[37809] コードギアス 戦場のライルB2 SIDE OF WARFARE『ハリボテの軍隊』 |
- 健 - 2017年11月13日 (月) 16時07分
『ロンスヴォー特別機甲連隊』に集められたのは各国の精鋭……など只の名目…実際には実戦経験に乏しい兵士達が殆どで、その盾に外人部隊やイレヴンを編入しただけ………
「只のハリボテじゃない。」
総隊長に任命されたクラリスの感想がそれだ。装甲に細かい傷なども見られず、全く新品同然のKMFにやる気の無いようなパイロット達………彼女の補佐として任命されたイタリアのバルディーニ将軍も頷く。
「全くだ……で、君の腕の程は?」
こちらを疑うような、試すような目だ。当然か……何せ、こちらは立案者の娘だ。疑ってかかるのが自然という物だろう………
「一応、『ブリタニアの狂戦士(バーサーカー)』とKMFで直接戦った経験があります。」
その答えに他の兵士達が疑いの眼差しを向ける。
「あの女をたくさん侍らしているっていうお坊ちゃんと?」
ロシア人の少女がその中でも露骨に疑っていた。が、それを同じく招集された旧日本軍人海棠龍一が仲裁した。
「まあまあ、ここはそうさね……あの皇子様か、その部下と直接戦った経験のある人は?俺はこの前畑方源流の坊ちゃんと、エリア11の方で奴さんの軍から逃げた経験があるよ。」
質問に対し、何度か顔を合わせた池田が手を上げ、ドイツのゼラート・G・ヴァントレーンが手を上げる。更に、オランダから来たイレヴンの少女も手を上げる。
「澤崎の一件に呼応した武装蜂起で奴と刃を交えた……噂に違わぬ実力だ。こちらでも、『双剣皇女』の軍と交戦した。ライルやコーネリアのように派手ではないが、堅実で侮れない。」
「私自身は『侍皇子』が相手だった……だが、副官が奴の名誉部隊と交戦し、腕が立つと報告した。」
「私もレジスタンス時代に………あのまま続けていたらどうなっていたか。」
なるほど……少なくともシュナイゼルやコーネリアほどではなくとも、名が通った皇族達との戦闘経験がある。だが………
「イレヴンと負け犬共の言うことなんか、真に受けてどうするんです?」
フランス州のパイロットが彼らの意見を一蹴する。他の国の兵士達も同様だ。
「その程度の奴らと互角じゃ大したことないし、どうせ俺らが出る幕もないですよ。それより、隊長一緒に飲みましょうよ。」
オランダの正規兵がクラリスの肩に手を回すが、クラリスはそれをつねる。
「総隊長は色々と忙しいの……」
全く、これだ。すると、オランダで外人部隊を統括したデルク・ドリーセン少佐が意見を出す。
「少なくともこの美奈川浅海は『四大騎士団』のパイロットを退けるだけの実力はある。」
更に、ドイツの外人部隊の女性が挙手する。
「ヴァントレーン中佐は『ミカエル騎士団』のシャイング郷と渡り合ったこともあります。」
が、幕僚達が大笑いする。
「イレヴンごときが総帥では『ユーロ・ブリタニア』もたかが知れるな!更に『ナイトオブラウンズ』だ!!」
「ええ、お笑いですね!」
他の兵士達も同様だ………真剣に論じている全員が怒りを抑え、クラリスはバルディーニに向かう。
「バルディーニ将軍……全隊の指揮は貴方にお任せしてもよろしいでしょうか?」
「私がかね?」
「ええ、この先の展開がもう見えているので。」
その言葉にゼラートや海棠、池田といった指揮官達もうなだれる。そう、どうせやる気の無い正規軍が大半だ………逃げたりするのは目に見えている。つまり、クラリスの部隊も最前線に出る可能性は高い……いや、100%出る。
「それを前提に作戦を立てる……分かった。」
ライルが本国へ行っている間………駐屯したゲイリー達は情報部からE.U.が精鋭部隊を設立したと報告が上がった。
「今更、精鋭部隊を設立してどうなるのだ?」
幕僚の一人が現実論を追求し、ゲイリーが補完する。
「おそらく、首都防衛が万全というアピールをしたいだけなのだろう。」
「ええ?もうパリが目前なのに?」
「素人の私達でもそれは無いと思うわ。」
優衣と涼子の言う通りだ……全く、ここまで保身しか頭にないとなると感心してしまう。
エルシリア軍でもその報告が話題になっていた。
「その精鋭部隊ってどれくらいの規模ですか?」
マイナの問いにウィンスレットが答える。
「各国の正規軍や外人部隊で構成された大規模部隊だ……」
「大規模……内、何人が真面目に戦うんでしょうか?」
グラビーナの疑問に全員が黙り込んだ。
「一割いたら、奇跡だろう。」
ウィンスレットが示したその可能性に全員がため息をついた。
丁度、シルヴィオ軍でも同じ反応があった。
「呆れて物も言えないとはこの事だな。」
エリアの感想にアーネストも憤る。
「全く、『方舟の船団』の件で市民の信用を失ったというのに、まだ同じ手が通じると思っているとは。」
「例え負けても、政治家や軍上層は安全なのでしょう!?」
イレネーも流石に軍人としての憤りを露わにする。それは、軍人としての失望だった。
「ああ、だろうな。」
ブランドナーもそれ以上は言わなかった。
アブラームを殺して、首都圏防衛の司令官となったオクタヴィアン・フィオ・マスカール将軍は『ロンスヴォー特別機甲連隊』のリストを改めて見た。やはり、ピエルスの娘同様に名家の子息子女が多い……そして、それ以上に外人や低所得層、イレヴンがいる。
「やはり、か。上層部目、今頃は首都機能移転の話が秒読みで、フランスの官僚共も地位保証が大詰めなのだろうよ。」
こんな、ハリボテの軍隊なんか作って一体何になる?そもそも、盾になる連中だってどれだけが真剣に戦うか分かった物でもないのに。さて、このまま黙って生け贄になるか……それとも、脱走兵に身を落とすか………
「いずれにしろ、家族がどうなるか……」
マスカールにとっては、もう地獄行きが確定したような物であった。
|
|