[38670] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-52『レクイエム…後編4』 |
- 健 - 2020年02月29日 (土) 13時33分
雷峰は藺喂の身柄と引き替えに保護されることも、拘束されることもなかった。逃げ延びた彼はパレードのルート上、側面のビルに陣取っていた。
「パレードの動きは?」
確認を取ると、中華連邦時代の部下から応答がくる。
〈は!順調に進んでおります!後、10分後には狙撃可能範囲に到達します!〉
あと10分か……
逃げ延びていた彼らは反撃の機会をうかがっていた。この二ヶ月、表に出なかったルルーシュが反抗分子の処刑を行うパレードを行うと発表された。無論、罠である可能性は充分に承知している。だが、蓬莱島から脱出したコーネリアは『グリンダ騎士団』と『ピースマーク』に協力を取り付け、スペインに戻ったエリア24でマリーベルが警護するダモクレスの破壊を要請、最大の抑止力でもあるダモクレスの動きを抑えてその隙を突いてコーネリア達はナナリー達を救出する。
そして、雷峰や逃げ延びたマスカールらE.U.の残存部隊もこの襲撃に協力し、ルルーシュ暗殺をも計画していた。雷峰だけでなく、狙撃に心得のある者が様々なポイントで待機している。
失敗は許されない………ルルーシュが**(確認後掲載)ば、少なくともこれまでこちらに敵対していたブリタニアの人々も支持に回る。
世界を人々の手に取り戻すことが出来るのだ。
雷 斬利はこの土台作りのために積極的にルルーシュに協力した。大宦官の次はルルーシュかと侮蔑する者もいた。
だが、もはやそんな謗りなど雑音ですらない。雷峰を始めとした一部の者達にのみ真意を告げてルルーシュを信用させた。全てはこの時のために。何重にも偽装を施した情報を流し、今回のための情報をリークした。
「一発勝負だ………これを逃せば次はない。」
仮にこの後に成功しても、その象徴とするナナリーもシュナイゼルも、天子と神楽耶も殺されれば何の意味もないのだ。そして、斬利も中華連邦の軍人として天子を救いたかった。
しかし、何か妙だ……これが反対派にとって最後にして最大のチャンスであることはルルーシュ本人が一番分かっているはず。なのに……スムーズに進みすぎている気が。
ライル達もパレードを中継で見ていた。
僻地に押し込められた上に、周囲はルルーシュの軍で固められているこの状況はライル達は何も出来ない。
このまま飼い殺しだと誰もがささやいている。
「ルルーシュ……やはり、マリアンヌ様が殺された上に捨てられたから君は変わってしまったのか?ユフィやナナリーを殺してまで…」
もう、あの頃のルルーシュは日本占領時に死んでしまったのだろう。今映っているのは9年の間に憎悪を暴走させた独裁者だ。
「ライル様、パレードが…」
レイに呼ばれ、モニターを見ると突然パレードが止まった。
「なんだ……」
カメラがパレードの前方に移動すると、人影が見えた。ズームされ、それが世界で知らぬ者がいない仮面であると分かった。
「何、ゼロ!?」
シルヴィオは息を飲んだ。
「ゼロ……そんな、バカな?」
「どうして……ルルーシュが、ゼロじゃなかったの?」
何故、今またゼロが?最初のゼロは今玉座にいる。ならば、一体あのゼロは?
「このタイミングでゼロ?………ま、まさか!」
ライルの中で仮説が組み立てられた。ルルーシュ皇帝の世界制覇がなされるこの瞬間にゼロ……まるで仕組まれたかのような。もし、そうならばあのゼロは!?
ゼロは走り出し、KMFの銃撃を躱してジェレミアを飛び越えてルルーシュの元へ向かう。
「あの身のこなし……スザク!?」
良二は悟った。あのゼロはスザクだ。藤堂の元で修練を積み、軍に入ってからも何度も手合わせしたし、お互いの武術の長所と短所を議論した良二だからこそ分かる。
良二は溜飲が下がる思いでいたが、同時に悔しくもあった。スザクを殺したあの女と尊敬できなくなった恩師をこの手で殺せないのが。
が、生きていた……ゼロとして。
ゼロが剣を抜き、ルルーシュへ向ける。
「ルルーシュ!」
ライルは立ち上がり、叫んだ。そして、悟った。全て……このための布石だったのだ。シャルル・ジ・ブリタニアをも凌ぐ希代の暴君ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアをブリタニア帝国にあらがった英雄ゼロが討ち取る。そして、そのゼロはおそらく枢木スザク。
二人の間で何があったかは知らないが、スザクにとってゼロはユーフェミアの仇。それになってまで……彼は既に死んだことになっている。もう、彼が人々の前に出ることはない。
「殿下!スペインから緊急中継が!」
涼子がもう一つの映像を映す。そこには、スペイン上空のダモクレスで『グリンダ騎士団』がマリーベルの『大グリンダ騎士団』と交戦する映像が映った。そして、映像が変わりオルドリンがナイフでマリーベルを刺した。
「マリー?………ジ、ジヴォン郷…?」
だが、何故ナイフ?彼女はジヴォン家直伝の暗殺剣を得意としている。彼女ならナイフよりも剣を……
待てよ、ナイフ?確か、マリーベルの筆頭騎士でオルドリンに殺されたライアーはナイフを得意としていた。そして、ティンクから聞いた生身の目にはオルドリンで機械の義眼ではライアーに映った。
やはりライアーもギアス能力者……さしずめギアスユーザーと呼ぶべきか!どうして、今カメラ越しでもオルドリンかは分からないがアレはライアーだ。マリーベルの元を抜け出し、今オルドリンと共にマリーベルを止めようとして……オルドリンに扮した。
何と言うことだ………ギアスがここまで根を広げていたとは。
それにしてもマリーベル………このタイミングでルルーシュと同時に?まさか、二人は共犯!?それともお互いにこの機を狙っていた!?スザクとオルドリンを英雄とするために?
考えている間に二人は心臓を貫かれ、ルルーシュはナナリーの元へ滑り落ち…マリーベルはオルドリン、否ライアーと共に落下していった。
リュウタは愕然とした。なんで?ようやく奴らが**(確認後掲載)るのを見られると思ったのに?
「魔王ルルーシュは死んだぞ!人質を解放しろ!」
一人の女性が出てきた。リュウタもニュースで見た、第二皇女コーネリアだ。なんでゼロに味方を?妹を殺したゼロなのに。
彼女の号令に答えるように人々が飛び出し、ブリタニア兵に飛びかかった。ブリタニア人も日本人も協力している。
「なんで……なんでみんな皇帝陛下が死んで嬉しいの!!おかしいよ!!みんな嘘つきだ!!」
リュウタは誰彼構わず掴みかかろうとするが、ユリアナは抑える。
「リュウタ、お願い!我慢して!」
「やだよ、お姉ちゃん!みんな自分勝手だ!!嘘つきだ!!」
幼くも強い憎悪……だが、人々にそれは届かずに救世主…リュウタにとっては悪の象徴を崇めて叫んだ。
ライルは椅子に座り込んだ……
「バカだよ……二人とも。」
情けない。この時の二人の真意を見抜けなかったなんて……何が二人をそうさせたかは分からないが、二人とも世界全体をまとめようとした。超合集国に、そして『グリンダ騎士団』に争いの目を見張らせるために。
そのために二人は自ら魔王と魔女になることを選んだ。
「言ってくれれば……僕も一緒に悪役になってあげたのに!」
敵視しながらも、幼い頃の思い出からルーカスと違って蔑視しきれなかった妹…一緒に遊んだ、おそらく一番好きだった弟が………
「殿下…」
「……弟と妹が死んだんだ。泣いたって良いだろう?」
ゲイリーは呆れたか、もう慣れているのか深いため息をついた。
「やはり、重ね重ねはっきり申し上げます。殿下、軍人をおやめなさい。貴方の無茶に付き合わされる我々が保ちませんし、何よりも貴方自身が保ちませんよ?」
「……そうだな、流石に疲れた。」
周りが少しどよめいた。有紗も困惑している……
「なんだ……変な顔をして。」
「いえ……ライル様が、その……いつも頑固というか、強情というか…」
「我が儘?………ああ、もう我が儘を言う気力もないかな?」
同時にライルは既に確信している……ブリタニアの世界制覇はもう終わる。ルルーシュとマリーベルがブリタニア人にもブリタニアがこれまでナンバーズにしていた悪行を向けてきたことにより、ブリタニア人も自国がしてきたことを身をもって思い知ることになる。
だが、全ての悪意と恐怖が二人だけに向くなど。それを始めたあの男はどうなるのだ?
世界がどう言うかは分からないが、ライルだけはあの男を元凶として憎むだろう。そして、ライル自身もそれに荷担していたことを忘れない。それを誓った。
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