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Dream On!

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ダレモイナイ コウシンスルナラ イマノウチ(ペ∀゚)ヘ
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[507]SS 『咲耶と師走のお兄様』≫シスプリ: 武蔵小金井 2005年01月13日 (木) 20時40分 Mail

 
 
 
 その日、私は不思議な場所にいました。
「ハイハイハーイ!寄っといで買っといで〜!」
 チャイナドレスの鈴凛ちゃんが、手にした紙叩き……あ、ハリセンっていうのかしら。それをパンパンって振るの。そうすると、目の前を歩いてるたくさんの人たちが……もう、どうして妙な視線の男の人ばかりなのかしら……私たちを見て……
 そして、サザッと近寄ってくる。
「あの、これ……」
「は、はい。一枚xxxx円になります。三枚セットだと、xxxx円でお得です。」
 何度同じコトバを言ったかわからないけど、そう言って……ちょっぴりだけ笑ってあげた。
「じ、じゃあ、セットで、その……下さい!」
 赤くなって……どうしていつも同じなのかしら……握ったお金を出してくるその人。
「ありがとうございます。お買い上げ三点で、お釣はxxxx円になります。」
 支払いをするのは、私の隣に座っている、もう一人の……メカ鈴凛ちゃん。
 さすが……というか、間違いのない完璧なレジ係よね。細かい計算があったりするから、その点は楽だけど。
「そ、それじゃ……頑張って下さい!」
「ハイハーイ!アリガト!また今度も来てね〜!」
 買い物をしてガンバッテなんて変な気がするけど。後ろの鈴凛ちゃんは、もう手を振って喜んでるわ。
「エヘヘ、また売れたね!どう、メカ鈴凛。イクラぐらいになった?」
「売上です……」
 メカ鈴凛ちゃんが開けてみせた小さな金庫を見て、鈴凛ちゃんは目を輝かせたわ。私も横からノゾいて……!
「ウーン!順調順調っ!あ、でも大きいのばかりだから、オツリが足りなくなっちゃうかな。まあいいや。ハーイみなさん、寄っといで〜!」
「ねぇ、鈴凛ちゃん。ここって……」
「なに?」
「なんとなく……あ、いらっしゃいませ。」
 話そうとした矢先に、またお客さん。もう、さっきから休む暇もないわ。
 鈴凛ちゃんが呼び込んで、私が説明して、メカ鈴凛ちゃんが売る。
「ありがとゴザイマシタ〜!まった来てねぇ〜!」
「でね、鈴凛ちゃん。今のお客さんも、もぅおじさま年齢だったけど、ここって……私たちみたいな年頃で利用していい場所なの?」
「えっ?」
「ほら、お金の問題とかあるし……」
 鈴凛ちゃん、途端にバツの悪そうな顔になったわ。
「アハハハハ!あのね、内緒だけど……本当はダメなんだ。」
「えぇっ?」
 驚く私。そりゃそうよね……って、あぁ、またお客様だわ。
 私が説明して、メカ鈴凛ちゃんが売って……
「ありがと〜、またヨロシクね!でね……あのね、だからアニキの名前を使ったんだ。」
「お兄様の?」
「ウン。アハハ、アニキって私が出す書類とか用紙とか、何も気にせずサインしてくれるんだよ!やっぱりアニキは最高のパートナーだよね!」
「そ、そうだったの……」
 あ、危ないわ鈴凛ちゃん。陰で、お兄様をアヤシイ契約の連帯保証人にとかしてないかしら。お兄様、あれでちょっぴり世間知らずなところがあるから……
「ハーイ!寄っといで買っといで〜!x子力エンジンとゲxター炉のマジホンの設計図だよ!他にも色々ついて、オトクなCDセットで安い安い〜!」
 ハリセン……を、バシバシ。鈴凛ちゃん、こういうのは本当に得意よね。イキイキしてるって言うか……でも、どうしてこんなモノをみんな欲しがるのかしら。値段も、その……とっても高いのに。
 私、売り物のCDを一枚手にとって見てみたわ。鈴凛ちゃんのマークのCD……って、凄いわ。本当にラベルから印刷してあるのよ。
 ふぅん、CDって、自分で作れるのね。いったいどうやってるのかな。私も得意な歌やメッセージを録音してもらって、お兄様にプレゼントしてみたらどうかしら。ウフフ、咲耶のオンリー・ユーとか、タイトルもつけちゃって。そうしたらきっと、お兄様は……
「あれ?鈴凛ちゃん、これは?」
 さっきから気になっていたんだけど、 売り物のCDの山の横に、本が積み重なっているの。
「あ、本も売れる場所なんだよって話したら、鞠絵ちゃんが原稿を送ってくれたんだ。」
「鞠絵ちゃんが?ふぅん……」
 手にして……詩集かしら。開けて見てみたわ。
 …………。
「アハハハハ、私は全然ワカンナイけど、とにかくスゴイよね!」
「そ、そうね……うわ……」
 ま、鞠絵ちゃんって、けっこう……
「あ、そっちには白雪ちゃんの本もあるよ。」
「えっ?」
 これかしら。ずいぶん分厚い本ね。タイトルは……
「特製メニュー百選……?」
 ウフフ、白雪ちゃんらしいわね。しかも、ちゃんと『姫とにぃさまの』って、ハートまでつけてあるし。さすが白雪ちゃん。
 あ、このメニューは前にご馳走させてもらったわね。ウフフ、これはまだおいしかったけど、時々スゴイのもあるのよね……って、わっ、こんなモノも作ってるのね。こ、これ、本当に全部、お兄様に食べさせたのかしら……
 チラチラと本を読みながら、途切れることのないお客様を迎えている私。
 ふぅ、さすがにそろそろ疲れて来たわ。だって、朝からずっとだし……今朝、とんでもない時間に起こされたのよ……睡眠不足は、美容の大敵なんだから。
「ふわぁ……」
 いけない。あくびなんて人前で……誰かに見られなかったかしら。
「あ、咲耶ちゃんゴメンね。そろそろ一段落ついて来たみたいだし、休憩にしようか。」
「えっ?休憩って……」
「ウン。私も、ちょっと回らなきゃならない所があってさ。いい機会だから、少し休みにしようよ。」
「で、でも……ここはどうするの?」
「メカ鈴凛に任せておけば大丈夫!ね、メカ鈴凛。」
「はい……任せて下さい。」
 メカ鈴凛ちゃん、相変わらずの表情。いいのかしら。
「じゃあ、そういうことで。咲耶ちゃんも色々と回ってみなよ。結構面白いトコロもあるからさ。じゃ、また後でね〜!」
 何か荷物とかバッグとかをいっぱい抱えて、鈴凛ちゃんは走って行ってしまったわ。
 い、いいのかしら。でも、ちょっぴり疲れたし……
「そ、それじゃ私も行こうかしら。メカ鈴凛ちゃん、大丈夫?」
「はい……任せて下さい。」
 何だか不安だけど、産みの親の鈴凛ちゃんがああ言ってるんだからいいわよ……ね。
 とりあえず私は、喧騒から離れるためにその場をあとにしました。


「だから、関係ないでしょう!あっちに行って下さい!」
 とんでもなかったわ。
 今日はちょっと寝不足……だって、朝何時に起こされたと思うの?……だから、少しお茶でも飲んで休もうかと思ったんだけど。
 ところがね、そんなことできるわけがなかったの!道は……人でいっぱい。お店も……人でいっぱい。それに、並んでいる人……人、人。
 人が多すぎて、どこにも行く場所がないのよ。
 それに加えて、その、何て言ったらいいのかしら……さっきから、話しかけられてばっかり!ナンパ……よくあるそれと、ちょっと違うカンジなんだけれど、それでも声をかけられてばかりなの。今だって、二人組の男の子からしつこくされて……もう!私に触れていいのは、お兄様だけなんだから……
「スミマセーン!ユーは、モストぷりてーギャル!プリーズ、写真いいですカー?」
 まただわ。しかも今度はガイジン……さんなのかしら。そ、そりゃモデルみたいに見られるのは嬉しいけど、見ず知らずの男の人にいきなり『写真撮らせて下さい』なんて言われたら……やっぱりキッパリ断らなきゃ。
「そんなこと言わずに!ユーはラブリーチャーミングだから、一枚だけプリーズです!」
 ところが、ソイツがとんでもない奴だったの。馴れ馴れしく近寄ってきて、勝手にファインダーを覗いて……
「や、やめて下さい!」
 シャッターを切る音。
 や、やめて!私の写真を自由に撮っていいのは、お兄様だけなんだから!
「オー!ベリーすいーと!エクスプレッショーンおんユアふぇーすぃズ!」
 でも、その人はもうニヤニヤして写真を撮り続けたの。私、もうどうしていいかわからなくなって。周りの人もみんな、助けてくれないし……それどころか、同じようにカメラを向けてくる人まで現れたのよ。
 イヤっ!お兄様、助けて……!
 その時、いきなり私の周りが暗くなったの。
「大丈夫…………かい…………?」
 ちょっぴり潤んだ視界を上げた私の前に……
「千影……ちゃん?」
 ビックリ!そこに千影ちゃんがいたの。いつもの……ほら、時々見せてくれる不思議な格好をして……黒いマントで、私を包んでくれていたのよ。
「君たち…………無断で写真を撮るのは…………止めた方が、いいよ…………フフ…………」
 千影ちゃん、周囲に微笑して言ったわ。逆にいっぱいシャッターがたかれたけど。
 でも、千影ちゃんはそれを見てまた笑ったの。何だか、フラッシュの中で瞳が輝いてるみたいで……
「さあ…………向こうに、行こう…………」
 千影ちゃん、私を連れて……その場を離れたわ。


 ついた所は、少し静かな場所だったの。
 人はそれなりにいるけど……何だか、みんな千影ちゃんみたいな……ちょっぴり変わったファッションの人ばかり。
「あ、あの……千影ちゃん。ありがとう……」
「フフ…………いいよ…………それよりも、さっきの写真は…………全て、ダメになっているから…………安心して…………フフフ…………」
 千影ちゃんの横顔に浮かぶ笑み……ち、ちょっと怖かったけど、気のせいかしら。
「それより、キミがここにいるなんて…………少しだけ…………驚いた、よ…………」
「う、うん。鈴凛ちゃんに誘われたの。それで、休憩に外に出てみたら、あの……さっきみたいに、なっちゃって……」
「そう…………無理も、ないかな…………」
 千影ちゃん、いつもの謎めいた視線で私を見たわ。
「ね、ねぇ。千影ちゃんはどうしてここにいるの?」
「フフ…………今日は、大事な日…………だからね…………」
「大事な日?」
「そう…………旧世紀の、一周忌…………だから、仲間たちと集まったんだ…………」
「い、いっしゅうき?お友達って……明日のこと?」
「明日…………?明日は、みんなで…………宴を催すんだろう…………?」
 年末恒例のパーティ。お兄様と私たち妹みんなで集まる、大切な大晦日の行事よ。
 それが終わったら、次は新年会よね。ウフフ。年末年始は、お兄様とずっと一緒にすごせるステキな時間なの。あっ、来年のことを言うと鬼が笑うって言うけど……想うだけなら、きっといいわよね。
「…………どうか、したのかい…………?」
「あ、ゴメン。そ、そうね。今頃白雪ちゃん、はりきってお料理を作ってるんじゃないかしら。」
「フフフ…………だから…………今日じゃないと、ね…………フフ…………」
 そのまま黙ってしまった千影ちゃんの隣で、私もとりあえず腰を落ち着けたの。
 でもね、そうしたら……
「姉や……?」
 人込みの中から、ほんっとに小さな声だったんだけど。でも、特徴がありすぎるイントネーションだったから、思わず顔を上げたわ。
「あ……亞里亞ちゃん!?」
 ホントよ!私たちの前に、亞里亞ちゃんがいたの!いつものドレスに日傘の格好で……ここだと逆に自然だけど……私と千影ちゃんを、ちょっぴり首を傾げて見ていたわ。
「ど、どうしたの?どうしてここに……迷子になったの?」
「亞里亞……シャカイカケンガク……」
「し、社会科見学……?」
「姉や……は?」
「えっ、あ、あのね……私は、ちょっと鈴凛ちゃんと……」
「人が……たくさん……亞里亞、じいやと……お散歩、してるの……」
 私、年甲斐もなくとまどっちゃったわ。そうしたら……
「フフフ…………彼女は、私が連れていくよ…………君は、休憩していて…………いい…………」
 立ち上がった千影ちゃんが、亞里亞ちゃんに寄り添って歩き始めたの。
「姉や、ばいばい……」
「フフフフ…………」
 どうしてだかわからないけど、私、その場で見送ってしまったの。
「あ、亞里亞さまー!こんなところにいらっしゃったのですかー!」
 何だか、遠くからそんな声も聞こえた気がしたわ。
 私、とりあえず売り場に戻ることにしたの。


 甘かったわ。
 千影ちゃんや亞里亞ちゃんとお別れしてから……どれだけたったのかしら。
 路傍……人の波の、よ……で途方にくれる私。
 思わず、さっきからサンザン思ったことを口にしていたわ。
「もう!どうしてこんなに、同じような場所ばっかりなのっ!」
 朝に入った時も思ったんだけど……それより遥かに広かったのよ、ここ。
 しかも、同じようなテーブルが並んで、みんながみんな、どれもこれも同じようにしているし……いくつあるのかしら。何百、何千?
 この中から、たった一つ……鈴凛ちゃんのいる場所を探すなんて……
 もちろん、係の人とかにも聞いたわ。そうしたらね、バンゴウはどうだとか、サークル名はどうだとか、よくわからないことを聞くのよ。バンゴウなんて覚えてないし……サークル名って言われても、あ、それは鈴凛ちゃんが叫んでいた気がするけど……確か……そう、Dr.リンに、聞きに来て?だったかしら。聞いてみた?だっけ……はっきり覚えてないのよ。まさか、迷子です、なんて言うのも恥ずかしいし……もう、どうしたらいいのかしら。
 あぁ、こんな時にお兄様がいてくれたら……
「あれぇ?咲耶ちゃんだ!どうしたの!」
 大きな声。私が顔を上げたら……
「衛ちゃん!?そ、それに花穂ちゃんと……可憐ちゃんまで?」
 三人がおそろいで、おめかししてそこにいたのよ!私と同じように、ビックリした顔でこっちを見てて……
「あのね、今日は可憐ちゃんのピアノのコンクールがあったんだぁ!それで、花穂たちで応援に来たの!」
「うん!可憐ちゃんのピアノ、すっごくカッコよかったんだよ!賞も貰ったし!」
「ふぅん、そうだったんだ……で、でも、どうしてここにいるの?」
 それを尋ねたら、真ん中で可憐ちゃんが赤くなったの。
「あ、あの……可憐たち、一つ向こうの場所で、コンクールだったの。それで、帰り道なんだけど……」
「こっちはすっごい人だから、何かお祭りじゃないのかなって!エヘヘ、ボクが入ろうって、みんな連れて来ちゃったんだ!」
「でもね、あのね……にぎやかだから、花穂ね、何度も迷子になりそうになっちゃった!」
 みんな、笑ったわ。私も笑ったけど……ち、ちょっとフクザツよね。可憐ちゃんたち、ここがどういう場所かわかってるのかしら。そ、それは私だって、よくわかってないけど……
「そ、そうなの。あのね、私は鈴凛ちゃんに……」
 説明しかけた時、大音量で放送のマイクが鳴ったの。
《ピンポンパンポーン!迷子のおしらせです、迷子のおしらせです……》
「か、花穂じゃないよ、ね……?」
 もう、どうしてなのかしら。花穂ちゃんをみんなで見ちゃうのは。
《ヒナコさまのおにいたま様、ヒナコさまのおにいたま様、至急、西第三受付までおこしください。ヒナコさまが、大変お困りになっています。繰り返します、ヒナコさまのおにいたま様……》
 私たち四人、目を丸くしてそこに立ちすくんだわ。
 でも、聞いて……ヒドイの!放送を聞いて、周りの人たちがみんなウワッ!て笑ったのよ。まるで、人の不幸が楽しいみたいに……
「あ、あの、今の……」
「花穂じゃないけど、花穂じゃないけど……」
「ヒナコちゃんだって!そ、それに、おにいたまって言ってたし……」
「間違いなく、雛子ちゃんよ!大変、早く行かなきゃ!」
 私たち、慌てて走り始めたの。


 受付の場所をいろんな人に尋ねて、人の山をかきわけて……大変だったけど、でもやっぱり姉妹だもの!
 私たち、もう一丸になって走ったわ。
 それでね、やっとそこについたら……
「春歌ちゃん!」
「あぁ、皆様!よくぞおこし下さいました。やはり姉妹たるもの、急変あらばいざ鎌倉!ですのね……ぽっ。」
 そこにいたのは、泣きつかれたのかしら……眠ってる雛子ちゃんを、イスに座って抱いてあげてる春歌ちゃんだったの。
「春歌ちゃんも来てたんだ!」
「あの……雛子ちゃんは、大丈夫ですか?」
「はい。今はちょっとお疲れのようで、眠っていらっしゃいます。ここの方々に、お菓子をたくさんご馳走になったそうで……」
 とりあえず、一安心の私たち。雛子ちゃんを抱く春歌ちゃんを囲んで、みんなでそれぞれ、ここに来たわけを説明しあったわ。
 春歌ちゃんは、新年へ向けての日舞の合宿だったんですって。それでさっきの放送を聞きつけて……って、どこから駆けつけたのかしら。さすがは春歌ちゃんよね。
「お、お嬢様方……!あぁ、よかったです……ご無事のようで。こちらです、亞里亞さま……」
 と、次にここにやってきたのは……亞里亞ちゃんのメイドのじいやさん。いつもの衣装で……亞里亞ちゃんもそうだけど、ここだとごく自然に見えるのはなぜかしら……その後ろから、何だかトロンとした目の亞里亞ちゃんと……あ、千影ちゃんも一緒なのね。
「亞里亞も……おねむ……」
「フフ…………明日の宴には…………少し、早いんじゃないかい…………?」
 千影ちゃん、それでもどこか嬉しそうにみんなを見回したの。
「うふふ、本当。可憐たちがこんなところで一緒になっちゃうなんて……」
「あ、そうだ!じゃあさ、これからみんなで鞠絵ちゃんの所に行こうよ!」
「鞠絵さん、今日ご自宅に戻られるそうですから……それは良い考えですわ。」
「うんっ!それからみんなで、白雪ちゃんをお手伝いして!」
「明日の……パーティ……亞里亞も、楽しみ……」
 みんなで笑いあったの。
 フフ、偶然とはいえ、ステキなことになってきたじゃない?そうよね。そうすれば、きっと……
「そうね。じゃあみんな……」
 って、私が言いかけた時だったわ。
「こ、これは……!ど、どうしてみんなが、ここにいるんだ……?」
 私が……ううん、私たち全員が……聞き間違えるはずもない、あの人の声がかかったの。
「お、お兄ちゃん!」
「うわーい、お兄ちゃまだぁ!でも、どうしてここにいるのかなぁ?」
「そうだよ。あれ?あにぃ、その紙袋はなに?」
 私もそれで気付いたんだけど、お兄様、両手に紙バッグを下げていたの。それぞれ、何だかとっても重そうで……バッグにも、恥ずかしい格好の……キャッ!もうっ、お兄様ったら、あんなカゲキな格好の女の子が好みなのかしら……
「そ、それは、その、つまり、友達に誘われて……い、いや、別にこういう本が好きとか、通ってるとか、そういうんじゃ……!」
「兄や……スキ?」
「まぁ。そうですのね……やっぱり兄君さまは、その、つまり……ぽぽっ。」
「ち、違うよ!す、好きとかそういうのじゃなくて、友達に、その、荷物持ちをしてくれって……」
「フフ…………兄くん。隠しごとは…………良くない、よ…………」
 お兄様、目を白黒させて後ずさったわ。
 そうしたら、背後の人ごみから、飛び出して来たのが……
「チェキ〜!」
「よ、よ、四葉!どうしてここに!」
「キャッホー!兄チャマあるトコロ、四葉ありデス!チェキチェキチェキ〜!」
 四葉ちゃんが、虫メガネをビシッと構えたいつものポーズであらわれたの。
「そ、そんな!よ、四葉の尾行に気付かないなんて……!」
「クフフフゥ、兄チャマがこのバショでナニをどうしていたか、四葉がぜーんぶチェキしちゃいまシタ〜!」
「な、なんだって……!」
「私のタンテイ手帳によるとデスね、兄チャマはまず、ヒガシ地区、ぴのジュウヨンにありマス……ニャ!」
 一瞬のコトだったわ。
 お兄様、四葉ちゃんの口をふさぐと、そのまま小脇に抱えるみたいにして……走り出したの!
「まぁ……凄い速さですわ。さすがは兄君さま……ぽっ。」
「亞里亞も……ピュー……」 
「お、お兄ちゃま、どうしたのかなぁ?」
「ふわぁぁぁ……あれ?みんながいるよぉー!どうしたのー?」
「雛子ちゃん。あのね、お兄ちゃんが……」
「あぁ、あにぃが行っちゃうよ!」
「兄くん…………逃げられるの、かい…………?」
 そうしたら、今度は鈴凛ちゃんが走って来たの。
「あ、咲耶ちゃん!やっぱりここにいたんだ!アハハ、ごめんね放っちゃって……って、あれ?どうしてみんながそろってるの?じ、じゃあもしかして、今すれちがったの、本物のアニキ?」
「そ、そうよ……そんなことより、お兄様よ!待って、お兄様!説明して下さらないかしら!」
 私……私たち、みんなでお兄様を追いかけて走り出しちゃった。

 その日、それからどうなったかは……ご想像にお任せします。
 とりあえず、素敵な年越しになったコトだけ……報告しておきますね。うふふ。
 
 
 


[508]2001年会場はどちら?なあとがき: 武蔵小金井 2005年01月13日 (木) 20時46分 Mail

 
 
 
 古今和歌集ならぬ今は昔ならぬ、また一本、さりげなくサササと載せたりしたり。いや、順に則ってはいるのですが……これは、正直かなり恥ずかしいですな。勢いだけに任せているというか……(汗
 あ、直してありますが、実はこの短編、亜里亜亞里亞ちゃんに関してとんでもない誤植をしていて。それが転じて次の騒ぎに繋がる(濁汗)わけですが……思い返せばひたすら汗顔の至り。若かったなぁ……いや、気概はいつでもトップギアですよ?やる気だけはイッパイですよ?

 ……スミマセン。

 ブームも去った感のあるシスプリですが、読み返すとやはり懐かしくなって(赤面)、オリジナル・ストーリーとか引っ張り出して思わず読み耽ってしまいました。本当、まんまティーンズ絵本として読めるというか……素晴らしき絵と文のコラボレーション&フュージョンですね。ただただ憧れます。
 それでは。
 


[咲耶と師走のお兄様]2001/12/03,TaleArea投稿作品
 
 



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