[38580] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-46『新皇帝誕生…後編3』 |
- 健 - 2019年07月07日 (日) 22時41分
ライルのベディヴィエール……ソウキュウは胸のハドロン砲でKMF隊を撃墜し、さらにカリバーンで次々とサザーランドを真っ二つにしていく。
親衛隊のヴィンセントが来たが、動きがまるでなっていない。練度が低い証拠だ。ニードルブレイザーを突き出した肘をカリバーンでシールドが展開されていない腕から破壊し、そのままコクピットを左腕のもう一本で斬り裂いた。
歯ごたえのない相手……だが、今は状況が状況だ。
親衛隊はほぼ全滅……直属軍もボロボロだ。
〈へえ、やるじゃないか………今からでも俺様の下に着かないか?〉
ラモラックから通信が来た。まさか、ここで交渉してくるとは………
「条件付きなんだろう?」
〈ああ……お前のお気に入りの女どもを全て俺によこせ。〉
「………交換か?」
〈はあ?何言ってるんだ……お前の女共は俺の物だ。お前にやる女共なんざいないよ。〉
だと思った……交渉にすらなっていない。
「呆れたな……交渉にすらなっていない。」
ゲイリーは心底あきれ果てた。厳しい言い方をすれば、『黒の騎士団』に会談を申し込んだライルはらしくもなく高圧的になっているようだった。相当焦っていたようだが……こちらは。
〈お前と兄上達ならルルーシュを討ち取れるさ。そうしたら、俺の部下として酒にも女にも不自由しない暮らしを保証するぞ?〉
〈それもこれも有紗達をお前に渡してか?無理な注文だ。〉
〈愚かだな……ナンバーズごときいくらでもいるだろう。あの庶民の女のようにな。〉
ジュリアのことを言っているようだ。
〈大体、何であの程度の身体の女がよかったのか……実際に味わった俺に言わせてもフィリアにも劣る。〉
ジュリアの身体を……まさか?
〈ルーカス……まさか、貴様…〉
ライルがいぶかるように問うと………
〈ああ、あの女は俺様がエイゼルやギースと一緒に襲ったのさ。頑固に暴れたが、最後は言い声で鳴いていたぞ?もっとほしいって顔のまま殺してやったんだからな。〉
ゲイリーは悟った。やはり、ライルが当初から疑っていたとおり……犯人はルーカスだった。第八王子の権限でも捜査しきれないとなれば、必然的にライル以上の皇位継承権を持つ皇族に絞られる。だからといって、コーネリアはあり得ないしクロヴィスとユーフェミアも考えにくい。シュナイゼルとオデュッセウスなど最初から候補から外れる………となれば、ギネヴィアやカリーヌ…ルーカスに絞られる。
普段から仲が悪かったこと以上に日頃の行いからルーカスをライルは疑っていたが、ここに来て彼女の仇と判明するとは。
〈ついでにおもしろいことを教えてやるよ……あれには協力者がいたんだよ。あの女を呼び出す役割をした協力者が。〉
「協力者?」
確かに、いるとは思う。しかし、ここで言う意味が?
〈やめて…〉
クリスタルだ……何だ?声が震えている。
〈やめて…言わないで…〉
「クリスタル、どうしたんだ?」
〈何だ、気づいていなかったのか?あの女を呼び出したのは……〉
〈やめてーーー!!〉
クリスタルの叫びが響くが……
〈お前の親衛隊のウィスティリア家の長女だよ。〉
ライルは操縦桿の感触さえ忘れた。だが、ルーカスの舌はまだ回る。
〈馬鹿な女だ……少し話がしたいって俺達の話を鵜呑みにして、ご丁寧に手紙を書いて読んだんだからな。感謝してほしいくらいだ……お前の妻になるチャンスを作ってやったのに、後悔して見せて。〉
〈やめて…言わないで…やめて……許して………〉
「………本当、なのか?クリスタル…」
ライルの声も震えていた。
レイは息をのんだ。
なんてこと……ジュリアさんを殺した事件にクリスタルが関与していたなんて。
しかし、あの様子からすると彼女は騙されていたようでもある。
内心の動揺と怒りを抑えながら、ライルはルーカスに問う。
「………もう一つ聞きたい。首謀者は誰だ?お前一人の計画ではないんだろう?」
〈ああ?まだ分からねえのか……馬鹿だな、お前は。ま、冥土の土産に教えてやる。お前の母君、シェール様に決まっているだろう。〉
今度は不思議と驚かなかった。最初から疑っていた最有力容疑者二人が犯人だった。協力者が思いもよらない人物ではあった。
確かに、何か隠しているとは思っていた。それがまさか…………
「く、くくくく……くははははは……くひひひひひひ……ひいぃいいぃぃやぁぁああははははは!!!あーーはははははは!!!!」
〈た、大将?〉
〈殿下…お、お気を確かに!〉
ヴェルドとコローレが近づくが………
「ひひひ……ははははは!!これが笑わずにいられるか!!あまりにも予想通りの展開で……もう笑うしかないだろう!?なあ、ルーカス?」
〈何だ?〉
「お前のことだ……どうせルルーシュに従う気なんかないんだろう?」
〈ほう……よく分かったな。〉
「特権意識の塊のお前が庶民出の母を持つルルーシュの下に着くわけがないだろう?」
すると、ルーカスは笑った。
〈分かっているじゃないか……ライル。お前が投稿して、俺の旗下に入ればルルーシュを殺す位訳がないんだ。〉
が、ライルは見抜いていた。この男の魂胆を………同時に。
「愚かだな、お前は。自分で叛意を自白するとは。」
〈何?〉
「今の会話は私のKMFのレコーダーに全て記録されている。これを私がルルーシュに聞かせればどうなる?少なくとも、現皇帝を暗殺しようとしている貴重な情報を届けた……程度には扱ってくれるだろう。」
そう言われて、ルーカスは初めて顔色を変えた。
〈て、てめえ……死にやがれーーー!!!〉
ラモラックが全ての火器を撃つが、エナジーウィングで機動力を大幅に上げたベディヴィエールを追い切れない。正面から肉薄し、ラモラックが大型の腕でつかみかかるがそれより早く二本槍に改修されたロンゴミニアトで腕を破壊し、さらにクローハーケンでハドロン砲の発射口をふさいだ。
〈てめえ……今すぐ俺の部下になれ!そうすれば全部水に流して…〉
「消え失せろ。」
ハドロン砲を発射し、ラモラックはルーカスごと消し炭になった。それを見て、ルーカスの幕僚のマクスタインから降伏が通達された。残存のKMF隊も撤退か投降している。
そして……ライルはハリファクスにロンゴミニアトを向けた。
「クリスタル………どういうことか、説明してもらおうか。」
クリスタルは涙を流しながら、呼吸が乱れていた。ついに知られてしまった……あのことを……クリスタルは、あのときルーカスとシェールに頼まれて、ジュリアを呼び出していた。自分の名前で手紙を出して………
「あ、あの時……私、ジュリアに…危害を…加え、ないようにっ、言ったんです。」
ルーカスやシェールは首を縦に振った。だが……結果はあれだ。あの連中が最初からそんな約束を守る気など無いと、分かっていた。
「ち、違う…!本当は…約束、守る気なんか…っ無いって気づいてた!それに…!」
「それに?」
「わ、私……ジュリアが、死んで……悲しかったけどっ…どこかで、喜んだんです…!」
涙で目元赤くはれ上がったクリスタルは罪を告白した。最大の罪を……
「わ、たしにも……殿下の、一番になるっ…チャンスが、まだ…あるって!殿下が、泣いていて…っ、」
〈あの時……身体を差しだそうとしたのもそれで?〉
「ち、違うんです…っ、ほ…本当に………慰め、たくて……!ごめんなさい…ごめんなさい……ごめんなさい…!」
デビーは彼女を完全に憎めなかった。彼女もある意味で被害者だ……ライルへの想いをつけ込まれ、友人を殺す片棒を担いでしまった。
「殿下…その……クリスタルは。」
〈デビー、決めるのは私だ。〉
〈で…んか…!私の、ことっ……殺しても、良いし……ジュリアみたいに…身体、だけむさぼって、捨てても…良いです。〉
まだ泣き続けるクリスタルに対して、ライルは……
「直接口で伝えたい。着艦しろ。」
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