従僕の鳴らすベルが軽やかに響き、扉が開かれました。
大きな窓から光があふれる、洋装の大広間。
そこに現れたのは……黒い喪服を清楚に着こなした、短髪の美少女です。
「失礼します……」
深く一礼。それを待っていたように……荘厳な大広間の奥から、声が。
「お待ちいたしておりました……花火さま。」
北大路花火さん。そちらを向いて……その笑みが、強まります。
広間の一角に敷かれた、濃緑の敷き物。
それは、畳でした。
その上で……鎮座し、頭を下げる美少女。
花火さんの会釈と共に、顔が上がります。
「おひさしぶりです……春歌さま。」
「おなつかしいことですわ。ようこそ、お城へ……」
春歌ちゃん。三つ指をついて、再び深く首を垂れます。
喪服の少女と、和服の少女。
二人にとって久方ぶりの、それは珍しくも嬉しい再会でした。
ヨーロッパはドイツ。世界に名高い街道を臨む古城。
深い森と濃緑の丘に囲まれた、自然の園の中に位置するそこは、いわゆる俗世から遠く離れたような……まさにそこを走る街道の名の如き、幻想的な風景を誇っていました。
この地を治める侯爵家が、近代的な模様変えをよしとしなかったからとも言われています。
そして今、その城には何台かの車と……そして、まばらながらも一般の人々が興味深げに歩んでいました。
それらの光景を見下ろす、城のバルコニー。そこに、午後の茶会を楽しむ二人の乙女が。
空を舞う鳥。遥かに続く緑の大地。うららかな日差し。
言葉こそ少ないものの、それはとても楽しげな時間でした。
「なつかしい景色です……寄宿生だった頃に、グリシーヌと共に訪れた以来……わざわざお招きいただいて、嬉しいです……ぽっ。」
「そんな……北大路さまにつきましては、日本ではとてもよくして下さっていると、つねづねお祖父さまから聞いております。今日のことなど、ささやかなお礼にすぎませんわ……ポッ。」
茶器を収める花火さんに、春歌ちゃんが頬を染めつつ首を振ります。
「いいえ、そんな。侯爵さまにおかれましては、父からもよく御礼を申しておくようにと。ですが、こうして実際に開かれた領地の姿を拝見すると……閣下のまつりごとの卓抜なこと、実感できます。」
「はい。お祖父さまとお祖母さまは、長い間、この領地に尽くして下さった人々のことを大切に思われていて。ですから、今は時間が許す限り……城の一部でもと、みなさんに公開しているのですわ。」
「素晴らしいことです。巴里の社交界でも、その話が大きな噂になっておりますの。うふふ、グリシーヌなども、同じように領地の一部を民衆に解放しようと言い出しておりますし……春歌さまと、侯爵夫人を婦女子の鑑と見習っていて……」
「まぁ……そんな、ワタクシなんて。お祖母さまに、ただ学ぶばかりで……ポッ。」
「いいえ。この誇り高き列強の一国、ドイツにあっても日本の心を失わない……それが、どれだけ強く気高い心によるものか。わたくしも常々、春歌さまのことは見習わせていただきたいと思っております……ぽっ。」
二人、見つめあって……かすかに頬を染めます。
と、そこへ。風に乗って、運ばれてくる……
「あら……?」
「今、何か……」
茶の湯の席上、耳をすます二人。と、確かに聞こえてきます。遥か下から……
叫びのような、悲鳴のような……人の、声が。
そして、次に……何かがひっくりかえるような、大きな音が。
「……うわぁぁぁーん!助けてぇ……!」
それは、確かに……
「女人の……方の?」
「ええ。間違いありませんわ!しかも……」
「日本の言葉、でしたわ。悲鳴のように……!」
二人、あくまでも優雅に、しかしつっと立ち上がり……いずこかへと、鋭い視線を向けます。
そして、一陣の風。
バルコニーには、既に誰もいませんでした。
城の入り口。そこを守る巨大な城門と、外からつながる長い石畳みの橋。
百年の歴史を経てなお頑強なそこ、こげ茶色の欄干に囲まれたそこで、激しい口論が。
罵声にも似た言葉をかけあう、巨漢の男が二人。
その前でひっくりかえっているのは……荷車でしょうか。農作物のようですが、積み荷が無残に散らばっています。
そして、現場の中央。二人の男に挟まれるようにして、泣きべそ顔の小さな女の子が、一人。
傍目からも、大変な騒動になっているのだとわかります。
と、ヒゲも粗暴な男の一人が……女の子に、ドンと歩み寄りました。荒々しく声をかけて……瞳を潤ませて、首をふるふると振る女の子。その様子に、もう一人の男がこれまたグイッとつめよります。
迫る二人に、女の子の潤んだ瞳が見開かれた……その瞬間。
「お待ちなさい!」
「そこな、狼藉者っ!」
鮮やかな身のこなしで、現れる二つの影。
手にした和弓、威を放つのは……その矢尻よりも鋭い濃緑の眼光。
片や、ひるがえしたナギナタを正眼に構えるそのさまは、まさに春に吹く風の如し。
花火さんと、春歌ちゃん。
共に和装の得物を所持する二人の出現に、男たちは目を丸くして驚きます。
「いたいけな少女に、大の男が二人がかりで……恥をお知りなさい!」
「我が祖父の領地において、これ以上の無礼は、決して許しませんわ!」
誇りある宣告に宿る、華美なる激しさ。
いかなる時も雅な色を失わぬ二人に……パクパクと口を開けて、動転する男たちです。
「お、お前たち……何を言ってるんだ……?」
と、その口から漏れるのはドイツ語です。あ、確かにここはドイツでした。
もちろん教養あふれる二人ですから、男の言葉がわからないはずもありません。
「お黙りなさい!これだけのことをして、恥じる心もないのですか!」
「その娘さんから離れなさい!婦女子を辱めるような行為は、この城とその主人の名において許しません!」
と、今度はドイツ語で言い放ちます。
真っ青になったのは、ヒゲとそうでない男の二人です。互いに顔を見合わせて……そして次に、自分たちの前で座り込んでいる女の子を見下ろします。
「ち、違うんだ、これは……」
「そうだ。俺たちは別に……うひゃああ!」
春歌ちゃんの手にしたナギナタが一閃。その刃が、午後の日光に燦然と輝きます。
そして、花火さんの手にする和弓も、また。
と、そこへ……いつのまにか泣き顔から回復していた女の子が、何やら慌てて立ち上がりました。
「あ、あの……あのっ!」
二人、すぐさまに手を招きます。
「こちらへ!」
「花火さま、その方をお願いします!ワタクシはこの、ふらち者どもをこらしめて……」
二人が動き出し、青くなって震える男たちが腰を抜かしかけた……その時でした。
「あのっ!だから、そのっ!えっと、ゼンゼン違うんです!この人たちは、悪くないんです!その……全部、私のせいなんですっ!」
女の子が、男たちをかばうように飛び出して、両手をあげました。
揺れる、おかっぱの短髪。くりくりっとした大きな瞳。
ぽっちゃりとした容姿に、可愛い薄手の余所行きの服。
花火さんと春歌ちゃん、その告白に……はたと動きを止めました。
「えっ……」
「どういう……ことですの?」
「そ、そのっ!私、観光客なんですけど、そのっ……さっき、すっごーく大きな鳥が飛んで来て……あの、私の帽子を……取られちゃったんです!」
恥ずかしそうに、それでもどこか一生懸命な女の子の声。
「鳥に……?」
「お帽子が……?」
「は、はい。それで、こっちのヒゲのおじさんが、それを見て……帽子を取り返してあげようって、思ってくれたらしくて……あの、ほら……あっち、あの下のところに、鳥がいますよね。」
タタタッ。石作りの欄干に走った女の子が、その隙間から覗き込むようにして、下方を指差します。
いつのまにか得物を下ろした二人、共に歩むと、そちらを覗き込みました。
「まぁ……本当ですわ。大きな鳥が……」
「確かにそうですわね。鷹でしょうか……」
城のある台地へと登る、かなり傾斜の強い崖の中腹……ここからは十数メートルほど下でしょうか。そこに、大きな翼を持つ鳥が一羽。
なるほど、確かにその横には、大きな麦わら帽子のようなものが落ちています。
「だから、この人たちはゼンゼン悪くなくって……」
「そ、それでは……このありさまは?」
花火さんの指摘。確かに、荷車が転倒し、積み荷が散らばった惨状がここに。
それを聞いた女の子、さらに顔を真っ赤にしました。
「あっ、これは……その、あの……ですね。」
下を向きかけて、そしてぐいっと顔を起こします。頬を染めて。
「私、言葉がわからなくて……それで、ヒゲのおじさんが崖に降りようとしたから、すっごくビックリして……それで、帽子なんていいし、危ないからって、おじさんを止めようとして。そうしたら、別の……その、こっちのおじさんが出て来て……きっと、誤解しちゃったんだと思うんだけど、おじさんたちが何だか口論になっちゃって。私、またビックリして。誰か……助けてくれる人をさがそうとしたら、置いてあった車に……その、思いっきりぶつかっちゃって。それで、ドターンってひっくりかえって……」
もじもじと、懸命に語られた状況説明に、目を丸くするのは二人の大和撫子。
「まぁ……すると、この方たちは……」
「つまるところ、狼藉者ではなく……」
「は、はい。私の帽子を取り返そうとしてくれて、それで……私が荷車をひっくりかえしてなきべそをかいてたから、それをなぐさめようとして……」
「そ、そうだったのですか……」
「まぁ……それを、ワタクシたちは……ポポッ。」
おじさんたち二人、日本語による会話が理解できないのでしょうか。どこか不安げに、三人の少女たちを見つめています。
「その……先程は、なんということを……」
「大変、失礼致しました……」
二人、ドイツ語で礼儀正しく陳謝。おじさんたち、相手の身分を察したのでしょうか……逆に恐縮したように、頭を下げ返します。
とりあえず、その場は無事におさまりました。
さて、片付けも終わって、おじさんたちが去り……
三人、見合ってあらためて挨拶です。
「あの、申し遅れました。わたくしは、北大路花火と申します。こちらの方は、このお城の……」
「はい、春歌と申します。あなたは……日本の方ですか?」
「あっ、ハ、ハイ!私、愛田めぐみっていいます。日本から来ました。家は牧場をやっていて……その、今は家族と……そのっ、みんなで海外旅行に来てるんです。」
愛田めぐみちゃん。おじさんたちのように、相手の身分がわかったのでしょうか。かなりの緊張が、顔に走っています。
「まぁ、日本で牧場を。素敵ですわね……ぽっ。」
「ワタクシたちも、ゆえあって欧州で暮らしてはおりますけれど……日本人ですの。」
「ホ、ホントですか?」
「えぇ。本日、こうして祖国の方と巡り会えたのも何かの御縁……あぁ、とても嬉しいですわ……ポポッ。」
喪服と和服。二人の華美な娘さんに囲まれて、めぐみちゃんはさらに照れたように鼻をキュッと。
「それで、めぐみさんは……今日はおひとりで?」
「い、いいえ。その、私っ、このお城には家族で来たんですけど。その、はぐれちゃったみたいで……」
「まぁ、それは大変ですね。春歌さま、ここは……」
「はい。安心して下さいね、メグミさま。ワタクシたちがついておりますわ。」
「えっ?あ、ハイ……」
二人の物言いに、何だかさらに緊張を強めているようなめぐみちゃん。
と、春歌ちゃんがはたと表情を。
「そういえば、すっかり忘れておりましたわ。メグミさまのそこな帽子、失われたままにしておくわけには。」
橋の欄干、眼下の緑の崖。その中腹に、いまだたたずむ鳥を見つめる春歌ちゃんです。
花火さんが、相づちを打ちました。
「確かにそうですわね。ですが、かなり危ない場所に運ばれてしまって……どうしましょう。」
「大丈夫、ワタクシにお任せ下さい。お祖父さまの城において起こった不祥事……不肖この春歌が、必ずや解決してご覧にいれますわ。」
「まぁ……春歌さま。微力ながら、わたくしも協力致します。」
二人、ほほえんで協同の会釈。
と、その真ん中で目を丸くするのは……めぐみちゃんです。
「あ、あのぉ……帽子は、別にもう……」
「では、春歌がこの身をもって、ここから下りましょう。メグミさま、少しだけお待ちになって下さいな。」
「そ、それは危ないですわ。もし手が滑ったりしては、大変なことに……」
「いいえ。もとより命を賭す覚悟はできております。花火さま、勇む春歌をお見逃し下さい。」
「あぁ……それならどうか、万が一のためにもこの命綱を……」
嘆き、唇を結び、そしてよよよと仕度を始める二人の乙女。
めぐみちゃん、さらにとんでもなく慌てたように。
「あ、あのっ!帽子なんて、もういいんです!どうせ安物だし……あ、危ないですよぉ!」
「いえ。お気遣いは無用ですわ。大和撫子として生まれたからには、これもまた立派なニョショウへの試練の一つ。どうか、ここで春歌のことを見守っていて下さいませ。」
「あぁっ、お止めしようにも、わたくしにはすべがなく……春歌さま、せめて、この場で祈りを捧げさせていただくことしか……」
どこから取り出したのか、たすきをキュッとかけ終えると、いかめしく身構えた春歌ちゃん。瞳を潤ませ両手を重ねる花火さんの前で、切り立った崖へと、いざその身を……
「や、やめて下さい!ねぇ……!」
あわあわあわっと手を振っためぐみちゃんが、金切り声にも似た叫びをあげかけた……
まさに、そんな時でした。
「あっ、めぐみちゃん!どうしたんだい?」
横合いから、声がかかります。
三人の動きが止まり、視線が向いた先……石畳を駆けて来たのは、一人の青年でした。
「あっ……!」
その姿を認めためぐみちゃん。安堵するように、その顔に喜びが満ちます。
「あれ、この人たちは……あっ、帽子が落ちたんだね?もしかすると、あの鳥に取られたの?」
「あっ、う、うん……あのね、鳥さんがパアーッて飛んで来て、ピューって持っていかれちゃったんだ……ドジだよね、私って。あははっ……!」
照れて赤くなるめぐみちゃんに、青年が優しくほほえみます。
「イタズラな鳥だね。よし、僕に任せて。君たち、ちょっといいかい?」
「えっ……」
「あ、はい……」
思わず身を引く、二人の乙女。
青年、さわやかに笑うと……三人を橋に残して、欄干から身を躍らせます。
「あっ……!」
驚く三人の見下ろす先で……岩肌を手探り、足場を見つけて、下へと降りていきます。
あれよあれよという間に、鳥の近くに……
「あっ、鳥さんが!」
「危ない!」
「お伏せになって!」
青年が近付くのに気付き、鳥が威嚇するように鳴き、大きくはばたきました。
三人の少女が、それぞれ慌て、驚き、思わず弓を構えかけ……
と、そこで素早く身を屈める青年。手をのばして帽子を取ろうとして……どうしてか、そこで動きが止まります。
「危ないよぉ!」
「早く、お戻りになって!」
「やはり今すぐ、この春歌が……」
いたいけな少女たちの悲鳴もどこへやら。青年は何か、岩陰でごそごそとして……そして。
「あっ……!」
身を返すと、帽子はそのままに……こちらへと登ってきます。
はらはらと三人が見つめる前で、無事に橋の上へと。
「よいしょっ……と。あぁ、どうもありがとう。」
手を貸す花火さんと春歌ちゃん。二人に礼を言って、めぐみちゃんに笑いかける彼。
「もうっ……危ないよ!すっごくドキドキした……あんな帽子なんて、よかったのに。」
「あ、うん。でもほら、めぐみちゃんが気に入ってた帽子だったから……だけど、取り返せなくてごめんね。」
謝る青年。そんな彼に、左右から二人の乙女が。
「あの……貴方様は……」
「先程、何か……」
青年は振り向き、ほがらかに笑います。
「ああ、あそこの岩陰にね、鳥の巣があったんだ。それが、たぶん風が雨かで岩場が崩れたのかな?巣の中に、石とか土がこぼれていたから、ちょっと綺麗にしてきたよ。」
「あっ、そうなんだ……大丈夫だった?」
「うん。匂いが残らないくらいにしたから、平気だと思う。あの帽子は、日避けか……屋根がわりに丁度いいって、だから持っていったんじゃないかな。取っちゃうのもなんだから、そのままにしておいたよ。ごめんね、めぐみちゃん。」
「う、ううん!ゼンゼンいいよ、帽子なんて。でも、へぇ……鳥さんの巣があったんだ。ヒナさんはいた?」
「うん。三羽いたかな。まだ生まれたてみたいで、ピィピィ鳴いていたよ。」
「わぁ……いいなぁ。私も見たかったな!」
嬉しそうに声を弾ませるめぐみちゃんの前で、同じように笑う青年。
左右の花火さんと春歌ちゃん、なんだか神妙な顔で顔を見合わせます。
「あっ、君たちも……どうもありがとう。彼女とはぐれちゃって、捜していたんだ。めぐみちゃん、お父さんたち心配してたよ?」
「あ……ご、ごめんなさい。私、ドイツのお城を見れるって思ったら、何だかみーんなうわの空になっちゃって……」
「はは、ゆうべからそうだったよね。じゃあ、そろそろ戻ろうか。」
「う、うん!あの……本当に、どうもありがとうございました。」
ペコンとお辞儀するめぐみちゃん。これも一緒になって、頭を下げる青年。
にこやかな、どこか独特な雰囲気の二人です。
一方の花火さんと春歌ちゃん、とまどいを隠しきれない表情ながらも……同じように、一礼。
「そ、そんな。ワタクシときたら、満足におもてなしもできなくて……」
「え、えぇ。もうお別れなんて、残念です。どうか、楽しい御旅行を……」
うなずき、歩き出す青年。
めぐみちゃん、その後について歩きかけると……そこで、思い出したように振り返ります。
「花火さん、春歌さん!あのね、日本に来たら、私の牧場に遊びに来てね!北海道の、愛田牧場っていうんだ!」
無邪気な……どこまでも純朴な、その笑顔。
振られる手。古くともしっかりした石畳みを踏み、城下へと降りていく男女二人です。
花火さんと、春歌ちゃん。見送る二人の表情は……いつしか、騒ぎなど何事もなかったかのように、晴れやかになっていました。
「行っておしまいになられました、ね……」
「可愛らしい方、でしたわね……」
ほうっと、二人。それぞれに、小さく息をこぼします。
遠く遥か、寄り添うように仲良く……消えていった、男女の影。
城門の二人、どちらからともなく……少し恥ずかしそうに、お互いを横目で。
「その、殿方の君も……颯爽として、素敵な方……でしたね……」
「そうですわね……本当、風のような、さわやかな君で……ワタクシ思わず、兄君さまのお姿を重ねてしまって……ポポポッ。」
「まぁ……」
春歌ちゃん、照れたように頬が。
「い、いいえ。それより、花火さまこそ、何か……あの君に?」
「そ、そんな……少しだけ、巴里でのことを思い出して……ぽっ。」
ちょっぴりうらやましいのでしょうか、それとも、想いが馳せたのでしょうか。
二人の乙女が仲良く頬を染める、そんな午後のひとときでした。