[38655] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-51『ダモクレス…後編1』 |
- 健 - 2019年10月21日 (月) 22時02分
ノエルとクレスの戦闘は続いていた。お互いに機体の特性も武器もほぼ同一……加えて互いの力量も拮抗していた。
しかし、積み重ねてきた経験か修羅場の数の差か……ノエルが先に息切れし始めた。
「まだ…殿下のご恩に、報いてないのよ…!」
〈気迫と執念は認める……だが、君の負けだ。〉
アロンダイトとコールブランドが交差し、コールブランドが折られた。そして、パラディンは頭部を失いコクピットがむき出しになった。そのコクピットに向けてロディーヌがハーケンを向けた。
「……殺しなさいよ!」
怖い…たまらなく怖い。だが、家族の元へ行けるという安堵も何処かにあった。
〈では…地獄で待っていて〉
それより先に後退した。開いた穴からレイのヴィヴィアンが見えた。
「隊長!?」
〈早く後退しなさい!!死にたいの!?〉
「イ、イエス・マイ・ロード!!」
皮肉だ……やっと家族に会えると思ったのに、逆に例えたった一人でも家族が生きている者に救われるとは。
「隊長…」
〈何!?〉
「お母さん、大切にしてください。」
それだけ言って、ノエルは艦を目指した。
幸也とアリアは一歩も譲らない。互いに長剣で押し合い、離れればハーケンや別の剣で打ち合いまた長剣で押し合う。
繰り返しだが、執念で幸也が勝った。左腕のシールドでアロンダイトを受け止めるが、武器のパワーが勝って左腕を損傷する。しかし、その一瞬の隙を突いて右腕でコールブランドを振り上げた。その剣戟がアロンダイトを破壊したが、本体は無傷だ。更に追撃で膝蹴りを入れて中のパイロットを衝撃で攻撃する。
「終わりだ。」
〈哀沢、下がれ!〉
長野の声に反応し、後退するともう一機のロディーヌが現れた。クレスだ。
「貴様!」
だが、間に長野のヴィヴィアンが割って入って剣を受け止めた。更にそのロディーヌをレイのヴィヴィアンが突き飛ばしていく。
〈お前は下がれ!エナジーが苦しいだろう!それに左腕を一度整備しろ!!〉
憎き日本軍人が指図を……と少し前の自分なら言っていただろうが、今はそれどころではない。
「イエス・マイ・ロード!」
幸也が離脱したのを見届け、長野はアリアのロディーヌを睨み付ける。
「万全でない状態で悪いが、今度は私が相手だ。」
〈皮肉ね……自分の国を占領した国の皇子に忠誠を誓うなんて。〉
「日本よりも殿下に仕えるだけの価値を見出した、それだけだ。」
〈正に『売国侍』…いいえ、元から貴方にとって日本は仕えるに値しない国だけだったのかもしれないわ。〉
「褒め言葉として受け取る。」
ロディーヌがMVSを抜き、長野も刀を構えて二機は激突する。
レイとクレスはにらみ合った。
「カレンと言い貴方と言い、私は両方からのけ者にされる人にはとことん縁があるのね。」
〈君は私とは逆に日本育ちだったな。〉
「ええ……幼稚園の頃から苛められ、私がブリタニア国籍得た途端に裏切り者。反吐が出るでしょ?」
クレスからの答えは……
〈分かるぞ……私もだ。日本が占領された途端に周りは手の平返し。親戚も施設に押しつけ、その先でものけ者。〉
レイは笑った。
「なら、貴方にとってそっちは不本意じゃないの?そうなる原因を作った男の体勢なんだから。」
〈それはお互い様だろう?君こそ、父を奪った国の皇子に何故尽くす?〉
「親以外で私を最初に受け入れてくれた人だから。大体、散々苛めていた奴が目の前に出てきて…『友達でしょ、助けて』なんて言われたら貴方はどうする?私はこの世からお別れさせて助けてあげるわ。」
〈私なら、ただ殺すのではつまらないな。〉
なるほど……やはり、彼も相当鬱屈した人生だったようだ。
「なら、似たもの同士…仲良くしましょうか?」
〈悪くない。〉
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