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[577] 知らない時間
少年少女 - 2004年06月04日 (金) 13時36分

高校3年とあって、間近に卒業を控えていた時期のこと。
俺はいきなりクラスの奴に名を呼ばれ、伏せていた顔を上げた。
「何だよ、一体。」
目の前に立っていた(つまり俺を呼んだ)のは友達の香坂らしく、面倒くさそうな顔をしながら 教室の入り口を指差した。
指先に視線を合わせてみると、どうやら別のクラスの奴らしく、見かけない顔の男子生徒が立っている。
「お前に用があるんだと。」
「え、俺あいつ知らないよ。誰?」
「ほら、黒崎 智也。お前と同じ1年前にバイク事故起こして しばらく休んでた奴。C組の。」
と言われても、まったく思い出せない。
それに、どうしてそんな奴が俺を呼び出すのかも、まったく予想がつかない。
(別にうらまれるよーなことした覚えないしなぁ。)
「うーん・・。」
結局 何で俺なのかということは分からないまま、俺は香坂に後押しされ 渋々教室の入り口まで向かった。
入り口に立っていた奴は、今時珍しく黒髪の 驚くほど顔の整った美少年だった。
(うわっ・・・顔白いし、細いな。・・・背だけは俺より高いけど。)
と、喋る前にじろじろと観察なんかしてたもんだから、相手の奴は居心地が悪そうに呟いいた。
「あの・・。」
「あ、えっ!?」
いきなり声をかけられて、俺は驚いた反面 じろじろ見てたのが気付かれたのかと思わず赤面してしまった。
「あっ・・・ごめん!!俺に用事だったんだっけ?」
相手は何も言わずにコクリと頷いただけだった。
「少し、時間がほしいんだけど・・いいですか?」
「時間って、別に何もないけど・・・。」
(それより、こいつは誰なんだよ。んでもって、どうして敬語使うんだろ。)
もしかして、俺が一年浪人してたこと知ってんのかな?
俺はこいつと同じように、一年前バイクで事故って重傷だったらしい。
もちろんそのまま入院生活を送りつづけて、リハビリのかいあってか こうして一年遅く三年に進級できたという訳だ。
だから、俺の友達は一足先にこの学校を卒業したことになる。
最初はやっぱ、一人だけ浮いてる感じがしてなかなか慣れることができなかったけど、暫くするとクラスの中に友達も出来て 今ではすっかり打ち解けることができた気がする。
さっきの香坂も、その一人みたいなもんだ。
(でも、そのせいで敬語使われるのは何だか変な気がするし。)
「あのさ、俺に敬語とか使わなくていいから 普通にしろ、普通に。」
「普通に・・・ですか?」
「ほーら、また敬語使ってる!!!いいか、お前の用件は聞いてやっから、普通にしろよな、お前も。」
「わかりま・・・・」
と、奴がそこまでいいかけて、慌てて言いなおす。
「わかった。」
「よし!!」
俺はにこにこと頷きながら、「それで」と話を続けた。
「お前の用事って、ナンなの?」
俺は、実に軽〜〜〜く訪ねたつもりだった。
のだが、奴はいきなり真剣な顔をして、俺の頬にそっと手を伸ばした。
「・・・・・。」
あまり突然のことに絶句したまま、俺は呆然と奴を見つめる。
そして、奴の口からさらりと一言。
「好きだ。付き合ってくれ。」


「は??」
俺は思わず、やつにそう聞き返した。
こいつは今、何を言ったんだ?
好きって何を?付き合うって誰と??
「だから、お前が好きなんだ、付き合ってほしい。」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、俺〜〜〜!!!???)
ちょっと待て。
おい、待て。
こいつは今、俺のことが好きで俺と付き合いたいって言ったのか!?
待て待て待て!!!
「ちょっと待て!!!俺は男でお前も男。しかも、俺はお前となんの面識もなければ、なんの感情も抱いちゃいない!」
おまけに、俺は中学 高校とろくに女にモテず、大概は告白して振られるか、お友達でいましょうね、の2パターンだ。
なのに、こいつは俺に始めて告白してきて、異性どころか同姓じゃんかよ!!
俺は今だかつて、こんなに混乱したことはない。
しかも、告白してきた当の本人は涼しい顔で俺の目の前に立っていやがるし。
「俺はそーいう趣味はないッッ!!!!!!」
その瞬間、しまった・・と俺は慌てて口をつぐんだ。
ただでさえ馬鹿デカイ声を、さらに思いっきり大声で叫んだのだから、クラスの視線が一気に俺に注ぐのもわかる。
俺は途端に無償に恥ずかしくなり、気づいたら黒崎の手を引っ張って何処へ行くでもなく、とにかく教室から全速力で飛び出していた。
我ながら、何をやっているんだと自分に自分でツッコミをいれたくなったものの・・・・いつのまにか奥嬢まで来ていたことに気付いて、俺はずっと握っていた黒崎の腕を慌てて放した。
「ご、ごめん!!そのー・・いきなり走っちゃって・・。」
恐る恐る視線を上に向けると、予想外に 奴はとても嬉しそうな顔をしていた。
「なっ・・何だよ!!」
「別に。」
そう言いつつも、奴はどうみても笑いを堪えている様にしか見えない。
(俺、なんか変なことしたっけ??)
いや、変なことした後だけど、笑う理由がよくわからない。
「同じだ。」
「え?」
「病院で会った時と同じだ。」
病院?
「病院って何だよ。俺、お前と会ったことないぞ。」
「あるよ、俺はあの時 バイクで事故して、あんたはもう入院してた。」
(えっ・・・?)
「確かに・・・俺、バイクで事故って入院してたけど、何でお前がそのこと・・。」
知ってるんだ?・・・と言い掛けて、ある考えが頭に浮かぶ。
「っ・・お前もしかして、俺と同じ病院に入院してたのか!?」
黒崎はまた何も言わずにコクリと頷いて、話を続けた。
「あの時は、俺の不注意でバイク同士で衝突して・・・っていっても、対したことじゃなかったんだけど、しばらく入院するってことになったんだ。」
それがあの病院だったんだ・・。
「でも、どうして俺のこと知ってたんだ?」
同じ病院っていっても、会う可能性はほとんどないし、俺もこいつに会った記憶はない。
いくら1年前っていったって、顔を見れば(知っていたら)誰だかわかるはずだ。
「病室が・・・同じだったんだよ。」
(えっ?)
「あんたは気付かなかったと思うけど・・・・ま、あの時、あんたも運ばれて来たばかりらしくて、意識が完全に戻ってなかったから仕方ないけど。」
そうだ。
俺はバイクで自動車の衝突して、幸い1一命は取り留めたんだけど、かなりの重傷で暫く意識が戻らなかったと両親が言っていた。
何を言っても、上の空で・・・ほとんど、意識が朦朧としてた状態だったらしい。
「でも・・・俺の意識が戻ったときは、お前はいなかったぞ。」
「それは・・・もう退院してたんだ。あんたほど、容態は悪くはなかったし。」
(でも・・・そんなことって。)
「俺も驚いた。病院で好きになった奴が、同じ学校の生徒だったなんてな。」
(好き・・・・・・?)
「どうして・・?」
「え?」
「どうして俺なんかが、好きなんだよ。・・・俺とろくに話したこともないクセに。」
俺は黒崎のことなんか知らない。
違うクラスで、話したことも さっき始めて会ったばかりなのに、どうしてこいつは俺のことを好きなんていうんだろう・・・。
意識がなかった俺を好きになられても、ぜんぜん嬉しくない・・。
俺は、視線を黒崎から逸らし、何も喋らなかった。
「守・・・。」

「気安く名前で呼ぶな。」
腹が立った。
病院で何があったかし知らないが、俺のことをろくに知らない奴なんかに「好き」だなんて言われたくない。
そんなんじゃ、言われても答えられない。
お前が好きなのは、眠ってる意識のない俺なのか?
じゃあ、今の俺はなんなんだよ・・・一体。
なんなんだ、こいつは・・。
「俺さ、あんたが病室で眠ってた時・・・何度も見に行ったんだ。始めて見たときは、すごく・・・すごく綺麗で。あんたを見たくて、会いたくて・・・早く目が覚めてほしいって思ってた。好きになったのは、学校であんたを見てからだ。いつも、目で追ってた。病室で、いつもあんたが目を覚めるのを待ちながら・・・どんな声なんだろう、どんな風に喋るんだろうとか、どんな風に笑うんだろうとか・・・いろいろ想像してた。でも・・・退院するのが決まって・・・
。」
「・・・・・・。」
「せめて、あんたが目をさますまでは、ここにいたいと思ってたのに。不思議だよな、学校で会うあんたは、俺のことを全く知らないんだから。」
黒崎は、それから何も喋ろうとはしなかった。
俺も、喋らなかった。
でも、俺はなんでだろ・・・なんだか、無償に悲しくなって 気づいたら黒崎を抱きしめてた。
何でだろう。
何で俺はこいつのことを知らないんだろう。
俺は今日始めてお前に会ったのに、おまえはずっと前から俺のことを知っていた。
くやしい。
俺がお前のことを知らないなんて・・・。

「守・・・・?」
黒崎は、俺に抱きしめられて すごく驚いているみたいだった。
俺も驚いてる。
こんなことしてろ自分に。
でも、すごく嬉しい。
こうして、お前を知ることができた、ただそれだけが。
「嬉しいよ・・・俺。」
黒崎 智也。俺と同じ高校三年。驚くほどの美少年で、俺のことが好きな奴。
バイクで事故って、それこそ不幸な出来事だけと、こいつと知り合えたことは、一生に二度と起きる事はない幸運だと、俺は思いたい。







[578] が、頑張ります。
少年少女 - 2004年06月04日 (金) 13時42分

こんにちは、少年少女です。
前回よりは、どーにか長めにしようとしたんですが・・・あまり変わらず・・。(泣)
ストーリー的には、自分でも「これはどーなんだろーか・・。」と落胆中。
ビシバシ!!と厳しい叱咤 いただけられば幸いです。
次回はもっと長く、もっと捻りのあるストーリーを目指して頑張りますです!!

[579] 頑張ってくださいね
K - 2004年06月04日 (金) 17時17分

え〜、初心者さん……ということで、小説を書く上での基本的なお約束ごとを少し。

★ 会話中の「」の中ですが、 」 の前には 。 はつけません。
  「これが正解。」→「これが正解」となります。
★ 文章中の ? や ! の後は、ヒトマス空けます。
  また、? ! は、基本的に一度に使うのはひとつだけです。
  連続使用は、マンガではよく見ますが、小説では避けましょう。
  それと、!? のように驚きと疑問を同時に表す使い方。
  これも、ふつう小説では使いません
  (あくまでも基本。最近は使ってる人もいるかもですが……) 
★ ・・・・の使い方ですが、これは三点リーダーと申しまして、
  本式には、……です。(←フタマスを使ってワンセット)
  どのくらい長くつなげていいのか、という決まりはありませんが、
  3セットがせいぜいかな? 長すぎるのは字面的に見難いです。
  ちなみに、――も、フタマスでワンセットです。

上記のお約束は、HPなどで趣味で作品を掲載するぐらいなら、別にかまわないんですが、あくまでも投稿を前提(小説家を目指す)という視点から考えて、ちょっと列記してみました。
それと、人前に公開する時は、誤字脱字に気をつけましょう。書き終えた後、必ず推敲してください。

で、肝心のお話なんですが、
前回の作品に比べると、小説としての形式がちゃんと出来上がっていて、格段の進歩だと思います。
文章自体も、軽いノリではありますが、素直で読みやすく、好感が持てます。
ただ主人公の心の変化が、ちょっと説明不足というか、唐突かな?
ネタ自体は、短編としては悪くないと思うので、主人公が智也に惹かれていく過程とか、理由とか、心の変化の状況とか、そういうものをもう少し練り上げて、加えていくといいと思います。
要するに、起承転結をハッキリさせること。今回は、転と決がちょっとつながっていない感じかな?

少年少女さんの、小説を書く楽しさ……みたいなものが伝わってきて、思わず口を出してしまいました。
これからも頑張って書き続けて下さいね。

あまりためになる感想ではなくて、スミマセン。

[580] 感謝感激です!!
少年少女 - 2004年06月04日 (金) 20時39分

Kさん、素敵な感想 どうもありがとうございます!!
読んでいて嬉しくもあり、とってもためになりました。
本当にありがとうございます!
小説の基本的な書き方までもご指導いただき、感謝感激です。
まだA、初心者なので知らないことがたくさんありますが・・・こうやって、みなさまから感想聞けるというのは、とってもうれしいことですね♪
次回は起承転結を心がけて、頑張ってみたいと思います。(笑)



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