[38419] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-36『日本解放作戦…後編2』 |
- 健 - 2019年01月26日 (土) 21時40分
夜が更けても……まだブリタニアと『黒の騎士団』の戦闘は続いていた。
フクオカでは機体を立て直したエルシリアが再度出撃していた。ダーインスレイフで中央艦隊の竜胆を斬り裂き、更にハーケンで暁のフロートを破壊する。
だが……敵も蓬莱島などから増援を送ってきており、勢いが衰えることは無い。
「こちらとて負けられないんだ……報復が起きれば、幼い子供達も犠牲になる!」
そうなれば、また今度はまたブリタニアによる仕返しが起こる。今のまま維持するしか無いのだ!
自分でも驚いた……エルシリア自身はナンバーズだろうが幼い子供を手にかけるのは本意ではない。一つの旗に統一した統治の元が最もよいと、エルシリアは考えていた。だが………
弟と妹の甘さがうつったか?
シールドで暁の刀を受け流し、ダーインスレイフで真っ二つにした。そこに………
海上艦が三隻、前にやってきた。その上には見覚えのある兵器があった。
「あれは……『日本解放戦線』の雷光?しまった!!」
三隻分の雷光が一斉に火を噴いた。以前より改修されて弾丸の速度も威力も向上している。随行したサザーランドやウォードが撃墜され、エルシリアのベイリンも飲まれると思われた時……
〈姫様ーーーーーー!!!!〉
グラビーナのヴィンセントがベイリンを突き飛ばした。そして……無防備なヴィンセントは蜂の巣になった。
「アル?」
呆然とエルシリアはつぶやいた。
グラビーナは全身の苦痛に苛まれながら……無事なモニターを見た。ノイズが入っているが見えた……彼女は、無事だ。
「姫、様……」
いや、言うまい。彼女を縛り付けるだけだ。これでいい………彼女を守る親衛隊の一人として、逝こう。
機体が落ちるのを感じながら、グラビーナは微笑んだ。
愛しています……エルシリア様。
「アルの……ヴィンセントが…」
一瞬、セラフィナは操縦を忘れてしまった。クレアほどではなくとも、交流が長くエルシリアの夫になってくれるかもしれなかった男が……今、この世を去った。
〈セラ、何をしてるの!!〉
クレアに叱咤されてセラフィナは我に返り、暁の攻撃を躱す。機体を蹴り、ハドロンブラスターで撃墜した。
弔いは後!ここで私も死んだら、秀作にも兄さんにももう会えない!
「アルの犠牲を無駄にしないで!ウィンスレット将軍!姉さんの援護に『アマゾネス・ナイツ』を!!クレアの部隊は私と一緒にこのまま左翼を維持!」
〈イエス・ユア・ハイネス!〉
「『アマゾネス・ナイツ』、エルシリア様を援護しろ!!」
〈イエス・マイ・ロード!〉
ヴィンセントで出撃していたウィンスレットの指示を受け、『アマゾネス・ナイツ』と随行の部隊がベイリンに続く。
特にエルシリアは昔なじみを失って、冷静な判断を失っている可能性が高い。
「姫様、泣くのも怒るのも後です!」
〈…っ、分かっている!〉
モニター越しに僅かに涙が見えた。それを咎めず、ウィンスレットもランスで暁を串刺しにした。
マイナはルースとの連携で雷光を狙う。チャージは前よりも早くなっているはず。ならば、勝負はスピードだ。
後ろから来るガレスが艦隊を守るKMF隊を撃破し、二機のヴィンセントが肉薄した。こうなれば、もはや的だ。
マイナとルースはそれぞれ左右の雷光の脚部を破壊し、エルシリアのベイリンがダーインスレイフで砲身を真っ二つにした。
「やった!次は…」
ルースが振り向いた時、マイナのヴィンセントが頭上から暁の指揮官型に串刺しにされた。
〈ルース……セラを、お願い…!〉
マイナのヴィンセントは海に落ち、爆散した。
ラルフは暁直参仕様で真下にいたヴィンセントを串刺しにした。KMFで人を殺すのはコレが初めてではない。『ブラック・リベリオン』以前から訓練はしていたし、戦闘経験がある。その中で歩兵やKMFのパイロットを殺している。
だが、殺した相手は同じブリタニア人……もしかしたら、同じような疑念を抱いているような相手なのでは?と思ってしまった。
違う!迷うな!僕は誓ったんだ!扇さん達と共に変えると!!
同じブリタニア人を殺す選択をしたんだ……今更善人ぶるな!自分は軍人で同時に人殺しだ!例え、負けて捕まったのなら、処刑だってされてやる!
迷いを振り払って、ラルフは随行のグロースターに機関銃を撃ち、撃墜した。
〈おい、ラルフ!無理をするな!〉
正規団員が声をかけて気遣うが、ラルフは「大丈夫です。」と返す。
「勢いづかれたら押し切られます!それと……『双剣皇女』の姉姫には五機以上で距離を取って、応戦してください!!」
〈承知!〉
暁の左腕を着ける応急修理をした海棠は敵艦に取り付いて直接攻撃をしながら、ブリタニア人でありながら参加したラルフ・フィオーレの機体に目をやる。
よく考える良い子だ……全く、同じブリタニア人同士でも貴族だから許されるとは…どこかの誰かさんみたいなのはどこにでもいるものだ!!
ブルートガングとネグリングで今度はサザーランドを両断して、海棠は一度後退する。
「トウキョウでの戦闘次第では撤退もあり得る!敵陣にやたらと食い込みすぎるな!?」
ゼラートは再び出撃した。シールドをもう一度着け直して応戦する。今度はシルヴィオ軍のものと思しきヴィンセントと交戦していた。
「『侍皇子』の部下か?」
〈いかにも……ザカライア・M・ブランドナー…!ブリタニアの将軍だ!〉
「将軍閣下御自ら出撃とは…E.U.の腑抜け共にも見習ってもらいたいな!」
自ら最前線へ出撃する将軍など、せいぜい戦死したスマイラスやバルクライ程度だ。リスクこそ大きいが……兵達の信頼という意味ではよい判断だとゼラートは考える。
ことブリタニアに至ってはノーブル・オブリゲーション……要するに高貴な身分に生まれた者の責任という理念を色濃く残している。何しろあの車椅子の総督でさえ、人質解放の交渉のために単独で現場に残った上に車椅子から降りるなどという無茶をしでかしたほどだ。市民の信用を得るというその点だけをとっても、革命政府の愚か者共とは雲泥の差だ。
やはり、ゼロもそのクチか?
などと考えながらも目の前のヴィンセントのMVSをはじき、レーヴァテインで真っ二つにした。
「腕はよかったがな…」
〈見事…〉
そう一言だけ残し、ブランドナーのヴィンセントは爆散した。だが次へ向かおうとした時……こちらの交戦模様を見計らっていたのか、それとも上官の死に激昂したのか…真下から別のヴィンセントがニードルブレイザーで突っ込んできた。凄まじいスピードだ。
死角!?……間に合わない!
死を覚悟し、ウェンディの顔が脳裏をよぎるかと思われた時……
間に一機のデメルングが入った。その機体はニードルブレイザーを受け、火を噴いた。シュロッター鋼製のグレートソードを持ったその機体は…
「…………ニコロス?」
〈おお……向こうで、お前が幸せな家庭作る……〉
それで、ニコロスの声は永遠に消えた。ゼラートは一瞬だけ我を忘れたが、すぐにレーヴァテインで彼を屠ったヴィンセントを両断して脱出に追い込んだ。
泣いている?この俺が?
頬を伝う水気が分からなかった……否、意味は分かっているが…
シルヴィオはディナダンのコクピットでブランドナーが戦死を聞いて、操縦桿を握りしめた。
良き、将だった……自分の様々な武術を学ぶ方針に特に異論を挟まず、彼自身も鍛練を積んでいた。
「よく…これまで仕えてくれた。」
今はそれが最大のねぎらいだった。
〈泣くのは後よ、将軍が戦死されたのなら指揮系統が混乱する。貴方が入るべきなのよ。〉
木宮のゲライントが側に来て、暁を斧で破壊した。そう、今はそれが先決だ。
「ああ、そうだ……必ず弔わないとな。」
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