[38466] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-41『優しい世界…後編1』 |
- 健 - 2019年03月19日 (火) 22時22分
ライルはレイシェフの急激な反応の向上に翻弄されていた。だが、話の通りならば受動的。こちらから見ればユーウェインが早く反応して見えるだけ………と一瞬だけ思ったが、すぐにそんな考えを捨てる。
こちらが反応しても、すぐにそれに合わせて攻撃してしまう。これでは圧倒的に不利だ。攻撃すれば、こちらより早く動いてくる。かといって、避けようとすれば攻撃の手段を変えるか間合いを取られる。
「ギアスなんか使わなくても…強いのに……そうまでして求める貴方の優しい世界とは、あの男の計画とはどういうものなのですか?」
どうしても知りたかった。V.V.が言う神を殺す契約と、皇帝がギアスで何をしようとしているのか……そもそも、ギアスとは何なのか?
ベディヴィエールの剣をユーウェインが受け止め、二機はつばぜり会う。どちらからともなく離れ、ライルはカリバーンを納めて、腰の槍を取る。
〈集合無意識、という言葉を聞いたことはありませんか?〉
集合無意識?確か心理学にそれによく似た言葉があり、深層心理にも関わりがあると聞いたことがある。それが計画に関係があると?
〈貴方もV.V.に招かれたのならご存知ですよね、あの空間を。〉
あの……空中の神殿のような空間?アレが計画の根幹だとでもいうのか!?
〈陛下はギアスを研究することで、それと縁のあるものを用いれば人々の意識を集合無意識に接続させることが出来る。そして……死んだ人の意識にも接続できるとお考えになったのです。〉
あまりに突飛な話だ。だが……死んだ人の意識、という言葉にライルは惹かれた。
V.V.が言っていた……ジュリアに謝る機会を得られると。
「ジュリアも……フェリクスとセヴィーナも例外ではないんですよね?」
〈ええ…ユーフェミア殿下やクロヴィス殿下にも会えますよ。貴方の大切なお姫様達も家族や友人に………〉
二機が一時的に戦闘を停止した時……涼子から更なる報告が来る。
〈殿下!世界各地で地震とオーロラが発生しています!〉
「何!?」
〈それが……神根島でもオーロラが確認されているそうです!!〉
馬鹿な!オーロラは極めて寒い土地でしか観測されない!日本でもオーロラを観測できないわけではないが、こんな本州から南に離れた神根島で!?
「震源は天領か!?」
〈はい!〉
神根島へたどり着いたシュナイゼルはビスマルクの謁見を受けていた。そのさなか、ライルと同じ報告を聞いていた。
「世界中で?」
カノンが「はい。」と答えて皇帝の思惑を知るであろうビスマルクを睨む。
「ビスマルク。」
「皇帝陛下の計画が実行されつつあるのでしょう。陛下の願いさえ叶えられれば、その後の世界はシュナイゼル殿下が治めらrるのがよろしいかと。ただし……政治の意味が変わることはご理解いただきたい。」
「世界中でオーロラと地震?エリア11でも?」
「ええ……こんな訳の分からないことが起こるなんて、どういうことか。」
木宮が言う通り、シルヴィオも唸る。一体、何が起こっている?神根島で皇帝は……あの男は何をしようとしているのだ。
「まさか…ライルはこのことに何か気付いていた?」
「その可能性は高いですね。」
エルシリアの分析にウィンスレットが頷く。こんな不可思議な現象が世界規模で一斉に発生するなど……過去の気象データを閲覧しても見つからないだろう。明らかに、これは人知を越えた現象だ。
「兄さん……これを止めようとしたから、口封じに?」
セラフィナが呆然とつぶやくのをエルシリアはチラリと見た。ライルが『セントガーデンズ』に攻撃されたと聞いて以来、彼女は放心状態だ。
〈殿下……もうすぐ、我々が争う意味は無くなりますよ。皇帝陛下の計画が実現すれば、このような悲劇を繰り返すことはなくなります。貴方や、貴方の元にいる名誉ブリタニア人も……失った大切な人の意識と繋がれるのです。私のように……〉
レイはレイシェフが口にした言葉に心惹かれた。あまりに飛躍しすぎた話だが、もし…そうなれば、あのとき軍の遊びで的にされて殺された父の意識に、会える?
お父さんの意識とも……繋がれる?また、家族三人で?
クリスタルはその言葉に戸惑った。もし、その通りならば彼女と……でも、それならばあの事をライルに知られてしまう。
ちゃんと……口で伝えたいのに。
ヴィンセントで旗艦の警護に就いていたヴィオラは聞こえていた。そう……その計画が成されればレイシェフは亡き妻、エルザの意識に会える。
彼がそれを望み……あの事件を悔いていた。だから、ヴィオラは賛同したのだ。だが………それが成されたとして、彼が自分を見てくれるのか?
そんな不安と、そのために行われた皇帝とレイシェフの行い。その一つがどうしても、戸惑わせていた。
「死んだ人とも……意識が繋がるとして、それがどうなると?嘘が意味を成さなくなる、ということですよね?V.V.が言っていた嘘だらけの世界を壊すという。」
〈そうです………ありのままでいられるのです。〉
戦いながら、2人は言葉を交わして二機は距離を取る。だが……そこで、ライルは一つの疑問を抱いた。
「そのために……神根島や龍門石窟のような遺跡が必要だったのですね?バトレーが分析していたように、あの紋章がある遺跡が欲しくて各国に侵攻した。」
〈ええ……〉
そうか……だから、か。
ライルは確信した。あの男……こいつらは目の前のものが見えていない。否、そもそも見る気が無いのだ。だから、あの男は『俗事』だ等と簡単に口にできる。
「父はご存知だったのですか?ユフィのあの事件を、ゼロがギアスを使ってユフィにあんなことをさせたと…マリーもギアスを持っていると。」
〈ええ、そうですよ?〉
これで尚のこと確信した。もはや、疑念は決定的なものとなった。
「何故………」
ベディヴィエールの槍をユーウェインが躱し、指のハーケンを発射する。ベディヴィエールはニードルブレイザーでそれを受け止め、薙ごうとするが距離を置かれる。
「何故…ルルーシュとナナリーを連れ戻してから、日本とブリタニアの戦争を始めなかった?」
ベディヴィエールとユーウェインが同時に胸のハドロン砲を撃つ。両機のエネルギーが相殺されて、二機は吹き飛ばされる。
「何故……ゼロがギアスを持っていたことを知って、放置した?何故、マリーの暴走を放置した?」
あの男は少なくとも、ブリタニア国内では最もギアスを知っている。おそらく、あの遺跡がどのようなものかも知っているのだろう。
〈言ったはずです。全ては優しい世界のためと…〉
「違う!そんなものは只の言い訳だ!自己満足だ!」
あの男は現実を見ていない。だから、だ。
「今言ったでしょう!死んだ人の意識とも繋がることが出来ると!だから、ルルーシュとナナリーを捨てたんだ!フローラ様とユーリアの事件も調査しようとしなかった!!世界に侵攻して、何が起こってもあの男は無関心だ!!だから、『俗事』なんだろう!?」
あの男が『俗事』だという意味が分かった。死んだ人の意識とも繋がれる、そこしか見ていない。つまり…目の前にある今を、そこの命に関心が無いのだ。過去以外に………
「貴方が計画に賛同したのは奥方のことでしょう…しかし、死んだ人の意識と繋がれるからといって………そこにある命を無視して良いものか!!」
ライルは軍人だ。人の命を奪っているという意識は持っている。ブリタニア至上主義とも言えるコーネリアでさえ『誇りと命の奪い合い』だという理念を持つ。そう、こいつらは命という概念そのものが根本的に違うのだ。
「そんな訳の分からない計画のために……有紗やレイは親を失い、ルルーシュとナナリーを捨てて…ユフィも見殺しにした!貴方もご息女を捨てたんだ!!」
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