[593] 学園恋愛? |
- 紅羽 - 2004年06月12日 (土) 15時39分
チャイムが鳴って、放課後はクラブ。ざわざわと廊下はざわめき、無数のクラブ所属者の者たちがこの校舎に集まってくる、いつもの平日の日。 ここ、穂赤高校はいくつかの校舎に分かれて建てられてあった。クラブ錬。そして授業錬。授業を受けるのは1・2は合同校舎で、3年だけがもう一つの特別校舎で授業を受けていた。受験生に、少しでも静かなところで勉強をしてもらうためだ。 そしてここ、クラブ錬は文科系と運動系に分かれてある。 運動系にはシャワーなどの待遇がもてなされ、文科系には運動系よりも大きな部室が分け与えられる。 穂赤高校のクラブは、他よりは種類が多かった。そのせいで一つ一つのクラブに大した人数はいないのだが、ここ、報道部は多数の1・2年によって大人数を誇っていた。 しかも2年の部員はあの有名なD組生徒だけあり、報道部のファンクラブまでが作られる始末で、最早『穂赤に報道部あり』とまで詠われる次第にまで発達していた。それでもきちんとクラブ活動はしているので、『穂赤高校の看板』という名もあながち嘘ではない。 ちなみに、部長は杉谷美咲。副部長は、唐司革斗だった。じゃんけんで決めたという噂が流れているのは、あの面子ではなまじ嘘ではないだろう……。 報道部の部室は意外ときれいに片されている。それも真面目一色の宏や美咲達のお陰で、今現在部室にいる二人の人間のお陰とは想像しがたかった。
部室には、楽蓙と狼がいた。しかし部活光景とはまったく結びつかない格好で、だ。 楽蓙は、宏たちが折角片したダンボールを漁り、狼は部室に用意されたソファに寝そべっている。部室は普通の教室よりはやはり広く、壁際に四つの机、後部のドアの向かいの端には写真現像用の暗幕が張られてある。部屋の中央には大きなソファが一つ。その周りに、小さな棚が1つ立てかけている。教卓はもちろんあるが、ほとんど使う生徒はいなかった。報道部の面々は話し合いをするときには全員が床に座り込むのという暗黙の了解があるので、実際はソファや机も要らないはずなのだ。
「うわ、すげ~!狼、先輩たちすごいの隠してるぞ~!」 「……は?」 唐突な楽蓙の言葉に、怪訝そうに狼はソファから半身を起こした。狼の体躯の良い身体を埋め尽くせてしまうほどのソファは相当大きく、同時に安物ではないことを認識させる。 「いいから、来いって~!」 「…んだよ、ったく」 執拗に呼び続ける楽蓙に、狼は観念したのか、しかし面倒くさそうな声で床に足をつけた。そのままゆっくりとした動作で歩き出す。 「……何してんだ、楽」 特殊な光景に、狼は怪訝を通り越して呆れた表情を作った。 「ん?ほら、狼!エロ本エロ本!」 「…はぁ」 ダンボールに顔を突っ込んでいたので何事かと思ったが、どうやら楽蓙はダンボールの奥のほうを探っていたらしい。楽蓙の周りには無数の小物や雑誌などが散乱しており、それは暗に先程まで楽蓙がダンボールの中を探り出していたことを物語っていた。
……こりゃあとで真智とかにしばかれんな…
頬を掻きながら、狼は心の中で小さく呟いた。呆れている狼に楽蓙は気づいていないのか、手にした数冊の雑誌を狼に差し出したままきょとんと固まっている。 「どれどれ……」 このまま楽蓙を放っておいても仕方がないので、狼は楽蓙から雑誌を受け取った。特に感慨もなくパラパラとページをめくる。そこには、可愛いとは思う女の子の裸写真や、AVビデオの案内などが大まかに描かれてあった。特に変わったところはない、普通のアダルト本だ。 「先輩こんなの隠してあったんだな~。俺たちが一年のとき、部室を探られんの嫌がったわけだぁ」 へらりと独特の笑みを浮かべ、楽蓙は狼に渡さなかったほうの雑誌をめくり始めた。 「……あ、でも、何で部室で見んのかな?こんなの先生に見つかったらやばいのになぁ」 「どーせ友達とかと回し読みしてんだろ。くっだんねー」 「狼は経験豊富だからそんなこと言えるんだよ~。俺はちゃんと勉強しとかないとさぁ」 「……勉強?」 「ヒロのために!」 ビシッ!と指を天に掲げ、楽蓙はきっぱりと言い切った。 言い切る楽蓙に、狼は思わず吹き出してしまう。 「あ!?何笑ってんだよ~!俺本気なんだぞ~!」 「っはは……。わりぃわりぃ。でも、俺からすりゃあ楽もヒロも同じもんだぞ?」 何とか声の上擦りを押さえて言い返す狼に、楽蓙はきょとんとして首を傾げた。 何の事か分かっていない状態だ。今度は苦笑交じりに、狼は笑う。 「何だよ~!性格悪いぞ狼~!」 軽く頬を染めて、楽蓙は狼に指をさしてぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。 なんとなく、その姿が可愛い。 そう思った瞬間、すぐに狼は行動に移していた。
「……何なら、試してみるか?」
狼は手に持った雑誌を床に落とし、囁くように、楽蓙の耳に息を吹きかけた。 「っっっ!?!?」 狼の低い声と突然の奇行に、楽蓙は右の耳たぶを押さえて狼から後じさる。バサッと、楽蓙の手から雑誌が音を立てて床へと落ちた。 「……な、ななななにすんだよ、ばかろ~!ビックリしただろ……」 「返事は?」 楽蓙の言葉を遮って、狼は一言、静かに言った。 その有無を言わさぬ抑揚の無さに、楽蓙は少し肩を強張らせる。 「……な、何のこと…」 「……」 「ちょ、わっ!?狼、何……!」 楽蓙の声を聞かず、狼は無言で楽蓙の身体を抱き上げた。軽々と抱き上げられ、楽蓙はただ唖然と狼を見上げる。 「…っ……!」 ドサッと、音を立てて楽蓙はソファに放り込まれた。 仰向けに寝かされた状態で、すぐに狼が覆い被さって来る。突然の事で抵抗することも忘れ、楽蓙はすんなりと手首をつかまれ、頭上へと持っていかされた。 呆然としている間に、手首を自分がしていた藍色のネクタイで締め上げられる。その頃になって、ようやく今置かれている状態を楽蓙は理解した。 「…て、狼!?何してんの~!?」 ここにきて初めて、楽蓙は狼の下で暴れだした。 暴れだす楽蓙を難なく狼は押さえ込み、手馴れた動作でカッターシャツを脱がして行く。 上半身だけだが、素肌が外部にさらされ、楽蓙は身体を強張らせた。 「……へぇ」 はだけたカッターシャツから覗く素肌を見つめ、狼は小さく言った。 「暑がりの癖に日焼けしねーんだな。楽は」 言って、身体の線をなぞる様にして手を這わす。 くすぐったいような感覚に、楽蓙は身体をのけぞった。それをも片手で押さえつけ、開いた右手で確認するように狼は上半身をなぞる。 手が、腹部を這った。 ゆっくり進んで、また、下がる。 そんなじれったい行為に、くすぐったさを通り越して何か変な感覚が生まれてきた。 「…ろ、やめろってぇ……」 身体を揺らし、喘ぐように楽蓙は声を漏らした。 しかし狼は止めない。楽蓙を見下ろすその笑顔が、だんだんと意地の悪いものに変わって行くのを狼は自覚していた。 手は、腹部を、なぞる。 しばらくの後、途端、這っていた手がある一点に集中した。 「……っあ…!?」 楽蓙は声を上げ、同時に顔を真っ赤にさせた。 「う、わわぁ……!狼、どこ触って……!」 楽蓙は固定された身体をのけぞるようにして動かそうとした。 それでも自由に動くのは口ぐらいで、動けない状態のまま胸に執拗な愛撫をくらう。 狼は、何も言わない。 ただ胸に当てられた手をやさしく動かすだけで、その手が動くたびに楽蓙は自分のものではないような声を上げた。 「い、て……ひ、かくな、ろ……!」 「何を?」 「っつぅ…!」 尖りかけていた胸の突起を、突然、痛痒い刺激が襲った。 撫でられるだけならまだしも、狼は爪を立てて擦ってくる。それが痛くて、同時に何故か甘ったるい声が口から漏れた。 「ぁ、ろぉ…!いたい、てぇ……!」 「だから、何が?」 「……う~……」 擦られる度に身体が跳ね、女の子みたいな声が、恥かしいのに耳に響く。 楽蓙が気付いた時には、もう突起は完全に尖っていた。それでもなお狼が攻めてくるので、先程よりも敏感に、楽蓙は身体を硬直させた。 「……暴れないなら手離してやるけど?」 「ぅ…?」 「どうする?」 狼は、決して優しくはない声で楽蓙に言った。 どちらかと言えば見下ろすものの口調だ。『外してやるから暴れるな』……狼は、こう言いたいのだろう。 楽蓙は、ぼんやりとした頭でもたげるように首を動かした。 暴れるなと言われても暴れる気力など残ってはいない。たったあれだけの愛撫で、身体を動かす事さえ億劫になっていた。 「よし。……ついでに服脱げよ。その間に俺は鍵締めて来るから」 楽蓙は頷く。 狼は軽く楽蓙の額にキスを落とすと、すぐに立ち上がってドアの方へと歩き出した。 「………」 縛りを外された手首を、楽蓙はぼんやりと眺めた。よほどきつく締められていたのか、くっきりと赤い跡が残っている。 「………」 思考が付いていけない。どうして自分は手首を縛られていたんだろう?そんなことを、ぼんやりと思った。
……確か、俺先輩の残したエロ本見つけて。 ……で、狼に見せて。 ……で、何か話して。 ……で、狼がいきなり、俺を持ち上げて…。 ……で?
「――――――っっ!!」 ガバッと、楽蓙はソファから半身を起こした。 自分でも分かるくらいに顔が真っ赤だ。というか熱い。楽蓙は自分の顔を押さえて、何とか平常心を保とうとした。 先程までの、狼の行動が思い出される。 喘いでいた声は本当に自分のものだったのか? あわあわと、楽蓙はソファの上で意味不明な行動を繰り広げた。 と、その間に、鍵を掛けた狼が戻ってくる。 「……こら。ったく、楽蓙ぁ」 「え、えぇ!?や、だって、何がっ!?」 呆れたような狼の声が頭上からし、楽蓙は真っ赤な顔のまま狼を見上げた。 狼は、意地の悪そうな笑顔で楽蓙を見下ろしている。それがさっきまでの狼と重なって、思わず楽蓙は顔を背けた。 ゆでだこ状態の楽蓙に、狼は苦笑する。 狼は静かにソファに腰掛け、半身だけを起こした楽蓙をもう一度押し倒した。 ギ、と、二人の重力にソファが軋む。 「……あの、な、狼。俺、ヒロが好きだから……」 平然を装った口調で、楽蓙は引き攣った笑いをつくった。動揺しているのはバレバレだが、この際どうでもいい。とにかく、狼にこの行為を止めさせることが先決だった。 楽蓙の心情を知ってか知らずか、狼はその顔にたおやかな笑みを浮かべる。 「…知ってるけど?それが?」 「~~~~~~だ、から!狼だって俺なんかよりもっと可愛い子が……」 「…それが?」 「え、だから…。とにかく、やーめーろ~!」 全く会話のキャッチボールが成り立ってはいないが、とにかく楽蓙は何とか伝えたい事は言えた。 これで、狼がどうでるかだ。 すんなりとはやめてはくれないだろうが…… それでも、と楽蓙は思っていた。友達だし、親友だし……。
「……**おったてて何言ってんだか」
…予想だにしない答えだった。 「だ、だってこれは狼がっ……!!」 「はいはい。良い子だから大人しくしなさい」 「にゃー!!」 真っ赤になって逃げようとする楽蓙の身体を狼は難なく引き寄せ、その膝に乗せた。 膝の上に乗っけられ、楽蓙の恥かしさが爆発する。ただでさえさっきまでのことがあるのに、これ以上のことは絶対に不可能っ! 「……ちゃんと下も触ってやるから」
さわらんでいぃぃぃ~!!
「っん…」 結局狼に流される楽蓙。ズボンのチャックを下げられ、露になった自身をなるべく見ないようにして、楽蓙はぎゅっと目を瞑った。 「あんま剥けてねーな。……お前、自分でやってねーだろ」 「ばっ…!するか、っかぁ……!」 あまりの恥ずかしさに、楽蓙は声が出ないように両手で口を覆った。それでも少しは声が漏れるので、それがかえって狼を煽る結果になっているのに楽蓙は気付いていない。 「んぅ…!」 びくんと、身体が跳ねる。 狼は、さすがに経験豊富とだけあって手つきは手慣れていた。ゆるゆると優しく動かされ、じれったい行為に楽蓙の身体が熱を帯びて震える。 震える身体を更に苛めるように、狼は空いた右手で胸の方をまさぐりはじめた。 また、身体がしなる。押さえた口から、甘ったるい声が漏れる。恥かしくて、更に強く楽蓙は口を押さえた。 「初々しい反応だな。かーいーぞ?楽蓙」
狼が上手すぎんだよ、ばか~!
「っ、んっ…!!」 「っと、」 「ふあぁ!?」 折角絶頂に達し掛けたところを強く握る事で妨害され、思わず楽蓙は咄嗟に手の力を抜いてしまった。 漏れた声も恥かしいのだが、それよりなにより吐き出せない快感が身に溜まる方が辛い。その上、狼はまだ愛撫を続けてくる。気がおかしくなりそうだった。 「ろ、ろぉ…!も、だめ、って、ろぉ!」 「何が?」 「っ…!」 また、同じ事をされる。 我慢しきれなくなって溢れ出した白濁した液が、顔を俯かせた自分の目に入って泣きそうになった。 せめて、一度でいいからどうにかして欲しかった。それでもなお、狼の強姦に等しい愛撫は続いてくる。 「ろう、ろぉ!ろぉ、も、…!!」 また、同じ行為。 楽蓙は狼から逃げようと身をのけぞらせ、しかし狼がそれを許さなかった。 右手でしっかりと体を押さえつけられ、なおかつ胸の痛痒さが苦しいほどに腰に響く。下半身はみっともないほどにがくがくと震え、狼が手を離したらすぐに達してしまいそうだ。 楽蓙は口を押さえるのも忘れて、狼から逃げ出そうと、狼の右手を引き剥がすことに専念しようとした。しかし力は入らず、狼の右手を押さえる形になって終わる。 「……よし。おーい楽。もっかいソファに寝ろ」 「――――っ…!!」 言い、狼が手を離した瞬間。 声にならない声を上げて、楽蓙は絶頂に達した。白濁したモノが床に飛び散り、支えられていた力が弱まったせいで楽蓙はへたり込むように床に倒れかける。 「らぁく。……ったく、かーいーな、お前は」 倒れ掛けた楽蓙の身体を抱き上げ、狼は再び楽蓙をソファの上に倒した。 「う~……。狼の、馬鹿ぁ……!!!」 非難一杯の目で、楽蓙は狼を睨めつける。 その視線をも狼はからかうように、くしゃくしゃと楽蓙の頭を撫でた。ペットを扱うような仕草に、楽蓙の顔が更にむすっとしたものに変わる。 「……じゃ、楽、腰浮かして」 「…なんで」 「い・い・か・ら!」 「わぁあっ!?」 思いっきり足を上に持ち上げられ、楽蓙は素っ頓狂な悲鳴をあげた。 足を上げられたせいで、見えなくてもいい部分が狼の目に映る。あわあわと、楽蓙は取り繕うように両手を空に振った。 「ちょ、何やってんだ狼~!?」 「あぁ?いいから、お前は黙ってろって」 「だって…」 言おうとした瞬間、狼の「いいから」の声に遮られた。 「…」 仕方なく、黙る。 それでも不安なのは不安なので、楽蓙は上目遣いで狼を見上げた。 狼は答えない。その代わりに、何か冷たいものが双丘の間に押し当てられた。 「ひゃ…!?」 咄嗟に、楽蓙は口を押さえる。口を押さえたまま楽蓙が恐る恐る下を覗くと、途端、物凄くおかしな感覚が身体全体を駆け巡った。 「ろ、…!?」 「大丈夫だ」 何が大丈夫なのかは良く分からないが、狼はその長い指を更に奥まで侵入させてきた。 一本だけしか入れられていないはずなのに、やけに腹部全体が圧迫されているような気がする。楽蓙はその衝撃を少しでも和らげようと、ぎゅっと、乗りかかってきていた狼のカッターシャツを握った。 狼が一瞬不思議そうな顔をする。しかしそれはほんの少しで、すぐに狼は行為を再開した。 外壁を擦るように指を動かし、時折思い出したように奥へと進ませる。 気付いた時には指が増えて、認識するのも億劫だったが、多分3つはあるように思えた。 それがバラバラに動いて、それでも何か規則があるように沿って動いている。 一本の指が感じるところを付くと、もう一本の指はそれを宥めるようにそうでもないところを付く。快感と不安感ともどかしさが一杯に詰まった状態で、楽蓙は声を押し殺していた。 「……楽蓙、無理するなよ。舌噛むぞ」 楽蓙の額に左の手を添え、狼は窘めるように優しく言う。 さっきまであんなに意地の悪い事をしていたのに、途端優しくなる狼に楽蓙は苦し紛れの苦笑をした。 非常なのに狼は優しい。そんなところが、狼の良いところだと楽蓙は思っている。 「ん…。だいじょぶ……」 へらっと、楽蓙は笑んだ。 目は涙目で、どこが大丈夫なのかは自分でも分からない。 それでも、何となく狼ならいいと思った。 それに呼応するように、狼はすっと指を引き抜く。 ベルトを外す音が、楽蓙の耳に薄っすらと響いた。
「……力抜けよ、楽蓙」
返事をする気力が無かったので、楽蓙は頷きだけで返した。 狼は楽蓙の額にキスを落とし、自身のものを、双丘の間に押しやった。 そこはまだ初めてのせいで固く閉ざされていたが、先程までの愛撫のお陰で随分と柔らかくなっていた。ゆっくりと、確かめるように、狼は侵入して行く。 「……大丈夫、か?」 髪を撫でられ、くすぐったいのと腰に響く重力で楽蓙は苦々しく笑んだ。 知らずのうちに涙が流れる。不思議と痛いのは感じなかったが、異様なほどの圧迫感が勝手に雫を浮き上がらせていた。 「………へ、き…。でも、シャツ掴ませて……」 「…ああ」 弱々しい楽蓙の懇願に答えるように狼は身体を前に倒す。反動で声が漏れたが、もうどうでもよくなっていた。 楽蓙は震える手で狼のシャツを掴んだ。苦笑とも微笑とも判断付かない顔で、狼を見上げた。 「…動くぞ」 「ん……」 楽蓙の返事と同時に、狼は一気に引き抜き、もう一度強く突いた。 「っぅ……!」 シャツを掴む手が、震える。 気に掛けていないかのように、狼は、同じ行為を何度か繰り返した。 「ろ、っあ……!!」 圧迫感が、快感に変わった。 「ろぉ、…!やぁ、俺っ……!」 漏れる、喘ぎ声。 思い出したように楽蓙は口を覆った。口を覆ったせいで下半身から響く音が大きくなって、恥かしさに目眩がした。 音が、響く。乾いた水の音が、嫌と言うほど耳にまとわり付いた。羞恥心と快感の真ん中で、楽蓙は必死で口を押さえて、せめて廊下に声が漏れないように祈った。 「ん、ん―――っ、!っ…!!」 ぼろぼろと、情けないほどに涙が流れる。意志とは関係なく腰がゆれ、狼がそれを追うようにして一番感じるところを付いてくるので、隠せる声も隠せない状態になっていた。 「っ、楽蓙……」 掠れる、狼の声。毎日聞いて、当たり前のように友達として過ごしていた人間と、こんな恥かしい事をしているのがまだ信じられない。 「……ろぉ……」 楽蓙は、手を離して狼の肩にそれを回した。 握り緊める。せめて、これが終わるまでは。 薄れる理性、感じる鼓動。 耳を付く音は艶めかしく、羞恥心を掻きたてる。 それでも、何となくいいと思った。
本当に、何となく、だけど。
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「…うー…」 行為の後。 思考が寝起きのようにぼーっとしている。 ソファの上に仰向けに寝転がり、楽蓙ははっきりとしない意識の中天井を見上げていた。 ぼーっとする。天井は同じ模様ばかりが続いていて、見ていて飽きないなと初めて思う。 と、狼が頭のすぐ上の所に腰を下ろしてきた。どこからともなく煙草を取り出し、口に銜えている。 楽蓙は、いつもよりも間延びした口調で狼を見上げた。 「い~けないんだ~。からだに悪いぞ~?」 「いいの。何なら楽も吸うか?」 「いらない~……」 ごろんと、楽蓙はソファの上で器用に寝返りをうった。 狼は苦笑し、ズボンのポケットからライターを取り出し、ゆっくりとした動作で火を付ける。しばらくして煙が上がり、それは天井の近くで四散して消えていった。 「……そいえば、狼ってキスしないのなぁ~。何で~?」 うつ伏せのまま楽蓙は顔を上げ、独特の笑みを浮かべて狼に問うた。 狼はすぐには答えない。一途の間を置き、静かに口を開いた。
「……キスしたら、付き合う事になっちまうだろ……?」
「……え……?」 「――ほら、ちょっと休んだら帰るぞ。どーせ今日は誰も来んだろーし」 煙草の煙を吐き出し、狼はいつものように微笑した。 「………あ………うん…………」 楽蓙は半ば促されるように頷き、もう一度寝返りをうった。 見上げた天井は、狼の煙草の煙とあいまざって、少しだけ灰色に見えた。

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