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ダレモイナイ コウシンスルナラ イマノウチ(ペ∀゚)ヘ
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[8]短編『Person of Robot』≫シスプリ&TEKKEN: 武蔵小金井 2002年04月08日 (月) 13時43分 Mail

 
 
 思うんだけどさ、私だっていつもアニキアニキ言ってるわけじゃないんだよ。
 そりゃ……ねぇ。アニキはいつも私のこと考えてくれてるし、私も生涯のパートナーだって決めてるけど。
 でもやっぱり私たちは兄妹なわけで、その……考えたこともないけど、いつかアニキとか私にも……その、何て言うのかな、そういう?人ができちゃってさ。同級生の女の子たちみたくなるかもしれないけど。うーん、でもやっぱりそういうのって、非論理的な現象よね……って、そういうことじゃなくて。
 とにかくね、アニキ。今日は約束通り、私が大活躍した話をしたげるね。
 しかも、アニキの登場はナシで!これって、なにげにすっごく珍しいかもしれないんだけど。アハハ、とにかくそういう設定でよろしく!


 あのね……はじまりは、ある寒い雨の日のことだったの。
 私、行きつけの電気街で……ほら、アニキと一緒によく行く所。そう、あそこのアーケードの裏手ってね、表よりかなり暗めの店が多くてさ。掘り出しものもあるんだけど、何だか怖いことも多くて、さすがの私も時々しか近寄らないんだけど……その日はたまたま、どうしても見つけたいパーツがあって。私、普段ならためらっちゃうような店とかも入って、探しまわってたんだ。
 それで……気が付いたら、見たこともない暗い路地の奥を歩いてたの。
 雨は強くなってくるし、周り見ても、何だかビルの壁とか塀ばっかりで……あちゃー、こりゃミスったかなって、道を戻ろうとしたんだけど……そこが二マタ、はては三つマタになってて。大通りはどっちか、さっぱりわからなくなっちゃったんだ。
 と、まあさ。ここで普通の女の子ならメソメソしちゃうところだけど。もちろん私……鈴凛ちゃんとしてはさ、そんなことあるわけないじゃない。
 困ったら、科学の力の出番よね。
 というわけでさ、ちょうど試作が終わってた携帯薄型GPS『位置がわかるんです君』を取り出して、バッテリーをつないで動かしてみたわけ。こういうどしゃぶりみたいな状況で役に立つために作ったんだから、バッチリ作動……って、自身満々で動かしたんだけど。
 そしたらね、いきなりエラーが出て……あ、違うよ、私の設計ミスじゃないんだから。ツッコまないで、もう少し聴いてよ。
 それがね、普通のエラーじゃなかったんだ。サテライト・ナビが妨害されてるっていうか……私、すぐに気付いたの。近くに、何か強力な電波か何かを放射してる場所があるって。しかも、私の設計したこのGPSを妨害するぐらいなんだから、相当に強力かつ珍しいのよ、それ。
 そうなったらさ、知的探究心の具現者である鈴凛ちゃんとしては、もう見逃すわけにはいかないじゃない。だからすぐ、ポケットからセンサーのオプションパーツを出して、GPSと配線つないで。バッテリーも大きめの奴につなぎ直して、調べたの。
 それで……反応をたどって、路地を曲がって、その場所に近付いていったら……
 あのね、そこにね……驚かないでよ。あのね、ロボットが倒れてたの。
 こーんな、2メートルはありそうな大男のロボット君で、煙吹いて……
 あれ、アニキ……その目はなに?あ、私が嘘ついてるとか思ってるの?え、違う?怪しいなぁ……
 とにかく、私もうビックリしちゃって。だって、パッと見ただけで、そのロボットの完成度がわかっちゃったんだもん。私のメカ鈴凛……悔しいけど、あの子よりちょこっとハイスペックそうで。これはもう、プロの作品というか……そういう、すっごーいメカなわけよ。
 とにかく、私は傘なんて捨てて駆け寄って、無表情で倒れてるロボット君を調べてみたわ。
 それがね、ボディの継ぎ目、金属のぬめり……ボルトの光沢とか、雨の中でもキラキラして。とにかくカッコイイの!でもね、ところどころでオイルとかが漏れて、すすけてたりして……まるで、煙突掃除でもしてたんじゃないかっていうぐらい、汚れも多かったの。
 だから私、とりあえずメンテ用のパネルを探して……運が良かったというか、さすがは鈴凛ちゃんというかさ、カバーが壊れて、スイッチがむき出しになってる場所があったの。そこにナビをつないで、72ピンのプラグを……って、ああ、ゴメンねアニキ。こういう話、苦手だったよね。
 とにかく、そのロボット君の電子頭脳のフォーマット……いわゆる、基本制御システムにアクセスしてみたわけ。ちょっとてこずっちゃったけど、何とか初期モニターまでは成功して……名前がわかったの。
 ジャック。
 笑っちゃった。だってさ……ほら、ジャックと豆の木のジャックだよ?2メートル以上ありそうで、私なんて片手でどこまでも投げ飛ばせそうなのに、それがさ、豆の木のジャック君なんだから。どちらかっていうと、あのお話に出てくる悪い鬼の方よね。
 え?私がそんな比喩を持ち出すのは似合わないって?もぅ、アニキは言いすぎだよ!そ、そりゃ、私だってたまにはブンガク的な本を読むことも……アハハ、ごめん。実は、この前お見舞いに行った時、鞠絵ちゃんが話してくれたの覚えてたんだ。
 とにかくね、それで……ジャック君はね、特殊なプログラムを動かそうとしてるんだけど、何かの不都合でそれができなかったみたいなの。緊急用のプログラムで……何かわからなかったんだけど、とりあえず私、それを入れてあげたんだ。
 そうしたら……!
 ジャック君がね、ガキンガキンって起き上がって……ねぇ、どうしたと思う?
 動いたことに喜ぶ私をさ、両手でムンズって抱えて……走り出したの!
 ガンガンガンガンガンって、すごい速さで地面を蹴って。もう、普通のスピードじゃなかったんだから。
 私、いきなりのことに悲鳴をあげちゃったけど……すぐに、声じゃ意味がないって気が付いて。
 落としそうになりながら、ナビで……止まれって指示を出したの。
 そうしたら、ピタって止まって。私ホッとして、今のプログラムは何かと思ったら、緊急退避……撤退用のプログラムだったの。撤退なんて、何だか軍隊みたいだな、とか思ったんだけど。
 とにかく、そこでふっと気付いたら、いつのまにか大通りに出てて。雨とはいえ、通行人さんがいっぱいいて。その……2メートルのロボットに抱えられた私を、目を丸くして見てるのね。
 私、わ、これはやばいかも!とか思って。あわてて、ジャック君に走るように命令したの。
 とりあえず、目的地は……私のラボってことで。
 だって、ほら、とりあえず身を隠さないと。あと、ジャック君、色々と壊れてるみたいだし。それに……エヘヘ、ちょっとは調べないとね。
 だってさ、あのー、そこの裏通りにロボットが倒れてましたけど?なんて交番にいったら、それこそ大騒ぎになるだろうし……きっと、すぐにジャック君は取りあげられちゃって、私なんかにはゼッタイ調べさせてくれそうにないじゃない。もしも落し物って扱いになっても……さすがに、そううまくは……ねぇ?アハハ、とりあえず……私ってそういう欲求には忠実だからさ。
 と、とにかく、私を抱えたジャック君は、ガンガンガン!って雨の中を疾走して、ラボについたの。


 シャワーを浴びて、白衣に着替えて……
 私、ジャック君を再起動して、メンテ台に乗せたの。
 それがね……意外に重かったのね、彼。目測で100キロはあるかなって思ってたんだけど、150キロ……正確には168キロあったんだ。それで、メンテ台がいきなり壊れちゃって。あーあって思って、とりあえず仮設のそれを組み直してさ。遅くなったけど、点検開始。
 そうしたらね……すごかったの、彼。何ていうかさ……見事なのよ。とっても。
 あ……どうしたのアニキ?赤くなっちゃって……私の言い方、ヘンだった?
 とにかくさ、基本プログラムから内部構造まで……何もかもが、もうホントにスゴイの!あ、もちろん私だっていきなり全部をモニターできたわけじゃないよ?動力装置とか、心臓部のブラックボックスとか……そこらへんはね、見られないようになってたの。でもね、やっぱり……美しいんだわぁ。
 まぁ、外見的に問題があるかも?とか思ったけど。ごつい男の人……擬人設計学的に見ても、ちょっと上半身のボリュームが大きすぎるっていうか……マンガみたいなのよね、彼。でもさ、つめ込まれてる部品とかをチェックしてたら……それも仕方ないかなって。それよりも……あぁ、これ作った人って、きっとメカに対する愛情があふれてたんだろうな……って、思ったのよ。
 と、とにかく、私はジャック君がとっても気に入ったわけ。それで、これは是非とも修理をしてあげなきゃって思って。さっそく、その夜一晩かけて基本制御プログラムのダンプリストを打ち出して、どこがエラーになってるか調べて……
 それでね、翌朝になってわかったの。この子……あ、ジャック君ね。ジャック君は……軍事用に開発された、戦闘ロボットだって。
 さすがに、それに気付いた時は驚いたわ。だって……さすがにさ、そういうのはまだ、どこの国でも正式には発表されてないじゃない。そりゃ、学会的には前から色々と言われてたし、まことしやかな噂も多かったけど……さすがに、コストの面から言っても無理なんじゃないかって、私も思ってたから。そりゃ、単体での特殊運用なら別だし、そういった例なら知らないこともないけど……ねぇ、やっぱりさ。
 でも、目の前に本物さんがいるわけじゃない。目で見たことしか信じないのが科学者だって言う人もいるけど、いうなれば、目で見たことは信じるわけよ。
 ジャック君は、どうやらどこかの国の作り出した、本格的な量産型戦闘ロボットの一体だってこと。
 それでね、私、納得して。とりあえず、彼の電子頭脳の修復をしてみようって思ったの。
 でもね……基本プログラムはともかく、大事な部分がね……ほら、いうなればブレインユニットって、動力システム以上にっていうか、自律するロボットにとって、最重要な部分じゃない?そのさ、やっぱりそこのプロテクトが、もうものすごくて。ブラックボックスが、私のサイバーツールじゃぜんぜん開かなかったのよ。
 さらに翌日になっちゃって。私ももう、お手あげって感じで。さすがは軍事用っていうか……本物なのよね。でも、やっぱり悔しかった。よくみんなから誉められたりするけど、結局大人の作った最新技術を前にしたら、ただの子供になっちゃうのかなって。
 でもね……そこで、ピピッとひらめいたの!
 さっすが私、天才美少女科学者・鈴凛ちゃんって……あぁ、今のは四葉ちゃんの受け売りだからね。とにかく、私はひらめいちゃったわけよ!
 何をひらめいたって?あわてないでよ、アニキ。ここからがいいところなんだから。
 私ね、思いついたの!ロボットにはロボット、電子頭脳には電子頭脳って!
 そうよ、私にはドクター鈴凛ハンドメイドによる最高傑作、メカ鈴凛がいるじゃないって!
 あ、もちろんあの子の欠点……というか、他人と接触するとシステムダウンしちゃうことはわかってるわ。でもね、電子頭脳の擬人格だけなら……私のサポートとして使うこともできるし、それにさ、一応男の子っていっても……同じメカじゃない?だから、とりあえずやってみることにしたの。
 メカ鈴凛のカプセルを引き出して、再起動の準備をして……とりあえず、メモリーバンクの一部をラボのマザーコンピュータに移して。それで、その計画を持ちかけてみたの。
 最初は、やっぱりイヤそうだったわ。あの子、あれで私と同じく、とってもいじらしくって引っ込み思案なところがあるから……ってアニキ、その目はなに?
 とにかく、説得してみたの。あの子にしてみれば、他の自律型ロボットと接触すること自体が初めてみたいなもんだから、なかなか大変だったけど……やっぱりホラ、マスターとの心のつながりというか、女の友情というか、何とかわかってくれたの。
 それでね……とりあえず、ジャック君の基本データを見せてみて。
 そうしたら、いきなり真っ赤になって。あ、本体がじゃなくて、スクリーンの中でよ。(*^.^*)な感じ?それで、さらにモジモジして。仕方ないから、私……辛抱強く待ったの。すっかり忘れてた食事とか、色々と雑用もあったし。
 それでね……ちょっとしてから戻ったんだけど、それがね……傑作なの!
 あのね、あの子……メカ鈴凛ね。自分からシステムをつないで、ジャック君の電子頭脳に接触してたんだ!それで、声をかけて……自分から挨拶してるの。たどたどしく……さ。
 私、思わず物陰に隠れて。あ、今にして思えば、電脳世界のあの子たちに、そんなことする必要なんてゼンゼンなかったんだけど。でもさ、ほら、やっぱり親ゴコロっていうか……我が子が勇気を出して何かしてるのを見るのって、何だか複雑っていうか……ドキドキするじゃない?あ、アニキにはまたわかんないかな?アハハ!
 それでね……それがね、またビックリ!私があれだけノックしてもダメだった記憶回路とかへのコンタクトが……いきなり成功して!というか、つまりね、ジャック君が出て来たのよ。彼の意識が、どーんと。
 それで、挨拶したんだけど……
 それがね、驚いたことにロシア語だったの。あ、もちろん同時変換機能で、私もバッチリ二人の会話をモニターできたわよ。
 それがさ……ジャック君、やっぱりっていうか……子供みたいなの!会話能力は、メカ鈴凛よりずーっと低いみたいで。それでさ、メカ鈴凛よりも、むしろジャック君の方が怖がってるみたいで。あの子の方が、ジャック君をはげましてたりして。私、もう笑っちゃった。
 とにかくね、そうやってしばらく見てて……二人、どんどん仲良くなって。私としては、もう嬉しくてしょうがなかったんだ。
 えっ?お見合いみたいだねって……そ、そうかもしれないね。そうか……ふぅん、そういう見方もあるのかな。
 ま、まぁいいわ。とにかくね、その……お見合い?それが盛り上がった頃に、私、コホンって咳払いしながら二人の前に出て来たわけよ。こんにちは、メカ鈴凛の母ですが……そういう感じで?
 そうしたら、若い二人が……あぁ、アニキが変なコト言うから、まるでオバサン気分になっちゃったじゃない!
 えっと、とにかくね、二人が驚いて。メカ鈴凛はピューって赤くなっちゃうし、ジャック君はハラショー……だっけ?とにかくロシア語で叫んで、ブラックボックスに逃げ込んじゃって。あちゃー、失敗したかなって。
 でもね、メカ鈴凛がすぐに回復して。私のことを、ジャック君に説明してくれたんだ。私の開発者で、とっても可愛い女の子で、メカに対する愛情はもう人一倍で……って、アニキ、またその目はなに?
 それでね、ジャック君も何とか落ちついて。また出てきてくれて。私、やっと直接彼の自意識と対面することができたの。
 それから、三人で長いこと話して……メカ鈴凛の設計の話とか、このラボの話とか、色々と、面白い話をジャック君にしてあげたのよ。そうしたら、ジャック君が……私たちに、話し始めて。自分のことを。
 それがね……泣けるんだ。すっごく。あ、でもね……アニキ、ごめん。実はね、彼との……あ、ジャック君との約束でね、全部説明はできないんだけど……アニキだから、ちょっぴり話してあげるね。でも、絶対ヒミツだよ?
 あのね、ジャック君はね……前にも言ったけど、軍事用の人造人間で。それでね、ロボットしか投入できないような場所で、任務についてたんだけど……ある村でね、一人の小さな女の子に出会って。その子、親兄弟をなくして、ひとりぼっちだったんだって。それで、何ていうかな……ジャック君、その子のこと、すっごくかわいそうに思って。
 それで彼、任務を放り出して……その女の子のこと、助けちゃったの。
 もちろん、ロボットの兵隊さんである彼には、そんなこと許されるわけなかった。でもね、偶然というか……私の推測によれば、きっと戦闘で、彼の回路の一部が偶然ショートして、エラーが出たからだと思うんだけど……ジャック君は、主人の命令には従わなかったの。追っ手をふりきって……何とか、逃げのびたのね。
 でもね、女の子はひとりぼっちだったし。ほら、ジャック君はロボットでしょ?いくらパワーがあって疲れを知らなくても、女の子の保護者としては、認めてくれないのよ、誰も。それで、困っちゃったみたいなの。
 だからね、ジャック君……その子のことを、どうしても守りたいって、一生懸命考えて。
 それで、思いついたの。それが……あのね、笑わないでね、ここだけは……絶対。
 そのね……彼、人間になりたいって。そのためにね、自分を設計してくれた博士を探してたの。人間に、改造してもらおうって。
 あ……笑ったでしょ?え……?笑ってないって。そう。それならいいけど……
 あのね、笑ったらダメだって言ったのはね……実は私、はじめにそれ聞いた時、笑っちゃったんだ。すっごく。
 だってさ……アニキだって思うでしょ?ロボットが人間になんてなれるはずないって。そりゃ、当り前よね。人間はメカを作れるけど、メカは逆立ちしたって人間を作れないじゃない。私もそう思ってたから、あまりの短絡的なジャック君の思考に、もう大笑いしちゃって。それで、彼にそう言ったの。ロボットが人間になれるわけないじゃない、って。
 そうしたらね……彼が聞いて来たの。どうして、ロボットは人間になれないのかって。
 私、笑ってそういう理屈を説明しようとしたけど……そこでね、メカ鈴凛が言ったの。
 マスター、ロボットは人間になれないのですか?って。
 私、そこで気が付いて。本当にそうなのかなって。それが当り前だ、常識だからって、ずっと信じて……思い込んで来たけど。
 でも、誰かが証明したのかなって。ロボットは、人間になれないって。
 目をあげたら、スクリーンで……あの子たち二人、真剣に私の答えを待ってるじゃない。
 私、恥ずかしくなって。いっぱしの科学者のつもりでいたのに、ぜんぜんダメだなって。
 だって、わからないじゃない。ロボットが人間になれないなんて。絶対にそうだ、100%間違いないって断言できる?人は空を飛べるし、深海にだって潜れるよ?宇宙にだって出られるし……だいいち今、私は人じゃない相手と……ロボットと、真面目に話をしてるじゃないって。
 こんなの、昔の人から見たらお伽話よね。でも、今ではこうして現実になってるんだから。でもさ、そうなったのは、科学者の人がたくさん研究して、発明して、それで……こうなったんだって。まわりの人からはさんざん笑われて、イッパイ失敗して、全然認められなくって。それでも、その人たちは、自分のアイディアを、可能性を信じて……がんばったわけよ。
 それで、そんな人たちがいたから、今、私たちはこうしているんだって。夢みたいな話が……現実になったんだって。
 私、思ったの。ジャック君が人間になれる可能性も、ゼロじゃない。だってさ……ほら、例えばよ。可能性の一つだけど……議会で検討されてる、ロボット人権論とかが通ったらさ。ジャック君にだって、人権が認められるかもしれないじゃない。それだって、人間になったってことだよ。うぅん、それより他の可能性だって……いっぱいあるし。
 だからね、私、二人に謝ったの。ごめん、私にはわからないって。でも、可能性はあるって。
 嘘じゃないよね。可能性を否定するなんて、科学者失格だもん。
 そうしたら、二人とも喜んでくれて。ジャック君、体を直して、設計してくれた科学者さんのところに行きたいって言ったの。
 私、OKしたわ。だって、メカ鈴凛もすっかりその気になってるし。私だって、ジャック君の優しい思いがわかったから。
 それでね、ジャック君はかなり損傷してるから……って、思ったら。彼、とりあえず今動く四肢だけ、動くようにしてくれって。だから私、メンテ用の器具を色々と駆使して、スイッチを入れて……
 そうしたら、何とね……彼、自分で自分を修理し始めたの。色々と、パネルやらボルトやら、工具を使ったりして、開けたり分解したりして……足りないパーツは、私にお願いしてきて。
 それを見てたら、私、やっぱりすごいなって。メカ鈴凛の能力には、色々と自信もあったけど……ジャック君の完成度は、やっぱり上だなって。
 でもね、悔しくはなかったんだ。だって、彼を作った人の思いが、わかったんだもん。
 きっとね、その博士さんは……彼を、軍事用として作りたくなかったんだろうなって。本当はみんなの役に立つ、友達になれるようなロボットが作りたかったんじゃないかって。でも、しかたなく……軍事用のメカにしなくちゃならなかったんじゃないかなって。
 え?どうしてそう思ったのかって?だって……ほら、色々とさ。ジャック君の、不必要なほど余剰部分のある集積回路とか、他の論理機能とか……そういうのを見て。
 あ、でもね……本当は、彼の名前からだったんだ。
 ジャック。
 きっとね、本当にジャックって、あの豆の木のジャックからつけたんだと思うの。
 ほら、あのジャックって、たったひとりで、豆の木をのぼって……悪い鬼をやっつけるじゃない?まわりの人たちから、無理だって思われてること……一人でさ、勇気と努力でなし遂げるの。
 それって今さ、ジャック君がしようとしてることと同じだよ。
 ロボットが人間になる。周囲から見たら、絶対不可能だと思うこと。でも彼は、それを信じて、その目標に向かって……進んでるんだ。
 だから、私……できる限り手伝って、彼を直したの。メカ鈴凛も起動させて……あの子ったら、私以上に夢中になっちゃって……私が寝たり、学校に行ったりしてる時も、ずっと、ジャック君の修理を手伝ってて。二人で、楽しそうに話したりして。それを見てたら、私も嬉しくなっちゃって。それこそ、寝食忘れて没頭しちゃったわ。
 それでね……ある日ね。少し帰りが遅くなった私が、ラボに戻ったら……
 ジャック君が、いなくなってたの。
 もう動けるようにはなってたから、動作テストをしてるのかなって、ラボの庭とか、探したんだけど……どこにもいなくって。
 私、あわててナビで、彼の位置を特定しようとしたんだけど……
 みつかったのは、メカ鈴凛だけだった。
 あのね、メカ鈴凛はね、ラボの屋上にいたの。私、エレベータで急いであがって、話を聞こうと思ったんだけど……
 ラボの屋上で、夕日をじっと見てるあの子……メカ鈴凛の背中に、声かけられなかった。
 だってさ……何が起こったのか、うすうすわかったんだもん。
 でもさ……
 きっと、おわかれはしたんだよね。私にはしてくれなかったけど……メカ鈴凛とは、あんなに仲がよかったもんね。
 ほら、同じロボット同士だし。ほら、アニキの言ってた……お見合いもしたしさ。
 だから、その後……私も、何も聞かなかったよ。メカ鈴凛をカプセルに寝かせて、それで……あの子のメモリーバンク……普段ならチェックするそこも、その日だけは見なかった。
 だってさ……悪いじゃない。いくら生みの親だって。あの子のプライバシー、全部見ていい理屈はないものね。ほら、あの子だって……一人の、ロボットなんだから。
 あ、笑ったでしょ、アニキ。そうなんだよね。一人のロボットって、ヘンな言い方だよね。
 でもさ……何だか私、それがとっても素敵な言葉みたいな気がして。
 いつか、ジャック君の願いが叶って……その女の子と、彼が、二人で幸せになりますようにって……お祈りしたんだ。あ……科学の神様に。
 な、なによ!そんな派手に笑わなくてもいいじゃない!ひっどーい、アニキ!せっかく私が、ちょっと……その、センチメンタル?そういう気分になってるのに……
 あ、ううん。そういう意味じゃないって……うん。
 ありがと、アニキ。エヘヘ、本当はね……仲良さそうなメカ鈴凛とジャック君を見てたらさ……何だか、どうしてもアニキに逢いたくなって。それで、今日は無理に招待しちゃったんだ。ゴメンね。
 えっ……いいって?ウン、ありがと。アハハ、アニキって……やっぱりさ。私の……
 そうだ。ねぇ、アニキ。もしも、もしもだよ?アニキがどこか……行っちゃうとして。その時は……私に、おわかれの挨拶してくれる?
 …………ありがと。
 だったら、アニキ……もう一つだけ。
 そのさ、ジャック君のことでさ、色々とね……タイヘンだったから。
 資金援助……してくれないかなぁ?
 
 


[9]あとがき: 武蔵小金井 2002年04月08日 (月) 13時45分 Mail


 どうも。いつもハートはドキドキの管理人、武蔵小金井です(笑)。
 今回は鈴凛ちゃんにスポットを当ててみました。私がいわゆるアニキ君なわけではないのですが、やはりこういったメカ少女にはどこか……って(赤面)、そういう意味ではないのですが(何が)。
 そうですね……鈴凛ちゃんの場合、メガネっ娘じゃないところが特徴かなと(だから、何が(笑))。

 って、今回は鈴凛ちゃんのお話(というか語り)なのですが、その、驚かれたというか何と言うか、某有名(名前を出して某も何もないと思いますが(笑))格闘ゲームのキャラクターをまじえております。い、いえ、別に私がその某「超殺戮兵器/モンスター」(ニックネーム(汗))使いだとか、そういう理由が……少しはあったのかもしれませんが、とりあえずおコトワリまでに。
 いや、やっぱり憧れというか、人造生命体というのは何か永遠のテーマの一つだとか思ったり(惚)。異性、異文化、種族、そういった大きなカテゴリーの一つとして存在する、ある意味もっとも身近で遠い、『人でない意識』……って、アレレ、似合わないことを書き始めてますね(汗)。いえ、実際のところそんな深いテーマがあるとかそんなことはマッタクありませんので、ただちょっとでも笑っていただけたら満足……というか、とても嬉しいです。

 あ、あと相変わらずというかシスター・プリンセスのゲーム本編を未プレイなワルイヤツ(汗)ですので、特にメカ鈴凛ちゃんの扱いは相当に違うものがあると思います。そういった部分は、メディアミックス……というか(違)、多次元世界的なシスプリワールドの一つとしてどうかご容赦下さい(ぺこり)。

 それでは。本当に拝読ありがとうございました。



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