[38657] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-52『レクイエム…前編1』 |
- 健 - 2019年11月17日 (日) 10時10分
ダモクレス内部でルルーシュとナナリーが対面し、外壁部でスザクとカレンが対峙していた頃………
ライルと池田も対峙していた。飛行機能が半減したローランは武器を片手にそれを見守っていた。
「池田……一つ聞いても良いか?」
〈なんだ?〉
「君とは一度会っただけだが、あんなモノに頼って日本独立を果たすような男だったのか?」
大体からして、どちらに転んでも結局日本はブリタニアの支配下だ。さして変わらない……シュナイゼルがナナリーを皇帝に、或いはルルーシュごとナナリーを消せば自然とシュナイゼルがブリタニア皇帝だ。ルルーシュのギアスに支配された皇族達も消えた今となっては、今更ライルが正当な皇帝と名乗ったところで無理だ。『大グリンダ騎士団』を抱えるマリーベルだってもう相手にならない。
〈扇や藤堂達も苦肉の策、と分かってはいると思う。だが、私の見解では星刻や藤堂位しかシュナイゼルを警戒していないだろう。最も…ここまで来れば、シュナイゼルの勝ちだろう。あの男がダモクレスに突入される事態を考えないと思うか?〉
確かに……兄様がダモクレスに突入される状況を想定しないわけがない。知略で大きく劣る私だって、それは視野に入れるんだ。
入れないのはよほど自分の策に自信があるか、或いはただの愚か者だ。
「どう転んでもブリタニアの勝ちなのに……随分とよそ事みたいだな。君は独立を求めていたのではないか?」
〈いや……もはや、日本などどうでも良い。〉
「何?軍人なのに、自分が守る国を否定するのか?」
〈軍人だからこそ、だ。悪いが時間が惜しい……始めるぞ!〉
それを聞いてすぐにベディヴィエールが上昇し、蒼天はそれを追う。
レイとクレスはまだ続いていた。互いに実力は拮抗、機体性能もほぼ五分。膠着状態だった。
「私はあの男を殺す!俺を受け入れ、ここまで行かせてくれたあの方を殺したあのお方を!!」
ロディーヌの剣をルミナスランスで受け止め、レイは機体を吹かす。
「私だってそうよ!親以外で初めて受け入れてくれたライル様に自分の全てを捧げると誓った!」
だが機体のコンセプト故か、ギャラハッドやユーウェイン同様に近接戦闘におけるパワーを重視したロディーヌが押し返した。が、その押し返した勢いを逆に利用してレイはロディーヌを蹴った。
最大の武器であるアロンダイトを失いながらもアリアのロディーヌは長野のヴィヴィアンと互角に戦っていた。むしろ、長い獲物がある分リーチでまさる長野は懐に入られる恐れがあった。
が、アリアはそれを着こうとしてもなかなか着けない。
「なんで!」
〈大きな獲物があれば、懐に入られるリスクもある。考慮するのは当然だ。〉
ハーケンで攻撃され、シールドと剣で防ぎながら後退する。
「ちっ!」
レイシェフやビスマルクが密かに一目置いていただけあり、この男もやはり一流だ。『ラウンズ』またはその直属部隊としても通用するだろう。
秀作達は捕虜になっていた。銃を向けているのは案の定日本人だが………
「枢木スザクに貴様と良い、何と恥知らずな。」
その言葉に秀作より先に…
「何が恥知らずよ!!枢木郷は分からないけど、秀作は本当に可愛そうよ!!」
セラフィナが喚きだした。よく見れば、涙も流している。
「貴方達が秀作を可愛そうと言っても、それは『将軍の孫の使命を忘れた』とかそういう意味なんでしょう!?私や兄さんみたいに、秀作がそんなエゴや悪意しか知らない人に育ったからじゃない!!」
「何を!ブリタニア皇女の分際で!」
「そのブリタニア皇女にそんなことを言われることがおかしいと思わないの!貴方達こそ恥を知りなさい!!」
セラフィナは我慢が出来なくなった。この期に及んで、まだ秀作に『将軍の孫』を要求するこの日本人達に。
「今まで、秀作が日本人を『魔物』扱いするのは言い過ぎだし酷いとも思った……でも、これじゃあ本当に魔物です!貴方達は、秀作が『日本のために戦うことを幸せ』と言って自分達に都合の良い秀作を作って!今ここに、目の前にいる畑方秀作を見ていない!!貴方達が否定しているブリタニアと同じ理屈を貴方達は同じ日本人にしているんですよ!?しかも、当時9歳の男の子に!!たった9歳の男の子に頼らないと、戦えないことこそ恥知らずです!!」
「畑方秀作は畑方源流の孫…!彼の血を受け継ぐこの男には…」
「そんなの貴方達が自分達の言い分を正当化する方便じゃないですか!秀作の意志なんてまるで聞いていない!!」
平行線にも限度がある。これでは本当に、人の言葉や理屈が通じない魔物ではないか。
「ブリタニアがナンバーズを家畜扱いだって言うのなら、貴方達はどうなの!!秀作を自分達の道具にしているじゃない!どこも違わないわ!!」
「セラ、もうよせ。我々は今捕虜だぞ。」
「止めないで、姉さん!本当は姉さんも秀作が敵になった方が良いって思ってるんでしょう!どうせ、日本軍人の孫だからその方が合法的に殺せ…」
乾いた音が響き、敵も味方もあっけにとられた。
「妹の気持ちを尊重したいと思わない姉がどこにいるのよ…!」
セラフィナは呆然と、頬を抑えて姉を見つめた。エルシリアは一瞥しただけで深呼吸し、敵兵に向かう。
「妹が見苦しいところを見せた……申し訳ない。」
一気に熱が冷めたか、相手方も冷静さを取り戻し、日本軍の制服を着た男が前に出た。
「いや………こちらこそ、妹君の言葉も一理ある。」
すると、海棠が咳払いをして割って入った。
「ああ、尻馬に乗る形だが……元日本軍人の俺から見てもそういう理屈はないと思うよ。この子にしても枢木スザクにしても、そいつの人生なんだ。どんな生き方をするか、どんな風に日本を考えるか…俺達に指図する資格はないよ。」
海棠にとって、秀作の憎悪は否定のしようがなかった。あいつらは有り体に言えば愚か者だ。将軍と比較されたコンプレックスには同情できるが、それを息子に押しつけた時点で同情さえなくなる。自分でやることを放棄した時点で既に負けている。
占領後、そして彼がライルの旗下に入った情報が来てからも、そう考える者を見た。
一体、日本はどこでどうしてこうなっちまったのやら………
世界最大のサクラダイト産出国………中立国………枢木ゲンブ………その中に気付かぬうちに国民の意識を低下させている要素があった?
今更考えても意味のないことか。だが、考えずにはいられないってのは人の性なのかね?
少なくとも、彼らはブリタニアでいう『ノーブル・オブリゲーション』のつもりだろうが、それは押しつけるものではないと海棠は考える。それを都合の良いように主張している時点で日本も駄目になっていたのではないか?
この意識を変えない限り、どっちに転んでも同じなのか?
フレイヤが一度クレア達の近くへ発射され、逃れたは良いがはぐれた上に戦闘の影響でか通信も出来なかった。クレアはエルシリア達とはぐれながらも戦い続け、海上を見下ろした。脱出した形跡もないルルーシュ軍の艦やKMFの残骸が浮かんでいる。これよりも多くの命がフレイヤで消えた。
「こんな風に死ぬ兵士に……戦争を戦争じゃなくす爆弾に頼るシュナイゼル殿下や『黒の騎士団』。これじゃあ………単純な殺し合いじゃない。」
それとも、自分の認識が甘かっただけか?これが本当の戦争だとでも?
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