[38268] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-33『再び叛乱と始まりの地へ…中編1』 |
- 健 - 2018年08月26日 (日) 18時55分
『黒の騎士団』へ合流したオランダの外人部隊でデルクは新型KMFの搭乗を行っていた。『ユーロ・ブリタニア』から『ハンニバルの亡霊』と恐れられた『w-ZERO部隊』で運用されたKMFアレクサンダがベースとなったKMFだ。BRSという専門的なシステムを外して高機動力の可変KMFという面を強調したKMFだ。
「皮肉だな……日本人を身代わりにした部隊のKMFに日本人を収容所に入れたE.U.軍人の俺が乗るというのは。」
だが、流石にベースがアレクサンダというだけあって高性能だ。パンツァー・フンメルなど問題にならない。正規軍の連中はイレヴンが乗っているなどという理由でこれをナイトメアもどきなどと馬鹿にしていたが、パンツァー・フンメルこそナイトメアもどきだ。あんな戦車にお情け同然の手と足が着いたようなでくの坊…サザーランドと喧嘩できるわけがない。が、相変わらずE.U.はくだらない利権争いが主で一部の天才技術者を取り立てようとしないから鹵獲したグラスゴーやあんな只の歩く戦車を使う羽目になるのだ。
E.U.正規軍の連中の殆どは相変わらずで、くだらないパフォーマンスに縋ってか『黒の騎士団』の現行主力機の暁まで馬鹿にする始末どころか『黒の騎士団』のエース紅月カレンがいない事に愚痴をこぼしていた。どういう意味でか分かりきっているし、未だに浅海やクラリスにちょっかいを出してくる輩もいる。
全く……あんな連中、ゼロでもまとめられるのか?
中華連邦はともかく、ブリタニアの植民エリアとなった国の亡命政権に随行した軍や『黒の騎士団』の正規部隊は士気が高い。当たり前だ。
だというのに、他のE.U.加盟国から来た連中の大半は状況が分かっておらず、ゼロに取り入って甘い汁を吸う算段を立てている。否、吸えると勝手に思い込んでいる。
クラリスは部隊の仲間が乗るオリヴィエの改修された姿にほれぼれした。四人ともそれぞれ異なった改修をしており、ブレイズルミナスに由来する技術もある。
「流石は紅蓮の開発者ね。」
隣にいた『黒の騎士団』の技術者ラクシャータ・チャウラーに目を向ける。
「あら、貴女のローランってのも見せてもらったけど紅蓮や神虎…ランスロットにも引けを取らない化け物じゃない。」
「その化け物を乗りこなす私はなんなのかしら?」
ラクシャータに問うと、数秒唸って……
「化け物みたいな胸?」
「殴られたい?」
「冗談よ。」
全く、冗談なのかそうでないのかよく分からない。だが、E.U.の正規軍の連中よりずっと好感が持てる。最古参のメンバーは正直好きになれない。特に玉城とかいう男と藤堂の側近である旧日本軍人二人は。
「ピエルス大佐、よろしいでしょうか?」
もう一人いた……エリア11で指名手配されていたブリタニア人ディートハルト・リートだ。
「何かしら…」
「先日のおはなし、そろそろ答えをお聞きしたいのですが。」
やはり、それか……合流してすぐにこの男は妙に接触してきた。口説くのとは違う……まるで、自分をスターに祭り上げようとしているかのようだ。かつてスマイラスがレイラ・ブライスガウをジャンヌ・ダルクに仕立て上げたように……こいつも同じか?E.U.方面への看板にする気か。
「悪いけど、私はそんな器じゃないの。もっと良いの探してちょうだい。」
「貴女ほどの女性ならば人々は支持します。貴女の祖国…」
銃を向けてそれ以上喋らせなかった。
「その祖国に愛想尽きかけてるの……これ以上気を削ぐような事しないで。」
この期に及んでもフランスの官僚達はこちらへの接触を図ろうとしている。分かりきっている。自分を通じてゼロとコンタクトを取り、保険をかける気なのだ。保険をかけるという考え自体は理解できるが………それしか無い。しかも保身のみが目的。
仮に私が紹介しても、ゼロが信用するとも思えないけどね……
ゼロは油断できない男だ。つまり、それだけ切れる相手だということ。私利私欲にまみれたという意味では大宦官と良い勝負のあいつらなどゼロやシュナイゼルと勝負できるはずがない。
ああ……後悔先に立たず、かしら?ライルに寝返ったらどうなっていたのやら。
こちらに来ても頭の悪い『黒の騎士団』の兵士から同胞を収容所に押し込めた償いと称して身体を要求したり、因縁をつけたりと五月蠅いことこの上ない。正規軍の連中の相手でも疲れるというのに。
時たま思う。寝返る、といわなくてもあのままライルに積極的になって抱かれていたら…と。
何、見苦しいこと考えてるのかしら。
池田は座禅を組んでいた。普段の修行だが、同時にこれからの敵の動向も考えていた。
おそらく、この戦いにもライルは出てくるであろう。当然だ……自分がブリタニア軍に権限を持つ皇族でもコーネリアが消息不明となっている現在、暴走を警戒すべき『大グリンダ騎士団』以外で動かすのは質が充実しているライル、同等の軍備を誇るエルシリア、シルヴィオの軍だ。そして『ナイトオブラウンズ』………
日本奪還が目の前に迫っている。日本出身者の士気も高いが、所詮は素人集団。訓練は受けているが、練度などは目も当てられないほど低い。そういう意味ではあのE.U.の連中の大半がそうだ。
全く……どちらが当てにならないのやら。
その問題はバルディーニも頭を悩ませている……そもそも、火中の栗を拾わせるような政策で悪化したE.U.と中華連邦の関係…連携が取れるかはなはだ疑問だ。
手が一つある……おそらく、ゼロはそれをする気だろう。
それならば問題を解決できる………ライルとの決着をつける意味でも日本解放という意味でも池田は全力を注ぐ……だが、ゼロ。
奴の目的が未だに見えない。日本を解放してそれで終わり?
とてもそうは思えない。奴自身にとって日本解放は前段階の一つなのではないか?
少なくとも、池田はそれを疑い扇達がそれに気付いているかどうかも気になっていた。
エレーナは落ち着かなかった。ライルの軍に編入して優衣や涼子と同じオペレーターの枠に収まった。元々アンダーグラウンドでそれなりの修羅場を潜り、ダンスで身体も鍛えていたために訓練は苦ではない。だが、男達の情欲が苦だった。
同姓の羨望や嫉妬はもう慣れている。だが、男達の情欲は何時までも慣れなかった。アンダーグラウンドでも、養父に引き取られてからも使用人の男達の情欲に晒された。
ダンサーになってからも……売れるようになってからは軍の慰問と称されたダンスも披露した。雑誌の写真などもあったがあくまでダンスに専念したいということで断った。が、慰問では中東圏の踊り子のような悪趣味な衣装を要求されたこともあったが、自分達の専門が完全なフラメンコという理由で断ってもなかなか譲らずに苦労した。魂胆が見え透いていたから尚のことだった。
ダンスを終えてもやる気のなさそうな兵士達が親の意向を傘にセルフィーと共に言い寄って、ヴァルスティードも若い女性兵士に迫られていた。
エリア24になってからも同じだった。そして、劇場に圧力がかかって、本国でバニーをやらされて貴族に身体を弄ばれて捨てられるか殺される……遂に終わりだと思った時に彼に救われた。
どうせ同じだ……と思ったが、彼と一部の男達はそうではなかった。特に彼はエレーナの豊かな身体について……
『スタイルが良いとは思うが、その……』
回答に困ったあの素振り………ヴェルドとコローレは他の男達と同じだったが、正直だった。
『是非その素晴らしいバストを揉ませてください。』
すぐにライルやレイに小突かれたり、足を踏まれていた。ある意味で信用できたが、エレーナはライルに惹かれた。あんな素振りを見せたのも一瞬で、すぐに化けの皮がはがれた男をたくさん見てきた。だが……あのハワイでも際どい水着でアプローチをしたのに逆に怯んでいた。
純情な男子の反応……それがエレーナにとっては眩しかった。カジノで初めて会った時から変わらない反応………
そのライルに心を奪われるのに殆ど時間がかからなかった。
秀作は改修されているアストラットを見上げていた。キャメロットの協力もあって、新しい武器を搭載しパワーも『ラウンズ』専用機並に上がっている。
「魔物共め……こいつで血祭りに上げてやるよ。」
が、セラフィナがエリア11へ行くと聞いた時には彼女の側にいたいという衝動があった。
どうなっているんだ?何故、彼女を?俺はセラの軍にいるわけではない。
愛している……からだとでもいうのか?バカな、俺はまだ生まれていないのに。が、セラは復讐のためでも生まれていると言ってくれた。
セラフィナとのことはまだライルやエルシリアには勘づかれていないが、気付かれるのは時間の問題かもしれない。ゲイリーに知られたらなんて言うのだろう?
秀作は自分で自分の感情が分からなかった。何故、こんな感情がわいてくる?
クリスタルはハリファクスの改修データをチェックしながら嫉妬の感情を抱いていた。有紗と優衣に対してだ。
有紗はハワイの休暇の時に…優衣もつい先日ライルと関係を持ったという。しかも、優衣は涼子とフェリクスがお膳立てまでしたらしい。
私も……だけど……!
抱かれたい。愛されたい。だが、自分にはその資格が……
羨ましい…自分の気持ちを素直に出して、愛し合うことができる二人が。
クリスタルはライルを愛している。それは本当だ。今までの軽いデートなどではない……それでも、あの事件の後で群がってきた貴族の欲望に疲弊したライルが逃げるように戦場を求めるようになってしまったのは………女でも酒でもなく戦場を求めたのは………
自分の身体でライルを慰めようとした……愛しているから、だが同時に。それに気付いていたかは分からないが、ライルはクリスタルを拒んだ。
だが、今でも愛している。だから、嫉妬と同時に安心もあった。ジュリアの事件を少しずつ乗り越え、複数でも女性を愛するようになったライルに………
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