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Gehen wir!「小話掲示板」へようこそ。
エヴァに関するショートショートショート、つまり小話を自由に書きこんでください。
もちろんLASだけに限らず、エヴァネタだったら何でもOK。
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[1010] 題名:魔法使いアスカと火の悪魔 その8 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2012年04月14日 (土) 00時39分

だけど、サンダルフォンの足取りを辿って行ったら、結局、アスカの城に戻ってしまったんだ。
中からは、すごい物音が聞こえて来た。
ああ・・・後で掃除が大変だ・・・じゃなくて!

「トウジ! ヒカリ! コウゾウさん!!」

僕らは急いで中に飛び込んだ。
コウゾウさんは既に魔力を使い切ってしまったらしく、ぐったりとしてる。
トウジは震えながらヒカリを庇ってて、それでもヒカリは何とか魔法で対抗しようとしてた。

「あたしの家で、何を暴れてるのよ!」

アスカは叫んだ。

「外に出なさい、サンダルフォン!
 アンタの魔法使いは、とっくに倒されたわよ!!」

サンダルフォンは――人の形をした火の玉って感じになってた――アスカをちらっとだけ見た。
それから目をそらして、トウジとヒカリの方に、炎を放ったんだ。

「ちょっ・・・こらーっ!!」

「トウジ! ヒカリ君!」

「誰か・・・誰か何とかして!!」

僕が叫んだ時だった。
バシャン!と音がして、次の瞬間には炎は消えていた。
カランと言う乾いた音と共に、台所にあったはずの水差しが、床に降り立った。

「これ・・・」

「シンジさんが・・・語りかけて命を吹き込んだ道具の1つだわ」

びっくりした僕に、ヒカリが説明してくれた。

「なるほどね、兄さんが助けを求めたから、飛んで来たんだよ」

「おおきに、シンジ兄貴・・・助かったで」

しっかりとヒカリを抱きしめたままで、トウジは僕に感謝した。

「ふふふふふ、わかったでしょ、サンダルフォン!
 ここは、あたしの家だから、アンタに不利なのよ!
 あたしは寛大にも、外で対等の勝負をしようって言ってるわけ。
 さあ、来なさい!」

アスカが扉を開けて外を指差した。
サンダルフォンは素直に従った。
水差しに、自分自身の火まで消されるかも、って思ったのかな。

「いいわね、バカシンジ、今度こそ外に出るんじゃないわよ!!」

アスカが目を吊り上げて言うものだから、仕方なく、僕らは窓から外を見て、戦いを見守った。
僕はキールを相手にした時、無我夢中でわけがわからなかったけど、アスカはさすがに落ち着いたものだ。

「ねえ、シンジ兄さん」

カヲルが話しかけて来た。

「思うんだけどね、この戦いが終わったら、アスカさんにプロポーズすべきだと思うんだ」

「とっても良い考え・・・そうなれば嬉しいわ!」

ヒカリが笑顔で頷いた。
彼女の好みのタイプがトウジだからと言っても、師匠の旦那さんがカヲルになるのは、やっぱり嬉しいものなんだろう。

「せやな・・・こう言うのは順番が大事やからな」

トウジが意味ありげに頷いた。

「ええ、アスカ先生を差し置いて、私達が結婚しちゃいけないわ」

「折角やったら、兄貴からしてもろた方がええもんな」

ヒカリとトウジは盛り上がってる。
・・・君達、本当にさっさと結婚する気満々なんだね・・・。
それに・・・この国だと、末っ子からで別に合ってると思うんだけどな・・・。
まあ、師匠が先と言うのは、普遍の真理だろう。

「そうだね・・・良い考えだと思うよ」

僕の返事に、カヲルはにっこりした。
そうだよ、弟達が2人とも幸せになる、そしてアスカもヒカリも幸せになる。
行き場のなかった僕を迎え入れてくれたアスカとヒカリ。
僕の呪いを解くために、敵を探ってくれてたアスカ。
怒鳴ったり文句言ったりしながらも、1度も出て行けと言わなかったアスカ。
そんな優しくて綺麗で強い魔法使いのアスカが、同じく魔法使いの僕の弟と結婚する・・・素晴らしいじゃないか。

「アスカが、承諾してくれるかわからないけど・・・」

「大丈夫だよ」

カヲルは笑う・・・そう言えば、昔から自信を持って生きて来たんだ、この弟は。

「そう言うなら・・・頑張ってね、カヲル」

僕は精一杯笑って見せた。

「君の成功を祈ってる・・・アスカを幸せにするんだよ」

「へ?」

「は?」

「え?」

カヲルも、トウジもヒカリも、怪訝そうな顔をしてる・・・あれ、僕、何も変な事言ってないよね?

「・・・シンジさん・・・何か勘違いしてません?」

「あかんわ・・・また、シンジ兄貴の考えがズレとる」

「ねえ、シンジ兄さん・・・僕の言った事を誤解してるよ」

3人は溜め息とともに僕の顔を見る。
最後に、カヲルは深く息を吸い込んでから言った。

「僕が言いたかったのはね、この戦いが終わったら、兄さんがアスカさんにプロポーズすべきだって事さ」

な・・・何だって?!


*10話までで終わるといいなー。


[1009] 題名:まさかの 名前:某世界 MAIL URL 投稿日:2012年04月13日 (金) 22時48分

ボケまSHOWでうるっと来るとは思わんかった・・・カヲル君が槍を取り出したところまでは笑ったのに。
ラストのシンジ君の言葉に感動してしまったではないかー!!

・・・頼んだ私も、実は安置やヘイヘイホーとダンジリとの区別がつかないのであります。
しかし、だんじりと来たか、やっぱりごまめさんは読めないな・・・てっきりバンザイで来るかと思ったのに。


[1008] 題名:ボケまSHOW15 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2012年04月12日 (木) 19時44分

【お題:断罪モノ】

「今日はまた某世界さんから、ありがたくもお題をいただいたようだよシンジ君」
「某世界ってなんだよ」
「新世界とか旧世界とか異世界とか、世界も色々、人生色々だよね」
「異世界はいいよ。もう…」
「それはつまり、最近の闘魂世界のことかい」
「いくら、もう一つの世界の可能性とか言ってもあんな世界があるもんか!」

「さてお題。(断罪モノ)だって」
「よくわからないんだけど」

「あれだよ。若衆が山車を引く威勢のいいお祭り。岸和田だんざい祭りって有名じゃない」
「それはだんじり。岸和田だんじり祭り。なんだよ。断罪祭りって。そんな嫌な祭りがあってたまるもんか」

「だんじりとは男の尻…男尻と書いて(だんじり)と読むというのは本当かな」
「君が言うと本当っぽいからやめてよ」



「でも本当に、意味がよくわからないよ」
「実は僕もなんだ。辞書を引いてみたよ」

「1.罪をさばくこと。罪に対して判決を下すこと。断獄。(責任者を―する)
2.斬首の刑。斬罪。うちくび。

だって。
うちくびかぁ。あれ、痛いんだよねー」

「・・・・・ごめん・・」
「シンジ君をほどよく鬱にしたところで先に進むとしようか」
「僕の心情を、料理の下ごしらえみたいに言わないでくれる?」

「ふむ。この意味から推測するに、主人公が、悪役を裁いていくということじゃないかな」
「そうだろうね。…やっつけたり、復讐するのかなあ?裁くってそもそも何をどうするんだろう」

「そうか。きっと、シンジ君が裁かれまくって懲役とか罰金をくらうお話なんだよ」
「な  ん  で   僕  が!!逆だろ!僕が裁くんじゃないのかよ!」

「だって、これだけじゃ誰がどの立場かわからないじゃないか。一体、誰の、どの罪を、誰が裁くというのだろう?」
「えっ…。悪いのは、みんな父さんだよ。僕を捨てた母さんだよ。本当は自分がさみしいだけだったミサトさんだよ。僕を拒絶した、アスカだ…。」
「本当にそうなのかい?」
「僕が…僕が悪いんじゃない。僕は本当はエヴァになんて乗りたくなかった…」
「なら君は、なんの罪も犯していないと言えるのかい?」
「僕は…僕は…僕の手は、なんのために…あるんだ…?結局、人を傷つけてばかりだ…」
「君の罪…それは何だい?」
「僕は…トウジを傷つけて…。綾波が死んでも、涙が出なかった。カヲル君も殺した…。アスカには酷いことしたんだ…。僕なんて、僕が死ねば良かったのに!」
「ほらやっぱり君は裁かれたがってるじゃないか」
「そ、そうか。そうだったんだ。さあ、僕を断罪してくれ!」
「いいとも」
「って、そんなわけあるもんか!その槍しまってよ!カヲル君」

「誰が裁く立場で、誰が裁かれる立場なのかなんて…。一体、誰が全てを見通して裁くことが出来るというのだろう。神ならぬ身で。みんな、自分自身を通してしか、世界と触れ合えない。自分の立場でなければ、わからないことばかりだ。誰も自分自身をはみ出して、世界を、他人を理解しようとはしない。それこそが心の壁なのさ…」

「もし、ヒトがそうしようとしたら、それは神様だよ。神様のマネをしようとしてるんだ。ヒトなのに」

「君は神様になりかけたんだから、確かに、そうする可能性は十分持ってたね」

「もし本当の神様なら…。僕自身のために神様のチカラを使うのは違うと思うから。だから僕は、ただの碇シンジなのさ…」

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※某世界さんに「断罪」でボケてと言われたのですが、ボケきれたか疑問。
※断罪ものって、本当に知らないんです。どーいうのが断罪モノなんだろ?誰かおせえて。※なんとなく、シンジ君が逆行して、お父ちゃん司令やミサトはんや時にはアスカちゃんも?に仕返ししまくるというイメージがあるけど、あってますかな?

※男尻ギャグの元ネタは、「サイバラ水産」です。


[1007] 題名:魔法使いアスカと火の悪魔 その7 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2012年04月07日 (土) 22時49分

どうしようどうしようどうしようどうしよう・・・。
棒立ちのままおろおろしてたら、後ろに息を切らした誰かの気配がした。

「はぁ・・・はぁ・・・バカシンジ・・・!」

「アスカ!」

髪を振り乱して、肩で息をしてるアスカ・・・サンダルフォン先生の事が、とっても心配なんだね。

「ごめん、僕・・・キールを倒してしまったんだ・・・サンダルフォン先生の居場所が・・・」

「え?! アンタ、荒れ地の魔法使いキール・ローレンツを倒したですって?! アンタが!?」

アスカは険しい顔になった。
そうだよね、やっぱり怒るよね、好きな人の居場所がわからないのに、何の計略も考えず倒すだけじゃ・・・

「冗談じゃないわよっ、アイツは、あたしが倒すはずだったんだから!
 あたしが、誰よりも有能な魔法使いだって示すためには、格好の標的だったのに!!
 酷いわよシンジ、あたしの手柄を横取りするなんて!!
 アンタ、無自覚だけど天才的な魔法使いなんだわ・・・無敵のシンジ様を助ける必要があるなんて、少しでも思ったあたしがバカだった!」

「今・・・何て言った? 僕を助ける・・・?」

「そうよ! アンタが家族と一緒なら、ふらふら出歩いたりしないだろうと思ってたわ!
 なのに、こんな所まで来て、しかも自分でキールを倒すなんて、最低よ!!」

アスカの理論がよくわからない。

「で、でも、僕は倒したのはまずかったと思ってるんだ、だって、サンダルフォン先生の居場所がわからないままだろ?」

「・・・そうね」

アスカの表情が固くなる。

「ごめんね、アスカ・・・好きな人の事、心配するのは当然だよね」

「ななな何言ってるのよアンタは!! 別に、好きなんかじゃないわよ、冗談は止めなさい!!」

アスカは、着ている服と同じくらい真っ赤になっている・・・照れ屋だなぁ。

「いいよアスカ、わかってるから・・・好きなんだろ、サンダルフォン先生が」

「この・・・バカシンジ!! アンタ、何もわかってない!!」

アスカは思い切り僕を引っ叩いた。

「確かにね、サンダルフォンの居場所は、絶対に突き止めなきゃならないわ。
 でも、それはあたしがアイツを好きだからなんて、とんでもない話よ・・・もう1回言ったら、魔法で丸焼きにしてやるから」

「だって、アスカ、サンダルフォン先生に興味津々で、ここ最近はずっとサンダルフォン先生の所に出かけてたじゃないか」

「もしかしたらって思ったのよ!
 思った通りだったわ、アイツ・・・サンダルフォンはね、キール・ローレンツの火の悪魔だった、それが強い力で人の形を取ってたってわけ」

つまり・・・

「だから、サンダルフォンを見つけて倒さない事には、アンタの呪いは解けないし、キールを完全に倒した事にならない、わかった?」

「アスカ・・・もしかして、僕のために、キールを倒す方法を考えてくれてたとか?」

「自惚れるんじゃないわよ!」

アスカは怒鳴った。

「とにかく・・・キールがいない今は仕方ないわ、何とかあたしの魔力でサンダルフォンを見つけ出さなきゃ!」

アスカは、強い目をして歩き出した。

「行くわよ、バカシンジ!!」

僕が、アスカの後を付いて行こうとした時だった。

「シンジ兄さん!!」

カヲルの声がして、僕は振り返った。

「駄目じゃないか・・・外に出たりして!」

「アンタが言うな!!」

僕に怒鳴り付けるアスカを、カヲルはにこにこと見た。
そうか、サンダルフォン先生がただの火の悪魔って事は、カヲルの恋が叶うかもしれないんだ。
でも、カヲルはすぐに真面目な顔で言った。

「ごめん兄さん・・・この子がさ、キール・ローレンツの火の悪魔の居場所を感じるって言うんだ」

「この子って・・・猫?」

僕は、カヲルの腕の中に抱かれた小さな猫を見た。

「ただの猫じゃないんでしょ、呪いをかけられた猫・・・だから、自分の呪いをかけた主がいたら、感じるんだわ」

「僕は、何も感じなかったけどな・・・姿が見えたから追いかけただけで」

「それはね、アンタの鈍感さが魔力を遥かに上回ってるからよ!」

アスカは何故か怒ったように言うと、カヲルに話しかけた。

「アンタ、この猫の思ってる事がわかるってわけね・・・じゃ、案内して」

カヲルがアスカを促して歩いて行く後ろを、僕はとぼとぼとついて行った。
そうだよね・・・トウジは自分の幸せを掴んだんだから、カヲルが幸せになる権利が出て来るんだ。
僕は1番最後だ・・・仕方ないよ、長男なんだから。


*おいらは「青い海からやって来た」で何度見ても腹筋崩壊する。
*それよりも、「大切なもの・6」が497ってのに驚きだよね、半分以上前やん。
*つーかあたしら何やってるんだろうね、本当に・・・w


[1006] 題名:ボンバイエキター!(ポニョまで(爆))(゚▽゚) 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2012年04月07日 (土) 21時44分

「アスカお昼だよ、今日は南米風にチリビーンズとタコスだよ。」

「え〜?あたし辛いの駄目〜…」

「え?おかしいな…タバスコと言えばボンバイエじゃ…」

「?ボンバイエ?」

不思議そうな顔のアスカ…あれ?首のタオルが白?
良く見れば…部屋の内装もどことなく昔…赤い海の前みたいな…

はっ!こ、ここはもしや…

「それよりシンジ…あの…い、今ミサトも居ないし…」

シンジ…ああっ!ぼ、僕は、僕の本当の名前はっ、碇、そう、碇シンジですっ!

…って…何このアスカみたいな女の子?頬も赤く染まって後ろ手にモジモジ…

ゴクッ。

「その…マリもマナも補習なんだって…」

モジモジ

「それにレ、レイもカヲルもき、今日は本部詰めだし…」

…夢?そ、そうさ夢に決まってる!こ、ここここれは夢なんだ!

「い…何時もの邪魔が来ない内に…」

しかし…す…素晴らしい夢だ…

「どうしたのシンジ?い…良いのよ、何時もみたいに…ね。」

ゆ…夢なんだし…い、いいよねすす少しぐらい?

「アスカ…」

「シンジ…」

「「…」」

***

カーン♪

シュタン!「ダーッ!元気ですかーっ!早起きは三文の得!私アスカ・ボンバイエがわざわざ玉・金三郎君を起こしに来てあげたわよっ!シャーッ!起きろーっ!」

…あ、やっぱり夢だった…
「…良い夢だったなぁ…も一回見よ…お休みなさい…」

「コノヤロー!二度寝なんて許さないわよ!起きろーっ!って何変な所元気にしてる馬鹿ヤロー!」

ばっしーん!

「い…今僕は青春のホームレス…がくっ」

「ダーッ!アタシは何時何刻でも誰の挑戦でも受けるわっ!アタシが最強よっ!」


※しかし…ポニョ(笑)※銀ちゃん同様朝見て悶絶※「そーすけって誰だー!?」に撃沈※


[1005] 題名:魔法使いアスカと火の悪魔 その6 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2012年04月03日 (火) 23時32分

アスカがマナに連れられて出て行った後、僕らは手持無沙汰な気分で、改めて近況報告をした。
カヲルは呪いをかけられた猫の相手を続け、トウジは不安そうな顔をしたヒカリの手を握り続けていた。
コウゾウさんは・・・年のせいか、居眠りを始めた。

「お茶でも入れましょうか」

ヒカリが言ったので、トウジはやっと手を放した・・・彼女が何も言わなければ、世界が滅びる時まで、そのままだったかもしれない。
僕は、ぼんやりと窓の外を見た。
嵐。
その灰色の風景の中に溶け込むように、人影が横切るのが見えた。

(・・・あれは!)

ある日、突然、僕の店にやって来て呪いをかけた男。
間違いない・・・荒れ地の魔法使い、キール・ローレンツだ!

「みんな! ここから出ないでよ!」

僕は叫ぶと、玄関の横に置いてあった魔法の靴を掴んで、外へと飛び出した。

「兄さん!」
「兄貴!」
「シンジさん!」

みんなが叫んでいるのが聞こえたが、僕は魔法の靴を履いて、キールの後を追った。
だって・・・あいつはきっと、アスカの好きな人をさらったんだ。
アスカは、文句を言いながらも、行き場のない僕をずっと置いてくれた。
それに報いるために、僕は、アスカの好きな人の居場所を突き止めなきゃならない。

「待て・・・待て! 荒れ地の魔法使い、キール・ローレンツ!!」

僕は大声で呼び止めた。
でも、直後に、また失敗する運命に足を突っ込んだ事に気付いた。
ここは荒れ地・・・キールの本拠地だ。
そんな場所で、僕は何が出来る?

「ふん・・・シンジ・ハッターか・・・ゲンドウ・ハッターの息子だな。
 わしに何の用だ、呪いは絶対に解かぬし、お前自身には解けるはずがない。
 見ろ、お前の足元を。
 名高き魔法使いレイが、わしに敗れた場所だとわかるだろう。
 奴の姿は消え去り、奴の契約した火の悪魔共が、転がっておるだけだ」
「僕の呪いなんてどうでもいい!」

父さんそっくりの髭面で、少しでも迫力が出ていることを祈りながら、僕は叫んだ。

「マナの学校の先生・・・確か、サンダルフォン先生だっけ・・・どこなんだ?!」
「誰が教えるものか!」

キールは怒り狂った。
でも、僕は、アスカのために、彼を取り返さなきゃならないんだ。

「サンダルフォン先生の居場所を、答えろ!」

キールは返事の代わりに、魔法で突風を吹かせた。
立っていられなくて倒れた僕の目の前に、弐号機そっくりの姿が目に入った。
火の悪魔――魔力を高める存在。
そう言えば、僕には魔力があるって、アスカが言ってたっけ。
信じられないけど・・・もし、本当に、僕に魔力があるなら・・・僕の言葉が、命を生み出すなら。

「頼むよ、初号機・・・僕と契約してくれ、僕の魔力を高めて!
 キールを倒すための力を、僕にくれないか?」

何故かわからないけど、目の前にいるのは初号機だって気がしたんだ。

「初号機・・・もう1度目覚めてくれるよね、力を貸してくれるよね?」

話しかけているうちに、小さな石像のように転がっていた火の悪魔が輝き、熱を帯びて来た。

「バカな・・・火の悪魔が復活しただと・・・?」
「答えろ! サンダルフォン先生はどこなんだ!!」

でも、キールは答えず、思いっ切り攻撃を仕掛けて来た。
僕は初号機に命じて、風を弾き返す。

「答えるんだ! サンダルフォン先生の居場所を!!」

攻撃を返した後、僕は自ら攻撃を仕掛け、キールを降参させて、サンダルフォン先生の居場所を答えさせるつもりだった。
でも、キールは最期まで口を割らなくて・・・僕と初号機の炎で、燃え尽きてしまったんだ。

「嘘だろ・・・僕・・・キールに勝ってしまった・・・」

初号機の力を借りたとは言え、本当に、強い魔力を持っていたなんて・・・。

「ああ! でも、また失敗だ!」

僕は思わず叫んだ。
キールを倒してしまったって事は・・・サンダルフォン先生の居場所がわからないじゃないか!!


*やっとこさシンジ・ハッター君覚醒
*ポニョw 倒す瞬間に「好きー!」なんて言われたら、確かにトラウマになりそうだ・・・でもキンちゃんは、そーすけじゃないからいいのか
*うっかり朝に読んでしまって、1日中笑いをこらえるのに苦労した
*この後の使徒がどんな名前を付けられるのか、猛烈にわくわくしてます
*でも、順番はバラバラなのね・・・どれがどれだか確定できないのか


[1004] 題名:大切なもの。9 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2012年04月02日 (月) 23時41分

※くされ逆行よごれギャグ。

奇妙な世界に逆行した主人公、碇シンジ。
そこでは、さしたる変化はないように見えたが、大切なものが狂っていた。
それは『ネーミング・センス』であった。
この世界では彼は 第三の少年。
初号機パイロット:玉  金三郎
(タマ  キンサブロウ :通称タマキン)という名前であった…。

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■凄まじき戦闘の記憶

風が強く吹いている。

プラグスーツを装着した僕は、半ば廃墟と化しつつも、かろうじて機能を保っているジオフロントを、丘から見下ろしていた。

ジオフロントの向こうには、初号機、弐号機、零号機がそびえ立っている。

初号機のアゴは無くなった。
弐号機にあげたからだ。
弐号機は、誰よりも長いアゴを持ち、なんだか嬉しそうに見えた…。
赤いアゴが、途中で紫色のアゴに不自然に切り替わっている。

この世界にも、戦いはあった…。
僕の通称が、男性局部の愛称だったり、父さんがたまという名前のネコだったり、アスカがボンバイエで、綾波が鼻毛桜だったりと、あり得ないネーミングの呪いに犯された異常な世界だけど、やはり、使徒の奴らはお構いなしにやって来ていた。

今まで語らなかったのは、自分達のことで忙しかったのと、口に出すのも憚られそうなくらい、おぞましく恐ろしい戦闘だったからだ…。

■第三の使徒

まずは、初めて倒したあいつ。

僕は、ミサトさんのルノーの中で、初めて、この世界での僕の名前を呼ばれて、動揺しまくっていた。

「み、ミサトさん?!キンサブロウって僕のことですか?」
「他に誰がいんのよ。言っておくけど、あんたのフルネーム呼ぶのは妙齢の女性にとっては、すっごく恥ずかしいんだからね!」
「呼ばれる方も恥ずかしいですよ!うわっ?!」
走る車に、衝撃が伝わった。
「あ…あれは」
見覚えのある巨体が、ビルの影から見えた。

使徒だ。
間違いない。

「あれはね」

ミサトさんが、ハンドルを握り、前を見つめながら言った。

知ってますよ。
そう、僕は、二回目だから、知ってるんだ…。あいつは…。

「ポニョよ」

「はっ?」


■とてもやりずらい


「………なんで?なんでポニョなんですか?」

「第三の使徒。ポニョよ」

「あ、あんまり言わない方がいいと思いますが…」

僕は脂汗をかいていた。

「青い海から、やって来たのよ」

「確かにそうですけど!ポニョじゃないでしょ!女の子なんですか?あいつ。あんなイカリ肩なのに?!」

「まんまるお腹の、女の子よ」

「それはコアだよミサトさぁぁん!!」

***

「嫌だああああああ!!やめて、やめてよー!ミサトさん!父さん!やめてぇー!!」

『やるのよ!キンサブロウ君!』

「僕は、ポニョなんて、ポニョなんて殺したくないんだあー!!そんなことしたら日本中の子供に恨まれるじゃないですかあーー!!」

僕はエヴァに押し込まれていた。
無情にもミサトさんの無線だけが響く。

『あなたにしか無理なのよ!』

「無理でけっこうです!やめろ!やめろ!止まれ!止まれよー!うああああああ!」

初号機はポ…を攻撃する。

すると、ポ…が、初号機にしがみついて来た。

キュイイイイイイイ

自爆?!

『そーすけ、好きーーーーー!!』

「そーすけって、誰だああああ!!」

ちゅどどどーーん

謎の叫びを残し、自爆された…。


■なんの関係もありませんよ。

『キンサブロウ君!やるのよ!使徒を倒すの。あなたにしか無理なのよ!』

僕は、たった一人で赤紫のムシのような使徒と格闘していた。ミサトさんの無情な無線がコックピットに響く。

「嫌だ…嫌だ…やめてよ…僕、本当はこんなの嫌なんだよー!」

一緒にエヴァのコックピットに乗り込んだ、トウジとケンスケが、側で僕を見ていた。

「タマキン…!」
「その名前で呼ぶなあ!僕のことは頼むから転校生って呼んでくれ!」

奇妙な触手をうねうねと揺らした赤ムシが、僕と対峙している。

『やるのよ!さあ、倒しなさい!』

「嫌だっ!」

『倒すのよ!!鈴木を!』

「鈴木って誰だあーーー!」





赤ムシが、向かって来た!!

「うううっ!」

腹部を触手で貫かれる。

『何をするの、第四の使徒、鈴木!許さないわ!』

「だから、鈴木って誰なんですかあー!」

『この、うすらハゲ!!』

「なんでうすらハゲって呼ぶんですか!目の前のこいつはまるハゲじゃないですか!一体、誰のことだあああああああああああ!」

『ホーホケキョ!』

「やめろおおおおおおお!!」


■ほんとだよな


『「ガンダムは潰したい」と、うちの初号機パイロットが申しておりました』

「言ってません!それも言ってません!僕は言われたことはあっても、言ったことはありません!!うああああああ!あっ!」

ヤケクソになった僕は、思わず目の前のムシに、プログレッシブナイフを突き立てていた…。

「僕のせいじゃない…僕のせいじゃないんだ…!うっ、うっうっ…ごめんよ…!」


『そーすけ、好きーーーーー!!』

「だから、そーすけって、誰だああああ!!」

また、あの謎の呼び声と、十字の形に輝く閃光を残して、鈴…は倒れた。


■もう誰も信じられない

鈴…を殲滅したあと、僕はすすり泣いていた…。

はっ、でも待てよ。
この世界では僕は『玉  金三郎』じゃないか。なんだ、そうだよ。本当の僕がやった訳じゃないんだ!目の前が少し明るくなった気がした。

すると、またミサトさんの無線が響いた。

『やったのは、碇シンジ君です』

「待てええええええええええ!!さては僕の本名知ってるだろおお!ミサトさああああああん!!!」


■日本のカタキ。世界の敵。

僕は手にかけてきた。

メイもサツキも聖司もテトもアリエッティも、息子もコクリコもやってしまった。いや、息子じゃない。ムスカだった。だからいいのか。
(よくない)

どれが誰だったかなんて、僕にはとても言えないから、想像して欲しい。

そして、あいつが来た。
最強の使徒。
伸びる腕を持った、神の使い。
全拒絶タイプの、破壊神。

自分の名前の由来を知って、あまりのショックの為、逃げ出した僕は、また戻ってきた。
(※[497]大切なもの 6 参照)

僕は、綾波の零号機がやられ、アスカの弐号機が無残にやられた姿を見た!

ジオフロントにまで侵入され、ミサトさんは絶体絶命だった。

「くっ…!」

「ああああああああああああ!」

僕は、夢中になった。
気がつけば、使徒をめちゃくちゃに攻撃していた…。


『な  ぜ  だ  !!な  ぜ  、宮  さ  んは!!』


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *

正気を取り戻した僕は、その後、(宮さん)をやってしまったことを自覚して、エヴァから篭って出てくることが出来なかったそのままついでにエヴァに取り込まれた。

だって、もう僕は日本じゅうの子供とアニメと映画好きの敵だ。いや世界中の子供と大人の敵だ。
名前だけがそうとはいえ。

出てこれる訳ないじゃないか。
殺される。

僕はLCLになりたい。

なんて恐ろしいんだ。
「ネーミングセンスの狂った世界」とは。


■つながろうとする。

僕は、エヴァンゲリオン達を見下ろしていた。

エヴァから還ってこない僕に、アスカ・ボンバイエが怒りまくった。

「馬鹿タマキンーーー!!この、大馬鹿者がっ!いたら、出て来ーいっ!出てこなけりゃ、あたしがタバスコの材料にしてやるわっ!」

「玉君入りのタバスコ…それは、すなわち、タマキンバスコ…?食べてみたいんだもの。玉君が美味しくなって還ってきますように」

両手を組み合わせて、祈る綾波。
何に祈ってるんだよ。
誰に祈ってるんだよ。

(宮さん)という使徒を喰らった僕をさらに喰らおうとするなんて、君達はなんて貪欲なんだろう。
君達、二人とも(宮さん)に歯が立たなかったのに。
食物連鎖って、こういうことか。


■この世界のヤシマ作戦の想い出

食物連鎖なんて、嫌だよ!
そして、僕は還ってきた。そんなリンクには加わりたくない。僕は僕だ。

エヴァンゲリオン達を見下ろしている。

僕は、遡って、あの青い使徒をやった時のことを思い出していた。

「日本中の電力を集めて、あの全方位攻撃型の使徒を攻撃するわ。守備は零号機、鼻毛桜。そして、狙撃手は、キンちゃんとアスカのダブルエントリーで。この方がシンクロ率が高かったからね」

前の世界では、ラミエルと呼ばれていた、あの青い結晶のような使徒…。

僕は絶対に、この世界でのこの使徒の名前を呼んでやらない。絶対だ!もうポニョと鈴…で十分だよ。
そう思っていたのに…。

なぜか、アスカの登場が間に合ったので、よりライフルの精度を上げるため、僕とアスカ・ボンバイエのダブルエントリーをすることになった。


***

「気づかれた!」

使徒は、一発目をしくじったため、こちらに気がつき、僕達を狙い澄まして、光線で攻撃してきた!

「綾波っ!」
「鼻毛桜!」

シュバババババババ

使徒の放った光線が、盾を持った綾波を攻撃する!綾波は初号機をかばっている…。


■ラピュタって言った

「綾波!大変だ!早く攻撃を」
「しっかりして!あたし、あんたのこと応援するわ!」
「アスカ?!」

アスカは、懐から何かの紙片を取り出して広げた。

「詩を、書いてきましたので、読みます」

「なんでだあーー!アスカあああ?!撃ってきてる!今、使徒が撃ってきてるから!綾波がやられてるから!」

シュバババババババ

「この道を行けばどうなるものか」

「撃ってる、撃たれてる!盾が溶けて来たから!ねえ!アスカ、アスカアスカ!今、攻撃されてるからー!ラピュタが攻撃してきてるからぁ!ねえ!ねえ!ねえ!」


■お願いだ撃たせてくれ

シュバババババババ

「危ぶむなかれ。」

「いや、危ないってば!綾波がやられちゃうよー!!」

「危ぶめば道はなし。踏み出せばその一足が道となる。」

シュバババババババ

「お願いだよアスカー!僕に引き鉄を引かせてくれえええええ!僕、踏み出すよ!踏み出すからぁ!」

「迷わず行けよ、行けばわかるさ…っ!今よ!タマキン!」
「はっ!!」

このタイミングで、僕達三人の息があった!

僕とアスカが、ポジトロンライフルの引き鉄を引く。
綾波が、横によける。

ラピュタが、攻撃する口を一瞬閉ざしたまさにその瞬間、僕達の渾身の一撃が竜のように伸び、奴を貫いた…!


■こんなときどう言えばいいのやら

「綾波ーっ!!」
「鼻毛桜ァーっ!!」

僕達は零号機に駆け寄り、プラグを強制射出させ、湯気をたてるプラグの扉を手動で開いた。

「熱いっ!けど、やるわよ!」
「うおおおお!綾波ーっ!!」

「綾波っ!」
「鼻毛桜!」

僕達二人がプラグを覗き込んだ。

綾波がのけぞっていた。


■そりゃそうだ

「ごめんなさい…こんなときどんな顔すればいいのかわからないの」

「キレてもいいと思うよ」


■笑え

「しっかりするんだ!」
「よくやったわ、鼻毛桜!」

「綾波、出撃する前にさよならなんて…さよならなんて、そんな悲しいこと言うなよ」

「…どうして…玉君が泣くの?」

「そんなの…綾波が無事だったからに決まってるじゃないか!」

「だって…わたしが死んでも代わりはいるのに…」

「……そんな。だから、そんな悲しいことを言うなよ…」

「笑いなさい!」

「えっ?」

「笑いなさい。綾波 鼻毛桜!」

「何を…?」

「あんた、本当は、この世界に、自分を必要とされたいんでしょう?!なら、まず笑いなさい。笑うことは、誰でもできるボランティアよ。それを見た人、感じた相手が心を広げて、その日1日を楽しく過ごすことができる可能性をもつ、最高の無償の行為よ。そんな誰でも実践できることから、世の中から必要とされているってことが始まるのよ。※
笑うことは最高のボランティアよ。あんたの代わりなんていないと、世の中に必要とされたいなら、まず、笑え!」

「何を…でも、そうだよ…。笑うんだ。助かったって笑うんだ。笑えばいいと思うよ。綾波」

懐かしい。
確か、あの時も、僕は綾波にそう言った。

「アスカが笑えば、世界が笑うわ!あんたが笑えば、世界も笑うの!」


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※『猪木語録』より。

*NAVERまとめアントニオ猪木名言集などを参考にさせていただいています。
アントニオ猪木先生は、良いことを沢山仰っておられますね。
*自分で言うのもなんですが、アスカ・ボンバイエ嬢には、猪木先生の名言を主に引用させているんですが、妙〜に合っていて、結構いい女のような気がしてきた…。元々のアスカちゃんがいい女だからでしょうけどね。
*ジブリ最高。益々のご発展を祈念しております。マジで。どうか健康でいて下さい。マジで。いや全然関係無いんですけど。ネーミングだけがバグってるだけです。

*実は、全拒絶型君には、(宮さん)より(しんたろう)の方が相応しいと思ってる。

*エイプリルフールに間に合わせたかったけど、間に合わず。このシリーズは毎回エイプリルフールです。*999と1000踏みおめでとー。


[1003] 題名:レイの復讐 名前:Kioa MAIL URL 投稿日:2012年04月02日 (月) 22時13分

レイを差し置いて、1時間も歌ってしまった前座のメイリンことシンジ。

「・・碇君」

「ご、ごめん。許して」

「・・いいわ」

「へっ?」

「その代わり、一緒に暮らして」

「あ、あやなみっ・・・」

「できないならアスカに全部ばらすわ。私からアスカに言っておくから」



「シ・ン・ジ!!」

鬼と化したアスカがシンジに迫る。
シンジは顔を真っ青にしながらぶるぶる震えている。

「・・変態、スケベ、不潔、ゴミ、クズ、死んじゃえ!!」

シンジの心臓が激しく鼓動を打つ。

「・・どうして? どうしてよ!!」

アスカはぽろぽろと涙を流し始めた。

「あ、あの」

「何で? どうして? 私なんか、私なんか、あんたのこと考えると胸が苦しくて眠れないのに、何であんたはっ」

「ご、ごめん。アスカ。何を言っても許されないね」

「・・絶対許さない。あんたがどんな罪を犯したとしても許すけど、私を裏切ったら絶対許さない!!」

「ア、アスカ」

シンジの運命やいかに?




[1001] 題名:どわぁ! 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2012年03月31日 (土) 13時13分

埋めのつもりで投下したのに、何処さんが入ってたー!!(大汗)
何かすいません、本当に。


[1000] 題名:魔法使いアスカと火の悪魔 その5 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2012年03月31日 (土) 13時12分

僕が文句を言ったところで、カヲルがコウゾウさんの弟子になってて、トウジが金物屋勤めだって事は変えられない。
でもさ、2人して僕を騙さなくても良いじゃないか・・・やっぱり僕は要らない存在なんだ・・・。

「アンタが弟達の言う事に聞く耳持たないから悪いんでしょ!」

僕のぼやきを、帰って来たアスカは一蹴した。

「せやけど、シンジ兄貴、末っ子やからかどうかは知らんけど、お陰さんでワイは幸せにやっとるで?」

さっきからヒカリの手を握ったままのトウジは、機嫌よく言った。
確かにね、家にいた頃よりも逞しい顔をしてるよ。
でも、僕が言いたいのは、偽名を使ってまで嘘をついたって事なんだ。

「思えば、次男なんてつまらないよ・・・ある世界では長男に、この国では末っ子に、全てが行くんだからさ」

呪いをかけられた猫を相手にしながら、カヲルは言った。

「・・・魔法使いの素質があるって言われて修行してて、文句を言うなよ」

僕はカヲルを睨んだ。

「でも、シンジ兄さんこそ、素養はあるんだろ?
 この喋る家具達、どう考えてもシンジ兄さんの影響だよ・・・性格が表れてる」

「そうそう、何とかしてよコレ!
 ぐじぐじぐじぐじ、陰気ったらないわ!」

「君が解けない魔法を、弟弟子の僕が解けるわけないじゃないか」

カヲルは微笑んでアスカを見た。
ああ、美男美女って奴だ・・・コウゾウさんの縁談話、悪くないんじゃないかな。
・・・ダメだ、アスカには好きな人がいるんだった・・・かわいそうなカヲル、失恋決定だよ。
だったら・・・兄として、せめて魔法の修行くらいは応援してやるべきだろうか?
でも、分不相応な望みを持って、身を滅ぼす事になるのは止めなきゃ。
弟に代わろうなんて思いを抱いた兄は、昔話ではとんでもない不幸になるって相場が決まってるんだから。

「でもカヲル、やっぱり君は間違ってるよ・・・弟の成功を奪ったら、君の運命は・・・」

「なあ、シンジ兄貴、ほんなら今から修行に行け言うて、ワイの今の幸せを壊す気なんか?」

トウジが不満そうに口をはさんだ。

「ワイなんか、逆に、カヲル兄貴の幸せ取ってしもたんちゃうか思とるのに・・・」

「それはないよ、だって、僕だったら、ヒカリ君は金物屋の職人に興味を持たなかったと思うからね。
 で、コウゾウ先生に連れられてやって来た魔法使いの弟子と恋に落ちたんだろうさ」

ヒカリは真っ赤になって、トウジの後ろに隠れてしまった。

「だったら、最初の予定通りでも・・・」

「ほんならやっぱり、今の方がええなぁ・・・町におったら毎日ヒカリと会えるし」

「ね、シンジ兄さん、末っ子の幸せを奪う意地悪兄になってはいけないよ」

カヲルの言葉に、僕は仕方なく納得した。

「ああ・・・これだけ考えても、僕の考えが碌なものじゃないって、やっぱり長男って最悪だ・・・」

「うるさい!!」

アスカが足を踏み鳴らした。

「アンタね、そんな事を言ってるから、いつまで経っても髭面のままなのよ!!
 その調子ならきっと、ヒカリとトウジが結婚して子供が10人出来て、カヲルが偉大な魔法使いになっても、アンタは髭面のままよ!!」

「仕方ないじゃないか、僕は長男なんだから!!」

「それがバカげてるって・・・」

アスカがさらに怒鳴りかけた時、扉が開いてマナが飛び込んで来た。

「アスカ、大変! アスカの予想通り、先生の姿が見えなくなったわ! どこかに行っちゃった!」

「そう・・・荒れ地の魔法使いが、動いたわけね!」

アスカはキッとした顔になると、マナの入って来た扉から外へ出た。

「いいこと、アンタ達全員、この城から出るんじゃないわよ!!」

言い残すとアスカは、外へ飛び出して行った。



*末っ子カップルのバカップルっぷりが好きなのに、続きの本じゃその後の消息は不明だったんだぜ・・・。
*それにしても長男シンジ君が、今の所イイトコナシなのはヤバい(汗)、これからカッコよくなります、多分。
*1発目の酩酊ルが秀逸過ぎた、しかしレイテルとトウテルとリョウテルじゃないのは意外だ、老いてる老いテルはまんま過ぎw
*Kioaさんとこのシンジ君、この板では異例のカッコイイ系だと思ってたのに・・・そうでもなかった・・・w
*どリツみ、字面だと何かみどり色をしてそうな気がするんだ、金髪じゃなくて・・・
*そんなわけでスリーナイン頂きました、1000は誰だー!




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