[1365]
右手ニ剣ヲ左手ニ花ヲ
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投稿者:s@kura!!(超短編小説)
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(2004年04月19日 (月) 14時30分) |
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一話目
いくらほど歩いただろうか・・・ 砂漠の乾いた風が一人砂漠を歩く放浪者らしき男の肺を焼き付ける。 からからに乾いた咽が痛み思うように息ができない こうして彼が灼熱の砂漠を彷徨い歩き三日が過ぎていた。 その間、食べ物はおろか水の一滴も彼は口にしていない 足元がふらつき、眼が霞んで歩くことさえままならない・・・ しかし彼は足を休めなかった。 彼の進む方角、目線の先には街らしき建造物の群れが確かに存在していたからだ・・・ あそこにいけばこの命をつなぐことができるだろう。 それが砂漠に住まう悪魔が見せている蜃気楼でないことを祈って彼は砂に足を取られながらも必死で歩いた。 焼き付けるような熱風で足元の砂粒が舞い、彼の耳元でチリチリ音を立てた。 頭の上で結った彼の黒く長い髪が雲ひとつない空を仰いだ・・・
彼が目指してきた街らしきものは大きな塀に取り囲まれていてその全貌を覆い隠していた。 その中央にある街の入り口だろうと思われるさび付いた鉄の門には「BIRON」という街の名前が彫られていた。 彼はその門の前倒れこぬように膝着くとその大きい門を見上げる。 しばらくして門についていた瓦一枚ほどの小窓が開きその中から何者かの眼が彼を覗いた。 その人物は彼の様子を見ているようだった。 「放浪者か?」 しばらくしてから二十歳に満たないだろう十代のあどけなさが残る少年の声らしきものが問いかけた。 何も言葉を交わさずに頷き彼はその問いに答える。 「金、持ってるか?」 次は首を横に振って答えた。 門の向こうにいる少年だろう人物はすぐに彼の顔を見て、この砂漠を漂流してきた乾き、疲労感を感じ取っていた。 「・・・悪いがあんたを街に入れることはできないよ・・・」 しかし、目線を外し重いため息を混ぜて言いはなった。 そして捨てられた子犬を家の事情で救ってあげられない子供の様な表情を一瞬浮かべて門の向こうの少年はピッシャっと小窓を閉める。 門の外、取り残された放浪者は徐々にぼやける視線の中、その門を睨みつけた。
しょうがなかった・・・ 今週、この門の門番を任せられていた少年は門の向こうでもう一度ため息をついて、街の中心部に街の中の何よりも高く聳え立つ「神の塔」と街の誰もが声をそろえて呼ぶ建物を眺めた。 この街はこの塔に住む神と呼ばれる男・シンにより収められていて 毎週、神の祝日といわれる記念日に彼から伝えられるお告げという言葉を守る義務が街に住む彼らにはあった。 守らないものは神に逆らった罪人として「罰(ペナルティ)」というもので罰せられ、多額の罰金、または街を追放させられる 彼に逆らう者はこの国では許されないのだ・・・ そして今週彼が下したお告げが「貧シイ犬共ニ手ヲ差シ出スモノ死ナリ」というものだった。 金を持っていないと言ったあの放浪者を助けることはその神の言葉に背く行為になるだろう・・・ 仕方ないことだったんだ・・・ 少年はもう一度、門に眼をやって哀れみの表情を浮かべた。
[1366] s@kura!! > ちょっと前に漫画で描いた話なんですが少しずつこれからここで進めていきたいと思いマス よかったら読んでくださいネ (2004年04月19日 (月) 14時36分)
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