますか(笑)。

 思えば第一羽(違)を見た時も同じでした。
 キャラクター紹介的な前半話の明朗ほのぼのさに比べ、一時間枠(違)となった後半のどんよりどよどよな雰囲気に私的に多少焦っていましたが、今はとても……そう、感動しています。
 面白かった。いい気持ちです。
 この素晴らしい物語に感謝します。
 ありがとう。

 というわけで、あらゆる意味でそのままです。台詞含めて総てが只の模写です。アレンジすらろくにしてありません。まさに突発です。勢いです。だからそろそろ、いつものように不安になり始めています。

 ですが、まあ、今日のところは一つ……

 読んで下さった方には、灰色の羽根の少女たちの祝福を。

 それでは。 


 PS.そういえば別の作品のあとがきで全力投球とか言っていますが、まあやはりそれは大人(?)の事情というか、色々あるということで……(微汗
 
 追記:翌朝読み返して死ぬほど恥ずかしくなりました。校正するとかじゃなく……け、け、消していいデスカ?(爆汗
 



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