[38445] コードギアス 戦場のライル B2 BERSERK-38『迷走…中編』 |
- 健 - 2019年02月12日 (火) 19時13分
ライルが皇帝の暗殺を企てたという件はレイシェフによって伏せられていた。だが、彼らの動きに疑念を抱いていた者は既に状況の変化に気付いていた。既にライルと最も付き合いの長い人物が彼を守り倒れたことも聞き及んでいる。
「事実でしょうか?」
『黒の騎士団』に対してある一手を打ち、交渉を済ませたシュナイゼルは帰還したコーネリアと共に議論していた。カノンの問いにシュナイゼルは紅茶を一口飲み、考える。
「兄上……私見ではありますが、ライルが企てるとは考えにくいことです。」
「私もそう思うよ……だが、今は情勢が不安定だ。彼が自力で乗り越えることを祈るしかない。」
ライルがクーデター……レイシェフが彼の旗下に着いたというのはやはり………
弟としてライルはあの彼ほどではないが、シュナイゼルも個人的に好ましく思う。だが、いかんせん優しすぎて皇族などには向いていない。それはコーネリアも同じく心配していた面でもある。余程のことがない限りは皇位簒奪などを企てるようなタイプではない。
となると、おそらくライルは陛下のお考えに気付いていた。それを問い詰めようとしてか………悲しいがライル、これでチェックメイトか、それともキャスリングからの逆転か。
「嘘よ!嘘に決まってる!」
セラフィナが飛び出そうとするが、エルシリアは腕を掴む。
「どこに行くの、セラ!」
「決まっているでしょう!兄さんの救援に行くんです!トウキョウ租界の部隊やシュナイゼル兄さんに連絡を!!ライル兄さんがお父様を殺して皇位を奪うなんて、あるわけありません!!」
エルシリアとて、それは信じがたいと思う。だが、彼女の場合は…
「畑方秀作は無事だ…」
彼の無事を聞いた途端、セラフィナの顔が緩む。そう、彼女にとってライルも大事だがおそらく今はあの男の方が先だ。
「だって……兄さんのやり方に合わせても、秀作は日本の利になることは絶対にしない。したいと思うはずがないもの。」
端から聞けば、身勝手極まりないことだろうがあの男の場合は日本側がそもそも身勝手そのもの。ノーブル・オブリゲーションの精神はエルシリアも自分なりに持っているが、彼の場合はそれを周りが勝手に作り上げて押しつけていると言って良い。
そんな彼が八年間憎み続けている日本に突然味方?いくら何でも急すぎる。
「エルシリア様……テレサは…妹はどうなんです?」
ルビーが縋るような顔で見つめる。いつもの貴族の責任を自覚する顔ではない、弱々しい顔だ。
「テレサ・スクラーリが戦死したという報告はないが、まだ分からない。」
ルビーが顔色を失う。冷酷だが、安い希望を持たせてぬか喜びさせては余計に傷ついてしまう。
「とにかく、事実確認が先だ。理由は分からないがレイシェフは公表はしていない、時間との勝負だ。ウィンスレット、頼む。」
「イエス・ユア・ハイネス!」
皇位継承争いのライバルが減る……そう考えれば良いはずなのに。それはセラフィナが愛しているあの男がいるからか、それともライルの無実を信じているからか………
両方だろうな……
シルヴィオも情報を掴んだ。あまりに突飛な内容で、とても信じられない。
「ユーフェミア様の虐殺の次はライル殿下の叛乱?こっちも相当に寝耳に水な上に胡散臭くない?」
木宮は懐疑的だ。あの行政特区の事件も、彼は疑った。やるにしても、『黒の騎士団』を完全に油断させてからだ。あんな帝国臣民として参加した人々への裏切りなど、何の意味も成さないと……
「ああ、『プルートーン』の不穏な動きに『セントガーデンズ』も関与している可能性がある。」
『プルートーン』を勝手に動かしたのは『セントガーデンズ』?いや、考えにくい……むしろ、『プルートーン』を動かせる者と『セントガーデンズ』、ひいては皇帝が繋がってライルはそれに関する何かを知って、口封じをされる?
この方が説得力はあるな……
自分で考えてどうかと思うが、その仮説の方がまだ頷ける。大体、クーデターを起こすにしても今のライルの政治的立場では無理がある。否、だからこそ皇帝になって権威で周囲を黙らせようとする……その可能性もあるが、あまりにも低すぎる。
「どうする、シル…助ける?」
木宮が椅子に肘を乗せ、問いかける。緑茶を一口飲んでシルヴィオは口を開く。
「ビスマルクは?」
ミルカに確認を取ると、予想だにしない答えが返る。
「はい、それが皇帝陛下の元へ向かうと神根島に。」
何?ビスマルクまで……『血の紋章事件』を切り抜けた当時の『ラウンズ』であるビスマルクまで、ということは…
「ビスマルクも黒、と見て良いかもな。」
「嘘……もしかしてあの人、とんでもない化け物の巣を見つけちゃったの?」
「そう見るべきだな……ビスマルクも関与しているとしたら、迂闊に手が出せない。」
しかし、何故公表しない?我々にも攻撃要請をすれば、ほぼ確実にライルを部下共々葬れるのに。
いずれにせよ、本当にライルが暗殺を企てていたのか確かめる必要がある。
ルーカスは後をマクスタイン達に任せて部屋に籠もった。ライルが皇帝暗殺を企て、今『セントガーデンズ』の攻撃を受けたと……
これは好都合だ……レイシェフが消してくれればそれでよし。否、上手くあいつに合流して奴の女共を確保するチャンスだ。皇帝陛下も自らの暗殺を企てた皇子を殺したとなれば、シュナイゼル以上に取り立てる。その後でシュナイゼルも殺し、邪魔なビスマルクや枢木スザクを始末してモニカ・クルシェフスキー以外の『ラウンズ』は全て追放ないし処刑。あのヴァインベルグの後継者は利用価値があるから例外として、『グリンダ騎士団』の筆頭騎士も俺の物に出来るわけだ。
本国の下級貴族の女が口移しで飲ませたワインを飲んで、更に極めて希なドイツ人とブリタニア人のハーフの女の豊かな胸を揉んだ。
女が甘い声で泣き、更に今繋がっているトルコ人の女を突き上げ、女も腰を振って寄り甲高い声を出す。
まあ……あの女共が手に入ればこいつらは用無しだな。それまで、せいぜい可愛がってやるよ。
フィンランド人の少女が膝枕をしながらハーフの女ほどではないが大きく、形の良い胸を差しだし、それに吸い付いた。
度重なる蹂躙で既に彼女達はルーカスらの従順な奴隷になっていた。
〈殿下一人だけとは、随分らしくないな。〉
ビスマルクに咎められるが、レイシェフはそれを冷たく返した。
「彼一人始末できれば、問題はないだろう?彼らは一部の皇族に使い捨てられた被害者だよ。」
〈……自分に重ねて、肩入れしていないか?〉
図星だ……レイシェフは観念した。
「ああ、何かとよく似ているからな。だが安心しろ………彼は必ず始末する。」
〈頼むぞ……いよいよ始まる。私は皇帝陛下の元でシュナイゼル殿下の動きに備える。〉
「分かった……こちらは任せろ。」
|
|