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[723] 例えば ゆい - 2004年09月01日 (水) 06時31分 ――――例えば、どうだろう。 今俺の目の前を歩く、そのしなやかな体を。 そこの細い路地にでも引きずり込んで、強引に押し倒してしまえば、俺達の立場は逆転するんじゃないだろうか。 「リョータ、おっせえよ。トロトロしてんじゃねえ、バカ！」 振り返った彼は、俺の名前を怒声混じりに呼んで俺の思考を中断させてしまった。 「…ごめん、勝己」 ボソリと返すのは、もはや挨拶がわりみたいなもので。 「お前って、ガキの頃から本当にトロくせえ。いい加減顔見んのもうんざりだっつーの」 舌打ち混じりに吐き捨てられる台詞も、もう聞き飽きた。 思えば長い付き合いになる。 幼稚園の時、勝己が隣に越してきて… いわゆる幼馴染というやつだ。 それから、二度…学生服を新調したこの年まで一緒にいる。 一度目は、中学の。 二度目は、ついこないだ買ったばかりの高校の学生服だ。 「中学卒業してやっとお前とオサラバ…と思ったのによ。なんで高校まで同じとこくんだよ」 あー、やだやだ、なんてわざとらしく身を震わせて、勝己はさっさと足を速めて俺から離れていく。 その癖、俺がそれを追いかけなければ、先ほどのように怒鳴りつけるのだ。 …子供の頃、勝己は俺にとってヒーローだった。 活発で、人望も厚くて、近所の子供の大将だった勝己。 対して俺は、背も小さくて、病気がちで、典型的な苛められッ子だった。 俺が泣かされていると、よくどこからともなく勝己がすっ飛んできて、あっという間にいじめっ子を倒してくれたものだ。 だが、ヒーローであると同時に、彼は俺の絶対的な支配者だった。 勝己が言う事には、逆らえなかった。 元々性根が真っ直ぐな彼だ、別段嫌な事をされた記憶はない。 なのに、段々俺の勝己に対する思いは捻じ曲がっていった。 決定的だったのは、俺に好きな子が出来た時だ。 「ヒーロー」は、何も言えない俺の代わりに、勝手に俺の気持ちをその子に伝えてくれた。 後日、俺に渡された彼女の返事の手紙。 『ごめんなさい、勝己君が好きなの』 …屈辱、というものを、初めて味わった気がした。 いや、とっくにそんなもの味わっていたはずなのに…憎しみさえ伴った激情を、俺は初めて抱いたのだ。 それを教えてくれた勝己に、俺は感謝した。 ただの言いなりのいい子ちゃんだった自分を、崩壊させてくれたのだから。 そんな心境の変化のせいだろうか。 中学に入る頃には、俺は勝己の身長を軽く数十センチは越していた。 とはいえ、勝己だって男性の平均身長ぐらいはある。 それを越す長身、という事で、俺は子供の頃とは別の意味で、注目を集め始めた。 部活は運動部を選んだ。 毎日練習を重ねるうち、俺は病気一つしなくなっていた。 勝己も運動部で毎日汗を流していたが、彼の場合引き締まったしなやかな筋肉がその身につくだけで、俺のようにがっちりした体つきにはならなかった。 そう、外見だけを見てみればいい。 俺は、十分に勝己を超えた。 後はどう、彼にそれを自覚させるか。 勝己は、何も気付いちゃいない。 呼べば、返事をする俺。怒声にも、文句一つ言わず、笑みを返す俺。 そんな俺が、心中では毎日どうやってお前を泣かせようと考えているかなんて…わかっちゃいないんだろ、勝己？ 「おっせえっつってんだろっ！！リョータ！ちゃんとついてこい、バカ！」 「…ごめんね、勝己」 俺は、にっこりと笑みを浮かべて返した。 でもそれは、愛想笑いじゃない。 勝者の笑みだ。 誰よりも憎くて、…誰より大事な…勝己。 例えば、俺が…お前を俺のものにしようとしてみせたら。 例えを現実にすれば、それで終わり。 例え話は、もう目の前だ。

[724] 初めまして ゆい - 2004年09月01日 (水) 06時33分 初めまして。 勇気がなくてなかなか参加できずにいたのですが、今回自分の文章力向上を目指す意味でも思い切って投稿してみようと思い短文を書きました。 もしよろしければご感想など…いただければ、幸いです。 突然の駄文投稿にてすいませんでした…m(__)m

[726] 好物（笑） PON - 2004年09月03日 (金) 00時58分 ゆいさんはじめまして。 またもやでしゃばってカキコしております。 どうぞ気を悪くなさらないでくださいね。 　大好きな気の強い受けとヘタレ攻め。大好物でございます（笑） ちょっとゆがめて書いてあるリョータの心情など、ほんとに好物。 もっとゆがんでほしいくらいです、マジで。 　まず、ワタシも文章作法については全く詳しくないのですが、段落ごとに最初の一文は一字下げます。カギカッコの後も一字下げるそうです。一文一改行、というのも手法としてアリなのかもしれませんが。ワタシもまるっきり知りませんので、どこかそういうことが詳しく書いてあるサイトをご覧になるとよいかと。 さて、 ＞その癖、俺がそれを追いかけなければ、先ほどのように怒鳴りつけるのだ。 　という一文にのみ、勝己のリョータに対する感情らしきものが垣間見えるわけですが、――ワタシは遠まわしな表現を好む女なので、これでも充分なのですが、一般的には少し勝己の心情が足りない感じです。ちなみに「そのくせ」はひらがなでいいかと。 　ストーリーとしては半分まできたところで終わってしまっている印象です。もうひとヤマほしいところかと。 　なぜ勝己は上記のような態度を取るのか、リョータの一人相撲なのか、そうではないのか、「オチ」がいります、このサイズでは。 　個人的には一人相撲で終わってほしいところですが、それではＢＬになりませんで、どっちかというとレイプ物とかもっと進めると拉致監禁モノにまで発展できる話です（笑） 　ですが勝己にも少しは「魚心」があるのであれば、ここはぜひ一度押し倒してみる、あるいは未遂してみる。 　だけど勝己は決して負けないキャラでありますので（ワタシの独断ですが）逆に、いざとなると気後れしてオタオタするリョータを殴りつけて、エッチになだれこんでしまうくらいが痛快です。 　ついてきやがれっ、みたいな（笑）ちょっと軽いですかね。 ＞そう、外見だけを見てみればいい。 ＞例えを現実にすれば、それで終わり。 　この二文が「キモ」ですね。外見と腕力だけで勝己に勝てると思い込んでいるリョータが実際に事に及んだ後のことが「それで終わり」に繋がるわけです。 　一体何をもって「終わり」だと思うのか、そこが「オチ」ですので、実際に行為を描写する必要はなくても、リョータにとってどういう「終わり」を迎えるのか、というところまで書いていただけると。 　外見、腕力で押えて勝ち負け決めたい、と思っているリョータは本当にコドモです。本当はリョータに何か思いがあるのかもしれない勝己（書いてないのでわかりづらいですが）の態度もコドモそのもの。 　それなのにどこか大人の空気をまとっている、というところがこのＳＳのよさですので、ぜひオチが必要になります。 　「終わり」とは、幼い時からの上下関係の逆転を指すのか、それとも関係そのものの終局を指すのか。リョータは勝己を愛しているので、そのどちらも実は怖れているはず。 　この関係においては惚れた者負け。それがオチだと思いますが、いかがなものでしょうか。 　また深追いしてしまった…。 　あんまりお気になさらず、また鋭い文章を書いてください！ 　楽しみにしています。

[727] PON様へ ゆい - 2004年09月03日 (金) 02時06分 初めまして！ とっても丁寧なご感想ありがとうございます！ やはり書きなぐった稚拙な文章ですが、細かくご指摘いただけると直すべき部分が明確に見えてきますので有難いですね。 キャラメイクなどその場で生まれたものでしたが、思った以上に歪んだ性格にしてしまったな、とは自分でも思っておりました…（笑） 一字下げ、ですか…！ そういえば今まで一度も段落等は気にした事がありませんでした。 下げるべき部分は下げれば文章も大分整って見えるかもしれませんね。 その辺、もう一度勉強しなおしてみます。 ありがとうございます。 そして、一人称（というか片方の視点）という事で、確かに文章が大分独りよがりになっていた気がします。 勝己に触れた部分…す、少ない（というかない）ですね…。 折角のBL小説なのに、「メインの二人」ではなく、語り手と脇役のようになってしまっていますね…（汗） 物語として進めるのなら両方の観点を上手く組み込まなければ、と改めて反省いたしました。 おそらく勝己はリョータに対する恋愛感情はないでしょうが、ないならないなりにどういう感情で接しているのか、その部分の描写が足りなかったな、と思います。 そしてストーリー…折角のご指摘もございましたし、もし実現すればいずれ続きを書かせていただきたいなぁなんてあつかましくも思いました。 表現しきれなかった部分を、短編から長編へつなげていくことで表現できればいいなぁ、と。 その場合エロ（コラ）が十中八九出てきそうで勇気のいる部分でもあるのですが。 自分の設定の上では、勝己の性格だと思い切りハードで重い話か、ギャグでライトなどちらかになると思います。 一筋縄ではいかせないという意地が（笑） リョータは、ただ漠然と勝己と自分の立場の逆転のようなものを望んでいる、といった感じで書きました。　 ただ、その後のことはまだ精神面が子供であるが故考えていない、というな方向でうまく誤魔化しましたが、…誤魔化せてないですね。 そのせいでオチにインパクトがなくなってしまったと思います。 惚れた者負け…。 まさに。 惚れた瞬間、おそらく「惚れた相手には敵わない」と自覚するはずですから、惚れた自分を自覚したもの負け、ですね。 やはりそこらのオチを続きとして、機会があったら書かせていただきたいと思いました。 とってもためになるご感想、ありがとうございました！

[728] ちょっとだけ…… 涼 - 2004年09月03日 (金) 03時43分 通りすがりの書き込み３回目の涼です。 ふらっとやってきた通りすがりのくせに、申し訳ありませんが、ちょっとだけ……。 まず、ひとつ。 攻の一人称ですが、ラブが薄すぎるかと思います。 ショートショートでは難しいかもしれませんが、ＢＬ小説が『恋愛小説』である以上は、微妙なものであっても、もっとラブの要素が必須だと思います。 複雑な心境の攻・リョータの一人称ゆえに出しづらかったかもしれませんが、その微妙なラインを踏まえつつも、「一般的な読者」を相手にしようと思った場合は、もっと恋愛感情が汲み取れるような書き方での文章が必要ではないでしょうか？ もし、まだリョータが、勝己に対する恋心が自分の中に芽生えていることを自覚していない……という前提の元でお書きなったのでしたら、それはそれで、このままでは書き込み不足だと思います。 ラブレターの箇所でそれを表現しようと思ったのかもしれませんが、今の状態のままでは、やはり不足に感じます。 キャラクター本人さえ気付いていない恋愛感情、というものは、もしかしたら書きづらいかもしれませんが、そこは是非とも乗り越えていただきたいな……と思います。 また、リョータが自分の中の恋愛感情に既に気付きつつも、実行する日を思い描いて抑えている……ということだとしても、やはり、前述のラブレターのあたりで、微妙なラインの気持ち（の、恋愛感情寄り）が表現できます。 「そのあたりを、ゆいさんが、どう抑えるのか」という部分を加筆した上で、もう一度この「例えば」を拝見したいな……と思いました。 それから……。 ＞例えば、俺が…お前を俺のものにしようとしてみせたら。 ＞例えを現実にすれば、それで終わり。 ＞例え話は、もう目の前だ。 この、エンディングですが……。 恋愛要素抜きの物語なら、これで良いのかもしれません。 でも、ＢＬ小説が恋愛ものである以上は、破滅型なら破滅型で、このエンディングではあっさりしすぎのような気がします。 一旦これで（現実にすることで）二人の関係が終わって、新たな関係が始まる……ということでしたら、それもこのエンディングでしっかりと読み手に明示する必要があると思います。 最後に、もうひとつ。 『例え』が３回ここでブッキングしているのは、タイトルが「例えば」であるが故かと思いますが、マズいかな……と。 ……ついでに、もうひとつ言わせていただくと、このタイトルの場合は、ひらいて三点リーダをつけた方が良いかもしれません。（申し訳ありません、これも個人の好みの問題なのですが） 書き手の感性の差というのもあると思います。 「もし、自分なら」と思ったことなので、お気に障ったら申し訳ありません。

[733] 涼様へ ゆい - 2004年09月05日 (日) 03時34分 初めまして！ ご感想＆ご指摘ありがとうございます！ そうですね、言われてみると文章の雰囲気に拘る余りラブの部分が疎かになっていた感じがします。 リョータが微かに恋心を抱いている程度で、明らかに恋愛感情が主題ではありませんね。 この小説投稿の場がどういう場所であるのか、捕え違っていた気もしてきます。 二人はラブラブ甘甘になれそうな性格設定にも出来ていませんし、ご指摘された部分考え直すとストーリー構成そのものから考え直す必要がありそうだな、と感じました。 ただ書きたい事だけを書きなぐったせいで、テーマからそれてしまっている部分があるかと…反省です。 何にせよ、折角投稿して他の方の目にも触れるのに、軽い気持ちで書きすぎたかな、という感を強く感じています。 数分しかかけず、考えずに軽率に書いたので、完全に細かい設定等疎かになってしまっています。 粗い部分を的確にご指摘いただき、目の覚める思いです。 丁寧に書き込みくださる感想を見ていると、軽い気持ちで書き込んだ自分に反省点がつきません。 是非とも、今度はもっとじっくり、満足が行くまで考えに考え込んで、再びご指南いただけると有難いなぁと思います。 とりあえず自分の腕を磨く事から始めます。 ありがとうございました！