[38610] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-47『復讐と贖罪…後編2』 |
- 健 - 2019年07月26日 (金) 22時38分
ルルーシュの超合集国への参加表明………だが、良二は彼に仕えるスザクの真意を測ろうとしていた。
スザク……何があった?東京でフレイヤを撃ったのはお前だって噂がある。その後、神根島に行った後雲隠れしたかと思えば『ラウンズ』以上の『ラウンズ』…………
「お前の意思は変わらないのか?最善と信じる方法で日本を取り戻すのか…それとも、日本以上に大切なモノを選んだ?」
会いたい……直接、会って納得のいく答えを聞きたい。
二人の戦いは一対一とはいえ、制止に賭けては自己責任だ。最も、二人とも場数を踏んでいることもあってそんなことに異論を挟まなかった。
二人の部下達……特にウェンディやミルカは。しかし、アレクシアや木宮がたしなめる形で二人とも引き下がった。
「あの子にとって、彼は初めて本気でやり合いたいって思った相手なの。だから…せめて死なないことを祈ってあげなさい。」
そして、木宮がゲライントで立ち会って二機は相対していた。
「できれば、もう少し違う形で決着をつけたかったな。」
ディナダンが刀を構え、アルプトラウムも剣を抜く。
〈それはお互い様だ。〉
二機が同時に飛び出し、刃を交える。アルプトラウムがパワーで押し切ろうとするがそれよりも早くディナダンが後退して下に回り込んで背中から別の刀を振る。
が、アルプトラウムもハーケンでそれをはじき飛ばす。ならばともう一本でワイヤーを斬り同時にもう一本を折られた。
「流石だな……」
〈お前こそ?〉
ゼラートは高揚していた。こんな興奮はあの時……そう、シン・ヒュウガ・シャイングが操縦するヴェルキンゲトリクス以来だ。
小細工が通用する相手ではないのは分かっていた。だが、パリ防衛の時よりも腕を上げている。
ゼラートは両手に剣を持ち、突っ込む。二機は切り結び、互いに一歩も譲らない。アルプトラウムが撃ったハーケンをディナダンも剣ではじき返し、肉薄するがシールドで受け流される。だが、それでもディナダンは蹴りを入れて反撃を防止する。
クルークハルトは戦慄した。今更革命政府の犬ごとき等と言うつもりはない。そもそも、『ユーロ・ブリタニア』が戦争の主権を握っていた頃からドイツ軍に優れた指揮官の部隊があるという噂はあった。『ハンニバルの亡霊』の陰に隠れがちだったが、あの男の部隊がもしも正規軍所属だったかと思うと、ぞっとする。
だが、それを相手に一歩も譲らないシルヴィオも恐ろしい。大貴族達の中にはイレヴンの文化に現を抜かしている、と軽く見ている者もいたがあの動きはおそらく日本武術を基礎に取り入れている。今も目の前で受け流しの技をとってアルプトラウムを退けている?確か、柔道という武術で日本の警察学校ではシルヴィオが特に好む剣道と並ぶ必須項目であったと聞く。
刀の振り方も剣道に通ずる物があると、日本武術に詳しい『ユーロ・ブリタニア』の騎士が言っていた。
「己を磨くためにナンバーズの武術にも手を伸ばして、応用する。皇族にはこれほどの器を持つお方が……」
エルシリアも出自を問わず、積極的に採用する方針を持ってライルの場合は名誉ブリタニア人にも目を向け、人材の育成を唱えていた。
我ら『ユーロ・ブリタニア』にもそれはあったかもしれないが……
が、果たして本国から独立したら勝つことはできたのだろうか?
ウェンディも特別に見せて貰っているが……怖かった。彼を………ゼラートを失うのが怖い。
どうせ、みんな同じだと思っていた。配属された頃は言い寄らないだけまともな男だと思っていたが…いつの間にか、彼を愛していた。
ミルカは悔しかった。なぜ、あれを側で見守れるのが自分ではなく木宮なんだ?付き合いが自分よりずっと長いのは知っている。でも、彼の一番になれないのが悔しかった。
「なんで…何でいつも大事な時は木宮さんが持って行くの?」
「そうはいっても……近くで見ているこっちはこっちでもどかしいのよ?それに……ミルカは帰ってくるのを出迎えてあげるのが役目、あたしはあの子の腰巾着みたいな物で良いのよ。」
今頃、そんなことを言っているミルカに答えるように木宮も感想を漏らす。
でも、本当にシルとここまでやるとは驚いたわ。あたしだって一本とるのがやっとなのに。
決着がついた。アルプトラウムとディナダンが剣を持ってすれ違った直後……ディナダンの両腕が破壊された。対照的にアルプトラウムは左肩のシールドだけだ。
「………殺せ。」
シルヴィオは覚悟を決めた。だが………アルプトラウムは剣を納めた。
〈殺さない……勝者は敗者に何をしてもよい。それがブリタニアではないか?〉
シルヴィオ自身はそれら全てを認めてはいない。むしろ、勝者には勝者の責任があると考えているからだ。
〈誉れある死なんて物をお前には与えない。お前の生殺与奪は俺にあるのだからな。〉
「………屈辱だな、それは。」
〈日本にちなんで切腹などしようものなら、お前の女と親友の首を墓前に捧げてやる。〉
ミルカと木宮を………
「ちっ、生殺しとは良い趣味だな。」
我ながら不思議だった。なぜ、この男を生かしたのか。この男に惹かれた?何に?
自分で考えても分からない。だが……確かに殺すのが惜しい男だと思った。それははっきりしていた。
「さて……これで、公約は守ったことになる。皇帝に連絡を取っていただけるかな?」
〈……ああ、分かっている。〉
間を置いて、ライルが要請に応じた。
ライルは正直、少しだけ安心した。コレで少なくとも……シルヴィオ達の安全はルルーシュとの当初の約束通り、ライルの監視下で保証される。
「では……シルヴィオ兄様。よろしいですね?」
〈ああ………お前の監視下に入る。その代わりと言っては何だが。〉
「大丈夫ですよ……部下達はもちろんですが、木宮さんとミルカさんにも危害は加えません。」
結果はすぐにもルルーシュに伝えられ、ゼラート達『フェンリル隊』は『フェンリル騎士団』に名前を改められ、ルルーシュの直属軍になった。むろん、ルルーシュのギアスの影響下にある兵士達による監視はつけられているが………
シルヴィオに勝利したゼラートは出立を控えたルルーシュに急遽謁見を申し入れた。
「申し訳ない……だが、一つ聞きたいことがある。ルルーシュ皇帝………いや、ゼロ。」
モニターのルルーシュの顔が反応した。やはりそうか…
「心配するな……口外する趣味はない。ギアスについても。」
「………何を望む?」
「何も……強いて言えば、貴方が何をなすのか知りたい。ギアスを使えば世界を思い通りにすることも夢ではないはず。なのに、貴方のなす事は敵意をあおるような行為ばかり。ライルも気にかけていた………まるで、自ら悪役を演じているように。」
ルルーシュは観念した……以前会った時もブリタニア人であることをこの男には見抜かれていた。それどころか、仮説とはいえ皇族ではないかと。
「ちなみに言っておくが……貴方がどの程度軽く見ていたかは知らないが、ライルも薄々感づいていた節があるぞ。もっとも、『大事な弟君が姉弟殺しであって欲しくない』などという逃避で否定していたようだが。」
驚いた……確かに、ライルのことは好きだった。庶民出の母を持つ自分とナナリーをいじめる母によく反発していたのを見ている。
昔……俺と一緒ならコーネリアとシュナイゼルみたいになれる、などと言っていたが…………あの頃に縋りたいのかな?
もしそうならば、ルルーシュも呆れるが同時に哀れでもあった。
俺とお前は九年前で止まっているんだ……俺が10歳のお前しか知らないように、お前も9歳までの俺しか知らない。
「どうかしたのか?」
「別に……さて、全て話すが。」
全てを聞いたゼラートは圧倒された。まさか、それほどのことを考えていたとは………
しかし……
「ギアスとやらで悪名を背負ってでも、導くべきではないのか?どれほどの時間をかけようとも………」
それをしなかったのは、一刻の猶予もないということだ。そして、その原因はシュナイゼル以外に考えられない。
とはいえ、今更文句を言う資格など自分にはない。だが……彼らのなす事自体には賛同しきれなかった。シュナイゼルが手を打つ前にという点を差し引いても。
|
|