[38630] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-49『死地へ赴く者達…前編2』 |
- 健 - 2019年08月18日 (日) 09時49分
良二は通信越しで、スザクとの対話を許された。
「スザク……本当に偉くなったな。」
〈ああ…〉
以前より無愛想……否、張り詰めている。
「なあ、『ナイトオブワン』より上の『ラウンズ』になって……お前はどうしたいんだ?日本をお前のやり方で取り戻すことより、大事な物があるのか?」
〈………方法と結末が変わった。だが、俺のするべきことに変わりはない。〉
「お前が最善と信じる、正しいやり方?独裁者の片棒を担いででも。」
〈君は恐怖政治の方が良いのかい?〉
先ほどから、何か悟られまい。そう振る舞っている……少なくとも、良二にはそう見えた。
「俺は正直、どっちもどっちだと思う。でも……殿下もお前も見捨てられない。お前の友達として、殿下の臣下としての筋は通したい。」
〈……俺とルルーシュがやろうとしていることはユフィのためでもある。それに、ルルーシュには救わなければならない人がいる。〉
救わなければならない人……おそらく、ナナリーだろう。ライルもナナリーはシュナイゼルに騙されている可能性が高いと考えている。
「ナナリー様にまで『虐殺皇女』の汚名を着せたくないと殿下はお考えでもある。で、お前は?」
〈俺には約束があるんだ……それを果たすまで、俺は生きる。〉
「その約束……俺には手伝わせてくれないのか?」
数秒の沈黙……だが、良二にはとても長く感じた。
〈ああ………俺のことも諦めろ。〉
突き放してきた。だが……
「聞けないね。世界がお前を憎んでも、俺はお前の友達だ。法律でそれを禁じるのなら、言い出した連中を殺す。」
良二はそれだけ伝え、通信を切った。
もう、スザクが何を考えているのか良二も計りきれない。が、少なくともスザクは何かを隠してる……独裁の片棒を担いででも何かをすると。
それでも、自分はスザクの友達である。それしか……もう自分にしてあげられることはない。
情けないな……俺は。
自嘲し、良二は愛用の小太刀を抜いてその刃を眺めた。刃は曇っていた………
「ねえ、貴女死ぬつもりじゃないでしょうね?」
クレアは緑茶を出しながら問う。
「何故そう思うの?」
「何となく……貴女がセラや畑方秀作のために自分を盾にしようとしている気がしたの。」
エルシリアはパネルを閉じ、ため息をつく。
「………あの子が彼をどう思っているか、どんな関係かはもう分かっているしあれこれ言うつもりもないわ。」
「だったら、生きて帰るべきよ。貴女も……」
「………留守番の貴女があれこれ言うの?」
すると、クレアがエルシリアを後ろから抱きしめて彼女の大きく過怠のよい旨が後頭部に当たる。
「私にとっては、貴女達は妹なの……妹二人の晴れ姿は見たいんだから。」
「……そういう貴女はどうなのよ?」
「そうね……シルヴィオ様やライル様は手一杯だし、あの長野将軍は良さそうなんだけど。無理だもの。フリーだわ。」
「妹の心配する前に、自分の心配しなさいよ。」
すると、クレアはクスリと笑った。
「お互い様でしょ?」
エリアは孤児院の院長に電話をしていた。
「ええ、そうなので……俺とシルヴィオ殿下は出撃しません。」
〈そう……でも、気をつけてね。みんなはお菓子や玩具より貴女が元気に帰ってくるのを一番楽しみにしてるんだから。〉
「……そうですか。では、切りますね。」
「施設の先生?」
木宮だ……
「ええ、貴方は良いんですか?シルヴィオ殿下の側にいなくて。」
すると、木宮は妖艶な笑みを浮かべた。
「馬鹿ね、ミルカがすっかりご機嫌斜めなのよ?お后様に気を遣ってあげなくちゃ。」
エリアは呆然となり、木宮が不満そうな顔になる。
「ちょっと、何変な顔してるのよ?」
「いえ…いつもミルカさんを不機嫌にしている木宮さんが珍しいことを言っているので。」
「子供達に手形の頬や青あざの目でも見せてあげたいの?」
ミルカはシルヴィオに紅茶を入れていた。が………
「いい加減に機嫌を直してくれ。」
流石に何時まで経っても不機嫌で、完全に慰めの言葉もつきていた。
「少なくとも……兄上のダモクレスに挑むのは私ではないんだ。」
「そういうことを言っているのではありません!!」
普段、まるで見せない剣幕に流石の『侍皇子』も思わずひるんでしまった。
「私は……私は悔しいんです。」
「悔しい…」
今度は涙を流し、抱きついてきた。
「いつも木宮さんやブランドナー将軍ばっかり、大事なところでは側にいて……私はただ、見ているだけ。KMFで盾になることもできない。」
彼女も当初、KMFの搭乗を希望したがシルヴィオ自身が難色を示した上に彼女はKMF搭乗者としての適性は低かった。そのため、軍学校でも正規パイロット候補生にさえ選ばれなかった……
「パネルの上で、シルヴィオ様の機体がロストしたなんて情報を見るのが怖くて……!」
「そうか………今まで気づいてやれなくて済まない。だが……私はお前に待っていて欲しいから。」
それは本音だ……少なくとも、前で後ろや横を任せられるのは木宮とブランドナー。そしてミルカは……
「人にはそれぞれ出来ることがある……それに、お前の管制で命を拾ったこともある。」
それも素直な答えだ。
「だから……お前のやり方で私を支えて欲しい。これからも………」
それ以上は何も言わずにシルヴィオはミルカの唇を奪った。
「親父達は帝都を離れていて、助かったそうだ。」
「そうか……」
ホーネット家はペンドラゴンにもオフィスを構えていた。今回の解体に際して父達は反乱を起こそうとしていたが、ヴェルドとコローレが連絡を入れてしばらくおとなしくすることとした。
「物わかりの良い親でよかったよ……」
「いや、我々がライル殿下と共に現体制で功績を挙げれば、と考えているのだろう。」
「うげ…あり得るわ。」
しかし……親が生きているだけ幸運か。ペンドラゴンに家族がいた者はライル軍だけでなく、シルヴィオ軍とエルシリア軍にもいるのだ。
「しかし、大将も母親が死んだってのに薄情だな………って言いたいが。」
「あの母親ではな。」
二人も会ったことがあるが、顔の作り以外は全く正反対だ。ライルが嫌うのも無理ないというのが二人の印象だ。
「まあ、ダチとして俺らは大将が生きてかえって美人方と毎晩よろしくやれるようにお膳立てしてやらないとな。」
「それは言えている……って、お前は殿下の元婚約者にアプローチしているだろう。」
「ばれたか。」
二人は普段と変わらないのりで笑い、酒を飲み干した。
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