[38447] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-38『迷走…後編』 |
- 健 - 2019年02月14日 (木) 18時30分
『セントガーデンズ』はおそらくそう遠くなくまた襲ってくる。作戦会議を行う中、優衣が急報を告げる。
「KTテレビから緊急中継です!艦内に流します。」
モニターにライルも直接会ったことはないが、写真で見た顔が映る。アッシュフォードの令嬢にしてサラの上級生ミレイ・アッシュフォードだ。
〈先程、シュナイゼル殿下と『黒の騎士団』の間で休戦条約が締結されました。〉
休戦条約……確かに、ブリタニアにフレイヤが後どれだけあるかは分からない。もしも、まだあるのならば迂闊に戦闘を仕掛けられない。まして、また市街地で撃つようなことになれば………
だが、次のニュースには全員が言葉を失う。
〈また、『黒の騎士団』からはCEOゼロの死亡が発表されました。〉
ライルは思わず「何?」と口に出てしまった。
「ゼロが……死んだ?」
「本当?また……影武者か何かじゃないの?」
有紗が困惑し、優衣も以前と同じ事態を疑う。だが……
「いや、本物どころか影武者と立証することさえ出来ない。」
そう、ゲイリーが否定したように仮面の英雄など所詮は記号だ。圧制に抗い復活する英雄……いわばゼロはそういった類の記号だ。あの二度目の特区日本でゼロは自らを記号にした。
「どういうことだ……」
島根沖の大竜胆でクラリス達は中継を聞いていた。カゴシマの星刻達はトウキョウの扇達に呼ばれて斑鳩に向かったという。
〈ゼロはトウキョウ租界の戦闘で負傷し、旗艦斑鳩内で治療を受けていましたが本日未明、艦内にて息を引き取ったとのことです。〉
「どういうこと…?」
クラリスがあまりに早く進みすぎた事態に疑いを持つ。本当にゼロは死んだのか?
「仮面の英雄なんて所詮記号だ……」
斬利の言葉の意味をクラリスは悟る。所詮記号……復活したゼロがどう本物かなど、もはや奇跡を起こせるかその行動で判断するしかないのだ。
「星刻様達は、何かご存知なのか?」
「さあ……でも、扇さん達なら。」
藺喂と浅海も困惑する。だが……
「斑鳩に繋いで。」
モニターに斑鳩にいる事務総長にして創設時の副司令扇要の顔が映る。
「事務総長、これはどういうこと?」
〈ピエルス大佐ですね?放送はご覧になったと思われます。〉
「ええ、放送は見たわ。だから…本当にゼロは死んだの?」
〈ええ、事実です。申し訳ありませんが、神楽耶様達がこれから向かってきますので。〉
通信が一方的に切られた。
「………怪しいわね。」
「おい、藤堂。一体どういうことだ?休戦条約の締結でゼロが死んだって?」
フクオカの海棠もバルディーニらとともに藤堂に確認を取っていた。
「大体、休戦条約は誰の指示だ?ゼロが死ぬ前に言ったのか?」
〈ええ…その通りです。〉
妙に歯切れが悪い……
「本当だろうな?」
〈誓います。〉
「…………何に?」
〈日本の大地と、片瀬少将に。〉
通信が切られた。
「臭い。」
ニイガタのゼラートはマスカールらとともに今後の攻撃を議論した矢先にとんできたこの報せを確認していた。
「で、シュナイゼルとの休戦条約の条件は何だ?」
〈日本を…双方の中立地帯にすることです。〉
何?本当にそれだけか?
「では質問を変える……ゼロは何か遺言みたいなものは残さなかったのか?」
〈いえ…何も……〉
「そうか、時間を取らせた。」
通信を切り、ゼラートは腕を組む。
「中佐?」
ウェンディの問いにゼラートは数秒目を閉じて、ため息をつく。
「きな臭いな。」
〈兄上、どういうことですか?〉
エルシリア、シルヴィオ、ルーカスの三人がモニターに映り、アヴァロンにいるシュナイゼルに質問していた。
「事実だよ……悲しいことにゼロは志半ばで倒れた。」
だが、シルヴィオが眼を細くする。
〈もう一つ………何故、ライルが皇帝陛下の暗殺を企てた件が公表されないのです?〉
〈そうですよ………さっさと殺せば良いのに。まあ、元々俺様の敵ではないですけど。〉
シュナイゼルはその問いにも冷静さを崩さずに堪える。
「ライルの件はまだはっきりと分かっていないし、この件はレイシェフが一任されている。確かな証拠が得られるまで、この件は私達だけの話に。」
エルシリアが顔をしかめる。
〈事と次第によっては、私とセラは独自に動きます。〉
モニターが切れ、シルヴィオが睨み付けてくる。
〈兄上、貴方はフレイヤで何をするつもりです?カンボジアで開発させているものと関係が?〉
「それ以上は傍受される恐れがある……」
正論を突き出されてシルヴィオも通信を切った。
〈兄上、ライルはさっさと殺しましょうよ。〉
「ルーカス、君達の勇猛さは知っているが…潜ってきた修羅場という意味ではライルの方が上だ。『セントガーデンズ』も手傷を負っている……ここぞという時のために切り札は取っておくものだよ。」
〈流石は兄上……俺の力を分かっておいでです。〉
最後にルーカスのモニターが切れ、カノンがため息をつく。
「おめでたい方……正面から戦えばライル殿下の軍に勝てるわけがない。余程消耗していなければあの方が勝つ道理など無いでしょうね。」
「だが、チェスでもクイーンを失ったからといって負けるとは限らないよ。」
だが、ポーンにすら満たない者ばかりのルーカス軍がナイト以上が大勢いるライル軍と『セントガーデンズ』の戦闘に割って入ったところで『セントガーデンズ』の足を引っ張るだけ………
「打ち筋を誤ったか、それとも?」
だが、シュナイゼルはこの後で自らも思いもよらない提案をある人物から持ちかけられることになるとは予想だにしていなかった。
そして、シュナイゼルはこのような事態になっても現実を、今日という日に関心を持たずに神根島に留まるあの男への不信感を更に強めていた。
ラルフは通信で見た扇の様子に疑念を抱いていた。中華連邦のクーデターから少ししてからだ……否、もしかしたらそれより前から?
外部から合流した者達は困惑しているが、E.U.の精鋭部隊の面々は疑っているようだ。
会って、確かめよう。何があったのか。
「グレートブリタニアは?」
「神根島から動く様子はないようです。」
ライルは唸る。どうやら、『黒の騎士団』は完全にシュナイゼルに……そしてこちらはレイシェフに任せているようだ。
シャルル・ジ・ブリタニア………何をする気かは知らないが、その腹の内引きずり出してやる。
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