[38474] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-42『波紋…前編』 |
- 健 - 2019年04月01日 (月) 00時41分
優衣はライルのことが気がかりであった。本当なら側にいてあげたいが……今は状況が状況だ。我慢するしかない。
「ん?……この識別信号は、嘘…!」
「どうした?」
長野が問うと、エレーナが答える。
「こちらへ向かってくる艦影……二隻です。」
「どこの隊だ?」
優衣がパネルを操作し、確認する。やはり、見間違いではない。
「エルシリア様のブランゲールとシルヴィオ様のオルウェンです。」
最悪だ……よりにもよって皇族三人がこの場にやってくるとは。
「まさか………私達を殺すために?」
エレーナが全員の考えを口にした。そう、しかもこちらは戦闘が終わってまだ十二時間も経っていない上にライルもまだ意識が回復していない。
今、襲われたら一溜まりもない。
「あ……通信が来ました。」
モニターにエルシリアとシルヴィオの二人が映る。
〈ライルはどうした?〉
エルシリアの問いに長野が答える。
「殿下は現在……意識を失われております。」
〈………レイシェフか?〉
シルヴィオの問いに全員が身構え、KMF隊の発進準備をさせる。こうなった以上、奇襲をかけるしかない。と思われたが………
〈戦闘の意志はない……乗船を許可して欲しい。〉
シルヴィオの提案は思いも寄らぬものだ。ブリッジに上がってきたゲイリーも警戒を露わにしている。更に、まだKMFに向かっていなかった秀作も上がってきた。
「おい、まさか白兵戦を仕掛ける気ではないだろうな?ついさっき、味方に攻撃されてこっちは疑心暗鬼になっているんだぞ。」
秀作の態度にエルシリアがため息をついた。
〈相変わらず、態度が悪いな……〉
「余計なお世話だ。で?」
モニターにセラフィナの顔が映った。
〈秀作……本当よ。私達、兄さんがそんなことをしたなんて信じられなくて。〉
秀作が唸り、ゲイリーを見て耳打ちする。
「皇族とその側近だけに許可で良いと思うのだが?向こうが仕掛けてきたら、こっちにも正当防衛の言い訳作りになる。効くかは分からないが、人質にも使える。」
「……セラフィナ様もおられるのだぞ?」
「分かっている……自分でも分からんが、そうなってもセラだけは生け捕りにしたいと思っているんだ。」
ゲイリーは数秒考え……
「分かりました……しかし、状況が状況ですので乗船はエルシリア様とセラフィナ様、シルヴィオ様…そして同行者は二名までです。」
〈ああ、構わない。〉
シルヴィオが了承する形で話がまとまり、ブランゲールとオルウェンから小型機が来る。着艦を許可し、兵達が出迎えるが…皆警戒している。当然だ。
セラフィナはいても立ってもいられなくなっていた。早く会いたい……ライルに………秀作がどうなっているか。直接会いたい。
「詳しいお話しは会議室の方で行いたいのですが、ライル殿下も交えた上でお話ししたいのです。しばらくは、士官室でお待ちいただくことになります。」
「当然だな……武器は預けておく。」
エルシリアが剣と銃を渡してセラフィナとシルヴィオも続く。同行者のクレアとウィンスレット……ミルカと木宮も同じだ。
「ブランドナー将軍の件、お聞きしました。」
ゲイリーからの言葉を聞き、シルヴィオが顔を伏せる。
「そちらこそ……ライルの古い付き合いが死んだと聞く。」
そう、フェリクス・D・ヴィオレットとセヴィーナ・マルククセラが命を落とした。二人とはあまり面識はないが、ライルの部下では個人的に付き合いも深い人物だったという。
「あの、秀作は?」
ゲイリーに問うと、答えが返ってきた。
「いますよ…」
それを聞き、セラフィナは艦に駆け込んだ。中はログレス級というだけあって同じだが、見つからない。どこにと、探して娯楽室に入ると……
秀作がいた。ダーツをしている……
いた。秀作が……生きて………
「セラ…」
気付いた秀作が口を開き、セラフィナは感極まって抱きついた。
「秀作!秀作……秀作よね?本当に……無事なのね?」
「見れば分かるだろう……」
この声…不機嫌そうな口調も彼のものだ。間違いなく、秀作だ。
彼が無事だということを更に確かめたくて、無我夢中になり唇を重ねた。秀作も無器用ながら答えるが……
「あ、あの……我々が見えてます?」
別の男の声がした。振り返ると、エリア11で加わった哀沢幸也准尉がいた。
「ご、ごめんなさい!!」
顔が熱くなり、セラフィナは出て行った。
以前は日本軍人の血縁ということで一方的に敵視していたが、今はまともに会話がようになった相手に幸也は声をかける。
「お、お前……いつの間に。」
「ハワイの休暇でね………所謂男と女の夜も経験した。」
「げっ!」
ダメだ、その手の話題はどうしても馴れない。既にライルが有紗を始めとした自軍の女四人とそうした仲になっているのは知っている。だが、やはりこの手の話題は不得手だ。
「み、水でも飲んでくる。」
神根島での一件の後、『黒の騎士団』は一度蓬莱島へ戻るべくエリア11本州へ引き返す。
だが……いきなり課題がやってきた。
「扇、こっちの艦が何隻か向かってきている。友軍だ。」
トウキョウ湾にさしかかったところで、友軍の艦?中華連邦の竜胆級にE.U.のリヴァイアサン級だ。
〈扇さん、ラルフです。〉
モニターにはブリタニア人の少年の顔が映った。流石に『ブラック・リベリオン』より前のメンバーが来たことには扇も驚いた。
「ラルフ、無事だったのか。」
〈ええ……!扇さん、隣にいるのは純血派のヴィレッタ・ヌゥでは?〉
「あ、ああ……彼女は…」
〈いえ、着艦してから。〉
ラルフから通信を切られるが、来ているのはE.U.から参加した外人部隊と一部の正規軍…合衆国中華の雷斬利も来ている。
彼らが何故、今ここに来るのか。それは全員が心当たりがあった……
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