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Please recognize―Barballa |
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From:クリス [/ドラクエ6]
鏡の前にあたしは立つ。 そこに映る物は嘘か真か。 私にはそれすらわからない。 ただ、少なくとも――あたしは映っていない。
Please recognize
気付いた時、あたしには何も無かった。 知識を持って確かに息をしていても、どこから来て世界のどこに今いるのか、思い出せない。 初めて後ろに手を遣るまでは、自分の髪の色容さえわからなかった。 そして、何も与えられる事はなかった。 皆と同じ様に、二本足で立っているのに、誰もあたしの声が聞こえない。 あたしが見えていない。 物には触れられても、生けとし生けるものにはすり抜ける。 何かにイタズラをしてあたしの存在を知ってもらおうとした事もあったけど、『物の怪』と気味悪がられて人は離れた。 正直、へこんで二度と試す気にもなれなかったなぁ……。 あたしは、幽霊なの? 街の片隅で「自分は孤独だ」なんて言ってる腑抜けにさえ気付いて貰えないあたしは、この世界に存在しているの? 本当に与えられた事は、誰にも知られてないという事実と、ヘアバンドに刻まれた『Barballa』という名だけ。
ある日あたしは、水清き街でジーナという名のお婆さんから、『ラーの鏡』についてのうわ言を盗み聞きした。 その鏡には、この世の真実が映し出されるらしい。 是非ともそれにあたしが映るかどうか、確かめたくなった。 というのは格好付けで、本当の事を言うと、その真実を知るのが怖い。 でも、知らないまま孤独で何万もの夜を過ごす方が、途方に暮れる程辛いだろう現実が、私を真実へと向き合わせた。
与えられる未来に慄きつつ―― その未来が、あたしにとてつもない傷を与えるとしても――
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初めまして、最近このサイトに現われたクリスなる者です。 ここはクロノが多いようですが、思いっきり異端気味にYを書かせて頂きます。 というワケで、バーバラと出会う前の彼女を描いてみました。 私が思うに、あんな境遇の子が冒険気取りでラーの鏡を求めに行ったとは考えられないんですよね。 きっとこんな感じに思いながら塔に登ったんだろうなぁ、という妄想でした。 (※クリスの妄想設定ではバーバラは明るい反面寂しがりやです(殴打)) この話はもう少し続きます。
2005年05月29日 (日) 11時30分
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