[38664] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-52『レクイエム…後編1』 |
- 健 - 2020年01月08日 (水) 21時27分
長野とアリアの戦いは決着がついた。
長野の振り下ろした刀をアリアがダメージを覚悟で受けた。左腕とフロートの鞘を一部破壊されるが、刀を持った右腕を破壊した。しかし、ヴィヴィアンのハーケンが頭部を破壊してそのまま左腕で小太刀を突きつけた。視界を奪われた今、アリアの敗北は決まった。しかし、最後の一撃がヴィヴィアンの胴体を両断してコクピットブロックが射出された。
やろうと思えば、コクピットをやれた。だが、既にアリアはそれをやるだけの気力を失っており、機体のダメージも甚大だ。それとも、彼に自分と同じ年頃の娘がいるということを知っていたから手心を加えたのだろうか?
このままではいずれ墜落してしまうだろう。
「ま、まだ……おとう、さんの………か、たき…」
あの男を殺すまでは、と踏み止まったアリアは意識を失った。墜落しかけていたロディーヌは鹵獲されたサザーランドに確保され、友軍の艦へ向かっていった。
長野は驚いた。情けをかけた?まさかな……運がよかっただけだろう。
だが、ここで流れ弾にでも当たれば終わりだ。せめて、改修されることだけでも祈ろう。
しかし、殿下はご無事なのだろうか?
レイとクレスの戦いも終わりが近づきつつあった。ランスをクレスの剣が破壊すると思われたが、レイは剣ではなく肩を狙った。
剣を持った腕が破壊されると同時にヴィヴィアンのランスを持った腕も破壊された。が、レイはその衝撃と同時にフロートを一瞬だけ停止させて急上昇。
左腕の剣でもう一本の腕を破壊し、蹴り落とした。
「ライル様。」
レイはすぐにライルの後を追った。何故、あの男を殺さなかったのか。否、理由は分かりきっている。カレンと同じ。
彼も…私と同じだから。
ハーフであるから迫害され、受け入れてくれた人に尽くす。そう、同じだ。迫害されたハーフだからこそのシンパシーなのかもしれない。
クレスは機体を着水させるために体勢を立て直しながら、レイの機体を見上げた。
「甘いな…私に情けをかけたか。」
シンパシーがないわけではない。クレスと違って、裕福な母に引き取られながらも逆に幼少期は悲惨だったそうだ。それに、母も後ろ指をさされていたという。
現在と過去が自分と真逆な彼女が羨ましかった?まさかな………
せいぜい、手のかかる皇子様のお守りでもするんだな。
有紗はライルの無事をひたすらに祈っていた。ルルーシュとシュナイゼル、どちらに転んでもいい。ただ彼に無事に戻ってきて欲しい。それだけだ……
お願い!生きて帰ってきて……私だけじゃない!優衣とエレーナさんも、みんな待っているの!どんな世界でもライル様がいてくれればそれで良いの!!
どちらに転んでも世界が呑まれるのは有紗だけでなく、ここにいる全員がほぼ気付いていた。だからこそ、有紗はせめてライルの側にいたかった。
薄々気付いていた……ライルが自分に抱く不信或いは恐怖も。それとも向き合う……受け入れてくれたライルに出来るのはそれだけだから。KMFに乗ることも管制も事務も出来ない有紗に出来るのはそれだけだ。
ダモクレスでスザクとカレンの決着がつこうとしていた頃、クラリスがかろうじて追っているライルと池田の決着も近づいていた。
蒼天の輻射波動とベディヴィエールのハドロン砲はエナジーがつきた。ルミナスコーンも残り僅か。
「だが…それで充分!」
蒼天の叢雨をベディヴィエールは躱し、つなげた槍を振るうが蒼天は左腕で柄を受け止めて刃の直撃を避けて蹴りをいれる。更に追撃でハーケンを撃ちだし、左肩の装甲を破壊するが決め手にはならない。
「はあ……はあ………やはり、キミは最高だよ。」
息切れしながら、ライルはこの上ない快楽……否、喜びといった方が良いかもしれない。今までのような…煩わしさを忘れたいが故に溺れた戦場の快楽ではない、純粋に相手と力量を競う命がけの果たし合いだ。
「クラリスや浅海よりも私を熱くしてくれるよ。」
通信機の向こうで池田が笑ったのが聞こえた。
〈全く、随分と惚れ込まれたな。ただのストレス発散の相手止まりだと思ったが…〉
とはいえ、池田にとってもこれほどの相手はいなかった。枢木スザクと戦っていてもこれほどの興奮を得られたか……一パイロットとして、戦士として熱くなるとは思ってもみなかった。
「祭りには終わりがくる……国だって同じ。この戦いもな。」
〈ああ……終わるのが惜しいよ。だが、勝つのは!〉
「〈私だ!〉」
もう二人の頭からはシュナイゼルもルルーシュも消えていた。ただこの最高の戦いで勝ちたい。それだけが二人の頭を占めていた。
気力も体力も限界を超えていた二人…蒼天の刀をベディヴィエールが左腕に展開したルミナスコーンで止めるが、押し切られて左腕を失うと同時に刀が砕けた。ベディヴィエールは追撃で槍を振るい、左腕ごと頭部を斬り飛ばす。だが、ついにロンゴミニアトの刃も限界を超えて砕けた。
最後の一撃……蒼天の右腕の拳とハーケン、ベディヴィエールのハーケンと砕けていない槍の一撃。蒼天の右腕がベディヴィエールの頭を、ハーケンが翼を破壊してベディヴィエールの槍は機体の腹部を貫くと共にハーケンが頭部を潰した。
コクピットにいくつも警告音が鳴り響き、池田は死を悟った。コクピットに直撃こそないが、もう助からないだろう。
否、衝撃でコクピットのパネルもいくつも砕けて池田の身体に突き刺さっている。
「お前の…勝ちだ。」
〈そ、そうか………もう少し、違う形で会っていたら…肩を並べられたと思うか?〉
「さあな…」
通信機の向こうでライルも力なく笑った。
〈そこは、嘘でも「かもな。」と言うのではないか?〉
「そこまで親しい仲ではないだろう?」
〈………はは、それも、そうだったな。〉
パネルが爆発して、更に池田の身体を傷つける。
〈は…離れろ。〉
残った腕と足でベディヴィエールを突き放し、蒼天は落下していった。
モニターが落ちる寸前、池田は空を見た。
蒼天と蒼穹……全く、同じ名前の機体に乗ってそれを眺めて死ぬ、か。悪くない……な。
モニターが落ちると同時に爆発が起こり、池田は機体と同じ空に命を散らせた。
ライルは蒼天の爆発を見届け、同時に力尽きた。
「か、帰らない…と。有紗が、待って……」
が、ベディヴィエールのエナジーもつきて落下しようとしていた時。何かが機体を受け止めた。
同時に意識を失ったライルは敵か味方か、分からなかった。
受け止めたのはローランだった。
「池田少佐……」
クラリスはこれまで軍人という職業に就きながらも軍人を侮蔑してきた。その中で、数少ない心から敬意を払える軍人であった外国人の男に敬礼をした。
「さて……このまま、テイクアウトして獄中結婚しましょうか。といいたいけど…」
〈ライル様を放しなさい!〉
あのハーフの騎士の少女だ。
「そんな状態でやる気?」
〈お互い様でしょう…私はライル様の騎士よ!待っている人のためにも連れて帰らないといけないのよ!!〉
「それは忠誠心?それとも…」
その時、ここから離れた空で大きな爆発があった。フレイヤだ。
〈全世界に告げる!私は神聖ブリタニア帝国皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアである!〉
その宣言を聞いて、クラリスは悟った。ダモクレスが落ちたのだ………
〈………投降しなさい。〉
言われるまでもない……ローランの武装は殆どない上にエナジーも残り少ない。抵抗を続けたところで殺されるだけだし、下手をすればフレイヤが部下達に向かって飛んでくる。
「…………私はともかく、部下達の命は助けてくれる?」
〈無理は承知で掛け合ってみるわ。〉
〈ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!世界は我に従え!〉
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