[38536] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-44『会談…後編3』 |
- 健 - 2019年06月03日 (月) 22時04分
数日後……改めてバルディーニら立ち会いの下で神楽耶達と会談が行われ、
「現在の情勢と双方の不安要素を鑑み、この度は駐留の件をこちらから見送らせていただきます。」
ライルの方から駐留案を取り下げた。神楽耶達が言い出すよりも先に。
外野で見ていた海棠は…
これであれこれ言えなくなったか……言いだした相手から見送りを申し出てこられては色々条件を付け加えにくくなったしね。
案の定、神楽耶達もライルの提案を受け入れた。万が一にと、『ロンスヴォー特別機甲連隊』が蓬莱島圏外まで随行する予定だ。
ああ……これで何も起こらなければそれに越したことはないが。そうは行かないのが世の常なんだよな……
今は『黒の騎士団』の一員である以上、多少で片付けられるものではないが不満はあっても活動せねば。いくら何でも『スマイラス・ユーゲント』が決起するような状況にまで陥ることはないし、流石にそんな状況にはなって欲しくなかった。
先に問題を起こした側という事実がある上にギアスによる物的証拠などあるわけない。どちらにせよ、ライルの言い分に正当性があるという星刻の見解とバルディーニの意見…更にこちらの団員を殺したという事実とライルの監督不行届もあるが、双方これ以上の干渉はなしという形で決着が付いた。
「これ以上、波風を立てないことを祈ります。」
神楽耶は秀作を引き込むことが出来なかったのが残念だったか…は分からないがそうした表情は表に出さずに答える。
「ええ、それはこちらも同じです…」
ライルもバルディーニもこれ以上どちらも問題を起こして欲しくないのが本音であった。
ライル達が神楽耶達と話をまとめている頃……皇族達に向けてペンドラゴンから通達が来た。
「ライル殿下にまで…ということは、反乱疑惑は伝わってない?」
涼子は疑念を抱きながら、通達を読み上げる。
「『皇族達はペンドラゴンへ集結せよ。』?」
何故、今この時期に?政治や軍事に疎い涼子でもおかしいと感じる……
停戦協定を結んだとはいえ、正式に和平が成立したわけではない。そんな情勢下で皇帝が各皇族を帝都に?
「クリスタルさん、これどういうことでしょう?」
クリスタルが脇から覗き込んで、電文を読む。
「皇帝陛下から…よね?でも……殿下は…」
そう、ライルはあの神根島での不可解な現象がギアスという力に関わり、またも姿を消した皇帝はゼロかシュナイゼル、枢木スザクに討たれたと考えている。
「だとしたら……一体誰が?」
「念のため、殿下に伝えましょう。後、シルヴィオ様達にも確認を。」
「イエス・マイ・ロード。」
エリア11の領海に駐留する艦隊の一部……そこには『黒の騎士団』正規団員や日本軍人達もいた。
「…今、ここで奴を逃すわけにはいかない。」
将軍は大博打に出ることにした。失敗すれば、全員が双方から確実に殺される。
「だが……強制するつもりはない。抜けたい者は今抜けてくれ。これは成功する望みなど殆どない、大博打だ。」
彼らはある賭に出ていた。一歩間違えれば、世界が泥沼の膠着状態になる戦争を………
「我々の覚悟は決まっております。」
「悪逆を成してでも…祖国を取り戻さねば。」
醜悪な『四十人委員会』はあてにならない……バルディーニもそれは同じだ。しかし、扇達の動きは緩すぎる。
指導者であるゼロがいない今、ブリタニアは勿論のこと外部の俗物共につけいる隙を与えてはならない。
結果として、自分達が汚名を被ることになっても今は祖国を奪還するのだ。否、奪還の礎を作るのだ。
「……では、共に地獄で会おう。」
将軍……E.U.イギリス州のバーソロミュー・ジェンキンズ准将はここにいる全員に地獄で焼かれることを詫びながらも感謝した。
「ペンドラゴンへの招集だと?」
「はい。」
ケアウェントの会議室で皇族達が集まっていたが、やはりこの突然の招集に困惑していた。
「各エリアに散らばった皇族達も急なこの招集に困惑しておりますが、多くはペンドラゴンへ向かっております。また、その関係者の貴族も…」
皇族………今いる皇子と皇女、皇妃だけでなく……その血縁となればその数は多い。
だが、ライルは分からなかった。只電文だけ……皇帝本人の生命ですらない。
「奴の名を騙った何者か……の可能性が高いかもしれない。」
ライルの分析にエルシリアは意見する。
「ライル、父上に…いや皇帝陛下をそのような……」
「世界地図が180度変わりかねない戦争にも興味を示さない男を皇帝と呼ぶ気などありません。それに、今大事なのはそのようなことではなく……」
「この不安定な情勢下で皇族達が全て、ペンドラゴンへ招集されるか………」
シルヴィオは事態を重く見ているようだ。
「もし、神根島で行方を眩ました父が何者かに討たれたとするならば、ライルが言うとおり犯人が利用していることになる。」
「犯人って………ゼロはもう死んでいるのに。シュナイゼル兄さんがそんなことをする必要はないでしょう?」
セラフィナの言うことはもっともだ……大体、シュナイゼルならばわざわざそんなことをする必要がない。そのシュナイゼルさえ『グリンダ騎士団』と共にカンボジアの方へ行ったきり動きがない。未確認ではあるが、スザク以外の『ナイトオブラウンズ』も全員がそちらにいるという情報もある。
「エル……何か悪い予感がするわ。本国近くのエリアかハワイあたりで様子を見ましょう。ライル殿下を保護監視下に置くわけだから。」
クレアの意見はライルは正しいと思う。皇帝叛逆の罪は不確定だ……ルーカスもハワイではないようだがどこかに駐留しているらしい。
「いずれにせよ、早くここを離れましょう……まずはそれからです。」
だが、ライルは皇帝の名を騙る人間に一人心当たりがあった。しかし………
「まさか、な…」
二日後……三軍は蓬莱島を出ることになった。万が一にと『ロンスヴォー特別機甲連隊』が護衛に随行している………
バルディーニは彼らを見守っていたが………
「このまますんなり行かせてやってくれよ?」
しかし……バルディーニの願いは裏切られることとなる。
|
|