[38469] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-41『優しい世界…後編2』 |
- 健 - 2019年03月25日 (月) 22時11分
有紗はライルの声が聞こえていた。そして、ナナリーと一緒に出てきたルルーシュという名前……
「あの……ルルーシュ様って、もしかして。」
「ナナリー様の兄君だ。母君が暗殺された後に日本に送られ、『極東事変』で死亡扱いにされた。」
そんな……じゃあ、あの時ブリタニアは皇子と皇女がいるのを知っていて日本に戦争を仕掛けたのか?あの遺跡欲しさに…皇帝は我が子を見捨てたのか!?
そのような計画のために、自分達は国を奪われ、ライルは弟を失った……
不思議と、ライル自身には怒りの感情が湧かなかった。彼の人柄をよく知っているからなのかもしれない。
否、もうそれが関係ないほどに愛しているんだ。
レイはライルの言葉で目が覚めた。そうだ……死んだ人の意識とも一つになれる。つまり、それは今ある命を全く意に介していない。
お父さんの命も……フェリクスとセヴィーナの命も……こいつらには取るに足らないものなんだ!
「ライル様……今のお言葉で目が覚めました。」
〈レイ?〉
「貴方を信じて良かった………最後まで私は、貴方の騎士として地獄まで着いていきます!」
ライルが微笑して、『馬鹿だな。』と答えた。
〈あんたほどじゃないでしょ、大将。〉
ヴェルドも同様の意見のようだ。
「ま、俺もジュリアの意識と繋がれるってのは悪くないが………繋がりってのはやっぱベッドの上での男と女に限るっしょ!?」
ありったけの火器でKMF隊を牽制し、コローレのヴィンセントが斬り刻む。
〈隊長、惚れ直しましたよ。〉
〈あら、そう……でもいや。私はライル様の物よ。〉
〈や、やっぱり?〉
ベディヴィエールが槍を持ち、ユーウェインに斬りかかる。槍を受け止め、押し返すレイシェフはまだ問う。
「貴方にはおわかりのはずです。強欲な者共の手で愛する者を奪われた悲しみ……その悲しみを理解せずに群がる犬共を。」
レイシェフの脳裏にエルザを失った後の記憶が蘇る。葬儀を行うよりも早く、父達は新たな妻となる女性を紹介してきた。他の貴族達も同じだ。心から悼んでくれたのは皇帝やビスマルク、デルヴィーニュ程度だ。
どいつもこいつも……屋敷の使用人達の一部は遠慮していたが、自分がレイシェフの子を身籠もらなかったことが不服なメイドもいた。
彼女の死を心から悼む者など誰もいない。奴らにとって、誰かの妻の死など只自分が果実を得る機会に過ぎないのだ。両親にとって、彼女は自分達が切るに相応しくないぼろきれ同然なのだ。
「貴方が愛した庶民の彼女とて同じだ。奴らの強欲の犠牲になった………」
ライルはレイシェフのいいたいことが分かる。痛いほどに分かる……彼もまた、自己中心的な両親のエゴで愛する妻を奪われた。彼らにとって、息子の妻も息子自身も言えと自分達を飾るアクセサリーなのだ。愛情など無い……そう、ライルもかつて欲した親の情など………しかし…
「だから……だから、訳の分からない計画のために世界中の国に戦争を仕掛けて、大勢殺して良いのですか!?上辺だけの大義名分のために将兵達を戦場で死なせ、皇族達の継承権争いをさせて!!」
〈しかし、現実問題として……貴方達の間で継承権争いをするのは事実。貴方と手、ご自分の夢のために戦場に出たではありませんか?〉
核心を突いた言葉だ。そう、ノネットのようになりたい。ジュリアのような悲劇を繰り返さない……ブリタニアを変えたい。そうした願いのためにライルも多くの命を奪った。それは言い逃れのしようのない事実。
「ええ、双です………でも…」
〈でも?〉
ベディヴィエールが腕と腰のハーケンを撃ち、ユーウェインが指のハーケンで弾き返す。
「死んだ人の意識とも繋がれる。だから戦争で死んでも問題ありません………そんな押しつけだけは絶対に認めない!!」
そう、所詮は押しつけに過ぎない。ブリタニアの統治とて、ライルも思うところがある。だがこれはそれより尚悪い。
『死んだ人の意識とも一つになれる。だから戦争でどれだけ人が死んでも問題にならない。だから納得しなさい。』
『ブリタニアの統治こそが世界で最も優れているのだから、従え。』
「そんな押しつけがましい独善を……未来等と認めない!」
〈殿下!突然、世界中のオーロラと地震が収まりました!〉
何……世界中のオーロラと地震が収まった?
「誰かが……あの男を討ち取ったということか?」
だとしても誰が?式根島基地が反乱を起こしたというが………あの小さな基地が……やはり、ゼロ?或いは枢木スザクか、シュナイゼルか………もしくは三人が一時休戦して皇帝を討ち取ったとも考えられる。
いずれにしても、確かなのは。
「ヴァリエール郷……計画は破綻しました。ゼロか枢木卿かシュナイゼル兄様かは分かりませんが………彼らもあの男の過去にしがみつく考えを認めなかったようですね。」
|
|