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BL小説鍛錬場


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[807] そして始まる何か
キキ - 2004年12月09日 (木) 22時53分

 
好きってなに?愛し合う?何ソレ。オレはそんなもん興味ないし関わりたくもないね。「愛し合う行為」は、オレにとって暇つぶしと金儲け以外の何ものでもなかった。

「ちょっと待ってよ!?じゃあなに?涼平にとって私はただの遊び相手でしかなかったの!?」
「そうだよ」

きっぱりと言い放つと女の見開かれた瞳から涙があふれ出た。信じられないというような顔つきで必死で縋り付いてくる。

「うそよ!だって私が一番だって言ってたじゃない…!!」
「それこそ嘘だよ。騙してごめんね?」
「っ!!う、そ……?」
「そ。まぁいい暇つぶしになったよアリガトウ」

冷たい感情を持たない言葉に女は呆然と立ち尽くす。何度も見てきたこの光景。浮かれきっている人間を真っ暗な闇へと突き落とす感覚は何度やっても快感だ。

「さよなら」

女に背を向け歩きだすと、背後から腕をつかまれた。ああ、アレか。振り向きざまに歯を食いしばる。予想通り、次の瞬間頬にはしる痛み。

「ばかっ!!さいて―!!」

顔をぐちゃぐちゃにしながらそう叫ぶと、女はオレの横を足早に通り抜けた。これでこの女との関係はおわり。せて、つぎは誰と遊ぼう?
くるりと向きを変え、歩き出そうとするとドンとなにかにぶつかる。
顔を上げるとそこには同じクラスの矢野がいた。
――「矢野朝樹」
その人懐っこい笑顔と親しみやすい性格からクラスの人気者の彼は、オレの大嫌いな存在だった。

「紅崎…。おまえさぁ、また女振ったの?」

うるせーよ。おまえに関係ないだろ。なんでおまえにそんな責めるような顔でそんなこと言われなきゃなんないわけ?

「ったくいい加減にしろよ。紅崎って何考えてるかわかんねぇよ。」

それはお互い様だろ。人間の本心なんて自分にしかわかんないもんだろ。お前こそ顔ではいつも笑ってるけど心では腹黒いこと考えてんじゃねぇの?

「なぁ、無視すんなよ?前から思ってたけどお前ってオレのこと嫌いだろ?」

ああ。そうだよそのとおり。大嫌いだ。その偽善者ぶった態度もお気楽な笑顔も曇りのない明るい瞳も。

「きらいだよ」

にっこりと微笑み、初めて口にする矢野への言葉はそれだった。瞬間、矢野の顔がつらそうに歪む。はじめてみる、その表情にドクン、と胸が音をたてた。ああ、なんかいい遊び見つけたかも。

「だいきらいだよ。その存在すべてを粉々に壊してやりたい」

心もカラダも、ズタズタに傷つけてやりたい。綺麗なお前に汚い世界を見せてやりたい。

「なぁ、オレと恋愛ゲームしない?」

ふいに、口から出てきたのはそんな言葉だった。相手の瞳が大きく見開かれる。

「恋愛ゲーム…?」
「そ。もしオレがお前に惚れたらお前の勝ち。オレはお前の言うことを聞く奴隷になる。」
「……オレが負けたら?」
「お前がオレの言うことを聞く奴隷になる」
「………わかった」
「よし、それじゃゲームスタート♪」

行く先は見えてる。
オレの勝ちでお前はオレの言うことを聞く。
[オレの前から**]
好きな相手にそんなこと言われたらどんな気持ち?
傷ついてボロボロになって、そして―――オ前ハ消エル。

                      next


[808] そして始まる何かU
キキ - 2004年12月13日 (月) 00時32分

「好きだよ」
優しい声で甘く囁きながら、矢野の耳へと唇を寄せる。
舌でゆっくりと舐め上げると矢野の体がピクリと反応するのがわかった。
(ふ〜ん、感じやすいんだこいつ)
少し意外に思いながら耳から顔を離すと赤くなった矢野の顔があった。

「あれ?もうオレに惚れちゃった?」
「ちがうっ!お前がいきなり変なことしてきたんだろっ!?」
「あのなぁ…こんなのでビビってたらお前この先どぉすんの?」
「はぁっ?この先ってなんだよ」
「この先ってのは…こぉゆうこと♪」

言葉を言い終えると同時にオレはこわばっている矢野の顎を掴み上げると、その唇を塞いだ。


ゲーム開始から一週間後。ちょうど冬休みに入ったオレたちは恋愛ゲームの真っ最中。本日、オレ紅崎涼平はクラスメートかつゲームの相手である矢野朝樹のマンションへと遊びにきていた。初めてあがる矢野の部屋はCDやら雑誌やら服やらで床が埋まっていた。生活に必要なものだけがおいてあるオレの部屋とは大違いだなどと思いながら部屋を見回していると、床に散らばったものを拾いながら矢野が二人分座れるくらいのスペースを作った。
「すわって」
「すわれるかアホ」
こんな散らかった部屋ではセックスもできない。やれやれとため息をつきながら今後のためにもこの部屋を片付けるべく矢野に声をかけた。
「そうじすんぞ!そうじ」
「げっ!!やだよ」
「いいからはやく動け」
有無を言わせない口調と瞳で指示され、しぶしぶ矢野は片付けにとりかかった。

「はぁーやっと終わった」
「ったく人まで付き合わせやがって」
「紅崎がいいだしたんだろ」
「おまえさぁ、人が掃除手伝ってやったってのにお礼の一言もいえないんだ?ふぅん」
「わかったよ言やいいんだろ!ありがとうございました」
「棒読み」
「いっただけマシだろ?」
「ま、いいけど」

こんな会話を一通りした後、ビデオを見る用意をしだす矢野の背後へと近寄り、オレは冒頭の台詞を口にしたのだった。


浅く口付けると矢野の固まった顔が何が起きたのか把握できていないことを物語っていた。そんな矢野にニヤリと囁く。

「お礼はきちんと返してもらうよ?」

おそらく今の矢野の見の耳には届いていないことは承知のうえで再びその唇へと口付けた。

「…っん!」

一瞬固まったもののすぐさま顔を逸らそうとする矢野の頭をもう片方の手でしっかりと固定するとさらに深く口づけた。苦しさのあまり息を吸い込もうと少しだけ開いた唇の間からすかさず舌を滑り込ませると、そのまま口内を犯す。

「んぅっ!!」

必死で逃げようとする矢野の舌を追いかけからめとる。角度を何度もかえていく内にだんだん互いの息が上がってく。最初のうちはされるがままになっていた矢野がオレの舌の動きに誘われるように自ら舌を絡めてくる。

「っは…っ」

互いの息遣いが次第に激しくなり、それ以上の快楽を求めカラダが疼く。絡み合った舌をはずすと透明な唾液が糸を引きながら床におちた。自由になった唇を今度は矢野の首筋へと寄せようとしたところで髪を強く引っ張られる。

「なにすんだよ。痛ぇよ」
「っそれはそっちの台詞だ!!!なにしやがったこの野郎!!!?」
「きす」
「っ!!ふつーに言うな!!」

あまりにもショックだったのか矢野はそのままうずくまり青い顔でブツブツとなにかを呟き始めた。

「きす…そうだよキスしちまったよ男と…しかも普通に触れ合うだけならまだしも…一番さいあくなディープかよ…ああきもちわる…!!吐き気が…。ちくしょー…紅崎のやつ!!生まれて初めてだこんな屈辱…

「ストップ」

ねちねちといつまでも続きそうな呟きにぴしゃりと終止符をうつ。オレの声にはっと現実世界にかえったように矢野が顔を上げた。オレの顔が目に入るなり矢野の目がきっときつく睨み付けてくる。

「おまえっふざけんな!!!ゆるさねぇからなっ!!」
「はいはい。てかさーオレから言わせてもらうと最後のほうなんかお前の方から執拗に求めてきてたじゃねぇか。」
「なっ!!!」
「オレ、あんなに激しく求められてきたの、はじめて…♪」
「っるさい…!!帰れっ!!」

どうやら怒りモードにはいっている矢野。無理やりこれ以上のことをしてもオレを好きになるどころか最も避けたい相手となってしまうだろう。
(今日は帰るか。ま、まだまだこれからだしな)
そう考え、オレは傍の置いてあった自分の鞄を肩にかけながら立ち上がった。

「お礼、確かに頂いたぜ」

未だ鋭い眼差しで睨み付けてくる相手にそういい残すと、オレはマンションを後にした。




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